-幼い頃、私は魔法少女になりたかった。-
初めて見たアニメは女の子が変身し、カードを使って様々な事件を解決していく…という物語。
その子はとても可愛くて、何があっても負けたり諦めたりなんてしなかった。
私はいつしかそんな彼女の背中に憧れて、強い人間に成りたいと思う様になった。
それから私は様々な女児向けアニメを見始めた。
そしていつの間にか女の子が変身し悪と戦う物へと視聴物が変化していく。テレビの向こう側の女の子達は明るく、毎日楽しそうに過ごしている…
でも私の現実は違った。
そういったアニメや漫画を見る変な人…所謂、オタクとして周囲から扱われる様になり…周りから避けられ始めた。私はアニメが好きなだけ、誰かに迷惑を掛けたりしていないのに何故嫌われるのだろう?何故避けられるのだろう?その理由が解らぬまま…16歳になった…。
高校生になってからは、いつしかイジメのターゲットにされてしまった。
そして今もそれは変わらない……。
これが私の現実だ。
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「戦力強化?」
「ええ、そろそろ敵も何かしらの対策をして来るだろうと思いまして。」
「それは良いけどさ…何で学校に居るの?ロインさん。」
カナは何故かロインと2人で学校の廊下で話していた。というのも、彼女がいきなり編入して来たのだ。オマケにカナの隣のクラスと来たから幾ら何でもコレは流石にやり過ぎな気がする。
「正式な許可は取ってますのでご安心を。それよりどうです?少しイメチェンして片目も出してみました♪白衣と着ている服はそのままですけどね。」
「学校は普通制服でしょ!?」
「私は特別に許可を頂いてますのでご安心を!それより…どうします?戦力強化の件は。」
「増えた方が有り難いけど…ロインさん言ってたじゃん、そう簡単に見つからないって。」
「実はですね、最近強いライクリアエネルギー反応を感知したのです。確かアレはカナさんがあのエレキレイドを倒した後…だった気がします。」
「あたしが?…まさかあの子かなぁ…でもそんな風には見えなかった気がする。」
外を見ながら考えていると偶々カナが視線を下に移した時、数人の学生に囲まれている銀髪の子を見付けた。唯ならぬ雰囲気である事からカナは考えるより身体が勝手に動いてしまっていた。
「あッ、カナさん!?言っちゃった……。」
ロインが追おうとした時には既にカナの姿は無い。
そして当の本人は先程見た光景の場所へ走って駆け付けるとそこにはスケッチブックと筆記具が乱雑に散らばり、絵も破かれていた。
そしてその持ち主は下を向いて唇をずっと噛み締めている。カナにはその顔に見覚えがあった。
「確か…三原さん……だっけ?」
三原アイリ、ついこの前だがブラックルミナスことカナへ声を掛けて来た子。殴られたのだろうか?左頬が赤く腫れていた。
「何かされた…大丈夫?」
「何でも無いから…ほっといて…!!」
彼女はカナを睨んで威圧しそのまま筆記具とスケッチブックを持つと去ってしまう。だが破かれた1枚の絵だけは忘れて行ってしまった。美しいタッチで描かれた女の子の絵には私のヒーローと書かれている。カナはそれを拾うとじっと見つめていた。
「これ…、あの子が描いたんだ…。」
そこに描いて有ったのはブラックルミナス、漫画家が描いた様なその絵は見ていて逆に驚く。
それをカナは持ったまま教室へと戻って来た。
ユリカとナナと居たコヨミが彼女へと声を掛けて来る。
「あれ?カナ、ロインさんは?」
「用事が有るってさ。…コヨミ、セロテープ持ってる?」
「有るけど…って、どうしたのその絵!凄い上手いじゃん!?カナ神絵師になれるんじゃ…!」
コヨミが指さすとユリカとナナも食い付いて来る。
だが破かれている事に気付くと少しガッカリしていた。
「描いたのはあたしじゃない…あたしのファンの子。ちょっと色々有ってね…セロテープ借りるよ、コヨミ。」
コヨミから手渡されたセロテープを使って破かれた箇所を合わせて裏側から丁寧に接着し修復する。
カナは器用では無いが、それでも破れていたとは思えない位に綺麗に補修した。
後はコレを返却すれば終わりなのだが…彼女のクラスを聞いていなかった事から返そうにも返せない。
ちょっと貸してとユリカがそれを手に取ると見ていた。
「で…誰が描いたのコレ?」
「えーっと…確か三原アイリって子…それが何?」
「三原さん?あー…あの子か……。」
ユリカは思い出した様に頷くと何かを知っている様子だった。カナは首を傾げて彼女の方を見つめる。
「カナと同じオタクだよ、筋金入りの。目立たないし…あまり誰かと話そうとしないから友達も居ない。所謂ボッチって奴…かな。」
「あたしと同じか…なら友達になれるかな?」
「多分ね…同じオタク同士なら気が合うんじゃない?」
ユリカが絵を返すと微笑む。
彼女は彼女なりの目線で色々と物事を見たり、聞いたりするタイプであまり偏った言い方はしない。
直ぐに要点だけ纏めてきっちり説明するタイプなのだ。
「でも…あたしが見た時、三原さん何か辛そうだった。コレも破かれてたし…筆記用具も散乱してた。オマケに頬も何か赤く腫れてたよ?」
そう話すとユリカが少し考えてから呟いた。
「…その子…虐められてるんじゃないの?」
「虐められてる?…何で好きな事で虐められなきゃいけないのさ?」
「カナの場合は特別だからだよ…本来ならそういう変わった趣味を持ってると他者に知られた時に揶揄われたり、差別されたりする場合が有るの。多分、三原さんはそのケースだと思う。」
ユリカがそう話すとナナも頷くとカナの隣に居たコヨミも話し始めた。
「…カナだって私と会う前は1人だったでしょ?アレも虐めに入るんだよ…本当ならさ。」
「ッ…何とか出来ないの?あたし…そんなの嫌だ…趣味が他人と違うってだけで虐められるなんて…間違ってる!!」
ガタンと大きな音を立ててその場に立ち上がる。
だが、現実は厳しい…下手に介入すればどうなるか解らないからだ。次は自分が標的にされるかもしれない、そう思うと誰も手を出そうとはしないのだ。
コヨミがカナの方を見ながら再び口を開く。
「カナ…、止めときなよ…下手に関われば次はカナが虐められるかもしれないんだよ?」
「…だからって見て見ぬフリしろって言うの?あたしはもう見ちゃったの…!そんなの出来っこない!!第一、そんな事したらあたしの好きな物から逆に嫌われる…!」
「カナ…!!」
「……会って来る、三原さんに。これも返さないといけないから!」
コヨミの静止を振り切ってスタスタと絵を持ってカナは歩いて行く。確かに報復は怖い…それでもキッパリと嫌だと言わなければなにも変わらない。
2年生の他のクラス中を探し回り、漸く彼女を見付けた。そして中へ入ると真っ先に彼女の元へ来た。
「……貴女、さっきの。」
「これ…ブラックルミナスでしょ?」
「……だったら何?」
「あたしも好きなの…ブラックルミナス。だから…もっと話そう?あたしで良ければ聞くからさ…ね?」
「ッ…余計なお世話……絵の事は感謝してる…でも私にあまり関わらない方が良い。貴女も私みたいに成りたくないならさっさと自分の教室へ帰った方が良い…兎に角、私に関わらないで…!」
ジロリとアイリから見つめられるとカナは何も言い返せない。すると此方へ3人が近寄って来て、カナを押し退けるとアイリを連れて何処かへ行ってしまった。
「またあの顔だ…あの嫌だけど仕方なく従ってるって顔……。」
彼女達の後を追い掛けて行くと入って行ったのは離れの場所にある女子トイレ。中から怒鳴り声と物音が聞こえて来る。
何気なく覗いてみると思った通り、彼女はそこで殴られたり蹴られたりと散々な目に遭わされていた。
「ッッ…!」
見て見ぬフリが出来たら、知らない顔をしていればどれだけ良かったか。だがそんな事をしたらヒーローが自分を避ける…嫌な事にはキッパリ嫌だと言わなければヒーローではない。真っ直ぐ突き進んで中へ入るとアイリへ向けられた拳をカナが後ろから止めた。
「誰だお前!?」
「…誰だって良いでしょ。流石にリンチはやり過ぎだって…。それに殴るならあたしにしなよ、こんな可愛い子殴っても損するよ?」
手を離してアイリの前へ立つと首を傾げて見つめる。相手は自分より少し背の高い女子、それから取り巻きの3人。主犯格はこの真ん中の長身の奴だろう。
「へぇ、まさかヒーロー気取りのつもり?」
「そうだよ…悪い?」
カナが相手を見つめていると思い切りフルスイングの右フックが左頬を直撃し、カナが倒れた。
慌ててアイリが駆け寄って彼女を見つめる。
「大丈夫!?ッ…鼻血出てる…!」
「あ…ホントだ…でも大丈夫、殴られるの慣れてるから。」
そっとアイリを退けて立ち上がると鼻血を親指の腹で拭き取り、相手を睨んで威圧する。途端に向こうもカナを見て呟いた。
「私は園崎トキメ…あんたの名前は?」
「カナ…津上カナ。」
「へぇ…良い名前してんじゃんッ!!」
今度は腹に一発、強めのパンチが真面に入る。
思わずカナは目を見開くとやり返さずに悶えて苦しんでいた。そうこうしてると今度はトキメの左肘がカナの背中の肩甲骨辺りへ思い切り命中し地面へ倒れ込んでしまった。
「どうした?やり返さないの?」
「ッ…生憎…あたしは暴力嫌いなの…こんなワルみたいな髪型してんのに…そういうの嫌いなんだ…ウケるでしょ?」
カナは笑いながらフラフラと立ち上がると再び身構える。
「さぁて…何処からでもどうぞ?」
「こんの…ッッ!!」
そしてカナはトキメにより殴られ蹴られ続け、解放されたのは1時間経った後だった。
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カナが次に目を覚ましたのは保健室のベットの上。
全身が兎に角、痛む。横へ目をやるとアイリが座っていた。
「あ…三原さん…大丈夫だった?」
「ッ…私は平気…逆に貴女の方が心配になる。あれだけ沢山殴られたり蹴られたりしたのに…バカなの?関わらないでって言ったのに。」
「…バカは酷いな。貴女がほっとけなかった…それだけ…そう思ったら身体が勝手に動いてた。」
「…目を付けられるわよ…アイツらに……。」
「慣れてるから平気…それより貴女が無事で良かった…。」
カナは絆創膏とガーゼの貼られた顔で笑って見せた。後からコヨミ達も来ると心配そうにカナの様態を気にしては色々と話していた。コヨミはカナの話を聞く中で1つ気になっていた事を呟く。
「ねぇ…カナ、何でやり返さなかったの?」
「やり返したら…あたしもアイツらと同じになる気がしたから。だから…やらなかった。」
「……三原さんの為?」
「それも有る…かな。手を出すのは簡単だよ?気に入らない…ムカつく…大嫌い…とか色々な理由が並んでるから。でも、やられたまま終わるのは違う…あたしは選択肢を増やしただけ。此処からどうしたいかは三原さんが決めれば良い…。」
振り返ると俯いているアイリを見つめる。
ゆっくりとアイリは顔を上げ、カナと目が合った。
「…このままやられっぱなしで…終わらせちゃいけない。このまま黙っていれば同じ事がまた繰り返される…戦わなきゃダメだよ、目の前の理不尽と。」
「でも…!」
「大丈夫…あたしを信じて。あたしが貴女の味方になる…此処に居る3人も皆、貴女の味方だから!」
ね?とカナが3人へ視線を送ると小さく頷いた。
そのタイミングでカナの電話が鳴る。
「もしもし…?解った、直ぐ行く…場所は?……解った、ありがとう!」
カナはベットから降りるとフラフラと歩き出す。
殴られ、蹴られた箇所が痛むもののそれでも彼女は歩いて行く。堪らずアイリが咄嗟に駆け寄って彼女へ肩を貸した。
「……何処行く気?ボロボロなのに…傷だらけなのに!」
「…困ってる人の所。あたしよりもずっと困ってる人の元へ……!」
「え…?」
カナとアイリの2人は共に歩いて玄関へ向かう。
お互い靴へ履き替えると再びアイリに支えられながら校門の付近へ差し掛かるとカナはアイリから離れた。
「…ありがと…もう大丈夫…!」
「津上さん…貴女…一体…?」
するとカナは無言で左手のリストバンドへ手を翳しライクギアを展開する。そしてアイリの方を向いて呟いた。
「…皆には内緒にしてね?トランス・イグニッション!!」
「ッッ…!!?」
カナが光に包まれ、その変化した容姿が姿を現す。
そこに居たのはカナでは無かった。
「ブ…ブラック…ルミナス……!?」
「…これが本当の私の姿、ブラックルミナス…。言ったでしょ?私は貴女の味方で…ずっと傍に居るって。だから貴女も戦う事を諦めないで…それにヒーローはいつも、貴女の傍に居る!」
ブラックルミナスは微笑むと背を向け、走り出す。そして左右のスカートのブースターを用いて建物の屋根へ飛び上がった。
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「貴様らのスキは何だ!それを俺様に寄越せ!!」
街では黒いトカゲ型の怪人が無作為に暴れ、ウバーウが囃し立てる様に民間人を襲う。その内の1体が動かなくなり、止まってしまった。
「おい、どうした!何をやっている!」
トカゲ型の怪人が近寄るとウバーウが突然倒れてしまった。よく見ると背中に斬られた痕がある。
「な…ッ!?何処のどいつが…!」
「私だ、レイドリアンッ!!」
近くのウバーウ2体が倒れるとブレイドを握り締めたブラックルミナスが立っていた。
「出たなブラックルミナス…!我が名はリザードレイド!貴様を葬る為に送り込まれた者!!」
「毎度毎度、自己紹介助かるよ…こっちも名前憶え易くて助かる!!」
剣を向けながらゆっくりと歩き、リザードレイドと対峙する。そして彼女はルミナスブレイドを構えた。
「俺様の目的は唯1つ…ブラックルミナス!貴様を倒す事だ!!」
「え…誰かの好きを奪うとかじゃないの!?」
「行くぞぉおおおッ!!!」
リザードレイドは左右の鋭い鉤爪を展開し襲い掛かるとブラックルミナスとの戦闘が幕を開ける。
目の前で鉤爪とブレイドの刃が擦れる度に金属音が響き渡る。だが、ブラックルミナスの様子が何か可笑しい…何処か苦しそうにしながら戦っていた。
「どうしたどうした?いつもの動きは出来ないのかぁッ!?」
「ぐぅッ…蹴られた所が…痛む…ッ!!ダメージはそのまま…残るのか!」
何とかブレイドを用いて攻撃を受け流し、呼吸を整える。今までのレイドリアンとは違って妙な雰囲気が有る…あまり時間を掛けると此方が不利になる事から早期決着を付けるべくブラックルミナスは素早くブレイドを上に掲げて変化させると構え直す。
「決着だ!スパイラルゥウウ…ッッ!!」
深呼吸してブレイドを構えた時。
リザードレイドが笑った様に見えたのだが、お構い無しにいつもと同じ流れでブラックルミナスはスカート部のブースターを利用し加速するとリザードレイドとの間合いを詰めた。
「ブレイカァアアアアッッ!!」
「…甘いッ!!」
途端に何かが命中しブラックルミナスは弾き飛ばされると地面へ錐揉みに回転した上で倒れてしまった。彼女からすれば何が起きたかのか解らない。
「な…ッッ…!?」
「我が強靭な尻尾の前では貴様の技など取るに足らぬ!!さぁ、今日で貴様の不敗伝説はお終いだ…貴様のライクリアエネルギーを俺様に寄越せ!!」
「くそ…ッ…身体に…力が入らない……ッ!! どうすれば良い…どうすれば…!」
差し迫るリザードレイドを前にブラックルミナスは窮地に立たされてしまう。このままでは自分の中のエネルギー全てを吸い尽くされるのは間違い無い。
ブラックルミナスへ手を伸ばした時、リザードレイドが銃声と共に仰け反って後退する。
彼女の窮地に駆け付けたのは意外な人物だった。
振り返ったブラックルミナスは驚いていた。
「キミは…ッッ!?」
それは彼女も予想しない人物だった。
(続く)