私、ヒーローになっちゃいました。   作:秋乃楓

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3話 両立は大変!?学生とヒーロー

深夜、市街地にある宝石店付近。

そこに現れたのはアンチテリアの兵士であるウバーウ。ざっと6人ばかりの彼等は手にそれぞれ槍を持って闇夜に溶け込んでいた。

彼らの狙いはこの中にある高価な宝石やダイヤモンド。決行すると決めたのか、ゆっくりと店へ歩き出した時だった。

 

「…こんな真夜中に…強盗なんて、大した身分だね?お金が無いのかな?」

 

 

「ギギギ!?」

 

そこに居たのはカナ。白い上着と青い短パンにスニーカーといった格好で佇んでいた。

 

「趣味だけじゃなくて…宝石やお金も奪う気なんてあたしが許さないッ!トランス・イグニッション!!」

 

走り出すと即座にブラックルミナスへ変身し、ルミナスブレイドを片手に駆け出した。

 

「やぁあああッッ!!!」

 

 

「ギギギィーーッ!!」

 

飛び掛って来た6体を次々とルミナスブレイドで斬り倒すと消滅、ブラックルミナスは振り返ると一息つく。だが1発の銃声がその安寧を掻き消した。

その方向を向くとローブを被った何者かが立っている。その右手に握っている銃からは硝煙が立ち昇っているのが解った。

 

「新手!?そこか…ッ!!」

 

 

「お前は…強いのか?」

 

 

「何言ってんの…?」

 

 

「お前は強いのかと…聞いている!!」

 

するとローブの人物は走り出すと右手の銃をブラックルミナスへ向けて振り翳す。それは銃と剣が一体となったガンブレードそのもの、火花を散らして競り合うと睨み合っていた。

 

「アンタ誰!?」

 

 

「誰だって良い…私と戦え、ブラックルミナス!!」

 

振り払うとローブの人物は離れた位置でガンブレードを正面へ突き出し、それを彼女へ向けて呟いた。

 

「……トランス・アップ。」

 

その掛け声と共に放たれた弾丸が赤い鳥の様に変化し、起動が変わるとローブの人物を赤い竜巻が包み込む。そして身体の赤い鳥の様な出で立ちへ変貌したのだ。

 

「な…ッ!?まさかレイドリアン!?」

 

 

「レイドリアン…?あんな下等共と一緒にして貰っては困る……我が名はディナイアル…不死鳥の戦士ッ!!」

 

今度は刀身を展開しモードを切り替えるとブラックルミナスへ襲い掛かる。そしてブラックルミナスと刃を交えた。その力強さは数日前に戦ったバッタレイドとはまた比べ物にならない。

 

「ッッ…此奴、強い!!」

 

 

「貴様の実力はその程度か?ブラックルミナス!」

 

 

「言ってくれるじゃんか…ッ!!」

 

凄まじい音を立てながら2人の刃がぶつかり合う。

ブラックルミナスの繰り出した一線をディナイアルが避けると彼女へ向けて突き出した刃がブラックルミナスの右頬を掠め、血が飛沫する。

少しでもズレていたら確実にやられていた。

更に刃を交わしながらその戦闘もまた激しさが増していく。

 

「運が良いのか…それともまぐれか…!!」

 

 

「来る…ッ!!」

 

ディナイアルが更に力を込めるとブラックルミナスが押され始める。そしてディナイアルが彼女の剣を振り払った直後に素早く連続で攻撃を仕掛けると圧倒した。ブラックルミナスは膝をついてその場に座り込んでしまう。ルミナスブレイドは宙を舞うと離れに突き刺さった。

 

「あぁ…ッッ…!!?」

 

 

「…弱い、期待外れも良い所だ…ブラックルミナス。」

 

ディナイアルは彼女の首元へ剣の刃先を突き付けて威圧する。ブラックルミナスは目の前の相手から凄まじい殺気と威圧感を感じていた。そしてディナイアルは彼女目掛けて剣を振り下ろして来た。

 

「や、やられる…ッ!?」

 

目を背けたブラックルミナスを他所にその剣先は彼女へは当たらず、ディナイアルはそれを下ろして背を向けてしまった。

 

「興が冷めた…弱いままのお前を殺しても何の価値も無い。レイドリアン達を蹴散らし…お前が戦士としての力を付けた時、また合間見えよう。楽しみにしているぞ?」

 

そう話すとディナイアルは赤い炎と共に姿を消してしまった。ブラックルミナスも変身を解いて立ち上がると拳を握り締める。

 

「ディナイアル……ッッ!」

 

その後、カナは悔しさを噛み締めながら現場から引き上げたのだった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

そんな事があった次の日。

カナは欠伸をしながら家を出ると学校への通学路を歩いていた。昨夜の件を彼女は忘れた訳ではなく、思い出せば悔しくて仕方がない。

あの時自分は殺される筈だった…それなのに向こうは敢えて殺さず、生かしたのだ。再びブラックルミナスと戦う為に。

 

「ディナイアル…アイツがあたしのライバル…、本当に何だか特撮みたいになって来たな…。」

 

眠そうに歩いているとコヨミが後ろから声を掛けて来て彼女と合流する。挨拶を交わして歩き出すと一昨日の話をし始めた。

 

「ねぇカナ…あの時見たアレ、何だったんだろう?」

 

 

「さぁね…あたしにも何だか解らないや。」

 

 

「私見たんだ…黒い服着た女の人がヘンテコな人達と戦ってるの。何だか本当にヒーローショー見てる気分だったよ…ナナとユリカはゲームセンターの奥に隠れてたから見てなかったけど。」

 

 

「あ、あたしはあの後トイレに隠れてたから…様子見て何とか逃げ出せた…って感じかな?」

 

カナは誤魔化すと自分の左手首に付いている黒いリストバンドを見ていた。ライクギアは未使用時、中央の球体へ触れるとこの様にリストバンドの様な姿となる。また元に戻す時は手を翳せば良いのだ。

ユリカと共に話しながら歩いて学校へ着くと2人は自分の教室へ足を運ぶ。

中へ入るとナナが机に伏せてどんよりと項垂れていた。

 

「おはよ…ってどうしたんだよ、ナナ?」

 

 

「聞いてよカナぁ…ゲームの発売日…今日だった……。」

 

 

「え?アレって週末発売じゃなかった?」

 

そう聞き返すとナナは首を横に振り、携帯の画像を見せる。そこには今日の日付と共にキッチリと本日発売!と書かれていた。コヨミも不思議そうにそれを見て来た。

 

「本当に今日発売になってる…でもどうして?」

 

 

「解らないよ…行き付けの店がさぁ…急遽前倒しにして売るとか言い出して……私学生なんですけど!?」

 

 

「ま、まぁ…社会人も平日は買いに行けないよ?ねぇ、カナ?」

 

 

「そうだよ、何なら放課後探しに行こう?って…ユリカも居ない。」

 

そして何故かユリカの席も未だ埋まっておらず、鞄すら無かった。それに対しナナが話し出す。

 

「ユリカはモデルの仕事だってさ…。あーあ、欲しかったなぁ…ロードクエストの最新作。」

 

 

「でも、ナナはゾンビ倒す系のゲーム専門でしょ?違ったっけ?」

 

 

「違いますぅー!ちゃんとRPGもやりますぅー!カナみたいに特撮ズドーンじゃないんですぅー!」

 

 

「うへぇ、嫌な言い方するなぁ…。」

 

カナは苦笑いしながらそれを受け流した。

彼女、野上ナナは4人の中でもかなりのゲーマー気質。ゲームセンターでは音ゲー、携帯でも同じ様に幾つかゲームのアプリをやる程に熱中している。

それは家に帰っても同じ事だった。

とは言え、カナが気になったのは発売日の前倒し…未だ正式な発売日まで3日も有るのに随分急だと彼女は思っていた。

 

そして当然の事なのだが、その日の昼休み辺りにわざと遅れて登校して来る生徒の何人かはその手に例のゲームソフトを持って自慢しているのもチラホラ垣間見える程。学校が終わるまでナナはずっと不機嫌だった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

そもそも何故、発売日が前倒しになったのか?

それは奴の仕業だった。エレキレイド…デンキウナギを人型にしたかの様なグロテスクな見た目、そして左右の腕からは鞭の様なものが生えている。

その身体は紺色、そして目は黄色く爛々と輝いていた。

 

「これで手筈は全て整った。後はライクリアエネルギーを集めて回れば良い…!」

 

わざと発売日を前倒しにさせ、ソフトを買わせる事でゲーマーやファンがゲームに熱中する。

その時に発生するライクリアエネルギーを根こそぎ奪い取るのが彼の目的だった。

 

「ふふ…俺の起こした天国と地獄作戦は既に始まっている!!さぁ震え上がるがいい…ふははぁッ!!」

 

そしてエレキレイドがその足で向かったのは昼下がりの公園、そしてゲームをしている者達から次々とエネルギーを奪い取り始めた。

逃げようとすればウバーウがそれを無理矢理に足止めさせて、行く手を阻むといった事を繰り返しながら奪って行く。公園が終われば次の場所へ移動し同じ事を繰り返していく。路上には携帯ゲーム機器を持って座り込む者、住宅街を襲えばコントローラーを握り締めたまま固まっている者も居ればパソコンの前で固まっている者さえもいた。

 

「思ったより効いているな、この天国と地獄作戦は…どいつもこいつもゲームとやらに興味を示さなくなったではないか!!ゲーム機という異端なモノに目を付けた俺の頭に狂いは無かった!!」

 

彼が街中で勝ち誇って笑っているのを空中を飛んでいた白いドローンは見逃さなかった。

そしてそのドローンの持ち主である人物はその情報をとある人物へと伝達する。

そう、このレイドリアンを倒す事が出来るあのヒーローへと。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

カナが学校の昼休みを迎えた時、突然携帯が鳴る。

出てみるとロインからだった。

 

「…はい…もしもし?」

 

[もしもし、カナさん!?レイドリアンが街に現れました!早く向かって下さい!]

 

 

「ええ!?今から昼休みなんだけど…」

 

 

[何言ってるんですか、急いで下さい!レイドリアンの好きにさせたらマズいんですよ!?]

 

 

「う…解った!解りましたよ…!」

 

 

「場所は近隣の住宅街です!急いで!」

 

 

「はーい……。」

 

電話を切ると彼女はコヨミの方へ近寄って頼み事をする事にした。

 

「コヨミ…悪いんだけど…あたし今日早退するわ。」

 

 

「え?…具合でも悪いの?もしかしてカナもソフト買いに行く気?」

 

 

「ち、違うってば!アレだよ…えーと、下の方が昨日から…ちょーっと……ね?」

 

 

「…解った、女の子の日は大変だもんね…私から先生に伝えておくから。ノートとかどうしよ?」

 

コヨミが振り返るともうカナは教室の入り口に居た。そして「写しといて!!」と声を掛けると足早に彼女は階段を駆け下り、玄関へ来ると靴に履き替えてから走って校門を飛び出した。

 

「あーもう、こんな時に出て来るなよな…まったく!」

 

送られて来た位置情報を確認しながら走って向かうと既に被害はかなり出てしまっていた。

その中の一人へ近寄ってみるとゲーム機を隣に置いたままブツブツと何かを話している。

 

「もうゲームなんてやりたくない…もうゲームなんてどうでもいい…面白くも何ともないし…。」

 

ブツブツと似たような事を繰り返して話している。ライクリアエネルギーを奪われるとこうなってしまうのだ。まるで腑抜けた様な落ち込んだ様な何とも言えない形になる。同じ様に何人もの人を見て回るがやはりどれもこれも同じだ。

 

「ッ…アンチテリアめ…!」

 

カナが怒りを感じて拳を握り締めていると、奇妙な気配を感じて振り向く。そこに居たのはウナギの様な化け物だった。

 

「何だ?未だ吸われてない奴が居たのか?」

 

 

「出たなレイドリアン!って…見た目気持ち悪ッ!?」

 

 

「ほぅ…我々を知っているのか小娘。貴様、只者ではないな?だが知り過ぎるのは良くないな…ウバーウ!小娘をやれ!」

 

 

「ッ…!!」

 

途端に怪物の周囲にウバーウが6体現れるとカナへ襲い掛かる。彼女はライクギアを通常体へ戻し、右手の拳で殴り付けて圧倒する。変身しなくてもこのライクギアが補助力の役割を担ってくれる事もあり、女の子でも戦闘兵とやり合える様になっているのだ。

 

「やぁッ!たぁあッ!!」

 

 

「ギッ!?ギィーッ!!?」

 

今度は素早い蹴りがウバーウへ命中し仰け反って倒れた。相手による攻撃を腕で受け流し、顔面を殴り付けると彼女は距離を取って右拳を握り締めたままライクギアを胸の前に構えて叫んだ。

 

「トランス・イグニッション!!!」

 

眩い光がカナを包み込むと彼女の頭から順に彼女の容姿が全て変化、ブラックルミナスへ変身すると目の前のウバーウを蹴飛ばしてから構えた。

 

「貴様は!?」

 

 

「…皆のスキを守る守護者、ブラックルミナス!!これ以上お前の好きにはさせない!!」

 

 

「お前がブラックルミナスか…ふふ…その実力、試させて貰うぞ!!」

 

 

「望む所だッ!!」

 

ブラックルミナスは走り出すと素早い動作からルミナスブレイドを呼び出してその柄を握り締めたまま立ち向かう。残りのウバーウが槍を此方に向けて襲い掛かるものの、それすら物ともせずに跳ね除けて次々と斬り倒した。そして目の前の怪物と対峙する。

 

「俺の名はエレキレイド…勝負だブラックルミナス!」

 

 

「…あの鞭っぽいのがヤバそうだな…ッ!!」

 

お互いに睨み合い、ゆっくりと左へ移動し立ち止まる。そして先に仕掛けたのはブラックルミナスで走り出すと同時にルミナスブレイドの刃を振り翳した。

 

「やぁああッッ!!」

 

「ふん、遅いわ!!」

 

ヒュンッと風を切る音と共にブラックルミナスの腹部へ何かが命中、鋭い痛みと共に身体が痺れると

彼女は後退した。何が起きたか解らない。左右の手が微かに震えているのが解る。

 

「な…ッ、何だ今の!?まるで電気が…!」

 

 

「ふふ…もう終わりか?終わったなら今度は此方から行くぞぉッ!!」

 

エレキレイドがブラックルミナスとの距離を詰め、右手の鞭をフルスイングし放って来た。彼女が避けると地面を引っぱたく音と共にバチィッと火花が散る。つまりアレは電気鞭、ブラックルミナスが喰らったのもそれだ。更に立て続けに左右の電気鞭を振り回してブラックルミナスを容赦無く攻め立てていく。

 

「どうした、避けてばかりじゃ戦いにならんぞ?」

 

 

「解ってるよ…ッ、くそッ!!どうすれば良い…どうすれば!!」

 

すると一瞬気を取られた隙に身体へ電気鞭が巻かれてしまい、身動きを封じられてしまう。引き寄せられた際にルミナスブレイドも手放してしまった。

 

「し、しまったッ!!?」

 

 

「ふははは!喰らええぃッ!!」

 

エレキレイドの身体が青白く発光したかと思うと凄まじい電流がブラックルミナスの身体を駆け巡った。痺れと痛みが彼女の身体を襲う。

 

「きゃあああッッ──!?」

 

 

「良い声で鳴くな、ブラックルミナス!このまま黒焦げになってしまえ!!」

 

彼女の悲鳴と共にバチバチと放電が続く。

ライクギアが何処までこの電流に耐えられるかは解らない。手足が痺れる感覚が強まると不快感も増していく。このまま諦めれば間違いなく相手の言う通り黒焦げになってしまうだろう。

 

「諦めてこのまま降伏しろ!我がアンチテリアに逆らった事がどれだけ無駄な事だと解っただろう?ヒーロー気取りも良い所だ!!」

 

 

「うぅッ…あぁ…ッッ!!」

 

確かに降伏すれば…諦めれば解放されるのは目に見えている。しかし、自分の知るヒーロー達は降伏なんかしない…諦めたりしない… こんな状況でも決して希望を捨てたりしないのだ。だからこそ彼女も諦めはしなかった。

 

「諦め…る…もんか…ッ…、絶対…諦め…る…もんかぁあッッ!!! 」

 

 

「な、ななッ、何だ!?」

 

両方の手に力を込めたブラックルミナスはフルパワーで力を発揮、身体が発光すると共にエレキレイドの右腕の鞭を引き裂いたのだ。何が起きたか解らずにエレキレイドは後退り、何度もブラックルミナスを見ていた。

 

「はぁ…はぁ…何…今の…!?」

 

すると右手首のライクギアからロインの声が聞こえて来る。

 

[今のは活力解放(ヴァイタル・リリース)、ブラックルミナスの中にあるライクリアエネルギーを高出力化して解き放った一種の技!転用すれば様々な技にも応用出来る筈です!!]

 

「活力…解放…!成程ね…ありがとう、また1つ強くなった気がする!!」

 

ニヤリと笑ってブラックルミナスは立ち上がり、ルミナスブレイドを地面から引き抜く。

そしてそれを強く握り締めると深呼吸し頷いてそれを構えた。

 

「ええい、たかが小娘如きに邪魔されてたまるか!喰らえぇいッ!!」

 

バチバチと大きな音を立てると同時に無数の稲妻がブラックルミナスへ向けて放たれる。それを避けると壁や地面に命中し黒焦げになると焦げた匂いが辺りから漂って来る。下手に避ければ余計被害が拡大してしまう事からブラックルミナスは迂闊に手出しが出来ずにいた。

 

「下手に避け続ければ家や通り掛かった誰かに当たってしまう可能性も有る…どうすれば良い…!」

 

 

「おいおい、他人の心配をしている暇が有るのかぁ!?」

 

 

「くッッ…容赦無しか!!」

 

今度はエレキレイドが攻撃を仕掛けて来た。

走り出すと同時に先程の鞭を器用にしならせて攻撃を繰り出して来るとブラックルミナスは避け続ける。そしてその中で1つの策を見出した。

 

「…こっちだ、着いて来い!!」

 

彼女は後退し、近くの屋根の上へ器用に飛び移ると挑発に乗ったエレキレイドも追い掛けて屋根へ飛び乗る。そしてブラックルミナスは屋根の上をタンタンと走って駆け出したのだ。

 

「何だ、今度は追い掛けっこか?それとも逃げる気か?良いだろう…地の果てまで追い掛け回してやる!!」

 

 

「…ロインさんッ!住宅街からアイツを引き離したいの!!何処か良い場所は有る!?」

 

駆け出したブラックルミナスは再びロインと連絡を取り始め、彼女へアドバイスを求めていた。

 

[待って下さいね…えーっと、えーっと…此処から先を左へ曲がって下さい!その次の通りを真っ直ぐ!最後は…右へ曲がって下さい!!]

 

 

「…ありがとう、助かる!!」

 

言われた通りに彼女は屋根を伝い、エレキレイドが追い掛けて来ているのを確認しながら走り続ける。そしてその場所に辿り着いた。

 

「ふふふ、漸く観念したか?此処がお前の墓場だ、ブラックルミナス!!」

 

 

「墓場?…違うね、此処はアンタが散る場所だ!!」

 

辿り着いたのは河川敷で人気も無ければ家も無い。

つまり此処なら必殺技を放っても問題がない。

そしてルミナスブレイドを再び構えるとその刃先をエレキレイドへ向ける。

 

「やれるものなら、やってみろぉおおッッ!!!」

 

エレキレイドは凄まじい音を立てて稲妻を放出、それが全てブラックルミナスへ飛んで来た。

 

「行くぞ…エレキレイドぉッ!!」

 

ルミナスブレイドを天へ掲げ、再びエレキレイドへ向けると稲妻を避けながら駆け出す。そして左右のスカートにあるブースターが点火し更に速度が増す。稲妻が直撃しそうになるがそれすらもブレイドで跳ね除けて空中へ飛び上がる。

 

「とッ、飛んだぁッッ!!?」

 

 

「スパイラルゥゥウウ!!ブレイカァアアアアッッ!!!」

 

そのままエレキレイドの頭上から勢い任せにルミナスブレイドを振り翳すと真っ二つに一刀両断。

斬られたエレキレイドはゆっくりと後退し途中で立ち止まった。

 

「おの…れ…!ブラ…ック…ルミナ…ス…ッ!俺は…貴様を…!!」

 

何か言い掛けた所でエレキレイドは爆発の肉体が砕け散った。

 

「…当分、ウナギの蒲焼きが食べられなくなりそう。ま、これで解決したし…ん…?」

 

 

視線を感じて振り返る。そこに居たのは銀髪の少女、制服は自分の通う阿澄高等学園の物と同じ。

彼女の手にはスケッチブックが握られていた。

 

「ブラックルミナス…?本物?」

 

 

「え?あ、うん…本物。キミは?」

 

 

「三原アイリ…阿澄高等学園の2年生です。あの!その…握手して貰って良いですか!?」

 

アイリと名乗った少女はブラックルミナスへ右手を差し出して来る。ブラックルミナスは彼女の右手を自分の左手で優しく握り締めた。

 

「…私の事、何で知ってるの?」

 

 

「この前、ショッピングモールで起きた事件の時にたまたまそこを通り掛かったら怪人と戦ってるのを見たの…それで格好良いなって思って。」

 

恥ずかしそうに彼女が話すとブラックルミナスは少し恥ずかしそうに照れていた。

 

「…っと、そろそろ行かないと。またねアイリちゃん。」

 

ブラックルミナスが駆け出そうとした時、アイリが彼女の背へ向けて叫んだ。

 

「また!また…会える?」

 

 

「勿論…会えるよ、きっとね…それじゃ!」

 

振り返って手を振るとブラックルミナスは河川敷から去った。そして人気の無い場所で変身を解くと津上カナへと戻る。

 

「三原…アイリさん…か。」

 

握手を交わした左手を見ながら彼女は帰路へつく。何とか勝利したがディナイアルと戦うには未だ力が足りない…カナはそう思いながら歩いて行くのだった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「カナぁーッ!買えた、買えたの!例のソフト!」

 

 

「へぇー、良かったじゃん。でもどうしたの?」

 

次の日、学校でニコニコしながらナナが話して来た。余程嬉しかったらしい。

 

「ユリカがさぁ、探して来てくれたんだよ。仕事終わりで良いならーって!そうしたらさ…」

 

 

「偶々立ち寄った店にラス1でそれが売ってたの。いやぁ…ウチのゲームオタクは五月蝿いからねぇ。」

 

とユリカが両手を広げて話していた。

結局、発売日が前倒しになってしまった原因は恐らくエレキレイドが関わっていた可能性があるとカナは何処となく察していた。本来の発売日にも同じ様に発売日するという事から買えなかった人には良い知らせなのかもしれない。

3人で話しているとコヨミがカナの肩を叩いて来る。しかも何処か神妙な面持ちをして。

 

「どうしたの、コヨミ。」

 

 

「どうしたのじゃないよ!例の…大丈夫なの?平気?」

 

 

「あ、あー…うん…平気、大丈夫!もう大丈夫だから!」

 

カナは仮病だという事を何とか誤魔化して必死にアピールしていた。嘘にしては盛り過ぎてしまったかもしれないと思って内心、反省していた。こうして今日もまた穏やかで平凡な日常を送ってはいるが、未だ2体目のレイドリアンを倒したに過ぎない…。ブラックルミナス、津上カナの戦いは未だ始まったばかり。

 

異次元侵略者アンチテリアとブラックルミナスの戦いは続く。

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