チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

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最終話 最後の満たしを行おう

バベリア大陸から戻って翌日、母上はエイムハード神殿長から受け取った大陸間移動のカードを使い、アラムート神殿にて泉の復活について誓願を立てた。

結果、泉の復活方法について無事回答を頂けたそうだ。

詳細は他者に告げてはいけないということなので、内容を母上からは教えてもらえなかったが……。

 

「アドリアン、貴方は今、付き合っている子や付き合いたい子はいたかしら?」

 

と、アラムート神殿から戻られた後に何故か必死な表情で母上から聞かれたのはびっくりしたけどね。

現状いないって回答したけど、一体何があったんだろう……。

 

それ以外に母上からは何もなかったのでちょっと不審に思ったが、誓願の制約で言えないことがあるのは仕方ないと判断し、誓願後の翌日以降も、俺はとりあえず普段通り政務や黒い魔力の浄化を進めている。

 

それと、神族の皆の様子も合間に確認しているが、ルーカスはマリーの森で、フィリアとパディさんは大分生活が回復・向上したリアート村付近で暮らしており、3人とも時々各町村を回って人々の手伝いをしているらしい。

 

森に居なかったエイリンについてルーカスに聞くと、彼女はアイールディの家を訪ね、アイールディと暫く一緒に遊ぶとのことだ。

デルカル大陸の黒石窟浄化でアイールディの家を通りがかった時も、確かにエイリンの気配が家からしたから間違いないだろう。

加えてパイベリーさんやルナさんの気配もアイールディの家に感じられたので、きっと女の子同士で楽しんでいると判断し、家にお邪魔するのは止めといたけどね。

 

一緒に遊べる友達がこうしてできた以上、今後も試練がありそうなアイールディもきっと充実した人生を送れるだろうから一安心だ。

勿論俺も彼女のことを友達だと思ってるし、また別の機会にアイールディの家に顔を出しておくとしよう。

 

そうそう、3人の神殿長と会った事で、秘密基地のシミュレータで彼らと摸擬戦ができるようになったんだよね。

……分かり切っていたけど、全員メチャクチャ強い。

異世界の剣技、魔法、技能で彼らの特殊能力には対処できるけど、相当鍛えてクリスタルによる能力向上を重ねた現状でも、素の状態では単純にスペックが全く届かず、異界法則の二重重複でもまだ足りない。

異界法則の三重重複の出力でようやく戦闘できるようになって勝率が4割前後、四重重複であれば俺もフレアも出力差で安定して押し切れる、という所か。

相手がシミュレータの再現体ではなく本人であれば、もう少し勝率は落ちるだろうけどね。

転生特典による裏技的な出力向上なしでは、この世界最強であるだろう存在は物凄く分厚い壁なのが良く分かる一幕だった。

 

シミュレータの摸擬戦相手に図らずも非常に高い攻略目標ができたので、求道者気質のある俺とフレアは普段の基地での訓練のモチベーションがぐっと上がった。

目先の目標は異界法則の三重重複での勝率向上を、ということで、最近の俺達は基礎力向上の鍛錬に熱を上げている。

こうやって目指す相手がいるのはやっぱり楽しいよね。

 


さて、母上が誓願を立ててから暫く日にちが過ぎたある日、朝食を済ませた俺は母上に声を掛けられ、ちょっと不思議な頼まれ事をされた。

 

「アドリアン。アイールディちゃんがお話したいことがあるから、マリーの泉まで来てほしいって伝言を受け取っているわ。急ぎの政務も今日はないでしょうから、行ってきてもらってもいいかしら?」

 

え?アイールディが?

俺に直接言いにきてもいいだろうに、なぜそこを指定しているんだ?

 

「大事な話だからかもしれないわね。さ、早めに行ってあげて、アドリアン。私は賛成しているからね」

 

母上はニコニコしながら俺の背中をポンポン叩いた後に執務室に入っていく。

賛成?アイールディの話と関係しているのかな……?

 

自宅を出て、フレアの所に行くと、今度は何とパイベリーさんとルナさんが居た。

アイールディの家にいるのは知っていたけど、どうしたんだろう?

 

「あ、来た来た。アドリアン、アイールディちゃんの所に行くんだよね。あの子の話、ちゃんと聴いて受け入れてあげてね!」

 

「大分恥ずかしい思いをさせられたからね……。断ったりしたらちょっと怒るわよ!」

 

え?いや何の話なの?

いいからいいからって2人はフレアの方に押し出してくるけど……。

 

『うむ。詳細は私も教えてもらえなかったのだ……。ただ、マリーの森に行くことだけは二人から話を聞いた。出発しても大丈夫か?』

 

う、うん。

状況が良く分からないから凄く不安になって来たぞ……。

 


マリーの森入口まで行くと、ラガー神官の手に乗ったエイリンがこちらに向けて手を振っているのを見つけたので、一旦フレアに降りてもらう。

 

「アド君、フレア君、おはよう!アイ姉ちゃんは泉の所にいますから、アド君はお話を聞いてあげてください。素敵な結果を待ってますね!」

 

笑顔のエイリンはそんなことを口にして、森の奥を指し示している。

雰囲気からして俺一人で行ってもらいたいのは分かるので、フレアから降りてマリーの泉に向かうけど……こうして皆が待ち構えている現状からして、母上や他の神族に何らかの協力してもらってるだろうアイールディは、一体俺と何を話したいんだ……?

 


てくてく森を進み、マリーの泉に到着すると、確かに純白の衣装を着たアイールディが居た。

 

「あ、アドリアン。……えっと、お話したいから、こっちに、一緒に座って?」

 

そういいながら、泉の縁取りを指さしているので、彼女の指定に従い、腰かける。

って、アイールディ、もう密着するほど近くに座ってくるね……。

ふとこの子を見ると、頬を染め、ちょっと目を潤ませながら俺の手に自分の手を重ねてくる。

……あれ?このシチュエーションって、まさか……。

 

「好き。私の手を優しく引いてくれるアドリアンの手が好き。くっつくと暖かくて安心できる、アドリアンの背中が好き。アドリアンの綺麗な青い目が好き。アドリアンの表情、全部好き。誰よりも暖かい、アドリアンの心が好き……」

 

非常に整っていると思える顔を上気させながら、とても一生懸命な様子でアイールディは好意の言葉をいくつもいくつも重ねてくる。

 

「アドリアンは、私にとって、かけがえのない人。私が毎日会いたい人。ずっと一緒にいたい人。貴方と一緒にいる所が、私の幸せになれる場所で、貴方を幸せにしたい場所。アドリアンは、私の、愛する人なの……愛してるの……」

 

もしかしないでも、告白だね、うん……。

いや、そこまで言ってもらえるのは嬉しいんだけど……何故突然……?

 

「突然、じゃないと思う。多分初めて会った時から、アドリアンのことはずっと好きだよ?自分でも分かってなかったけど。でも、私だけだと、気持ちを伝えるのが上手くできなくて……手伝ってもらったの」

 

そ、そうなんだ……きっとエイリン・パイベリーさん・ルナさんのことを言ってるんだよね……。

 

「うん。それと、エステルにも私の気持ちのことを相談したの。そうしたら、アドリアンがいいよって言ってくれたら、私のこと、アドリアンの"婚約者"にしてくれるんだって。あと、バベリア大陸の神殿長達もお祝いの贈り物を送ってくれる予定だってエステルが話してたよ」

 

母上が賛成してるって言ってたのはこれ!?

パイベリーさん達も結託してるだろうし、そこまで話が大きくなってくると状況的にもう断れないやーつ!!

何で神殿長も一領主の息子の婚約相手決定にお祝いの品を送るの!?

全く意味が分からないんだけど!?

 

あと、ちょっと失念しかけたけど、アイールディは古代神の後継だよね。

内面も見た目もこんなに素敵な子なんだから、異性として魅力的だと思う気持ちはちゃんとあるけど、そもそも古代神の後継を俺が手折っちゃって大丈夫なの……?

 

……うわぁ、加護から肯定されてる気配がするよ。

しかも、何か古代神レフガトが「うちの子をよろしく」ってサムズアップしているイメージが浮かんだ気もする。

貴方達って縁結びの神じゃなかったと思うけど……。

 

「アドリアン……私の気持ち、伝わった?ア、アドリアンは、わ、私の愛してるって気持ち、受け取って、くれる……?」

 

アイールディは俺の手に重ねた手を震わせ、不安そうな表情をしている。

何か拒否が許されない状況に追い込まれている上、枯れた泉からも返事をしてあげてって念が来てる気がするけど、それでもちゃん答えは決めている。

こんなに一生懸命にこちらを想ってくれる可愛い子を、好きにならない訳がないのだから。

 

古代神達って恋愛脳なのかな、とちょっと心の片隅で思いつつも、俺はアイールディの告白を受け入れ、これからは恋人として、婚約者として、お互いを思い合える関係になろうと返事をした。

 

「……!うん……!嬉しい……!私、アドリアンのこと、もっと好きになるね。アドリアンが、私のこと、好きになれるように頑張る……!」

 

俺の返事を聞き終えた瞬間、これまで見たことがない表情……笑顔になったアイールディは、そのまま俺に抱き着いてきた。

俺もアイールディの好意に相応しい人になって、彼女のことを愛していくと伝えて抱き返してあげる。

 

「相応しい……?アドリアンは、いつだってきらきらして輝いてるよ?」

 

俺に抱き着きながらアイールディはそんな風に言ってくれる。

でも、その辺りは気持ちの問題だから。

アイールディだけ相手のために頑張るのは不公平だしね。

お互いを大事にし、支え合える間柄になるのが、愛し合うってことなんだからと彼女に伝えておく。

 

「うん……!あ、そうだ」

 

アイールディは嬉しそうに返事をして、ますます強く抱き着いてくるけど、何かを思い出した感じで声を上げた。

どうしたの?

 

「えっと、ルナが教えてくれた。キスすると、相手のことを好きな気持ちがもっと大きくなるんだって。そうなの?アドリアン、やったことある?」

 

いや、やったことはないなぁ。

口にはしないけど、前世でも恋人はいなかった筈だから。

それはお互いに好きな人、愛し合う人がやることだからね。

 

「そうなんだ……あ、分かった」

 

そういうと、アイールディは少し顔を動かして、俺と目線を合わせてくる。

 

「私、アドリアンのことを愛してる。アドリアンも、私のことを愛してくれるって言ってた。だから……キスしても、大丈夫だよね?」

 

アイールディは頬を紅潮させつつそんなことを口にする。

言外に、「もっと好きになりたい、もっと好きになってほしい」って言っているね。

でも、それはこれから恋人になる俺も同じ気持ちだ。

 

なんかまた泉の方からこの子に応えてあげてって思念が飛んできてる気がするけど、やっぱり古代神って恋愛脳では?

まあそっちは置いておこう。

大丈夫、とこの子に肯定の返事をし、アイールディのことを想い、大切にするという気持ちをいっぱいに込めて、俺は彼女と唇を触れ合わせる。

柔らかい感触が唇にふんわり広がる……ん?何かアイールディが淡く輝いている……?

 

「……あれ?これは……?」

 

アイールディの方も自分の異変に気が付いたようだ。

何か、封じ込められていた力が解き放たれたような感じだけど……。

 

「この力……『命を与える力』……?」

 

……それは、古代神レフガトが司るものだね。

つまり、古代神レフガトと同じことができるようになったのかな。

 

「うん、そうみたい。何となく、感覚で分かる……私が神殿長になるために、これが私の中に収められていた……。あ、泉が力に反応してる……」

 

そういうと、アイールディは今目覚めたばかりの、命を与える力を持つ波動を泉に流していく。

瞬間、枯れた泉が輝き……古代神マリーの魔力が満ちた水が泉に湛えられた。

マリーの泉が復活した、ということだ。

つまり、後継であるアイールディの命を与える力を泉復活の鍵として古代神が指定していた……?

 

……も、もしかして、古代神レフガトから受け継いだ命を与える力にアイールディが目覚める条件は、彼女が好きな人と結ばれることなの!?

だから誓願を立てた母上に加えて、古代神やパイベリーさん達も妙に熱心に俺達をくっつけようとしてたってこと?

うわ、いい仕事をしたって感じの満足そうな気配を復活したマリーの泉の奥側から感じるから、きっとこの推測は合っている。

まさかそんなことが泉の復活条件だなんて全然予想できなかったよ……。

 

あれ?アイールディが俺のことをちょんちょんと指で突いてくる。

 

「えっとね、後でモレルの泉にも、同じことをするけど……。さっきのキス、私とアドリアンの気持ちが重なった感じで、とっても嬉しかったから……もっとして」

 

そういってこの子は目を瞑って顔をこちらに向け、おねだりしてくる。

う、うん……。アイールディはマイペースだね。

でも、今はもう難しいことは忘れて、俺の腕の中にいる恋人の可愛らしい要望に応えようかな。

俺はアイールディが満足するまで互いの唇を重ね合わせた。

 


after:シューベト領主宅での会話

 

「エステル様。リアート村で鉱山が崩落したとのことです。負傷者についてはパディさんとフィリアさんが対応してくれていますが、ポーションの素材をもう少し回してほしいという連絡がきましたので、今日送る支援物資に追加するようにしますね」

 

「ええ、お願いね、ヨハネス君」

 

「ベリータ中隊長の斥候隊から報告です!ジーヴ村近隣に巨大な魔物が現れました!ルイス総隊長はシューベト西海岸にて指揮を取っていて動けないので、対応できる方はお願いします!」

 

「分かった。魔物、退治しておくね」

 

「おっと、じゃあ今日はデートに誘うのは……」

 

「うん、断るよ。魔物退治に行くから。……あ、いけない、こういう言い方じゃなくて……

 

「了解。じゃあ俺は城に行って……」

 

「エイリン、帰還です!お兄ちゃんと一緒に埠頭に現れた魔物を倒してきました!ついでにジーヴ村の近くにいたおっきな魔物も退治しましたよ~」

 

「俺らって、割と役割分担できてるよなー」

 

「あら、ありがとうルーカス君、エイリンちゃん。ふふ、時間が空いたわね、アイールディちゃん」

 

「……!ま、待って、アドリアン」

 

「ん?」

 

「えっと、本当は、一緒にいたかったの。それでね、魔物、もうエイリン達が退治してくれた。だから……えっと……」

 

「そっか。それじゃあ……やっぱり、一緒にお出かけするかい?」

 

「うん!」

 




以上、本作の本編は完結です。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます。
後日、ストーリークリア後的な場面の一幕を2話、それとちょっとした後書き・設定メモが混ざったようなものを投稿する予定です。

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