チート転生アドリアン君   作:ブロンズ探検家

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引き続きヨハネスの視点です。
ifルートを進んだ先に辿り着く場面はこれで一区切りです。


ifルート シーンxxx-3 エイムハードの名案

皆が困っている理由……デルカル大陸の古代神とエリシオン様の意向が真っ向から対立している現状を僕も理解しましたが、解決策はとても浮かびそうにありません。

 

デルカル大陸の古代神とアイールディさんの望みを受け入れれば、エリシオン様とルシア様が涙を飲むことになる。

エリシオン様とルシア様の求めに応じれば、古代神とアイールディさんの希望が通らない。

先程アラムート様がおっしゃっていた通り、あちらを立てればこちらが立たずとなる……。

 

「それでエイムハード、この状況をどうするのかしら……。私達の事情は抜きにしたとしても、ルシア達のどちらか一方は……」

 

未だ声に元気が戻られないエリシオン様は、案があるというエイムハード様へ問われている。

そしてエリシオン様の言葉を受け、アイールディさんとルシア様の双方に強い不安の表情が浮かんでいく。

そう、事は恋愛である以上、アドリアン様に選ばれなかった方は……。

 

「幾つか満たさなければいけない条件はあるが、恐らく私の案が最も円満に解決できるだろう。関係者は全員妥協が必要になるが、それでも一番譲れないものは失わずに済む。では、前提条件を確認させてもらおう。ルシア、アイールディ。君達は今回発生している問題が全くないとしたら、互いに仲良くできそうかな?」

 

……?お互いに仲良く……。

どういうことでしょう……?

 

「えっと、それは大丈夫。パイベリー、一緒にいて楽しいから」

 

「うん、あたしも。アイールディは優しくて素敵な子だし。でもエイムハード様、どれだけ私達が仲が良くても……アドリアンと結ばれるのはどっちかしか……」

 

確かにアイールディさんとルシア様は、埠頭攻略戦前後の時点から既に良好な関係を築いているように見えました。

お二方が友人関係であることは、少なくとも僕の視点では疑いようがないでしょう。

 

「そうか。それならば、この案を伝えても問題なさそうだね」

 

「……エイムハード様、本当に何とかできるの……?」

 

二人の返事にエイムハード様は満足そうに頷かれており、その様子を見たアイールディさんはおずおずと彼に確認されている。

 

「ルシア、アイールディ。心配しなくても大丈夫だ。私にいい考えがある」

 

自信に満ちたエイムハード様の言葉に、心理的に追い詰められていたのだろうアイールディさんとルシア様は暗闇で光を見つけたような表情を浮かべていますが、どうして僕はその台詞から何とも言えない懸念が胸に広がるような感覚がするのでしょうか……。

エステル様も何処となく不安そうな表情をしておられますし……。

 

い、いや、今はこの妙な気持ちは置いておきましょう。

それよりも、2人の神殿長がいても解決に至らなかったこの難問について、エイムハード様は一体どのような叡智をもって打開するのか……。

 

「では、腹案の具体的な内容を伝えよう。実は私はマニル島の図書館でバベリア王国の結婚方式について記載された本を借りてきて、内容を精査していたんだ。そこで得た情報によると、何でもバベリア王国の貴族で伯爵位以上の位を持つ当主と継承権第二位までの人は、条件を満たせば重婚制度を利用できるそうだ」

 

何だか僕の想定より大分現実的な路線の解決案ですね!?

いや、まあ、極めて真っ当な方法であるのは間違いないのですが!

つまり、エイムハード様がこの家に持ってきて、今皆に示している書籍は、王国の婚姻制度について記載されたものだったのですか……。

 

「「ジュウ、コン……?」」

 

アイールディさんとルシア様は首を傾げておられ、神殿長を含めた他の神族の方々も大体同様の反応です。

「そういえば!」という驚きと納得が混ざったご様子なのはエステル様とルイス隊長だけですね。

重婚制度は上位貴族の家だけで適用できるもので事例数もごく少なく、かつ個人や一族の関係をどうこうする類の誓願を神殿長の方々は一切受け付けていないため、神族の皆さんが知らないのは無理もありません。

寧ろ人間が作った制度へ思考が及んだエイムハード様が神族として非凡な視点をお持ちであると言えるでしょう。

 

「簡単に言うと、条件を満たした人は複数人との婚姻が認められる制度だ。アドリアン君はシューベト領主……バベリア王国の貴族制度でいうと、辺境伯の継承権第一位に当たる。辺境伯は侯爵位と同等……もっと言うと暗黙の了解で通常の侯爵よりも上位となる故、アドリアン君は問題なく重婚制度を適用できる人だ。これを使えばルシアとアイールディはどちらもアドリアン君と結婚できるだろう」

 

……繰り返しになるかもしれませんが、エイムハード様は全く縁がない筈の人間が定めた婚姻制度をよくそこまで調べましたね。

神族の皆さんは「両方と結婚……そんな方法もあったんだ!」等、目から鱗が落ちたと言わんばかりです。

僕も平民出身なので、エイムハード様が言及するまで重婚という発想自体を完全に失念してましたし、割と神族の皆さんの気持ちは分かるのですが……。

 

(あれ?確か以前アド君とのお付き合いの申し出を断られた理由は、年齢が足りないからってフレア君が教えてくれた……。アイ姉ちゃんっていう、とってもお似合いの人が現れたから、二人を応援したいって気持ちが強くなったけど……。アド君が複数の人と結婚できるのなら……もしかして、エイリン、チャンスなんじゃ……?)

 

おや、エイリンちゃんは何故か考え込み始めています。

 

「ラファエロ王に神族を重婚の相手として適用できるかも聞いてきたが、神族を重婚相手にしてはならないという法が無い以上、問題ないらしい。ただ、書籍の内容とラファエロ王に確認した結果から分かったが、重婚制度を適用するに当たってあと二つどうにかしないといけない課題がある。細かいものは他にもいくつかあるが……」

 

エイムハード様、国王陛下に直接確認を取るって凄い気合が入ってますね!?

神殿長が重婚について直接尋ねに来るという状況に直面した国王陛下は仰天していたのではないでしょうか……。

制度利用の条件を確認するのに最適な方であるのは間違っていないのですが、口にはせずとも何としてもご自身の案を成立させるという意志をエイムハード様から感じます。

 

とはいえ、まずはこの制度を適用する上で、エイムハード様がおっしゃる二つの大きな問題の内容を確認しましょう。

神族の皆さんも誰一人反対する様子は見当たらない上、特にアイールディさんとルシア様は自分達の望みが両立できると分かり、頬を紅潮させながらも希望で顔が輝いています。

……単なる推測でしかありませんが、丁半でアドリアン様と結ばれない可能性があったのは、お二人にとって何よりも耐えがたい事だったのかもしれませんね。

 

「一つ目は、この制度は元々貴族の家を保持するために用意された経緯を持つ制度のため、最低限の建前を守る関係上、重婚をする相手に一人は人間種を普通に出産できる人物がいる。特殊な血統である純血神族のルシアとアイールディではこの条件を満たせない。詳しい理由は省くが、純血神族から生まれる子は特殊な処置を取らない限り全て純血神族となるからだ。あと一人、人間か混血神族をアドリアン君の婚姻相手として加える必要がある」

 

……!予想通り、アイールディさんは特別な神族……。

血統からして、ルシア様と同等だったということですね。

ですが、今回はそれが仇となってしまっている。

 

「……え?あの、私、自分が混血神族だって聞いてるけど……」

 

「いや、ルシアとは異なる生まれではあるのかもしれないが、君の体は間違いなく純血神族のものだ。身体的特徴は魔法で隠されているがね」

 

アイールディさんの台詞を聞く限り、彼女の自己認識は混血神族だったようですが、そうではないとエイムハード様は否定しております。

制度利用のためには、やはりあと一人アドリアン様に誰かを宛がわなければならない……。

 

「あ、あの!エイリン、立候補します!アド君の結婚相手に!!」

 

えっ!?エイリンちゃんが手を挙げて自薦した!?

意外ですね……ませている子とは思っていましたが、まさか結婚を望むほどとは……。

 

「君は……うん、確かに混血神族だ。エイリン、でよかったね。では君を婚姻対象に加えると仮定し、もう一つの問題を説明するとしよう。重婚関係を結ぶ者は、重婚関係になることについて婚姻を結ぶ全員が了承しなければならない、というものだ。今この場にいないアドリアン君は後回しにするとして、今回の場合だと、ルシア、アイールディ、エイリンの三人がお互い同じ人と結ばれることを受け入れる必要がある。どうかな。できそうかな?」

 

ふむ、中々厳しい条件ですね。

ですが、結婚という行為の前提を覆す重婚制度を気軽に使われるのを防ぐ、という意味では間違っておりません。

さて三人の反応は……。

 

「私はいいよ。パイベリーとエイリンは友達だから。それに、エイリンも本当はアドリアンのこと好きだって言ってたし。あと、私よりもアドリアンと付き合いが長いんでしょう?確か5年か6年だっけ……」

 

「えっそんなに長いの!?もう半分幼馴染って言ってもいいじゃん!いいなぁ……。あ、あたしも大丈夫!アイールディは勿論、エイリンちゃんだっていい子だもの!」

 

「アイ姉ちゃん、パイベリーさん……。エイリン、割り込んだ形なのに……。あ、ありがとうございます!当然、エイリンもOKですよ!」

 

全員賛成している……通っちゃいましたね。

埠頭制圧戦前後から、ルシア様とルナ様を含めて神族の皆さんは頻繁に交流されて仲を深めていたから何もおかしくはないのですが……。

 

「よし。後はアドリアン君に同意の意思を確認する必要があるので、私が行って聞いてくるとしよう。だがその前に、他の皆も私の案に賛成していると思っていいかな?彼が戸惑ったり難色を示した場合に説得する材料として使わせて欲しい。エリシオン、君もだよ。それと、フレア君の言い分も受け入れてくれるかい?」

 

「ええ、どちらも問題ないわ。これ以上の案はちょっと出せそうにないもの。こちらの大陸にいる古代神も同様でしょう。……それと、私と会ってもいいってアドリアン君が言ってくれたら、直接謝りたいって伝えてくれるかしら……」

 

「それでもレフガト達に確認は取るさ。フレア君の条件を飲むか聞いておく必要もあるからね。謝罪の件も了解だ」

 

エイムハード様の案が通ることを全く疑わずにアイールディさんやエイリンちゃんと抱き合いながら飛び跳ねて喜んでいるルシア様をエリシオン様は見て、苦笑いを浮かべながらもエイムハード様の要請を了承されていました。

アラムート様とルナ様も各々頷きつつも愁眉を開いているのが表情から察せられます。

 

エステル様は少々心配そうにされていましたが、「これは、もう仕方ないわね……」と最終的に賛成の意を示されました。

 

ルイス隊長は肩をすくめているだけです。

淡白な反応をされているルイス隊長ですが、まあ反対しても対案が出せと言われてしまうと困ってしまいますからね。

……それに、この状況で万が一異議を唱えようものなら、アイールディさんとルシア様からとんでもない目に合わされる可能性があることが、恋愛関係に疎い僕でも何となく理解できますし。

 

結局の所、古代神の方々・エリシオン様・アイールディさん・ルシア様の望みを同時に満たせるのは、エリシオン様もおっしゃっているようにエイムハード様の案しかないでしょう。

 

ただ、一番大変なのは、この後エイムハード様からエイリンちゃんも加えた上で重婚を勧められるアドリアン様かもしれませんね。それも外堀を埋められた状態で……。

 


おまけ

誘拐被害者と誘拐犯の会話

 

「フレア……無理矢理こんな遠くまで連れて来て……。別に大丈夫だったんだよ?イメージの送り込みはマルチタスクで処理できるし、寝不足は秘密基地で解消している。エリシオン神殿長と最後に会った時のプレッシャーも、ちゃんといなしきって胃の中の物が少し逆流したくらいじゃないか。……普通の人だと心に傷を負うのが確実だったということは否定しないけど」

 

『だが、対処ができるからといって、いつまでも不利益を被り続けるというのはまた別の話であると思うぞ。それに、アドリアンへの迷惑を考えていないあの者達を多少慌てさせてやっても罰は当たるまい。仕事も一区切りついていた筈なのだから、丁度良い休暇と思えばいい。体と心を休めた後は、改めてあの二人のこともゆっくり考えたらどうだ?余計な外野を挟まずにな』

 

「……どうしてだろう。何故か、『それは考えても仕方がない事態になる』って予感がする……」

 

『……?意味が良く分からないが……。まあいい。さあ、到着だ』

 


フレアが連れてきたのは……

 

【バベリア大陸の東端・ララク村近郊】

 

 

【ウルパ大陸・ルビード町東海岸】

 

 




バベリア王国の貴族制度はオリジナルです。

という訳で、ifルートを辿った後のシーン集でした。
ただ、アイールディは言うまでもなく、パイベリーも魔女の泉4を見る限りですが、主人公陣でも恋人への愛情が重い二人とまとめて結婚するとなると、転生アドリアン君は苦労しそうですね(他人事)。
加えて、エイムハード神殿長が落としたぼた餅をエイリンが見事掴み取りましたので、更に神族のお嫁さんをおかわりです。

以前の後書き的な物に書いた通り、パイベリーとの出会い辺りからifルートの場面を書いていくのは、リアル事情で時間に余裕ができないと無理、という所です。
そもそも場面が飛び飛びの描写を読みたいか、という所も懸念されますし……。
エリシオン神殿での本作アドリアン君vs魔女の泉Rの王宮最高勇士・クラウンとかは面白そうですけど。

ちなみにフレアがウルパ大陸までアドリアン君を連れて行ってしまった場合は、ウルパ大陸在住の王様やってる混血神族が1名お嫁さんに追加される可能性が発生します。
バベリア王国3大陸の次代を担う顔役3人と結ばれる、そんな世界線もあるかもしれませんね。


現時点までに書き終えていた話はこれで全てです。
リアル時間に余裕が出来ればifルートを書いていくかもしれません。
改めて、ここまで読んで頂きありがとうございます。
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