チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

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本話以降、原作終盤の展開に関係するネタバレが含まれます。
原作未プレイ・未クリアの方はご注意ください。


55話 ルーカスの隠れ家を訪ねよう

アイールディとのピクニックをした翌日、現実時間での就寝前に秘密基地に来た俺はフレアと一緒に日課の訓練を行い、今は自室でゆっくり休憩しながら昨日と今日の出来事に思いを馳せている。

 

シューベト山でアイールディと別れた俺は直ちに残務の消化に手を付け、秘密基地の時間の流れを遅らせる機能も活用し、ピクニック翌日の昼前には全ての仕事を片付けた。

 

仕事を終わらせた時は丁度秘密基地にいたこともあり、バベリア大陸のドラゴンバレーに行って岩石竜達から鉱石を受け取り、更にちょっとだけ黒石窟の浄化を進めた。

そのままフレアと一緒に野外でシチューでも作ってアウトドア料理を楽しもうと思ったんだけど……偶然、凄い出会いがあったんだよな。

 

おっと、体を縮めたフレアが声をかけてきている。

 

『アドリアン、今日の昼にあった神族達との出会いを思い出しているのか?』

 

そうそう。

バベリア大陸のドラゴンバレーで丁度シチューを作っている時に来たんだよな、パイベリーさんとブラックジョーさんが。

びっくりしたのはパイベリーさんは白く光る瞳孔を持つ神族……つまり、純血神族だったことだ。

丁度年齢も10歳前後ぐらいで、魔力の流れから神殿長の加護も2つほど保持していることを察知できたから、彼女がバベリア大陸における神殿長達の後継に違いない。

 

一緒にいた黒くて丸いブサイク鳥(種族名)に見えるブラックジョーさんも、軽く解析すると本来の姿はヌーク種というドラゴンと鳥の中間体の様な大型生物だった。

また、彼はブサイクになる魔法を殻にしてパイベリーさんと酷似した波長の魔力も隠し持っていたから、ブラックジョーさんはパイベリーさんの親……恐らくは神殿長が彼女を守るために遣わせた神官なのだろう。

ただ、彼はパイベリーさんが神族であることを伏せているみたいだから、口にできることが神殿長に制限されているのかもしれない。

勿論ブラックジョーさん自身の気遣いによるものという可能性もあるけどね。

 

俺達はパイベリーさん達と一緒に雑談や食事を楽しみ、ちょっとした餞別や手助けを送って彼女達とお別れしたけど……短い出会いながら、複数の重要な情報が得られた。

 

『教皇が運用している生物兵器のことだな』

 

1つ目はそれだね。

俺達は手助けとしてパイベリーさん達の次なる目的地であるエリシオン神殿まで彼女達を連れていったけど、その際ヌークの死体と洗脳を施された神族に襲撃を受けた。神族の方は逃がしちゃったけどね。

黒い魔力で汚染した死体を兵器として使ってるのは予想がついていたが、神族の方は初耳だったからなぁ。

 

ブラックジョーさんに教えてもらったが、セルビス氏は捕縛して魔力を奪った神族に黒い魔力を利用した改造と洗脳を施し、白装束の戦闘兵器・執行者として運用しているそうだ。

……分かっちゃいたけど、セルビス氏はガチでやばい人だと何度も思い知らされるよ。

神族を洗脳できるなら、人間だって洗脳できるだろうし……。

とりあえず、こちらでも執行者については気をつけておこう。

 

もう一つはパイベリーさんの様子から察することができた内容だが、彼女は心に深い痛手を負いながらも旅を続けていることが、異世界技能に伴う第六感を通して分かっている。

……恐らくあれは喪失の痛み……それも家族か、家族に等しい人を失ったことによる傷だろう。

 

ここで予想できることは、神殿長や古代神が後継に課す試練には心や精神を重視した内容が含まれる、ということだ。

それも、心を深く苛むのを厭わないものを……。

 

アイールディの方も、方向性は違えど心に傷を負う類の試練が課される可能性は極めて大と言わざるを得ない。

ヨハネスさんの提案が試練のトリガーとなっているのなら、以前予想したように、人間の善性と悪性をテーマにした試練をアイールディが乗り越えなければならないという事態は十分あり得る。

あの子と過ごした一週間が、試練を突破する足しになってくれるといいんだけど……。

 

とはいえ、俺はあくまで臨時の育成補助(多分)だ。

寧ろ試練の場を意図せず壊さないように気をつける方が大事かもしれない。

 

『神殿長や古代神の後継は酷な生き方を強いられているな。だが、長い目で見た場合はそれも必要だと古代神達は判断しているのだろう』

 

本当、世の中思うようにいかないことばかりだよね。

せめてアイールディが試練以外の要素で人間の事情に足を引っ張られないよう、できる範囲で気をつけておこう。

まあヨハネスさん辺りが変な無茶振りをしなければ大丈夫だと思う。

 

さて、今日はそろそろ寝ようかな。

明日、俺はアイールディと一緒にルーカスの隠れ家があるワディラムに向かう。

予定通りならそこでパディさんとフィリアもアイールディに紹介できるだろう。

最後の1人であるエイリンの紹介は、集まった皆にエイリンの予定を聞いて、後日都合の良いタイミングでアイールディをマリーの森に連れて行けばいいかな。

 

『明日、私はカルダリア山に物資を届ける予定があるので、それを済ませた後はシューべロードとジーヴ村方面辺りを巡回をしようと思う。そちらも気をつけてな。では、おやすみ、アドリアン』

 

うん、おやすみ、フレア。

 


アイールディをルーカスの隠れ家に案内する日となった。

俺はちょっと大荷物を持って霧の森入り口に向かっている。

というのも、今日の早朝、フレアからこんな依頼があったからだ。

 

『今日持って行く予定だったワディラムへの支援物資を急用で運べなくなったので、代わりに私が運んでほしいとヨハネスが頼んできてな。アドリアンは今日丁度ワディラムに向かうから、ヨハネスの代わりに物資を持って行くことはできるか?』

 

ワディラムへの案内ついでに運べばいいだけなので当然承諾している。

ヨハネスさんも結構忙しいからしょうがないよね。

フレアがワディラムに持って行くと予定していた巡回ルートから大分遠くなるし。

 

うん、アイールディも霧の森入り口で待っていてくれた。

結構早い時間に来たつもりなのになぁ。

何にせよ、待ってくれていたのだから早速ワディラムに行こうか。

 


教皇派勇士に遭遇することなく、リアート村北東にある荒地・ワディラムに到着した。

空間移動の魔法陣が刻まれた祭壇にヨハネスさんが運ぶ予定だった支援物資を置く。

おっと、直ぐ上の高台に物資が転送されたみたいだな。と、いうことは……。

 

「あ、来た来た。いらっしゃい、アドリアン!今日カルダリア山に物資を持ってきてくれたフレアから聞いてるわよ。そっちの子が、霧の森に暮らしている神族ね?あたしはフィリア。秘密の隠れ家にようこそ〜。歓迎するわ」

 

「いや、ここ俺の隠れ家なんだけど。歓迎するのは俺じゃね?」

 

「うっさいわねルーカス。細かいことはいいでしょうが」

 

予想通り、ルーカスとフィリアがいた。

とりあえず二人にアイールディを紹介し、隠れ家前にある空間移動の魔法陣をアイールディにも登録させてもらう。

その後アイールディは空間移動の魔法で、俺はワイヤーフックで各々高台に上り、ルーカス・フィリアと合流した。

お、パディさんも家から出てきたな。

 

「おはようございます、アドリアン君。そちらの子が、霧の森に住む子ですね。初めまして。パディと申します」

 

「うん。私はアイールディ。……何だか、変な感じ。私以外の神族達、初めて見た」

 

2人とも自己紹介しているが、アイールディは自分以外の神族の存在そのものに戸惑っている感じかな。

他の神族の存在をしっかり認知してもらうだけでも、やっぱりこの子を神族の皆と顔合わせさせる意義はあったと思う。

 

「さーて、立ち話も何だし、おしゃべりするなら一旦隠れ家に入ろうぜ。5人も入ると、ちょっと狭いかもしれないけどな!」

 

そうだね。ルーカスの言葉に甘えさせてもらおうか。

 


俺達はルーカスの隠れ家にある丸テーブルを囲み、支援物資のブルーベリーを皆で摘まみながら雑談に花を咲かせている。

 

「んー、アイールディちゃんの暮らしている所に、他の神族は周りにいなかったの?」

 

「うん。私は霧の森で生まれて、人間のおばあちゃんに育てられたの」

 

「霧の森に住んでるってことは、シェザール人の神族ってことか?でも、そんなの聞いたことないしな……」

 

「ふむ……。森の外で暮らしていた人間か神族が君を生み、育ての親であるシェザール人の方に預けた、という可能性もあるかもしれませんね」

 

今は皆でアイールディの環境や出生について話している所だ。

……アイールディは純血神族だから、古代神レフガトが直接霧の森に彼女を生んだと俺は思うけどね。

試練関連に引っかかるとまずいから口にはしないけど。

 

「そういえば、他にも神族はいるの?」

 

アイールディがそう疑問を口にする。

 

「いるよ!俺の妹のエイリンさ。ジーヴ村の北西、守護動物が守るマリーの森か空中にあるマリー神殿で暮らしているよ。俺達の中で一番魔力が多くて特別なのさ。なんたってマリーの泉に魔力を溜めて、枯れたマリーの森を蘇らせるぐらいだからな。流石だろ!イヒヒっ!」

 

ルーカスは妹のエイリンについて自慢げに話している。

実際に森を復活させているのは確かに凄いからね。

情勢次第だが、エイリンがマリーの泉を管理する神殿長に将来なる可能性は十分あると思う。

 

「守護動物が守っている所……。エイリン、私も会える?」

 

「大丈夫だと思うわよ?ただ、アイールディちゃんが森や神殿へ入るのを認めるよう、エイリン自身が守護動物のラガーに伝えてもらう必要はあるだろうけどね」

 

既に許可が下りてるアドリアンなり私達なりがエイリンに言っておけば余裕でしょ、とフィリアが続ける。

 

そう、聞きたかったのはそれだね。

エイリンが確実に森か神殿にいるタイミングを誰か知っているかな。

 

「エイリンは私達の所やルーカスの所に来る予定は直近ではないはずです。いつマリーの森へ行っても大丈夫だと思いますよ」

 

ありがとうパディさん。

そうなると、後はアイールディの予定次第だね。

 

「今日は伝書鳩で手紙のやり取りをする日だし、その手紙も確認すれば間違いないだろ!そろそろ手紙も来る時間だから……あ、来た来た」

 

おっと、鳩が飛んできて……ん?手紙だけじゃなく、赤いリボンを置いていったぞ?

 

「た、大変だ……」

 

ルーカスが青ざめている。……もしや、赤いリボンは危険信号ということ?

 

「そうなんだ!!手紙は何も書いていない……!書く暇もなかったんだ!もしかしたら、教皇の手先が……!!すぐに行くよ、待っててエイリン!!」

 

おおう、ルーカスは止める間もなく空間移動の魔法で行ってしまった。

っていかん。呑気にしてる場合じゃない!

パディさんとフィリアは……。

 

「当然、放ってはおけない。私達も森に飛ぶわ。いいわよね、お父さん!」

 

「ええ、無論です。現状最も安全なはずのマリーの森に起きた危険……一体何が……」

 

まあそうだよね。パディさんとフィリアも魔法で転移していった。

 

「アドリアン。私達も……。ルーカス達、助けないと」

 

うん。俺達も……おや、この羽ばたきは……。

西から高速でフレアが飛んできて俺達の目の前に降り立った。

物凄くナイスタイミングだけど、ジーヴ村の方を巡回していたんじゃ?

 

『ああ、少し話があってな。だが、そちらは急ぎの用事のようだ。どこに連れていけばいい?』

(アドリアン、移動しながらでいいから緊急の話をこちらの方式で伝えさせてくれ。行先はマリーの森であるだろうことは分かっているからな)

 

「フレア……。ありがとう。マリーの森へ連れてって。エイリンが危ないみたいなの!」

 

……!!フレアはマリーの森で起きた事態を把握している、ということか。

加えて、心の繋がりで俺だけに伝えるということは、かなりの異常事態である可能性が高い。

 

移動しながらで、とフレアは言っているから、一旦フレアの背にアイールディ共々乗せてもらい、ジーヴ村方面に移動しながらも同時にフレアと心を通じた会話を続ける。

 

(巡回中にかなり遠目からマリーの森にある木々の隙間を見た限りの話になるのだが、私では理解の及ばない状況だったので、こうして相談に来た。エイリンの状況も私の手に余るからな)

 

ここまで前置きを置くということは、完全に想定外の事態がエイリンに降りかかったということだろう。

フレア、マリーの森で何を見たのかを教えてくれる?

 

(ああ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。私では、本気で意味が分からないのだが……)

 

…………は?

以下幕間と本編を並行して書いていますが、どちらが先に読みたいかを教えていただけるとありがたいです。

  • 魔女の泉Rの主人公、パイベリー視点の幕間
  • 本編次話、マリーの森で起きた事件の考察
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