チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

60 / 84
57話 黒い魔力に侵された魔物達を撃退しよう

『アドリアン、来たか。ラガーから確認したが、やはり彼は許可をしたもの以外は通していないそうだ』

 

「ああ、新たに通したのは、今しがた来た白い肌の神族だけだ。それ以外は、お前達のようにエイリンが通すことを許可したものだけしか来ていない。間違いない」

 

マリーの森入り口に到着した俺は、フレアと巨大な人型の鳥であるラガー神官に森へ来た人について確認を済ませる。

独特に間延びした口調で、ラガー神官はきちんと守護動物の任を果たしていたことを伝えてくれた。

 

まあ、勇士も執行者も来ていないことを確認できたのでそこは安心だ。

集中して森の奥の気配を探ると、エイリンは無事、泉から救出できたようだ。

俺達も一旦合流しようか。執行者の件は神族の皆にも共有する必要があるし。

俺とフレアも森に行く旨をラガー神官に声掛けし、マリーの森へ入らせてもらった。

 


「あ、アド君とフレア君も来たんだね。こんにちは!」

 

「エイリン……お前、ホント呑気だな。死にかけた自覚あるのかよ……」

 

泉の付近ではエイリンを始め、救助に向かった皆も揃っていた。

挨拶を済ませて話を聞くと、パディさんが組んだ命綱的な術式を付与した上でアイールディとルーカスが泉に飛び込み、古代神マリーへ話を通してエイリンを回収したそうだ。

古代神マリーによると、純血神族以外は泉に記憶を吸われてしまうらしく、混血神族であるエイリンは今回の事件前後の記憶を泉の内部にて失ってしまったそうだが、何にせよ命が無事で良かった。

最悪エイリンを引き寄せる類の魔法やアイテムを使用する必要があるかと考えていたからなぁ。

 

「アドリアン、ジーヴ村で、何か今回の事件で関係しそうなこと、分かった?」

 

アイールディがそう聞いてくるので、事件と関わりがないことは承知しつつも、ここにいる全員の警戒を促すために教皇の作った戦闘兵器・執行者について話すことにする。

 

「神族を改造・洗脳した戦闘兵器ですか……。言うまでもなく、非常に危険な相手ですね……」

 

「もしかしたら、エイリンはその執行者って奴に始末されそうになったってことか……?」

 

「むむう。そんなやばい相手が複数出てきたってなると、今までみたいにバラバラに避難していると逆に危険な気もするわね……」

 

皆も執行者の危険度について認知できたようだ。

フィリアが隠れ家を分散している現在の体制を危惧しているが、確かにそうかもしれない。

一旦全員マリーの森かマリー神殿を隠れ家にするのも一つの手であることを伝えたが、エイリンがふと気づいたというように声を上げる。

 

「あれ……?何だか、ずっと遠くから何かが崩れたような音が……」

 

音……?エイリンが向いている方向は東……ジーヴ村がある方角だ。

フレアに目線を送ると彼はすぐに飛び立ち、エイリンの向いている方向を見て来てくれる。

……フレアはすぐに戻って来たな。果たして何が……。

 

『土埃が立っているからはっきりとは見えないが、ジーヴ村がどうやら魔物の襲撃を受けているようだ。しかもリアート砂漠方面の見張り台が派手に崩されているから、大型の魔物が居る可能性が高い』

 

いかん、魔物の襲撃か。

リアート砂漠を根城にしている魔物達が仕掛けてきた可能性が大だな。

ルイスさん達がいるから対抗はできるだろうけど、俺も直ぐに救援に行った方がいい。

フレアに飛び乗り、皆に断りを入れて出発しようとするが、パディさん達に呼び止められた。

 

「アドリアン君、待ってください。状況が状況です。私も協力しましょう」

 

「あたしも行くわよ。ジーヴ村で暮らしていた身でもあるしね」

 

「アドリアン、私も手伝う。一緒に連れてって」

 

「デルカル大陸支援隊の勇士は教皇の手先を抑えてくれてるんだろ?ちょっとぐらい恩返ししとかねーとな」

 

「アド君!エイリンもお手伝いに行きます!頑張っちゃいますよ〜!」

 

え、全員来るの?

そりゃジーヴ村は支援隊がいる以上魔女狩りの危険性は薄いけど、0じゃないんだよ?

一応注意するが、全員引き下がる気はないようだ。

微妙に心配だが……戦力は多いに越したことはないか。

成長したフレアなら多人数でも運ぶことはできるし。

皆がフレアの背に乗ったことを確認し、俺達はジーヴ村に出発した。

 


空を飛ぶことであっという間にジーヴ村に到着したが、リアート砂漠方面の区画から怒号と悲鳴が響き渡っている。

俺達は大急ぎで戦闘音が聞こえる現場に走っていく。

また、フレアはジーヴ村のリアート砂漠方面の出口側に移動してもらい、町にまだ入り込んでいない魔物が居れば倒してもらうことにする。

戦闘区画に到着すると、現場では支援隊の皆が戦っており、戦闘相手は確かにリアート砂漠の魔物だったが……全て黒い魔力に汚染された魔物だった。

しかも、よく見ると黒い魔力に侵された勇士……闇の勇士も相手方に混じっている。

 

もしかして、教皇派が仕掛けてきた……?

いや、考察の前に現場を制圧しよう。

 

まず、機動力に優れたルーカスに小型の魔物の排除、総合バランスが良いアイールディとパディさんに戦闘区画の奥にいるルイスさんが単騎で抑えている巨大な砂漠サソリ達の相手を頼む。

続けてエイリンは固定砲台として皆を援護、フィリアにはエイリンの護衛と魔力回復ポーションによるエイリンの魔力補充、余裕があれば支援隊の援護もお願いする。

そして俺は闇の勇士を担当し、同時に黒い魔力の浄化剤で浄化していくことにする。

 

俺の指示に従い、皆が行動を開始していく。

さて、図らずも神族の皆が力を貸してくれたので戦力は十分だ。早急に終わらせないと。

 


俺達が戦闘に参加してから約20分後、全ての魔物と闇の勇士を撃破し、浄化剤によって黒い魔力の浄化も完了させた。

一部の闇の勇士が肉体ごと浄化されてしまったのが気になったが……。

闇の勇士化していた勇士は装備を回収して牢屋に入れておく。

ただ、全員使い捨ての人員のような気がするから、何も情報は持ってないんだろうな。

 

「ふう……神族の皆さん、アドリアン様、ありがとうございました。負傷者は多いですが、皆さんのおかげで死者は出さずに済みました」

 

支援隊の副官さんが救援に来た俺達にお礼を伝えてくる。

 

「おおー!凄かったぞ!!」

 

「村を守ってくれてありがとな、神族さん!」

 

おっ、村の人達も感謝の言葉をこちらに投げかけてくれているな。

 

「イヒヒっ、照れるな。このぐらいならなんともねぇさ!」

 

ルーカスは満足げに胸を張っている。

でも彼は汚染された砂漠サソリを10匹以上単騎で倒してたからね。

それも逃げ遅れた村人などの戦えない人を狙いそうな個体を優先して。

十全に仕事をこなしてくれたのだから、賞賛を受けて当然だろう。

 

「エイリン、本当に強いのね。魔法の使い分けも上手かった」

 

「えへへ。エイリンは最初は威力の高い魔法しか使えなかったんですけど、パディさんの修練で弱い出力の魔法も使えるようになりましたから!アイ姉ちゃんも、とっても強かったですよ!」

 

エイリンも自己申告の通り、初めはエカールヴェルテルのように魔力の消耗が激しい魔法しか使えなかったけど、パディさん監修の修練を通して魔力のコントロールという弱点をある程度克服し、継戦能力が上昇している。

フィリアのポーション込みだが、最後まで攻撃魔法による支援を途切らせずに戦い抜いていたしね。

 

それにアイールディも霧の森で過ごしていた時と比べてずっと成長している。

魔力剣を主軸にしつつ、そこに人形召喚・魔法を組み合わせた戦闘スタイルで、汚染された巨大サソリを余裕を持って撃破していた。

総合性能は成長途上の現時点でも成人神族のパディさんに次ぐだろう。

 

そういえば、フィリアとパディさんはどこに……と思ったらルイスさんと一緒にいたか。

 

「ああ、アドリアン君。こちらのルイス殿と話していたのですが、私とフィリアはジーヴ村に残って治癒魔法と回復ポーションで負傷した勇士や村人の治療に当たろうと思います」

 

「あたしの得意分野だしね。もうしばらくはここで手伝いをしていくわ」

 

それは頼もしい。

だが、ルイスさんの様子を伺うと、彼は何かを悩んでいるようだ。

ちょっと聞いてみようか。

 

「いえ、ジーヴ村にこうしてリアート砂漠に住む魔物達の襲撃があったのですが、同じくリアート砂漠に面するリアート村は無事なのかと思っていたのです。ですが様子を見に行くにしても、どうもリアート砂漠で砂嵐が起こっており、そちらに偵察を出せず困っていたのですよ」

 

私自身は支援隊の指揮で行けませんので、とルイスさんは続けている。

確かにあちらも何らかの襲撃があってもおかしくないか……。

というかルイスさん本人は砂嵐が起ころうと砂漠を突破できるって暗に言ってますね。

まあ俺も行けるとは思うけど、徒歩では好んで行きたいとは思えないなぁ。

 

「ルーカス、エイリン。ジーヴ村の人間達、とても喜んでる。ジーヴ村とリアート村、両方助ければ、皆、私達をもっと見直してくれると思うの」

 

「んー、ちょい面倒だが、リアート村になんかあったらヨハネスも悲しむか。そんじゃ、もうひと踏ん張り、しようかな!」

 

「エイリンも大丈夫!フィリアの魔力回復ポーションを飲んでるから、まだまだ頑張れます!」

 

アイールディ達も話を聞いていたのか。

しかもルーカス・エイリンを含め、3人ともリアート村の援護に行く気満々だ。

まあ俺もリアート村へ向かうつもりだったけど。

 

だが、砂嵐……周囲の確認がしにくい状況……。

なんだろう。直感だが、何か誘導されている気がするな……。

これは、もしかすると……。

 

俺はフィリアに声をかけ、念のためリアート村に行く3人に予備の魔力回復ポーションを渡すようお願いし、受け入れてもらった。

ついでにフレアにも心の繋がりを通して決定的な危険が迫れば3人を優先して救出するよう事前に伝えておく。

これで何かあっても3人は逃げられるだろう。

 

「感謝を、若き神族達よ。だが、決して無理はしないようにな」

 

「皆死ぬんじゃないわよ。ジーヴ村より戦力少ないんだから。危なくなったら退きなさいよ!」

 

「もしリアート村も魔物達に襲われている場合は、周りを気にしながらの戦闘が続くことになります。肉体の傷はポーションと治癒魔法で癒えていても、精神的な疲労には十分に気を付けてください。冷静に状況を見て下がることも大切ですからね」

 

ルイスさん、フィリア、パディさんの言葉に皆で頷きつつも、俺達は再度フレアの背に乗り、リアート村へ向かった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。