チート転生アドリアン君 作:ブロンズ探検家
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強力な力を持っていた教皇への恐れや、アドリアンに私が魔女だと知られた時に彼から嫌われないかという不安を払うために、私はしばらく修練に集中していた。
少し心が落ち着いた後、私はシューべロードに行き、おじさんにアドリアンのことに詳しいか尋ねてみた。
「アドリアン様のことは勿論知っているよ。アドリアン様に剣の基礎を教えたのは私なんだ。とはいえ、私が教師にならずとも、アドリアン様は大成していただろうがね」
そういえば、アドリアン、泉の大きな魔物相手に対抗できるぐらい強いんだった。
人間の中でも、とびっきりの才能があると思う。
おじさんはアドリアンのことを知っているみたいだから、フレアの勧めの通り、アドリアンがどんな人かを彼に聞いてみよう。
「……ふむ、アドリアン様の友達である、ドラゴンのフレアに魔女であることを知られてしまったと。確かに、あのような騒ぎがあればアドリアン様を含めた人達も君に勘づくのは時間の問題ではあるか。そして、アドリアン様に嫌われてしまうことを心配しているんだね」
フレアもそうだったけど、私の心配、見透かされてる……。
「まず、君が知っているアドリアン様のことを思い返してご覧」
……とっても優しい人。あと、探検家で、領主の息子。
「そうだな。だが、どんな立場の人も複数の顔を持つ。凶悪な犯罪者が、子どもの前では優しい父親になるように」
「シューベトは魔女狩りに消極的だが、仮にアドリアン様が領主の息子として教皇に協力し、大陸中の魔女を狩り尽くしているとしても、君の前ではいつも優しいというのならば……。君が人間でも魔女でも、彼は君の前ではずっと優しいままだ。君にとって、優しい姿の彼が、本当のアドリアン様なのだろう?」
人間であっても魔女であっても、私にとってアドリアンは優しいまま……。
おじさんも、フレアと同じこと言ってる。
それに、アドリアンも教皇に不信感があるようだった。
アドリアンが魔女狩りするっていうのは……多分ないんだろう。
それなら……。
「うむ、表情が明るくなった。頑張って生き残り、アドリアン様に会ってみるといい。君の不安が晴れることを願っているよ」
おじさんはそう言い残して去っていった。
……今度アドリアンが会いに来た時に、私が魔女だって打ち明けてみよう。
不安はまだあるけど……でも、アドリアンを私の家に招いた時みたいに、アドリアンのこと、また信じてみよう。
おじさんに相談をした翌日、私は魔法調合を少し行い、森の外で素材集めを行っている。
アドリアン、また来てくれないかなと思いながら森の出口方面に足を向けると、足音が近づいてくる。
……近づいてきたのは、私が会いたかったアドリアンだった。
「アイールディ、こんにちは!」
挨拶をして近づいてくる彼に私も駆け寄る。
今日はどうしたんだろう。
「この前俺の家にアイールディが来てくれた時はバタバタしていたじゃないか。改めて、俺達の家で晩餐でもどうかなって招待に来たんだ」
アドリアンの家に遊びに行く……晩餐は一緒に夕食……うん、いいかも。
私はすぐにアドリアンの申し出を了承する。
「そ、即答だね。話が早いけど……。時期については、今日は約束のものをアイールディの家に持って行くから、晩餐の準備ができる明日以降で、君の都合の良い日を教えてほしいな」
約束……あ、寝る時に使う布団と枕って道具のことだね。
ちょっと大きな袋を背中にしょっているからきっとそこに布団と枕が入っているんだろう。
晩餐の日程だけど、絶対やらなければいけない用事なんてないし、今一番やりたいことはアドリアンとの晩餐だから、一番早い明日とアドリアンに返事をする。
「分かった。じゃあ明日アイールディが来ることを父上と母上に伝えておくよ」
そっか。アドリアンの家はリーガルとエステルもいるんだった。
でも、シューベト勇士達の動きや話からして、魔女狩りを嫌がっているのは本当みたいだから、教皇達がいなければ多分大丈夫。
あ、そうだ、今日はアドリアンがまた私の家に遊びに来てくれるんだし、前に予定していた通り、地下室にいる私の人形達をアドリアンに見せてあげよう。
……私も人形達に勇気を貰った後は、私が秘密にしていたこと、アドリアンに話そう……やっぱり不安だけど。
私のお誘いを受けてくれたアドリアンを家の中に案内する。
勿論、今は前みたいに私が魔女であることを知られないよう準備をした後で。
家に上がったアドリアンは、前に持ってくると約束していた枕と布団を私の寝床であるクッションの上に置いてくれた。
布団と枕に触れてみると、どっちもふわふわしていて凄く触り心地がいい。
この手触りだけでも素敵なものだと思う。
でも、枕は寝る時に頭を置く場所として使うもので、布団は同じく寝る時に体の上にかけて使うんだって。
「枕の上に頭を置くと眠りやすくなるし、布団があると体を暖かくして寝られるんだよ」
そうアドリアンが教えてくれた。
今日寝る時は、忘れずに2つとも使ってみよう。
布団と枕の設置が終わった後は、アドリアンを地下室に案内し、私の人形達を紹介してあげた。
私が大切にしている子達だから、自然と話が進んでいく。
アドリアンも優しい表情で一つ一つ人形達を撫でながら声をかけていたので、きっと皆も喜んでいる。
……アドリアンに頭を撫でてもらってるこの子達が、ちょっと羨ましかったのは内緒だ。
あと、いつも私と一緒にいるフェイリアについても改めてアドリアンに紹介しておく。
アドリアンは名前で何だか苦笑いしていたけど、フェイリアにも挨拶してくれた。
アドリアンはフェイリアに「君の友達であるアイールディに愛想を尽かされないように努めるよ」って言っていたけど、正直な所、どうしてそんなことをいうのか不思議だなって思った。
愛想を尽かすって、嫌いになるってことだよね。
アドリアンは他のどの人間よりも優しくて、私の人形達にも優しく接してくれる、人形よりも好きな私の一番の友達。
私がアドリアンに愛想を尽かすことなんてないのに。
アドリアン、結構心配性なのかな?
嫌われてしまうかを怖がっているのは魔女である私の方なのに……。
でも、ここで皆と触れ合うアドリアンの様子と、多分、私を応援してくれている人形達を見て、一歩踏み出す決意が固まった。
……上の階に戻って、アドリアンに私の秘密を打ち明けてみよう。
「ありがとう。俺を信じて打ち明けてくれて。俺は君以外にも神族……今魔女として追われている人達を母上やヨハネスさん、それとフレアとも協力して支援している。これは領主である父上も黙認していることだ。困っていることがあったら力になるから、遠慮しないで相談してね」
……拍子抜けするほどあっさりアドリアンは私が魔女であることを受け入れた。
えっと、アドリアンはそれで大丈夫なの?魔女は人間を不幸にするって……。
「そもそも魔女っていう呼び名自体が、教皇セルビスと彼に従う人達が勝手につけた蔑称だよ。もう何度か聞いているかもしれないけど、君達の本当の種族名は神族だ。俺は支援している神族の子達に友達がいるし、前見せた浄化剤を始めとする薬品の調合に関する基礎的な知識は、大人の神族に習ったものなんだよ。それでも、俺は不幸になってないよね?」
不幸だなんだは神族を狩りたい人間や心無い人間が言ってるだけだから、アイールディが背負おうとすること自体が間違ってるよ、ともアドリアンは言っている。
……ちょっとずつ、体の中を暖かいものが流れていく気がする。
私を苛んでいた不安が溶けていく。
しっかり不安を払いたいから、最後にもう一度だけ、私のことを嫌いにならないかアドリアンに聞いてみる。
「俺は君が人間でも魔女でも神族でも気にしない。君は母上の恩人で、俺の友達だと思ってる。
危ないはずなのに、俺達の為に一人で人間の町にまで来てくれた優しい君のことを、嫌いになることはないよ。それと、魔女ではなく、本当は神族だからね」
アドリアンは私に自分の手を重ね、そう言い切った。
彼の手と心から伝わる暖かさが、私の不安をちゃんと消してくれた。
全ての人間が私を嫌っている訳ではないと、やっと、信じることができた。
「アイールディ。これからはシューベトの次期領主としても、デルカル大陸で魔女狩りを終わらせるために動いていくよ。君達が教皇派の連中に追い回されずに済むようにしてみせる」
でもとりあえずは、領内の不法侵入した教皇派の勇士を追っ払う活動をしっかりして、なるべく霧の森に勇士が来ないようにする所からかなって苦笑いしながら、アドリアンはそう言ってくれた。
……ありがとう、アドリアン。
アドリアンが帰るまでまだ時間があるということで、彼は窯の火を使って温かい飲み物を入れてくれた。
牛乳という飲み物を温め、その中にチョコレートというお菓子を混ぜているんだって。
……うん、凄くいい味。
このチョコレートっていうのはそのままでもほんの少しの苦みと甘さが美味しいけど、ミルクと一緒に溶かしながら飲み込むと前に飲んだココアみたいに優しい感じになる。
「アイールディが良ければ、前みたいに話をしようか。何か俺に聞きたいことはある?」
聞きたいこと……じゃあ、前に私を助けてくれたドラゴンのフレアについて教えてもらおう。
「うん、いいよ。まず、彼の種族は……」
フレアは自分で言っていた通りマグリックドラゴンという種族で、強力な炎を操ることができるドラゴンらしい。
若い時は自分の体を焼いちゃうぐらい炎が溢れてしまう欠点があるけど、フレアはひたすら修練を重ねて自力で克服した凄いドラゴンなんだって。
そのままでも強いドラゴンが修練までしているから、物凄く強そうな気配を漂わせていたんだね。
あと、彼は頭がとても良くて人間の言葉を話せるので、町の人達からも慕われているともアドリアンは言っていたけど、初対面の私にも親切にしてくれたし、人気があるのも分かる気がする。
他にも彼のエピソードをいくつか聞かせてもらい、チョコ入りホットミルクが空になったのに合わせて、今日はお開きとなった。
アドリアンは帰る前、晩餐の時は一人でアドリアンの家に来るか、彼が迎えに行くかを聞いてきたので、アドリアンと一緒の時間が長くなるよう、彼と一緒に行きたいと私の希望を伝える。
「それなら、明日も今日と同じルートでアイールディを迎えに行くね。それじゃ、また明日!」
また、明日……。
うん。明日も、これからも、アドリアンと会えるんだ……。
私は家に帰って修練と夕食を済ませてから、アドリアンに貰った枕と布団を使った上で、クッションに体を横たえた。
……とってもふわふわ…………暖かい……アドリアンの手みたい…………。
布団と枕が伝えてくる感触と暖かさを楽しみながら、私はゆっくり意識を手放していった。
アイールディのアドリアン君への好感度は原作でも絶大ですが、本作アドリアン君はアイールディとの交流頻度が原作を上回っている上、コミュニケーションの失点がないため、アイールディの本作アドリアン君への好感度は更に上昇しております。