チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

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70話 誓願の予約を取りに行こう その1

誓願を予約を取りに行く当日翌朝、朝食を済ませた俺は母上から受け取った委任状を含めた荷物を持ってシューベト正門前にあるフレアの寝床に来ている。

ああ、5分もしないうちにヨハネスさんも来てくれたか。

 

「ではフレアさん、かなりの移動距離になりますが、バベリア大陸までお願いします」

 

『任せてくれ。マニル島や各地の無人島で休息を取りつつ進むようアドリアンから聞いている。準備が良ければ出発するが、二人とも問題ないか?』

 

俺もヨハネスさんも忘れ物はない。2人揃って問題ないことを伝え、フレアの背に乗る。

 

『よし、では行くとしようか』

 

事前にフレアへ伝えていた通り、高機動形態は使わず、しかしヨハネスさんの負担にならないだろう範囲の最高速で、俺達はバベリア大陸へ出発した。

 


「ふう……。休憩を挟みながらでも、船よりも遥かに早く、かつ安全に他大陸に辿り着けるのは本当にありがたいですね。フレアさん、ありがとうございます」

 

魔物に襲われることはなく、天候にも恵まれ、休憩や持参した昼食を挟みつつも、昼過ぎにはバベリア町の郊外に辿り着いた。

ヨハネスさんも多少の疲れはあるが、体調に問題はなさそうだ。

 

『では、私はこちらの大陸の人々を驚かせないよう、もう少し町から離れた所に移動後、待機しているとしよう。遠方に移動する時は声を掛けてくれ』

(心を通じた会話でも応じられる距離にはいるようにするから、必要であればそちらでもな)

 

ありがとうフレア。

少し離れた場所へ飛び去るフレアを見送った後、俺達はバベリア町へ移動を開始する。

そうだ、変なトラブルを避けるために、町の門まで辿り着いたら、門衛を務める勇士の人に、俺達がデルカル大陸からドラゴンに乗ってきているということと、どういう目的で来たのかも予め説明しておこう。

 


委任状を見せつつ門衛の勇士達への説明を行い、無事に町に入れてもらえることができた。

ドラゴンに乗って来たという件では、「お前マジかよ……」と戦慄した目で見る勇士と、「あっ!シューベト領主のご子息か!バベリア大陸まで来たんですね!」とこちらを知っている反応の勇士と半々ぐらいで別れていたのが印象的だったな。

しかし、ずっと前にトランさんと話した時も似たような感想を抱いたが、別大陸を治める領主はともかく、息子のことを知っている人がこっちにもいるのか……。

 

「恐らくですが、国王陛下から直接褒賞を頂いた件でバベリア大陸にも話が回ったのだと思いますよ。加えて、現代に再び現れたドラゴンを従えるバベリア貴族という点で、より人々の話題に上りやすくなっているのでしょう」

 

ヨハネスさんがバベリア町の勇士が俺を知っている理由を推測してくれた。

確かに、俺は話のネタになりやすい経歴をしているか。

 

さて、気を取り直してまずは宿を2名分取り、余裕があればアラムート神殿の状況も確認しておこうかな。

一応町にある宿で良さそうな所は目ぼしはつけているから、順番に部屋が空いているか確認していこう。

 


目星をつけていた宿のうち、神殿に一番近い宿は満員だったものの、その次に近く、しっかりした設備の宿が空いていたので、そちらで個室2名分、朝食付きで2泊の予約を取ることができた。

先払いで宿の店員さんにゴールドを支払っておき、フレアの移動速度のおかげで時間もまだ余裕があるのでそのまま俺達はアラムート神殿に向かったが……。

 

「予想はしていましたが、凄い行列ですね……」

 

神殿付近には順番待ちの行列がずらっと伸びている。

アラムート神殿は人間が暮らす町に隣接している唯一の神殿だから、最も人が集まりやすいのは間違いないからなぁ。

魔女狩り前ではここまで並ぶことはなかったんだろうけどね。

少なくとも、今は遠方から来る人は誓願を立てる前に予約必須と見て間違いない。

 

「ええと、一番短いこちらは予約済みである誓願者の列だから違う……予約する際は……良かった、予約用の列はマシですね。アドリアン様、こちらです」

ヨハネスさんの案内に従い、短めの行列に俺達も並ぶ。

 

「アラムート神殿がこの状況だと、予約が取れても時期が大分後ろ倒しになりそうですね……」

 

並んでいる間、ヨハネスさんはそう呟く。

……明日は朝食を取ったら、別の神殿にも予約が取れないか確認に行こうか。

 

「ええ、その方が良さそうです。ただ、エステル様が誓願を立てに行くことを考えると、バベリア町から徒歩や馬車で行きやすい距離の神殿……エリシオン神殿だけにした方がよいでしょう。他の神殿は町から距離があり過ぎますからね」

 

確かに。では明日はエリシオン神殿に向かうとしようか。

 

……列は短いが、それでも会話を終えて待つこと1時間半、俺はヨハネスさんと共に神殿内の小さな一室に案内され、そこで自分の名前、所属、身分がある場合は爵位関連の記述、かつて誓願を立てたことがあるか、自身が誓願者か、違う場合は委任状があるか、立てる誓願は神殿長が必ず拒否するものではないか、以前拒否したものではないか等、数多くの情報を受付用書類にヨハネスさんのチェックを受けながら記載していく。

 

無事に記載が終わった後は何だか疲れている表情をした受付の方に委任状と共に渡す。

そして受付さんのチェックが終わるまでまたしばらく待ち、受付さんから不備がないことを教えていただき、別の神殿でも予約を取りに行くことを説明して委任状を返してもらう。

ヨハネスさんがいないと記載形式がよく分からない箇所が結構あったから、やっぱり彼に同行して貰えてよかったよ。

 

ただ、受付さん曰く、当日誓願に来る人を捌くために予約用の受付担当が少なくなっており、誓願の予約証明発行が明日の午後になってしまうということだった。

1人で予約対応をしていたから、受付さんは疲労困憊って様子だったんだな……。

予約手続きを済ませた人用の待合室もいくつかあるみたいだから、もう一度行列に並べということはないようなのでそこは良かったけど……。

とりあえず、可哀そうな受付対応の人にヨハネスさんと共に感謝の言葉を送った後は、俺達は神殿を後にして適当な店で夕食を取り、宿に戻って休息するのだった。

 


バベリア町来訪から2日目、宿の朝食を取った後は、エリシオン神殿に行くべくヨハネスさんとバベリア町の外へ出発した。

フレアのいる側の出口がエリシオン神殿とは反対側だったので、町の外に出る時に門衛の方から理由を聞かれた際、説明に若干手間取ったけどね。

 

「アラムート様は人格者と伺っていますが、命を与える力を持つというエリシオン様はどのような方なのでしょうか……」

 

フレアの背に乗って移動している際、ヨハネスさんはそんな言葉を零している。

……詳細は省くが、実の娘であるパイベリーさん……本名ルシアさんを死地への旅路に出した方でもあるので、内面は厳しい方である可能性を俺はヨハネスさんに伝えておく。

 

「……娘が相手であっても厳格な判断を下せるお方である、と。応対する際は注意が必要ですね……。今日は会うことはないと思いますが、エステル様がエリシオン神殿で誓願を立てる場合は、今のお話をお伝えした方が良いでしょう」

 

俺もヨハネスさんの意見に同意する。

まあ母上なら、エリシオン神殿長に不快感を与えるようなことは絶対ないだろうけどね。

 

おっと、そろそろ神殿前だ。

神殿に直接フレアで乗り付けるのは失礼になるだろうから、以前パイベリーさんを降ろした丘に降ろしてもらい、そこから歩いてエリシオン神殿へと入る。

 

 

……ふむ、こちらにも神殿の奥に向かって並んでいる人達がかなりいるな。

流石にアラムート神殿の行列よりは短いが。

行くのが容易いアラムート神殿に人が集中するのは仕方ないだろうね。

 

「あん?何だお前かよ。このエリシオン神殿に何の用だ?」

 

おっと、神殿に入って直ぐの手すりにパイベリーさんの部下であるブラックジョーさんがいた。

そうか、彼は多分エリシオン神殿長の神官……此処にいても何もおかしくない。

彼に母上の代理として誓願の予約を取りに来た旨を伝える。

 

「はっ!黒い魔力の浄化剤を作ったとはいえ、エリシオン様の威光が必要なのは他の人間と何も変わらないな。まあ僕は寛大だから、その辺りには目を瞑ってやろう」

 

小馬鹿にする様子でブラックジョーさんはこちらに言葉をかけている。

 

「あ、あの、アドリアン様……?こちらの方は……?」

 

いかんいかん。彼と初対面のヨハネスさんは分からないよね。

ブラックジョーさんはパイベリーさんの部下で、恐らくエリシオン神殿長の神官であることを教えてあげる。

 

「ほう!それを見破るか。お前は見る目があるな。そうだ。僕こそがバベリア大陸第三神殿長なるエリシオン様、そしてその娘のルシア様にお仕えしている神官、バベリアの神官で最も尊く、偉大なアーク様だ」

 

なるほど、ブラックジョーというのは通称のようなもので、本名はアークということか。

最も尊いとかは流石に自称だろうから軽く聞き流しておくとする。

 

「で、お前は母親の代わりに誓願の予約に来たと。そういやお前は領主の息子なんだったか。ふふん、一応顔見知りだし、お前の浄化剤はご主人様の役に立ったから、偉大な僕がエリシオン様に直接日程をお聞きしてきてやる。むせび泣いて感謝するんだな」

 

え?いやそこまでしなくても……と制止する間もなくブラックジョーさんは神殿の奥に飛んで行ってしまった。

 

「あの、アドリアン様。先程のブサイク鳥の方は、本当に神官なのですか……?」

 

ヨハネスさんが胡乱げな視線でこちらに質問してくる。

疑う気持ちは分かるけど、本当だよ。

ぶさいくになる魔法云々は省き、彼は本来の姿と実力を隠しているのだろうとだけ言っておく。

 

「ま、まさか、神官の方への応対態度でも人間を選別している……?エリシオン様はどれほど峻厳な方なのでしょうか……」

 

ヨハネスさんが慄きながら呟く。

うーん、ブラックジョーさんがブサイク鳥(種族名)の姿になっているのは、直感では本人の自業自得だって気がするけど……。

 

ってあれ、空間移動の魔法陣を通してブラックジョーさんがまた目の前に出てきたぞ。

しかも何故かたんこぶを複数こさえている……。

 

お、お前ら、静かに僕の後についてこい。あっちに並んでいる人間に気付かれないように……

 

何だ何だ?

でもブラックジョーさんが小声だけどどこか必死に「早く来てくれ!」と言っているので、ブラックジョーさんに言われた通り、なるべく音を立てないようにヨハネスさんと共に彼についていき、行列から離れた神殿の一室に入る。

 

 

 

「遠いデルカル大陸からよく来てくれたわ。うちのアークが失礼な態度を取ってしまってごめんなさいね」

 

うわぁ……。内心で思わずそんな声を漏らしてしまう。

部屋にいたのは女性の成人神族が一名。

その人は、古代神マリーよりも華やかな民族衣装のような衣服を纏い、体の各所に飾り紐や金のアクセサリーを身に付けている。

丁度パイベリーさんが大人になったような方で、顔の文様、魔力の波長、白く輝く瞳孔は彼女と同じだが……目の前の人が保持している魔力の量はパイベリーさんより桁外れに多い。

 

もう間違いない。

彼女がバベリア大陸の命を司る神、純血神族のエリシオン神殿長だ。

 

「じゃ、じゃあエリシオン様、僕はこの辺で……」

 

「ええ、ご苦労様。この件の折檻はまた後でね」

 

「うう……まだやるんすか……」

 

どこかしょげた様子でブラックジョーさんがフラフラ部屋から退出していく。

やっばい、厳しい人だっていう推測もこの様子だとほぼ黒だ。

本気で会話に注意しないといけないな……。

ヨハネスさんと目線を合わせ、下手なことは言わないようにしようと互いに意思を伝え合っておく。

予約の件だけ話して、穏便に御前を退かないと……。




おまけ
「アーク、黒石窟の完全な浄化を進めてくれていて、あのジュードが溜め込んだ莫大な黒い魔力も払った人に対して、見下すような態度を取っちゃ駄目でしょう!(ドゴン)」

「痛ぁ!?こ、黒石窟はともかく、ジュードの奴が持ってた黒い魔力を浄化したのもあいつだってどこにそんな証拠が」

「黒い魔力を溜めこみやすい黒石窟を含めて、ジュードの蓄えていた黒い魔力が大陸のどこにもない時点で、そのぐらい察しなさい!(ドゴンドゴン)」

「キャー!!わざわざ黒石窟なんて見に行ったりしないですよ~!!」


エリシオン神殿長が厳しそうというのはあくまで本作アドリアン君の推測であり、彼女は敵には無慈悲ですがおおらかで優しい性格です。(コンセプトブック参照)
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