チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

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46話 アイールディの物語 その4

「あ、こらこら。こっちは領主様の館だ。許可なく入っては駄目だぞ」

 

私はアドリアンの家があるだろう道の先にある門で勇士達に止められてしまった。

あれ?領主の家……?でもあの子達、とてもしっかりした足取りだったから、道を間違えてるとは思えない……。

 

「おや、偶然ですね。この場所でまた会えるとは。もしかして、アドリアン様に会いにきたのですか?」

 

あ、森で会った……そう、ヨハネスだ。

彼の言葉に頷く。

 

「二人とも、下がって大丈夫ですよ。彼女はアドリアン様のご友人です」

「そうでしたか……失礼しました」

「僕が案内しますので、一緒に行きましょうか」

 

ヨハネスの言葉に門番の勇士達は素直に道を開けてくれたので、私は彼の後についていく。

 

着いたのは、多分町で一番大きくて、私でも分かるぐらい立派な家だった。

 

「ねえ、探検家って儲かるの?この家、凄く豪華……」

 

そうヨハネスに聞いてみると、びっくりする答えが返ってきた。

 

「ああ、確かにアドリアン様は探検家として素晴らしい功績を上げておられますが、この家が豪華なのは、ここが領主様の家だからですね。アドリアン様はシューベト領主の息子なんですよ」

 

アドリアン、領主の息子だったんだ。全然知らなかった……。

ヨハネスは「アドリアン様も別に隠している訳ではないですから、聞けばきっと教えてくれましたよ」とも言っている。

……アドリアンと一緒の時はいつも凄く楽しくて、アドリアンのお父さんやお母さんが何をやっているかとか、全然気にしてなかったからだね。

 

「こちらの入り口から入れば、アドリアン様にお会いできると思います。では、僕は領主様に用事があるので、ここで失礼しますね」

 

ヨハネスは家の入り口まで私を案内し、そのまま立ち去って行った。

 

……霊石のオーラはこの家の中にある。多分、アドリアンも一緒にいる筈。

アドリアンのお母さんを治療したら、なるべく早めに帰ろう。

 


家に入ってすぐの所にいたお爺さんにアドリアンがいる場所を聞き、そのまま教えてもらった部屋に直行する。霊石のオーラもそちらから感知できるので、ここにアドリアンがいるのだろう。

 

「うーん……。いったいどうすれば……」

 

部屋に入ると、ベッドに体を横たえている女の人と、椅子に座って悩んでいるアドリアンがいた。

女の人は霊石を手に握らされているから、きっとこの人がアドリアンのお母さんなんだろう。

私がアドリアンに声をかけると、アドリアンは目を丸くして驚いていた。

 

「ア、アイールディ!?どうしてここに……?」

 

アドリアンの問いかけに、アドリアンとアドリアンのお母さんが心配だったと伝えると、「ありがとう。君は優しいんだな……」ってアドリアンは呟いていた。

 

「俺の母親なんだ。一度は病から持ち直したんだけど、最近また調子を崩してきているんだ。医者も薬師も見立ては同じ、生命力が消え続けて手の打ちようがないって……」

 

アドリアンの話を聞きつつ、私は霊石に魔力を流し、アドリアンのお母さんに霊石から生命力を注ぎ込ませていく。

アドリアンのお母さんを完全に回復させるのにかなりの生命力を注ぎ込んだが、無事治療は完了した。

程なくしてアドリアンのお母さんは目覚め、アドリアンと復調したアドリアンのお母さんは抱きしめ合っていた。

アドリアンが力加減を誤ってお母さんのアクセサリーを繋ぐ鎖を切ってたけど。

 


アドリアンのお母さん・エステルに名前を聞かれ、私はアドリアンに名前を貰った名前を答えている。

「あの名前、君が嫌なら無理に使わなくてもいい」ってアドリアンは言っていたけど、彼から貰った名前を嫌なんて思わないので、そのまま使わせてもらう。

 

……エステルに注いだ生命力は相当に多かった。つまり、とても重い病だったってこと……。

それに、彼女の体には私が一度も見たことがない魔力の跡が残っている。

誰かが、エステルに魔法を使っている……?

 

アドリアンにエステルが病にかかっていた時期を聞いてみると、

 

「母上は生死の境を彷徨うほどに悪化していたのは大体10年前だね。あの頃のように調子を崩し始めたのは3か月も経っていないかな……」

 

という回答だった。

じゃあ、10年前の時に誰かがエステルに治癒魔法を使って一度は回復したけど、また病状が進行してしまったってことなのかな……。

 

「アイールディ、俺の母上はシューベトだけでなくデルカル大陸全体を考えて政務を行う、とても立派な人なんだよ」

 

「あら、アドリアンはお世辞が上手ね。大陸全体のために色々しているのは寧ろ貴方の方だと思うけど。頑張り過ぎで心配なぐらいよ」

 

「お世辞は今母上もおっしゃっているじゃないですか」

 

2人とも、とっても仲が良さそう。

政務をしてるってことは、エステルがシューベトの領主なのかな?

 

「いや、領主は俺の父上の方なんだよ。先代の領主が母上で、母上は領主の座を父上に譲ったんだ」

 

「今はアドリアンの父、リーガルの政務補佐を私は務めているのよ」

 

じゃあ、アドリアンのお父さんであるリーガルとエステルは協力しながらシューベトを動かしているってことなんだね。

 

あれ、誰かがこの部屋に走って近づいてきている……?

部屋に入ってきたのは、アドリアンと同じ髪の色で、厳しい表情をした男の人だった。

 

なんだかエステルと机の上のアクセサリーをキョロキョロ見てエステルの体調が問題ないかを聞いている。

……この人がアドリアンのお父さんで、シューベトの領主・リーガルなんだ。

エステルがこの人のことをリーガルって呼んでたし、2人とも、すごく優しい顔で話しているからきっと間違いないだろう。

アドリアンが鎖を壊しちゃったアクセサリーはリーガルが修理に出すみたいだけど。

あ、リーガルが私に気づいた。

 

「ああ、父上。こちらの子は、俺が霧の森で新しく友達になった子です。母上の病を治療するために、貴重品である霊石というものを提供してくれたんです」

 

アドリアンが私のことをリーガルに紹介している。

良かった。アドリアンも私のこと、友達って思ってくれてる。

 

リーガルにも名前を聞かれたので自己紹介したが、彼はエステルの治療のお礼に悩んでいた。

もともとこれはアドリアンが私のことを助けてくれたお礼で、その上アドリアンから綺麗な編紐のリングを貰っているからそんなのいいのに。

 

「父上、母上。家宝の杖か剣はどうでしょう。どちらも二つとない程の貴重品ですが、母上の命を救ってくれたお礼として適切だと思います」

 

アドリアンはお礼について家宝を渡す提案をしており、リーガルもエステルも賛成していた。

私、別に宝物なんかに興味ないんだけど……。

 

実際そう口にするも、返事を聞く前にリーガルは教皇の相手をしなければならないって嫌そうな顔をして出ていった。

教皇……確か魔女狩りを推進している人間だ。

リーガルは顔をしかめていたから、いろんな人が言う通り、やりたくない魔女狩りを強要しているだろう教皇を嫌がってるのかも。

……今度リーガルに会えたら、おじさんが言ってた魔女狩りをしたくないリーガルの個人的な理由も聞いてみたいな。

 

あ、エステルがアドリアンに私を家宝の部屋に連れてくよう言ってる。

でも、本当に受け取ってもいいのかな……?

 

「大丈夫。きっと君に似合うよ。さ、行こう!」

 

私の手をアドリアンが引いていく。

アドリアン、ちょっぴり強引だね。嫌じゃないからついてくけど。

 


「こちらの家宝の杖は、かつて古代神レフガトが使っていたレフガトの杖。神族ならこの杖の真価を引き出せるって言われてるけど、人間には使えない。ただ、金銭には代えられない価値のある杖だよ」

「もう一つの家宝である剣は、古代神への祭事に使われていた聖剣アルメダーク。こちらも神族であれば力を引き出せるって言われているけど、しっかりした作りで普通の武器としても十分に扱える。こちらも杖に並ぶ価値がある物なんだ。どちらがいいか、選んでね」

 

家宝の置いてある部屋で、私はアドリアンから杖と剣の説明を受けている。

 

(ぴゅっ!)

(フェイリア、分かってる)

 

杖の方は、どうしてか私の魔力とそっくりの魔力を宿している。

私なら杖の力を引き出せると思う。

剣の方は、そこまで私と似通った魔力は宿していないけど、それでも魔力を使える私なら剣の力を引き出せるだろう。

 

……どっちにしよう。

魔力の波長としては杖の方が合っているけど……剣の方も多分杖に負けていない……。

うーん……。

 

「個人的な意見だけど、アイールディは剣術が優れているから、実用を考えると剣の方が合っているかもしれないね……」

 

悩んでいる私を見てアドリアンは意見を言う。

……アドリアンには見せてないけど、私の戦闘は魔力剣を主体にしている。

純正の杖だと戦いにくくなるかもしれない。

そう思った私は、「聖剣アルメダーク」を持っていくことにした。

 

「うん、そちらの剣にするんだね。それじゃ、家に教皇が来るかもしれないし、俺は彼に会わないようにしたいから、この部屋の隠し通路を通っていこうか。後、検問を通らずに町へ出入りできる場所を教えておくよ」

 

……?私は魔女だから教皇に会ってはまずいのは分かるけど、アドリアンが教皇に会わないようにしたいのはなんでだろう……?

ちょっと疑問に思いつつも、教皇に鉢合わせるのは良くないので、アドリアンの案内の元、町の外へ他の人に気づかれずに出られる場所まで移動した。

 

……それと、少なくともこれは聞いておかないと。

目的の物が手に入ったアドリアンがもう探検しないのかを。

そして、口にはしないけど、私の所にもう遊びに来ないのかを……。

 

「もう探検しないのかって?いや、俺は普通の素材採取とかでも探検に出かけるし、前に見せてあげた各地の黒い魔力の石の浄化も進めていくから、外に出ないってことは全然ないよ。シューベト以外の村へ様子を見に行ったりもしてるし、シューベトの外にいる友達を訪ねることもあるからね。勿論、アイールディの所にもまた行きたいな」

 

君が嫌じゃなければね、ってアドリアンは笑いながら言ってくれた。

良かった……。また、アドリアンと一緒に遊べるんだね。

今度は私がアドリアンに何か見せてあげたいな……。

……そうだ、地下室にいる人形達を見せてあげよう。

流石に魔力で動かしている所は見せられないけど、アドリアン、喜んでくれるといいな。

 

そんなことを考えていると、町の正門付近が騒がしくなってきた。

特に良く聞こえてくる声はリーガルと、多分教皇って人間の声だ。

2人ともトゲトゲした声で話してる。

 

「アイールディ。多分教皇が町に来ていると思うから、一度家に帰った方がいいと思うよ。あの人、良くない話も沢山聞いているから……」

 

そうだ、アドリアンの言う通りだ。

アドリアンが危惧している内容とは違うと思うけど、魔女の私が魔女狩りを奨めている人間と出会う訳にはいかない。

 

町に邪悪な魔女の匂いが漂っていますね……

 

っ!!あの教皇って人間、この距離で私に気づいた!?

すぐに離れないと……!!

 

「バイバイ」

 

私はアドリアンにお別れの挨拶をし、彼に教えてもらった町の出入り口からシューベトを大急ぎで抜け出した。

 


「この辺に魔力の痕跡があるぞ。へへ、手柄を上げるチャンスだな!」

「よし、この道を調査していくか……おい貴様ら、もっとやる気をだせ!教皇様の命なのだぞ!!」

「……分かってますよ。俺達はこっち側を調べます」

 

どうしよう……。何とか町の外までは来れたけど、エステルを治療するのに魔力を使いすぎたみたい。

この位置だと、空間移動で家にまで届くかギリギリ……。

幸い、私を探している勇士達は何だか仲が悪いみたいで、私の隠れている所を上手く調査できていない。

多分、シューベトの勇士と教皇に従う勇士が喧嘩してるんだ。

でも、勇士の数が多すぎて、森の木陰から一歩も動けない……!

 

「ぴゅ」

(フェイリア、静かにして!!)

 

今、気づかれる訳にはいかない……!

 

「ん、何かの音が……う、うわぁぁあ!!!」

「……あの火柱、それにこの羽音。ということは……」

 

少し離れた所で何かが燃える気配がした後、大きなものが飛んでくる羽音が聞こえた。

……強大な、轟轟と燃え盛る炎の気配が近づいてくる。

私の隠れている木陰のすぐ傍に強い炎熱の気配を発しながら降り立ったのは、体のあちこちが赤熱した鱗に覆われた赤いドラゴンだった。

 

「お、お、お前は……」

『騒がしいな、貴様らは……。何があった』

 

……!あのドラゴン、言葉を話してる……。

 

「フレア殿……。こちらに、魔女が逃げてきませんでしたか?」

『ああ、あの魔力持ちの不審者か。再三止まるよう警告したが、従わずに強行突破しようとしたので、灰も残さず燃やし尽くした』

 

……じゃあ、あのドラゴンが、アドリアンと仲が良いフレアってドラゴン……。

でも、私以外に魔力を持っている人が……?

 

「お、お前が殺したのか!?っく、くそ。せっかくの手柄が、報酬が……!!」

『……私は今、幾度も警告したにもかかわらず杖を向けてきた愚か者を相手にしたせいで著しく機嫌が悪い。文句があるというのなら、貴様らに竜を打ち倒した者という称号を得る機会を与え……根性なしどもめ』

 

赤いドラゴンが唸り声と共に自分と戦うか遠回しに聞こうとすると、あっという間に半分ぐらいの勇士が逃げて行ってしまった。

 

「えーと。フレア殿、お疲れ様です」

『それはお前達に返すべき言葉だな。魔女狩りなどというくだらないことに無理やり駆り出されたのだから』

「そっすね。ほんともう、嫌になりますよ。西海岸への工事や救荒作物の栽培の方が皆にとってずっと重要だってのに……」

『まあ、そうだろうな』

 

フレアは体から発していた炎熱の気配を収め、おじさんと同じ意匠の服を着た勇士達と談笑している。

私を案内してくれた子達の話から分かってはいたけど、フレアと町の人間はやっぱり仲が良いんだ……。

 

『さて、お前達も一旦戻ってはどうだ?今言った通り、()()()()()()()()()()。魔女狩りを切り上げる言い分として十分だろう。これ以上教皇のままごとに付き合うこともあるまい』

「ええ、()()()()()()()()()()。フレア殿、ありがとうございました」

 

この場に残っていたシューベトの勇士達もフレアに一礼し、町の方へ去っていった。

でも最後、なんだかお互い笑いをこらえながらの会話だったような……。

 

『……さて、勇士達は全員去った。出て来ても大丈夫だぞ。アドリアンの新しい友達よ』

 

あ……。このドラゴン、もしかして、私を助けるために……?

恐る恐る木陰から出て、赤いドラゴン・フレアと正対する。

 

『知っているかもしれないが、私はマグリックドラゴンのフレアだ。私もお前の名前を耳にしてはいるが、改めて、お前の口から聞かせてくれるか?』

 

「……アイールディ。あの、助けてくれてありがとう。でも、どうして……?」

 

私、フレアとは初対面のはずなのに。

……そういえば、フレアは私のことを「アドリアンの新しい友達」って言っていた。

もしかして……。

 

『以前アドリアンから新しく友達になったというお前の名前と容貌を聞いていてな。お前が困っていたら助けてあげてほしいとアドリアンに頼まれていたのさ。実際困っているようだったから、勇士達を退かせるために魔女を焼いたと一芝居打たせてもらった』

 

やっぱり……。アドリアン、ありがとう……。

で、でも、アドリアンの友達であるフレアに、私が魔女であることを知られてしまった……。

 

「あ、あの、フレア。お願いが、あるの」

 

『む、家に送ってほしいのか?そのぐらいであれば問題ないが……』

 

「ち、違うの。家にはもう少し近づけば空間移動で飛んでいける。私が魔女だってこと、アドリアンに内緒にしてほしいの」

 

私が魔女狩りの対象になっていることをフレアがアドリアンに話してしまったら、アドリアンに私が魔女だってことがバレてしまう……!

アドリアンが私に会いに来なくなってしまうのは、嫌……!

 

『心配している内容は概ね予想できるし、お前が追われ身であることをアドリアンに黙っているのは別に構わないが……。アドリアンはお前以外にも、神族……つまり、今魔女と呼ばれている者達にも友達が何人もいるぞ?私もだが』

 

…………え。ほ、本当……?

 

『ああ、間違いない。何年も前から付き合いがあるしな。だから、魔女として追われていることが知られようと、あるいはお前が自分から伝えても、アドリアンは何も気にしないと思うぞ』

 

……それが、本当なら……私はこれからもアドリアンと……。

 

『私の言葉だけでは心配が拭えないのならば、アドリアンのことを教えてくれそうな人に聞くのも良いかもしれない。恐らく、私と似たようなことを言うと思うがな。少なくとも、今はお前の願い通り、お前が教皇に追われる身であることを、私からはアドリアンに話さないようにしよう』

 

「う、うん。ありがとう……」

 

アドリアンのことを相談できそうな人……そうだ、おじさんがいた。

おじさんに一度話をして、それから考えてみよう。

 

『そろそろ私も戻るとしよう。繰り返しになるが、アドリアンは神族かどうか、魔女かどうかでお前に対する態度を変えることはない。彼を信じて頼っても問題はあるまい。無論、無理強いはしないが。では、また会おう、アイールディ』

 

そう言い残し、フレアはこの場から飛び去っていった。

私もこれ以上の追撃を避けるため、直ぐに家により近い位置へと移動し、残りの魔力を振り絞って空間移動を行い、無事家に帰ることができた。

 

疲労感のあまり、私は家に着くや否や直ぐにクッションの上に倒れ込む。

馬車引きさんのこと、町を案内してくれた子達のこと、ヨハネスのこと、シューベトを治めるアドリアンの両親のこと、人間なのに強い力を感じた教皇のこと、ドラゴンのフレアのこと、そしてアドリアンのこと……。

今日出会った人達とのやり取りが頭の中をグルグル回るうちに、私はあっという間に眠りに落ちていった。




エステルは秘密基地の存在について知らないため、転生アドリアン君が過労やワーカーホリックになっていないか本気で心配しています。
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