チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

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47話 アイールディを晩餐に誘おう+再びアイールディの家を訪ねよう

アイールディがシューベトを訪ねた翌日、人払いを済ませた部屋の中、俺は古代神の後継・アイールディが外部へ認知されたことを根拠にデルカル大陸での魔女狩りをそろそろ終わらせるべく動き始めることを父上と母上に提案し、無事二人から了承を貰えた。

 

そして3人での相談の結果、しばらくは教皇派拠点に近いジーヴ村を中心に教皇に従う連中の情報収集を行うことに決まった。

恐らくは、斥候として優れたベリータさんが中心となって情報を集めていくことになるだろう。

勿論サポートをするシューベト勇士も複数人彼女に付き従うだろうけどね。

ジーヴ村のデルカル大陸支援隊ともベリータさんが協力できるよう、俺からルイスさんに予め話を通しておこう。

 

今日の活動は、ルイスさんに情報収集の件を伝えた後になるが、魔女が見つかったということでシューベト領内に活発に不法侵入している教皇派の勇士達について、フレアやシューベト勇士の皆と協力して領内から追っ払っていくとしようか。

余裕があればカルダリア洞窟と氷の洞窟で素材採取もしようかな。

 

アイールディのおかげで母上も完全に復調され、憂いとなる要素の一つが消えたので心は晴れやかだ。

今度は何故か父上の方で考え込む姿を散見されるようになったのがちょっと気になるけどね。

 

何にせよ、今日も頑張っていこうか。

 


魔女狩り終結を目指して動き始めてしばらくしたある日、「古代神の後継の活動を掣肘するつもりはないが、足並みを揃えられる所は揃えておきたい」という話が父上から持ち出され、母上が「それなら、アイールディちゃんと一緒に晩餐でも取りながらお話するのはどうかしら?」と提案があった。

 

……確かにいい案かもしれない。

デメリットとして、アイールディが神族であるのをこちらが認識していると彼女に伝える必要があるが……。

ただ、「教皇に察知された以上、こちらが気付くのもおかしくはあるまい」という父上の意見も正しい。晩餐の場でアイールディの素性について伝え、サポートできる所はしていく旨を伝えることを俺も了承した。

試練の件とかがあるから、大々的なものは止めた方がいいだろうけどね。

魔女狩り終結まで、手すきの時に俺とフレアがあの子の希望を聞きながら支援するのが丸いんじゃないかな。

 

それと、晩餐はアイールディの都合がいい時に、ということで、俺が彼女に招待する旨を伝えに行くことになった。

まあ、彼女の家を知っているのは俺だけだから当然の割り振りではある。

丁度アイールディのために取り寄せていた羽毛布団と羽毛枕も届いているので、今日はこれも一緒に持って行くとしよう。

大陸渡りの行商人さんとの伝手でどちらも最高品質のものを用意できたしね。

 

それでは彼女の家で提供するおやつも含めて荷造りを済ませてから、霧の森へ出発しようか。

 


フレアに送ってもらい、無事に霧の森の入り口に着いた。

道を阻む魔物を排除しながら森の中を進んでいく。

……これまでのパターン通りなら……ああ、やっぱり森の奥から足音がする……。

 

「あ、アドリアンだ」

 

もう驚かなくなってきたけど、またアイールディと出会うことができた。

彼女に挨拶をした後、俺の家で晩餐に招待したいと伝える。

 

「分かった。いつ?」

 

……即答かぁ。この子の警戒度的な意味で逆に心配だな……。

まあ信頼してもらえていると好意的に考えよう。

時期については、今日はアイールディに約束していたものを彼女の家に運ぶので、晩餐の準備をするよう声掛けできる明日以降ならいつでも、と回答すると、

 

「約束の……ええと、確か、布団と枕……。じゃあ明日行く」

 

とのお返事だった。

それなら今日は帰ったら、明日アイールディが来る旨を父上や母上と共有しよう。

 

「アドリアン。私の家に来るなら、地下室見る?人形あるよ、たくさん」

 

おや、珍しいお誘いだ。

もしかしたら、人形がアイールディにとって大切なものなのかもしれない。

友達として認めてくれたから、見せてくれるのかもしれないね。

せっかくだし、この子のお言葉に甘えようか。

 

アイールディの申し出に頷き、そのまま俺達は並んで彼女の家に歩いていくのだった。

 


アイールディが俺を家に入れる準備を終わらせた後、再び彼女の家に上がらせてもらう。

持ってきた布団と枕を彼女の寝床であるクッションに設置し、アイールディに使い方を教えてあげる。

後は夜寝る時に寝具の効果を試してもらうとしよう。

布団と枕は前世で言うアイダーダウンの羽毛に相当する物を使っているから、アイールディも気に入ってくれるといいな。

 

寝具の設置を終えた後は、アイールディの案内の元、地下室に移動する。

……凄い数の人形だな。壁の端には人形の素体がずらっと並んでおり、部屋のあちこちに完成している人形が配置されている。

岩ゴーレムみたいな人形、巨人のような人形、白いライオンのような人形はとても大きい。

……アイールディの魔力を完成している人形から感じるから、きっと魔力で動かすんだろうな。

空間移動の魔法を応用して、人形を戦闘に呼び出せるのかもしれないね。

 

あと、少々気になることとして、地下室の奥にも部屋がある。

部屋の奥に向けて気配を探ると、更なる地下からどうも黒い魔力の波動が籠っているようだ。

……何らかの危険物を家の地下に保管している可能性があるから、一応気を付けておこう。

 

「じゃあアドリアン、皆を紹介するね」

 

おっと、アイールディが人形について説明してくれるみたいだ。

 

「この子はエミリア。小さいけど、真面目で一生懸命な子。こっちの子はララ。ピンクの髪がかわいいの。それと、応援するのが得意。この子は……」

 

アイールディは饒舌に人形について説明していく。

森でも思った通り、この人形達はアイールディにとっての宝物なのだろう。

アイールディに許可を貰って人形の子達の頭を撫で、挨拶をしていく。

コミュニケーションで大事なのは、相手が大切にしているものを尊重することだからね。

 

そうそう、アイールディの頭の上に乗っている黒くて四角い人形についても紹介してもらった。

「失敗作だからフェイリアって名付けた」ってアイールディは言っていて、流石にその名前はどうよと思ったけどね……。

名前はともかく、いつも一緒にいるからアイールディのお気に入り枠なのだろう。

フェイリアにも挨拶し、アイールディに愛想を尽かされないよう努めることをいつも俺のことを見ているだろうこの子に伝えておく。

アイールディはなんだか首を傾げていたけど、俺は何か変なこと言ったかな?

 

ひとしきり人形について紹介してもらった後、地上階に戻る。

 

「アドリアン……。お話、したいことがあるの」

 

ん……?アイールディが真剣な表情でこちらを見ている。

感覚を研ぎ澄ませると、決意・恐れ・期待……それらが混ざり合っている感じだ。

間違いなく、大事な話なのだろう。

襟を正してこの子の話を聴く姿勢を取る。

 

「わ、私……お、追われているの、教皇に。…………ま、ま、魔女だから……」

 

ちょ!?それを自分から言うの!?

俺の中ではアイールディが神族であることは承知の上だけど、この子から言い出すのは完全に想定外だぞ……。

と、とにかくこの発言は俺に対する強い信頼の証で、彼女の存在がセルビス氏に認知された今、相談しても良い相手だと思われているということだ。

絶対に、裏切るわけにはいかない。

俺は彼女に俺を信じてくれたことのお礼と、アイールディに困っていることがあれば力になることを約束する。

 

「……アドリアン、私が魔女でも何とも思わないの?魔女は、他の人を不幸にするって……」

 

え?ああ、この子は追ってくる勇士達にそう言われていたのか。

俺は魔女という呼び名は教皇と彼に付き従う者達が勝手につけた蔑称で、本当の種族名は神族であること、俺は神族の友達も複数人いる上、薬品の調合については大人の神族に習っていたことを教えてあげる。

不幸云々は神族を貶めるために神族を狩りたい人間・心無い人間が勝手に言っているだけで、周りの人間の不幸をこの子が負うのは筋違いであるとも言っておく。

 

「……本当に、私が魔女でも気にしない?私のこと、嫌いにならない?」

 

俺の回答を聞いたアイールディがそう念押ししてくる。

……この子、かなりの不安を抱えていたんだな。

きっと、母上の治療に来てくれたあの日、教皇が連れてきた勇士達から手酷く追い回されたのだろう。

教皇が見ていたせいでシューベトの勇士も協力せざるを得なかったから、人数も凄かったはずだ。

 

少しでもアイールディが安心できるよう俺の手を彼女の手に優しく重ね、彼女が人間でも魔女でも神族でも気にしないこと、母上の恩人であり、俺と母上のために町まで来てくれた優しいアイールディのことを嫌いになったりはしないことをゆっくり伝えてあげる。

あと、魔女じゃなくて本当は神族であることも、もう一度ね。

 

「うん……うん……」

 

アイールディはようやく頷いてくれた。

こんなに優しい子をここまで追い詰めるとか、古代神も酷な方々だよね……。

おそらく、これはこの子に課せられている試練の一つなんだろうけど。

 

タイミングは調整する必要があるけど、魔女狩り、デルカル大陸でもちゃんと終わらせないとな。

既に父上や母上とも話し合っていることでもあるが、このデルカル大陸でも魔女狩りを終わらせるべく動き、アイールディが教皇派の勇士に追い回されなくても済むようすることをこの子に約束する。

 

「……ありがとう、アドリアン」

 

よし、落ち着いたみたいだ。

とはいえ、自分の言葉を反故にしないようしっかり励むとしよう。

 

アイールディが冷静になった所で、俺は彼女に断りを入れ、窯の火を借りて溶けない氷で冷やしながら持ってきた牛乳を鍋に入れて温めてホットミルクにし、一緒に持ってきたチョコレートをパキパキ割って一緒に鍋に放り込む。

後はホットミルクをコップに注げばチョコ入りホットミルクの完成だ。

ミルクにちゃんとチョコを溶かしてホットチョコレートにしてもいいんだけど、こういうのもいけるんだよね。

うんうん、アイールディも美味しそうに飲んでくれてるようで良かった。

 

まだいくらか時間もあるし、チョコ入りホットミルクを飲みながらお話することを提案すると、彼女は無言でも頷いてくれた。

そうだな、アイールディは自己表現・感情表現が苦手だし、今日はこの子が俺に聞きたいことをメインに話をしていく形にしようか。

……勘だけど、俺がこの子に普段何をやってたかを聞いても、「調合をしてた」「修練をしてた」「人形を作ってた」ぐらいで会話が終わっちゃいそうな気がするし……。

 

「じゃあ、アドリアンの友達で、フレアのことを知りたい」

 

おっ、フレアのことか。

勇士による追撃の件でアイールディを助けたからやっぱり気になるんだね。

じゃあマグリックドラゴンの特徴を交えながら、フレアについて教えてあげようかな。

 

俺はアイールディの希望に応え、時間の許す限りマグリックドラゴン・フレアについてお話してあげるのだった。

 


別れ際、明日の晩餐について、アイールディが一人で行くか俺と一緒に行くかを確認すると、

 

「それならアドリアンと一緒に行く」

 

ということだったので、明日も今日と同じルートで俺が霧の森に来ることを約束し、アイールディとお別れした。

 

さて、帰ったら父上や母上と晩餐の件について約束を取り付けたことを伝えないと。

あと家のコックにも、明日の夕食に客人が来ることと、食器の扱いに慣れていなくても食べやすい料理を晩餐に出すように言っておこうか。

 

 

……アイールディはきっと今回勇士達に大規模な魔女狩りを受けたように、今後も苦しい試練があるのだろう。

古代神からの依頼となる育成補助の件もそうだけど、あの子からも直接相談を受けた以上、魔女狩り終結まで上手くサポートしてあげられるといいな……。

 




転生アドリアン君による大陸渡りの行商人達との縁に加え、黄金芋の輸出によりバベリア大陸富裕層の富がシューベトに流れているため、本作のシューベトは原作よりも裕福です。
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