チート転生アドリアン君 作:ブロンズ探検家
転生特典により手に入れた別世界の能力の仕様に驚かされたが、今は秘密基地の機能も利用して取得した技術の熟練度上げを日々の訓練に取り入れることができている。
転生特典の才能強化と秘密基地の精神と⚪︎の部屋まがいの機能に頼る所が大きいが、獲得した異世界技術は全て習得率を2〜3割まで上げたので最低限のレベルからは脱したと言えるだろう。
油断は禁物だが、砂漠が広がりシューベト近郊よりも強力な魔物が出没するリアート村周辺を探索する準備はもう十分だろう。
シューベト領外での活動になるので希望が通るか不安はあるが、リーガル父上とエステル母上にリアート村近郊での救荒作物捜索許可を貰えるか話をしてみよう。
大賛成とはいかないが、それでも無事2人から許可を貰えた。
他村との関係を重視する母上は、俺の行動が他村の飢えを解消することに繋がる以上強く反対はされなかったが、それでもまだ幼い俺が危険な目に遭わないかを案じていたので、シューベト領での活動より更に慎重に行動することを約束し、許可をいただけた。
父上は実力面では俺のことをさして心配していないようだったが、
リアート村近郊で作物を探す以上、リアート村に栽培可能な作物を引き渡すことになるのをやっぱり嫌がっていた。
だが、そもそもこの活動をする理由は泉の枯死や災害への対策であり、リアート村のような泉の加護がない荒地での作物の生育記録を回収しておく意義については既に父上も納得されていたのが功を奏し、無事父上からも了承いただけた。
ただ、リアート村近郊で活動することと、今回発見した作物を他村に引き渡すことにそれぞれ父上から条件をつけられた。
リアート村へ出張を許可する条件だが、巡回兼作物捜索で行動を共にしているヘクター教官の小隊メンバーに加え、父上が指定した勇士を補佐兼護衛として1人追加で同行させるというものだった。
誰が追加の同行メンバーになるかを父上に確認した所、シューベト特級勇士の中でも特に高い実力を持つラークさんを予定していると伺った。
ラークさんはがたいが非常によい御仁で、父上への忠誠心にも溢れている方の筈なので、確かに護衛兼お目付役としてふさわしいのかもしれない。
また、作物を引き渡す上での追加条件は、古代神レフガトの泉南部にあるデルカル峡谷付近の荒地にて、可能であれば発見した作物を植えてみてほしいとのことだった。
自領近辺で最もリアート村に近い環境で今回発見した作物が生育するかを父上は確認したいそうだ。
まだリアート村近郊で探し物を見つけてもいないのにこんな条件をつけるってことは、俺が作物を発見すること自体は成功するって父上も考えてるんだろうなぁ。
特典ありきとはいえ連続して成果を出しているのだから、2度あることは3度あると想定されてもおかしくはないか。
ちなみに植えた作物を誰に様子を見させたり世話をさせるのかを聞いてみたが、泉近郊を見回る勇士巡回隊にやらせるとのことだった。
……父上はもしかして勇士隊で屯田制度に近いものを試すつもりなんだろうか。
勉学をしている際、政務について父上に質問しに行った時にちょっとだけその制度について話した記憶はあるが……。
今回捜索するのは砂漠近郊の植物だから、首尾よく作物を持ってこれても過度に水を上げないよう伝えておいたが、転生特典で呼び出す方はともかく野生化している作物は試行錯誤が必要かもしれない。
何にせよ無事に許可を貰えたので、いつもの小隊メンバーと予定のすり合わせをするとしよう。
それと呼び出す作物の関係上、大きめのスコップも人数分用意しておこう。
台車はリアート村での活動拠点となる勇士キャンプにあるのを使えばいいから持って行く必要はないか。
それと今回探索メンバーに加わるラークさんにもちゃんと挨拶しておかないと……。
「ではアドリアン様、事前にお話した通り、今回のリアート村近郊への巡回に同行させていただきます。他の皆も期間中だけではあるが、よろしく頼む」
リアート村方面への出張初日、集合場所へ時間ピッタリに来たラークさんは皆に挨拶をした後、改めて同行する旨を伝えてくる。
シューベト特級勇士の筆頭格であるラークさんに俺とヘクター教官以外の小隊メンバーは若干萎縮していたが、俺が声かけして出発を促し移動を開始した。
ちなみに小隊活動での混乱を避けるため指揮権はヘクター教官が一括で請け負っており、ラークさんも了承している。
面倒事を複数抱えた部隊編成なのに指揮を取ることを了承してくれたヘクター教官と階級が下になる人の指揮下に入ることを受け入れてくれたラークさんに感謝である。
道中大した魔物にも遭遇せず、無事リアート村まで到着した。
したんだけど……。
分かっていたつもりだが、あくまでつもりに過ぎないということだったようだ。
荒地ばかりの耕作地。枯れ果てた井戸。生気が薄い人々の表情。
村の様子はドラゴン襲撃後の復興中でも相応に活気があったシューベトとはまるで違う。
ただ、村内の耕作地にさつまいもなどの提供した作物が確かに生育できているのを確認し、自分の活動は無駄にはなってないと気合いを入れ直す。
村の現状を目の当たりにしても冷静なラークさんに促され、行動を開始する。
まずはリアート村の村長に挨拶をしに行こう。
リアート村の村長との挨拶を済ませた後、シューベト領内と同様に村の近辺で救荒作物を捜索し、これまでと同様の条件で提供する旨を村長に伝えた。
リアート村付近で見つけた作物でも収穫の2割をシューベトに回す条件は変わらないため、もしかしたら文句を言われるかと一瞬思ったが、村長からは物凄く感謝されたので杞憂だったようだ。
リアート村の先代村長が計画したシューベト襲撃を阻止したリーガル父上がリアート村を嫌っているのは村長も承知していたらしく、俺とエステル母上が何とか父上を説得してくれたと判断しているらしい。
「首尾よく望みのものを見つけられるよう神に祈っております」
と村長に頭を下げられ、面会は終了した。
会話内容と印象だけの判断ではあるが、村長は責任感がありながらも穏やかで優しい人だと思えたな。
ただ、厳しい状況に長年晒されているせいか、何かの弾みで折れてしまいそうな弱さも同時に感じられる方だった。
最後の言葉もそうだが、途中の会話からも昔去って行ったデルカル大陸の神殿長……もとい古代神に村長が今も縋っていることは伝わってきた。
神に縋らなければ生きていけないぐらい苦しいとも捉えられるか。
ただ村長のあり方や弱さは人としてはむしろ普通で、泉の加護がないならないなりに生きていける下地を作っていこうなどと考える俺の方が少数派であることはちゃんと意識しておかないといけない。
でも縋る先の神……つまり神族はバベリア大陸での魔女狩りで追われる身なんだよなぁ。
デルカル大陸でまだ魔女狩りが発生していないのは救いだが……。
大陸渡りの行商人達からバベリア大陸での魔女狩りの様子は聞いているが本当に酷い。
1つ具体例を挙げるとこんな感じだ。
神族の子どもと人間の子どもが暮らしている小村落に魔女がいる旨を通報された。
人間の子どもは友達である神族の子を小村落から逃したが、魔女を逃した罪で神族を逃した子どもの家族は勇士達に皆殺しにされてしまった。
神族の子を逃すために村落から離れていたことで殺されなかった人間の子どもは、家族が殺されたのは逃した神族のせいだと思い込み、魔女狩りに協力するようになってしまったのである。
バベリア大陸で実際にあった事例とのことだが、気軽に行商人さんに尋ねたのをちょっとだけ後悔した。
予想通り民心や治安がやばいことになっているし、件の子どもは理不尽な力によって幸福を奪われ、心すら魔女狩りを推奨する側に都合良く塗り替えられてしまったと言えるだろう。
バベリア大陸で唯一残った泉の加護をセルビス氏によって多少は引き出せるバベリア町は流石に安定しているようだが、裏を返すと他の場所は魔女狩りと合わせて目を覆いかねない状況になりつつあると言える。
多分バベリア大陸の人里で神族を匿うのは余程気合いの入った人間以外にはもう無理だろう。
推定舞台装置の魔女狩りは通常の手段ではすぐにどうこうするのは難しいしなぁ。
でも、こういった不和や分断を少しでも和らげ、改善できるようにはなりたいと思う。
デルカル大陸でシューベト以外に広がっている飢えや渇きだってそうだ。
選択肢がない。明日がない。そんな状況をマシにして、人間・神族問わず大陸で暮らす人達がちょっとぐらい明るい未来を想えるようにしたいものである。
……大言壮語が過ぎるかな?まあ大目標として胸に抱えておくぐらいは許されるだろう。
とりあえずは目先のできることをやっていこう。
リアート村の隣りにある勇士キャンプで荷物を整理し、探索の準備をしようか!