開幕戦を快勝し、これで勢いづいた神奈川は阪神との開幕カードを全勝。
上位だけとはいえ打線が機能している点が、やはり大きい。
援護点が入りリードできれば、8回に宮西、9回に守護神藤原がマウンドに上がり、そのまま相手打線を完全に抑えてくれるから、頼もしいことこの上ない。
守備面でもショートの小坂が好守を連発。小さな身体を活かしたダイビングキャッチがたまらん。
また、これまでほぼ穴と化していた外野もセンターに秋山が加わり、ようやく守れるようになったといえる。
4月も終盤に差しかかり、今月まではセ・リーグ3位につけれていて、なおかつ故障者もまったくいない。
昨季まではあれだけ貧弱球団といわれ続けていたが、今季では前半戦からそんな声を覆している。
これならあるいは優勝も、と欲を抱いてしまう。
まあ、それがいけなかったわけだが。
5月に入った途端、先発ローテに入っていた投手がふたり負傷し故障者リスト入り。
絶対的エースの斉藤や今季絶好調の松坂と和田、リリーフの宮西と藤原は健在だが、このままでは遅かれ早かれどこかで崩れるかもしれない。
しかし今のチームには勢いがある。
それを止めるわけにもいかず、結局二軍から昇格させた投手を先発ローテへ。
その投手たちをぶつけた文売ガイアントとのカードでは、相手先発の大物ルーキー、上原にこちらの打線を完全に抑え込まれ大敗。
次戦でも相手エースの内海こそ打ち込むもこちらの先発投手がまったく保たず11-17というスコアを残し敗北。
と、5月前半の成績はあまり芳しくない。
けれど下を向いたままではいけない。先にはまだ、乗り切るべき難所が立ちはだかっている。
5月中旬からセ・パ交流戦が始まり、神奈川は初戦から福岡を本拠地とする太平コンコルドとぶつかる。
しかも相手ホームでの開催だ。現時点での太平は今季のパ・リーグ1位。
太平との初戦はルーキーの松坂を先発させ、次戦は斉藤に任せるつもりだが、これがどう出てくるのか。
期待半分、不安半分といったところ。
「長月さん! 長月さん!」
と、球団スタッフが駆け込んできた。
それも肩を震わせて。なにが、と口を開こうとすると、
「太平のやつら、神奈川相手にエースを出さないみたいですよっ……!」
「――は?」
一瞬、耳を疑った。
しかし彼の表情は真っ赤で恐らく真実だ。
「代わりにルーキーを先発登板させるみたいですよ……! あいつらっ……!」
「なるほど、ね」
なるほどこれはかなり舐められているようだ。
「とりあえず、その先発予定のルーキーとやらは?」
そう問いかけると、
「……
「――――は?」
本日二度目の驚嘆である。
もし相手が杉内なら、かなりの対策を練らないといくら強力打線とはいえ打てない。
そう思い立ち、駆け足のまま電話を耳に当てる。
『もしもし、中です』
「長月です。突然すみません中さん、今ちょっといいですか?」
『私は大丈夫ですが……どうされました?』
「太平との初戦、相手先発が社会人ルーキーの杉内に決まりました」
『……ふむ』
「確かにあれもルーキーです。ですが、あれは間違いなくとんでもない左腕です。現にまだ今季一回も負けてません」
『なるほど、つまり……その杉内対策をしろ、と?』
「はい、そのとおりです」
んー、と中さんは悩むような声で。
『わかりました。今のうちに杉内を分析しておきます。……その日の先発は松坂のままで?』
「はい。それでお願いします。……すみませんいきなり、こちらからは以上です」
電話を切り、早速杉内が先発した試合を調べてみる。
杉内は闘志を剥き出しにする一方、力感のない投球スタイルで相手を幻惑する技巧派だった。
特にカーブ方向の変化球とチェンジアップは脅威だ。杉内のペースに呑まれたが最後、勝負はついたと見ていいのかもしれない。
だがこちらには今季未だ絶好調の松坂がいる。
松坂が試合を作ってくれる限り、負けはしないはず。
太平コンコルドとのカードは、白熱した一戦になりそうだ。
アンケートの結果は掲示板が「いる」との解答が多数でしたので、次回は掲示板になります。