チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

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42話 アイールディの物語 その2

魔女の私は今日も勇士達から隠れながら、霧の森で過ごしている。

午前中に修練を済ませ、その後食料の霧の実と魔力を回復する霧の葉を集める。

適度な量を拾い集めたら家の保管庫に納める。

 

午前のうちに今日しなければならないことは済んだので、午後はおばあちゃんに霊石の作り方と改良の仕方を教えてもらいに行くつもりだ。

大きな霊石があれば沢山の生命力を溜め込ませることで大きな人形を起動できるようになるし、霊石を作れるようになれば、この前アドリアンに助けてもらったお礼もできる。

それじゃ、昼食を食べたらおばあちゃんの所に行こう。

 


……時間がかかったけど、何とかおばあちゃんから霊石の作り方と改良の仕方を聞き出せた。

やっぱりおばあちゃん、耳が遠くなってる。

会話をするのも凄く大変。

なぜか大事な話になるとちゃんと聞いてくれるけど。

でも、おばあちゃんがイノシシ人形をくれたので、後で家で起動しよう。

 

霊石を作成・強化するのに必要な素材は、黒石窟にある黒い魔力の石に加え、浄化の力がある霧の森の湧き水。

危ない黒石窟の探索は明日に回し、今日は湧き水の回収だけしようと思う。

 

そう思いながらおばあちゃんの家から湧き水の出る泉に行こうとすると、泉までの通り道にある黒石窟の入り口前に、私の友達・アドリアンがいた。

 

アドリアンは笑顔で手を振って挨拶をしてきたので、私は走って彼の元へ行く。

どうしてここに来たんだろう。

……と言っても、理由は一つだよね。

 

「勿論、母の病気を治すためのものを探しに来ているよ。後は、ここに黒い魔力が特に濃い場所があるっていうのを知ったから、俺の作った黒い魔力の浄化剤がここにも効果があるのか確かめに来たんだ」

 

浄化剤?あ、アドリアンの手に持っている銀色の液体がそうなのかな。

でも、アドリアンも魔法調合するの?

なぜか人間のおばあちゃんはできるみたいだけど。

 

どうやって浄化剤を作ったのか聞いてみると、元から魔力の入っている水に処理をした鉱石の粉を溶かしているだけみたい。

自分の魔力がなくてもできる調合ってことなんだね。

 

アドリアンが黒石窟の入り口に銀色の液体をかけると、邪悪なオーラを放っていた岩が一瞬でただの岩に変わった。

本当に浄化できるんだ。

でも、魔力石としては使えなくなっちゃうから、私の調合では役に立たない。

 

「この浄化剤では黒い魔力の石を普通の魔力石には出来ないけど、人間を汚染する源である黒いオーラごと浄化するから、安全性はずっと高いんだ」

 

魔力石としての機能を残す形での浄化だと、またどこかで黒い魔力の石ができてしまうらしい。

一長一短ってことなのかな。

 

「そういえば、アイールディは何をしていたの?」

 

アドリアンの質問に対し、アドリアンにお礼をするために霊石を作る材料を集めてる、と言おうとしたけど、魔女であることがばれないようにするため、作るものを伏せて今日集める素材のことだけアドリアンに教えてあげた。

 

アドリアンはおばあちゃんのことも聞いてきたからそれも教えてあげたけど、多分、おばあちゃんはもう他の人間と上手く話せないんじゃないかな。

付き合いのある私でも会話するのがすごく大変だし。

アドリアンも心配そうにしていたけど、どうにもできないと思う。

 

それと、アドリアンは湧き水を採取するために一緒にいっても良いか私に聞いてきたので、頷いておく。

そのままでは病気を治すのには使えないと思うけど……。

あ、もしかしたら浄化剤を改良する方に使うのかな。

どちらにしても、今日は私が森を案内してあげよう。

 


湧き水までの道のりは、アドリアンとお話しながらなので賑やかだ。

黒い魔力の浄化剤は森の外にある素材を色々使って試薬を作ってたけど、ずーっと失敗ばっかりだったんだって。

海を隔てた所にあるバベリア大陸の材料を使っても上手くいかなかったってアドリアンは話していた。

 

魔物に襲われることなく泉の手前に着いたけど、苔むしたゴーレムが道を塞いでいる。

アドリアンがいるから魔法や人形召喚は使えないけど、こちらを攻撃しようとゴーレムがパンチをしてきても、アドリアンが剣を振ると全然関係ない方向にゴーレムの拳が飛んでいくので隙だらけだ。

明後日の方向に向いたゴーレムに剣撃を叩き込み、簡単に勝てた。

アドリアンの剣技、余り力を入れてないようなのに、起きる結果は魔法みたい。

「受け流し」って技みたいだけど、やっぱり私には難しそう。

 

ゴーレムを倒した私達は、無事森の泉から湧き水を採取できた。

アドリアンは森を案内したことと湧き水を採取させてくれたことにお礼を言ってくれた。

湧き水については私の物って訳でもないから気にしなくていいのに。

 

 

「うーん。お礼におやつでもご馳走してあげられるといいんだけど、火をどうしようか……」

 

おやつ?不思議に思ってアドリアンに聞いてみると、前に飲ませてくれたココアと、他にも甘い物を私に渡そうとしてるんだけど、準備をするのに火がいるらしい。

 

「焚き火を森でやって大丈夫かな……」ってアドリアンは悩んでいる。

多分、周りの木々に火の粉が飛ばないか気にしているのだろう。

 

……私の家では魔法調合に使う窯を煮詰めるために火を焚いている。

でも、人間のアドリアンを家に招いて大丈夫かな?

 

……これまでのアドリアンとの交流を思い出す。

私を追い回す勇士達とは全然違う、優しいアドリアンとのやり取りが幾つも幾つも頭の中に思い浮かんでいく。

程なくして迷いはなくなり、私の心は決まった。

 


アドリアンを私の家に招くことに決めたけど、そのままアドリアンが家に近づいたり入ったりしてしまうと私が魔女だとバレてしまうので、アドリアンには私の家の近くで待っていてもらい、大急ぎでアドリアンを迎え入れる準備をする。

 

まず、人間が近づいた時に警告してくれるうにゃうさぎへアドリアンのイメージを思い浮かべながら魔力を流し込み、彼が近づいた時だけは声を上げないように調整する。

 

うにゃうさぎの調整が終わり次第、直ぐに家に入り、魔法図鑑を閉じて部屋の隅に押し込む。

次に魔法調合に使う大きな窯を移動させ、空間移動の魔法陣を隠す位置に置いておく。

最後に窯に蓋を被せてしまえば、ここも普通の人間の家になったはず。

それじゃ、アドリアンを呼んでこよう。

 

 

アドリアンは私の家の中を見たけど何も言わなかったから、ちゃんと魔女であるのを隠せたみたいだ。

ただ、私の寝床となるクッションに、「布団」と「枕」が付いてないのをアドリアンは気にしていた。

布団と枕が手に入ったら私の家に持ってきてくれるらしいけど、どんなものなんだろう……。

 

布団と枕について想像を膨らませていると、アドリアンは一緒に料理を食べた時のシートを床に敷きつつお湯を沸かしていく。

そのままアドリアンは自分の鞄から色々シートの上に出しているけど、以前飲ませてくれたココアだけでもご馳走だと思いながら、私は前みたいにシートの上でアドリアンの隣に座り込む。

 

アドリアンは前と同じようにココアを用意してくれたけど、今日は白くてぷにぷにしたマシュマロってお菓子がメインらしい。

 

「そのまま食べても大丈夫だけど、串に刺して焚き火にかざしながら、くるくる回して炙ってあげると、もっと美味しくなるんだよ」

ってアドリアンが教えてくれた。

私もアドリアンから串を受け取り、アドリアンの焼き方を真似てマシュマロを焼いてみてから口にする。

 

……これも、凄く美味しい。

きつね色になったマシュマロの外側はカリカリで、噛むとトロッとしたものが甘さを舌に伝えてくる。

アドリアンがやってるみたいに、ココアにつけたり一緒に並べてくれたビスケットって食べ物に挟んだりしてマシュマロを頬張ると、また違った美味しさが口の中に広がっていく。

口の中でマシュマロを堪能していると、アドリアンは「良かったら、森の外で俺が経験した話をしようか?」と言ってくれたので、もちろん頷く。

 

地図と手帳をアドリアンは取り出して私に見せながら、各地の特徴や出現する魔物、採取できる素材の話を交えつつ、彼の生きた経験を語ってくれた。

 

シューベロード、シューベト山、リアートリード、リアート砂漠、カルダリア山とマグマの流れる洞窟、デルカル峡谷、特別な防寒着を着て探索した氷の洞窟、3つの古代神の泉、ドラゴンバレーの一部、デルカル大陸の外に繋がる埠頭……私はココアをちょびっとずつ口にし、焼いたマシュマロやビスケットを頬張りながら、アドリアンの歩んだ旅路を私は夢中で聴いた。

荒地で育つ作物を見つけた話、飲み水の代わりになる物を探しに行った話、素材を集めたはいいけど、調合の工程を間違えて全部台無しにしちゃった話……他にもいっぱいお話を聴かせてくれた。

 

……家の場所、アドリアンに教えてよかった。

 


アドリアンは暗くなる前に帰らないといけないということで、楽しい催しもとうとうお開きとなってしまった。

人間の町や村の話やデルカル大陸の外の話は時間が足りなくて聴けなかったのは凄く残念。

でも、アドリアンはお母さんの病気を治すための探検以外で時間ができたら、また私の家に来てくれるみたい。

アドリアンが「またね」と手を振りながら森の出口へ歩いていく時も、私は家の前からアドリアンの後ろ姿が見えなくなるまで見送った。

 

……アドリアンが去って家が静かになった後、私は窯や図鑑を元の位置に戻していく。

あと、手持ちの素材で幾つか魔法調合を済ませ、序でにおばあちゃんから貰ったイノシシ人形を目覚めさせておく。

人形に不具合がないことを確認していると、外はもうすっかり暗くなってしまった。

私は明日の黒石窟での素材採取に備えて少し早めに就寝することにする。

アドリアンの聴かせてくれたお話を頭の中で反芻しているうちに、私の意識は夢の中へ落ちていく。

 

……明日は、霊石の調合を、頑張ろう……それと……また、アドリアンと……遊びたいな……。




原作でも大事なフラグ
アドリアンに家の場所を教える
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