不思議な事が起こった。
そう、物凄く不思議な事が。
腕輪を手首に付けて叫んだら変身した。
文字通りの変身…初めての変身。
ずっとずっと…憧れてた…夢が叶った。
「おぉおおッ!?これが…あたし!?何か力も溢れて来るし…それに負ける気がしない…!」
自分の変身した姿を鏡でまじまじと見ている。
例えるなら装甲の付いた服+女の子みたいな感じ。
「ばッ…バカな…有り得ない……何故、地球人がブラックルミナスに…!?」
バッタの怪人はブラックルミナスを2度見している。そして彼女は鏡から離れると再び目の前の怪人と対峙する。
「…これ以上、お前らの好きにはさせない!覚悟しろ…えーと…!」
「我が名はバッタレイド…ブラックルミナス、貴様を消し去ってくれる!!やれ!ウバーウ!!」
バッタレイドがそう叫ぶと、ゾロゾロと銀の仮面と黒いスーツを着た連中がブラックルミナスへ向いた。そして一斉に襲い掛かって来る。
「よぉーし、行くぞッ!!」
ブラックルミナスが駆け出して右手の拳を繰り出すと先程と比べて威力の増した拳が1体のウバーウ兵へ炸裂し吹き飛んだ。
「グギィッッ!!?」
「パンチの威力も上がってる…!これなら!!」
立て続けに2体目、3体目とパンチを左右交互に繰り出して倒していく。すると今度は槍による攻撃が繰り出され、ブラックルミナスはそれを器用に避けると思い切り右足で蹴りを放って撃退。
炸裂した右足がクリーンヒットしウバーウ兵が吹き飛んで倒れる。4体目を倒した所で強い殺気を感じ、その一撃を避ける。その殺気の持ち主はバッタレイドで日本刀の様な刀をその手に握り締めていた。
「調子に乗るなよ…小娘ッッ!!」
「嘘でしょぉおおッ!?こっちは丸腰なんだけど!?」
「でやぁあああッ!!!」
そして何度も繰り出される斬撃をブラックルミナスは避け続ける。だが避け続けるのも体力を使う事から向こうはそれが狙いなのだろう。油断すれば真っ二つに斬り裂かれてしまう。
するとロインが物陰から叫んで来た。
「剣を使って下さい!右手を前へ翳して!」
「えーっと、こう!?」
バッタレイドが仕掛ける直前、咄嗟にブラックルミナスが右手を翳すと黒い柄と共に赤い刀身の剣が出現する。これがルミナスブレイド、ブラックルミナスの武器だ。そしてバッタレイドと競り合うと大きな音と共に火花を散らした。
「ほぅ、面白い真似をする…ッ!!」
「ぐ…うぅうッッ…!!」
一度振り払って離れると構え直す。
こういう武器を使っているヒーローも居るがまさか自分が振り回す事になるとは思っていなかった。
深呼吸し再びバッタレイドと向き合うと今度はブラックルミナスが攻撃を仕掛ける。
戦い方は全てヒーロー物を真似る形になってしまうがやるしかない。
「おりゃああああッッ!!」
飛び上がると勢いと共に振り翳したルミナスブレイドがバッタレイドへ差し迫ると相手はそれを刃で受け止める。そこからはブラックルミナスによる攻撃のラッシュが始まった。
相手に付け入る隙を一切与えず、兎に角攻めて攻めて攻めまくる。
「なッ、何だこの滅茶苦茶だが繊細な動きは!?」
「戦い方を教えてくれたんだ…私の好きなモノが!!」
そしていつの間にか建物の外へ来ると今度は駐車場での戦闘となる。バッタレイドを突き放し、再び仕掛けるが向こうも負けておらず、ブラックルミナスの一撃を避けて蹴り飛ばして来たのだ。
背中を蹴られたブラックルミナスは吹き飛んで車へぶつかってしまう。彼女がぶつかった車は形を変えて大きく変形していた。
「バカめ、貴様の動きは全て見切った!!そんなワンパターンな動きがこの私に通用すると思うな!!」
「痛ったぁ…多少は大丈夫だけど…やっぱ痛いのは痛い…ッ!」
手放してしまったブレイドを拾って立ち上がる。
バッタレイドが彼女へ刃先を向けた途端、背中から何かが出現しそれが左右の肩へ装備される。
「受けてみろ…我が奥義を!!ホッパーブラストォオッッ!!!」
そう叫ぶとミサイルが放たれ、更にそれが分割されてブラックルミナスへ襲い掛かる。音を立てて差し迫るそれをブラックルミナスは身構えてから次々に
ブレイドで斬り裂いて粉砕していく。
「うわわわッ、何でもアリ!?」
斬り落としたミサイルが着弾し爆発、それが爆煙を引き起こすとその中へ紛れてホッパーレイドが奇襲を仕掛けて来た。咄嗟にその刃を受け止めると鍔迫り合いを繰り広げ始めた。
「このまま死んでくれると…有難いのだが…ッ!」
「生憎…死ねない…ッッ!このぉッ!!」
振り払うと共にバッタレイドを斬り裂くと火花を散らして後退、そしてブラックルミナスは剣を向けるとバッタレイドを睨んでいた。すると後ろからロインの声がして彼女へ向かって叫んで来る。
「居た…ブラックルミナス!必殺技を使って下さいッ!!」
「必殺技?そんなの有るの!?」
「勿論…!ブレイドを1度前へ突き出して空へ掲げて下さい!!」
「よーし…ッ!!」
ルミナスブレイドを空へ掲げると途端に刀身の鍔辺りから赤い炎が噴き出して刀身そのものを覆い尽くす。そしてバッタレイドへ向けてそれを突き付けると深呼吸してから彼女はスカート部と背面のブースターをそれぞれ起動させるも一直線に突き進む。
「来い、ブラックルミナス!!我が一刀の元に貴様を葬って…ッッ!!」
「スパイラルゥウウウ!!ブレイカァアアアアアッ!!」
そしてすれ違い様にホッパーレイドの刀と共に彼の肉体を右斜め掛けに斬り裂くと彼から離れた後ろへ
着地し剣を下ろす。
「み…見事…ッ…!」
バッタレイドはブラックルミナスの後ろで特撮の敵と同様に地面へ倒れると爆発四散し消滅した。
「ふぅ…これで終わり…。」
振り返ると共に変身が解けて元のカナに戻る。
するとコヨミ達が走って来て彼女と合流した。
「カナ、大丈夫!?凄いケガしてるじゃん!」
「平気だよ…これくらい。あ…やば…忘れる所だった!」
カナは母親に付き添われていた先程の子供の元へ駆け寄るとベルトを彼へ返した。
「…ありがと、お陰で助かったよ。仮面ソニックがね、お姉ちゃんの事助けてくれたんだ…だからコレはキミが大切に持っててね?いつかヒーローが助けてくれるから…!」
微笑むと少年の頭を撫でてから再び友達の元へ戻った。その様子をロインが木の影から見守っていると何かを確信したのか彼女は別方向へと歩いて向かって行った。そしてカナ達は警察の事情聴取やら何やらに応じてから帰るのだった。
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カナが帰宅したのは夜の19時。
彼女の住んでいる家はごく普通の一軒家。
そこに母と父、そして兄の4人で住んでいる。
「ただいまー…ってあれ?靴が1つ多い?」
カナが帰宅し家のドアを開く。靴が何故か多いのを疑問に思いながらリビングへ向かうと見た事ある人がそこに混ざっていた。
「お帰りなさい、カナさん。今日のお夕飯は唐揚げだそうですよ?んんー、地球の食べ物は美味しいですね♪」
「な、ななな、何で居るの!?ていうかどうやってあたしの家調べた訳!?」
そこに居たのはロイン、ご丁寧に両親と共に夕飯を食べている。口の中の物を飲み込むと彼女は立ち上がってカナへ近寄って来た。
「ごめんなさい、少し調べさせて頂きました。貴女の年齢…血液型…スリーサイズ…癖…それから利き手とか…口癖も。後は靴の大きさも調べてます。」
「ちょっとじゃないじゃん!?全部じゃん!?てか何でママもパパも受け入れてんの!?」
カナが咄嗟に2人を指さすとカナのお友達だと名乗ったのと、ホームステイで来たと話したのだという。因みに阿澄高等学園はホームステイ制度というのはやっていない。
「…カナさん、お夕飯食べたら少しお話しましょう。それと……」
「それと…何?」
「唐揚げは醤油の方が味が濃くて私は好きです!」
物凄くどうでも良い事を真面目な顔をして彼女は言い放った。夕飯を終えてからロインはカナの自室で話をする事になり、お互いテーブルを挟んで座る。
「…こほん!では先ず改めて自己紹介を。私の名前はロイン・ラーヴ、異世界から来た科学者です。貴女のそれ…ライクギアテクノロジーを開発しました。」
「えっと…私は津上カナ。見ての通りの特撮オタク。この金髪は地毛なんだけど染めたってよく言われる。宜しく、ロインさん。」
お互い握手を交わすと本題へ入る。
ロインの顔が真剣そのものに変わった。
「…今朝、あの建物に現れたのはアンチテリアという異星人。そしてバッタレイド…あれはレイドリアンという彼等の中の戦闘兵より上の怪人クラスになります。ウバーウは戦闘兵、見ての通りちょっとやそっとじゃ倒れたりしません。」
「成程…てかマジで特撮のアレじゃん……。」
「そして奴等は星々のライクリアエネルギーを狙って侵略を仕掛け、多くの惑星を破壊して来た。まさに極悪非道な異世人なのです…!」
「そのライクリアエネルギー…?ってのは何?」
カナが話した途端、失礼しますと呟くとロインは立ち上がって近くの戸棚からフィギュアを1つ持って来た。それは仮面シリーズの割りと前の作品、仮面ツインのモノで片方が黒でもう片方が緑色をしている。
「カナさんはこのフィギュア、もといこのキャラクターは好きですか?」
「勿論、好きだよ?コレのベルト買ったもん。後は役者さんのサインも有るし。」
「…ライクリアエネルギーというのはそういう好きという感情や趣味に熱中している時に自然発生するエネルギーなのです。奴等の狙いはその好きという感情に有ります。」
「へぇ…そんな事が解るんだ……。」
「自身の趣味…興味のある事…どんな小さな事や少し変わった事…それに没頭すればする程、ライクリアエネルギーは高まるのです…無論、仕事でも構いません。ライクギアは一定数値を超えた者でしか起動せず、そのライクギア・ブラックは貴女以外の人間では起動しません。」
「つまり、あたし以外はブラックルミナスには成れない…って事?」
「そうです!…連中の目的は未だ解りませんがエネルギーを奪われた人間がどうなるか……ご存知ですか?」
「確かに他の人とか吸われてたけど…どうなるの?」
「…もうその趣味に興味が示せなくなるんです。どれだけ頑張っても…どれだけ見返しても……興味すら湧かない…。アンチテリアはライクリアエネルギーを奪う事で惑星中の人間を混乱させて最後に滅ぼす。趣味が奪われた者は生きる事に対し後退的になり、ストレスだけを多く抱え込む…そして待つのは破滅。彼等はそうやって各星々を渡り歩いて来たのです。」
「…元に…元に戻れるんだよね?そのレイドリアンとか倒せばさ!?」
「戻れます、持ち去られる前に倒してしまえば。…この星を守れるのは津上カナさん、貴女しか居ないのです。お願いします…私に力を貸して下さいッ!」
ロインは頭を下げた。
どう見てもカナより歳上で大人っぽい。
そしてカナは少し考えてから話し出す。
「…解った、やってみるよ。乗り掛かった船だもん…やるしかないよ。あのさ、これだけ聞いても良い?ブラックルミナスって何者なの?」
「ブラックルミナスは伝説の戦士の1人。光の戦士で人々に災いや悪の兆しが訪れた際に姿を現すのだと言われています。私が生み出したライクギアのブラックルミナスは悪魔で私の想像の元生み出したモノですので…オリジナル…という事になります。」
「…まさか他にも居るの?」
「はい、勿論!とは言え…地球人がギアで変身し覚醒する確率は極めて低いので当分はカナさんだけですね。大丈夫、私も成る可くサポート致しますから共に戦いましょう!この地球を守る為に!」
「……戦おう、一緒に!」
再び握手を交わすと2人は頷く。
そして手を離してからロインはまた立ち上がると彼女はカナと共に1階へ降りる。
そして台所に居たカナの母親、津上ルイへ話し掛ける。カナと顔立ちが似ていてコレまた美人である。
「お母様、何処か空き部屋はございますか?」
「空き部屋?…奥の和室位しかないけど?」
「ありがとうございます、暫くお借りしますね!」
「…まさか遂に来たのね?」
「ええ…来ましたとも…!」
突然洗い物を止めたルイも何故か加わると
廊下を曲がった先にある和室へ入る。そして押し入れの前へ来るとロインは何かをポケットから取り出して貼り付けた。一瞬だけ何かが起こるとそこの扉を開くと階段になっていた。
「どうぞ、此方です。」
「…サラッと何したの?てか何で母さんもいるの!?」
「私、こういうの昔から結構好きなのよ♪秘密基地とかそういうの♪特撮にも有るでしょ?そういうの。」
「ええ…まぁ…?」
ニコニコと楽しげなルイと共にカナも降りると白いドアを開いた先、そこに有ったのは大きなラボ。
大画面のモニターと椅子が幾つか、それに加えて横には別の扉が有る。この短時間でこんな事になっていたのだ。
「此処を拠点とし、アンチテリアを迎え撃ちます!構いませんか?司令!」
「ええ、勿論!良くってよ!」
ルイとロインだけが話を進め、カナはちょっと離れていた。自分の母親にあんな趣味が有ったとは思わなかったからだ。彼女の母はカナの趣味に対し好意的な印象が有り、母もまたカナと同じ経験をした事が有るのだという。因みにカナへ向けて女の子なんだからと言ったのは彼女の叔母だ。
「…どうしたのカナ、珍しく乗る気じゃないのね?」
「え?あ、いや…意外だなって…。母さんもこういうの好きなんだなってさ……。」
「あー…私の姉さんがこういうの好きじゃないからね…私もずっと内緒にしてたの。あの人、結構現実的なタイプだから。私はカナが同じ趣味を持ってくれた時は嬉しかった…いつか一緒に話したいなってずっと思ってたから。でもまぁ、翔太とお父さんは…ねぇ?」
両手を上げて首を傾げたルイを見てカナは苦笑いしていた。こうして科学者、ロインの手で津上家の地下に対アンチテリア迎撃用秘密基地が設置されたのである。
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とある異空間…そこにそびえ立つ黒い城の様な場所に何かが居た。1人のローブを被った少女が黒いマントを羽織り、厳つそうな見た目をした鎧へ向けて話を始めた。
「…地球侵略作戦において、一番槍として放ったバッタレイドが倒された。ウバーウも全滅…倒したのは玩具のベルトを巻いた地球人。」
「地球人だと!?バカな…あのウバーウの足元にさえも及ばない筈だぞ!?」
「バッタレイドの残した探知型のバッタによれば…伝説の戦士、ブラックルミナスが現れたと。」
「ブラックルミナス…嘗て実在したとされる戦士…地球人がブラックルミナスに覚醒したという事か。…次の作戦の手筈は?」
「もう済んでる…今度はエレキレイドを使う。」
「解った、ブラックルミナスのデータを採集しそれを此方へ手渡せ。その上で事の次第を考える。」
「了解…キライザー様。」
彼女が頭を下げると広間を出て立ち去る。
ローブから覗く赤い髪…そして紫色の瞳。
未だ幼さが残るその顔立ちは歳を考えるとカナと同じだろう。
「ブラック…ルミナス……伝説の戦士…。」
そう言い残すと彼女は姿を消し、今度はとあるビルの屋上へ姿を現す。そして夜の街並みを眺めていた。
「……この地球の守護者…ブラックルミナス…それがお前なら私は一度お前と戦ってみたい。それに私は強い奴以外に興味は無い…強さこそ正義、強くなければ何も守れない。」
彼女は右足のホルスターから何かを取り出す。
それは銃の様な形をした何か。紫と銀色を基調としたそれは月明かりに照らされて輝いていた。