チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

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感想と投票ありがとうございます。
まさか評価バーがつくようになるとは思ってませんでした。
素人の作品ですが、楽しんでいただければ幸いです。


6話 転生特典で救荒作物を手に入れよう

初回の巡回業務で前世のそばに相当する作物を見つけた俺は、学んだ知識やミッションのマップを駆使して野生化した作物を他にもいくつか発見できた。

野草のようなものも複数あったが、特に良さそうだと思えたのがおそらく前世での「キノア」や「ブルーベリー」に相当するものである。

そば・キノア・ブルーベリーはいずれも母上経由で小麦が上手く育てられない土地持ちの農家に送られている。

作物の想定される特徴を事前に共有していたお陰かは分からないが、いずれも順調に育って収穫まで漕ぎつけられたそうだ。

どれも問題なく食べられる上、味も中々良い。

穀物ではないが今回発見したブルーベリーは甘味と酸味のバランスが非常に良く、高品質といって差し支えないため、ジャムなどの加工品にしても美味しそうだ。

デルカル大陸内で飢えから最も遠いシューベト領内であることによる後押しもあるが、初手は大成功と言っていいだろう。

作物の生育速度も異世界故か前世よりも速く、結果が想定より早く分かったのは助かった。

 

実験的でもある初回の栽培を担当していただけた農家の方々には、元々考えていた通り俺も直接出向いてお礼を伝えに行ったが、逆に農家の皆さんから感謝されてしまった。

どうも今まで有効活用できなかった土地の用途が生まれるのは有り難かったみたいだ。

余談だが、この世界は連作障害も前世ほど酷くはないようなので、適地であれば前世より作物の栽培は容易なのかもしれない。その適地が食料をシューベトより必要としているリアート村・ジーヴ村では少ないのが問題だが……。

 

この結果を受けてエステル母上は今回手に入れた作物をリアート村とジーヴ村へ提供する提案をリーガル父上にしたが、想定通り渋い顔をされていた。

俺も作物の発見者としてその場にいたため、もともと予定していた説得を試みる。

実際に泉の加護がない地での耕作記録や栽培ノウハウを蓄積しておく必要があるので、生育記録をこちらに提供させればシューベトにも利益が出る・他村が今を必死に生きる努力をしている中、シューベトは未来に向けて準備できる利点はとても大きい等主張し、何とか受け入れてもらえた。

ただ、「俺が発見した作物を他村で育てる際は収穫量の2割をシューベトに納める」・「耕作記録を提出しなかったり悪意を持って間違った記載を書いた場合は提供した作物を全て回収する」と言った条件を付けられたがまあ仕方ない。

リーガル父上は自身が主軸となってリアート村の先代村長が企てた軍事侵攻を防いだ経験があるため、他村に厳しくなるのはある種当然だろう。

肝となる栽培記録の改竄やサボタージュをされたら流石に庇えないからなぁ……。

 

後、今回発見した作物でシューベトの収量が増えることを担保にし、古くなった備蓄作物や溜め水を他村の支援として提供する案を上手いこと通した母上は流石だな、と思った。

これで最盛期程ではないがリアート村とジーヴ村への支援量は回復するだろう。

 

さて、次は最も食料が不足しているリアート村で栽培可能な作物の捜索を、と行く前にいくつか段階を踏むことにする。

というのも、周囲が砂漠に近い荒地であるリアート村では栽培可能な救荒作物の発見がシューベトよりも困難であることが予想される。

育てられそうな作物が想定より少ない場合の対応策を今から用意しておこうと思う。

幸い転生特典で前世の作物もポイント消費で獲得できるため、仕様確認も兼ねてシューベトでも試してみるつもりである。

 

作物を手に入れる際の具体的な仕様を確認した所、ソート機能などを駆使すれば同じ種類の作物でも甘味が強いもの・収量が多いもの・生育が早いものなどある程度任意の特徴を持つ品種を選べることが分かった。

加えて少し多めにポイントを支払うことで、選択した作物をこの世界に適応した形で呼び出せるらしい。

「この世界に適応した形」という箇所が要領を得ないが、おそらく異世界への環境に適応する形で作物を配置し、前世の生育環境の差異等で栽培不可となる状況をある程度防いでくれるのだろうと当たりをつける。

害になるとは思えないので異世界適応機能をオンにし、目を付けていた作物である「さつまいも」を特典取得画面から選択する。

必要ポイントは多くなったが、差分を取りたいのでさつまいもの品種は2つ選んだ。

一つは収量が多いもの、もう一つは味を優先したものを指定している。

後者はサンプル画像の色合い的に多分マロンゴールドと呼ばれる品種に近いと思う。必要ポイントも収量優先の品種より大分高めだったし。

各種設定をしたら最後に作物の配置場所を脳内表示されるマップ上で指定して終了である。

これは巡回ルート付近で特に土地が痩せている所をあえて指定してみたが問題無く選べた。これなら痩せた土地での生育も期待できそうだ。

流石に試す気はないが、火山の火口や雪山を配置場所に選んだらどうなるんだ?マグマイモとかになるんだろうか?……変な妄想は置いておこう。

最終確認を行い、指定通りの設定で作物を呼び出した。

呼び出した品種は明後日の巡回ルートでどちらも回収できるので、明後日まとめて採取してしまおう。

おっとミッションが更新されている。「さつまいもを見つけよう」のミッションが増えたな。ミッション内の指定位置もさっき決めた場所だ。今回の使用ポイント分には流石に届かない報酬量だけど、これも一種のポイントバックなのかもしれない。

 


さて、狙いのブツ(さつまいも)があるルートを通る巡回当日である。

これまでと同様ヘクター教官率いる小隊メンバーと共に巡回業務を進めていく。

ちなみに手隙の時にソード兄弟の訓練に協力していたので兄弟の力量は初回巡回時より大分高くなっている。

ヘクター教官に及ばずとも人に教えるのは不得手ではないので、これが自分の活動に付き合ってくれたお礼替わりになれば幸いだ。

子供に剣を教わる青年達というシュールな絵面になってしまうのは否めないが、今更であると割り切ることにする。

俺自身の特訓も当然継続しているけれど……そろそろ自分の強化のために特典用ポイントを使っても良さそうな気がするな。あと、趣味にも少しは使いたい。

さつまいもの件がひと段落したらどちらも内容を検討していこう。

 

巡回業務を進め、目的の場所に到着する。

以前はこの場所で栽培は出来なかったが野草をいくつか採取したはずだが……あった。

さつまいもの葉っぱが群生しているからここで間違いないだろう。少し離れた所に同じような葉だけど小さめの群生地があるからあっちがマロンゴールド(仮称)の方かな。

 

さつまいもの方に近づいていき、手持ちシャベルと袋を取り出し採取を始める。

周囲警戒をしつつだが交代で、ソード兄弟達も手伝ってくれている。

 

「この作業も手慣れてきましたね」

「この前アドリアン様とここに来た時は野草優先でこの植物には見向きもしなかったけど、地面の下に食べられそうな箇所があるやつだったんだな」

「確かに、どことなくじゃがいもに似ている気がします」

軽い雑談をしつつ兄弟も作業を進めるが、ソード兄弟との会話に違和感を覚えた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()

 

ソード兄弟に何でもない風を装ってさつまいもが前来た時もここにあったことを確認する形で尋ねてみると、「()()()()()」と回答が返ってきた。

 

もしかして「この世界に適応した形」の意味は……。

家に帰って落ち着いたら植物図鑑を確認しよう。勘が正しければそれで仕様が分かるだろう。

 

思考しつつも無事サンプルを回収し、シューベトに帰還する。

……この後は小隊の皆は誰も他に業務は無く、時間的な余裕があったはずだよな。

少しサンプルを取りすぎてしまったのと自分の好奇心の後押しもあり、一部ふかし芋にでもして皆で試食してみたい旨を提案した所、何だか微笑ましいものを見るような表情で皆に見られたが、手先が器用で料理も得意なブレイドさんが調理して先に試食する条件でヘクター教官から許可をいただけた。(お腹を空かせてるって思われたかな?)

まあ未知の作物扱いではあるから初手で自分が調理したり食べたりする訳にもいかないか。

 

ヘクター教官は報告のため一時席を外し、ソード兄弟の借家にお邪魔する。

小ぶりの芋を鍋で蒸すこと30分、ブレイドさんが試食して問題ない旨確認し、教官が戻られた後に皆で試食会となった。

ブレイドさん曰く「黄金色の方はとんでもなく甘くて美味しかったです」とのことなので、マロンゴールドは期待が持てそうだ。

 

まず収量が多くなるよう設定した一般的なさつまいもだが、前世でも食べていた通りほくほくしており美味しくいただける。

いい味だ、料理にも使いやすそう等々皆で感想を言いつつ、味を優先するよう指定したマロンゴールドも口にする。

うん、ブレイドさんのいう通り、めっちゃ美味いな。

ヘクター教官もソードさんもびっくりしてるよ。

収量優先の奴よりずっと甘みが強いけど、しつこさはなくふんわり甘味が広がる感じだ。

舌触りも素晴らしく、高級品と銘打って問題ないだろうとまで考えたが、ここでふと思う。

 

明らかに高く売れそうなマロンゴールドを他村に提供するのは、母上はともかく父上は許さないのでは、ということを。

……マロンゴールドはシューベトの特産品として売り出す方向に持っていくよう父上と母上に伝えようか。

他村の支援という本来の主旨から外れてしまう結果になるがやむを得ない。

 

芋を食べ終え、調理してくれたブレイドさんを始めとする小隊の皆に試食会に付き合ってくれたお礼を言った後、母上と父上に今日行った作物捜索の顛末を報告に向かう。

マロンゴールドの扱いについても合わせて提案し、母上だけでなく父上もマロンゴールドの栽培を任せる農家の選定に参加する条件で2人から承認をいただけた。

金銭になりそうなレベルで味が良いなんて報告すれば、領主の父上もそりゃ気になるよね。

想定通りの結果とはいかなかったが、収量が多い方のさつまいもを他の救荒作物と同じ条件で他村にも提供することについて父上から許可をいただけたので、最低限必要な成果は抑えられているから良しとしよう。

 

ちなみに父上も母上もマロンゴールドの味が気になっておられたようで、夕食のデザートに家のコックに1品作ってもらうことになった。

前世でいうスイートポテトのような品が出てきたが、きちんと調理したマロンゴールドの味は言うまでもなく素晴らしいものだった。

母上には甘味を堪能していただけたようだし、確かにこの味ならすぐに買い手がつくなと父上も頷いておられたから、マロンゴールドの件もそう悪いことにはならないだろう。

 

 

夕食を済ませた後、巡回時の閃きを忘れないうちに自分の部屋にある本棚からいくつか植物図鑑を取り出してパラパラとページをめくっていく。

……やっぱりあった。

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ただ、他のページと比較して植物の特長などがほとんど載っていない。

 

多分、「この世界に適応した形」で呼び出した作物は、「認知度は低いが、もともとこの世界にあったもの」として配置されるのだろう。

加えて人々の認識と世界状況も一緒にすり替えられるから、「こんなものあったか?」と疑問を抱かれる状況を避けられるということか。

 

特典を活かしやすくする配慮だと思うけど、世界全体に影響を与えている分ちょっと怖くなるな……。

「元からあったもの」になる以上、呼び出した作物が外来種として問題を起こす可能性は低いかもしれないが、それでも必要かどうかよく考えてから使った方が良いだろう。

 

ただ、呼び出した作物を指定した場所で元々生育していたことにできる以上、荒地だろうと砂漠だろうと作物を呼び出せればその環境に適応できることが確定するのはやはり大きい。

少なくともリアート村では絶対必要になる機能だろう。

転生特典を使った自分の強化内容も考えるけど、リアート村用に取得する作物も見繕うか。

せめて砂漠にあっても不自然ではない奴にしよう……。




転生アドリアン君が考察した通り、
「この世界に適応した形」で作物を取得した場合、呼び出した作物は「もともとこの世界にあったが特に活用されていなかったもの」として指定位置に配置されます。
呼び出しに合わせて認識すり替えを含めた世界の改変も起こるため、神々も呼び出されたものが異世界産であると認知できません。
これは作物・家畜・魚・鉱石など環境依存のものを呼び出す時限定の機能で、特典で取得した能力や装備、アイテム等には適用されないものとします。
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