6月。交流戦の全日程を経て。
我が球団は、今までにないほど盛り上がっていた。
首脳陣、選手、ファン……この球団に関する各方面から歓喜が飛んでいた。
交流戦成績は、11勝4敗3引き分け。
先発三本柱が中心となって試合を作ってくれたおかげで、今季の交流戦では圧倒的な成績をあげることができた。
もちろんこのような成績だったため、交流戦は優勝。セ・リーグでも2位に躍進している。
絶好調にある球団は今でも快進撃を遂げており、6月終盤に差しかかっても、その勢いは止まっていない。
特に斉藤はここまで14勝0敗と、とんでもない成績を残している。
打線も絶好調で、中でも山田は今シーズンでトリプルスリーを達成するのではと噂されているほどだ。
そんな状況にある神奈川ブルーホエール、そのホーム球場の横浜スタジアムは、日に日に目に見えて客足が増えている。
昨季まで最弱球団のレッテルを貼られていたが、今季の大躍進でファンがついたり、戻ってきてくれたりしている。
入場者数もグッズの売上も伸びている。まさに鰻登りのように。
そうした事情もあり、今回ある行動を起こす予算が降りた。
それは昨季こそ大失敗した外国人選手の獲得、というものだ。
今の神奈川にはある程度の予算がある。その資金を投じて、掘り出し物を見出そうというのが目標だ。
というわけで、今こうしてマイナーリーグで活躍、もしくは極端な不振に陥っている外国人選手に目星をつけようとしているのだが、これがなかなか掘り出すことに苦労しそうだ。
正直、極端な不振に陥っている外国人選手にも目をつける理由は、やはりコストカット的な要因が大きい。
「でもこれがだいたい外れなんだよ……」
そんな愚痴を吐き捨てつつ、外国人選手の調査レポートを読み進める。
すると、ひとり気にかかる名前が記載されている。
というか、本来ならこのレポートにないであろう選手の名前だった。
その選手は昨季マイナーの2Aで打率.302、11本塁打を記録しているが、3Aに上がった今季では打率こそ3割だが0本塁打と大苦戦しているという。
本来ならニューヨークまでかっ飛ばす男と謳われたこの選手は、そんな現状だから、戦力外最有力候補であるようだ。
であるなら、
他に目をつけている球団もいないようだから、早速交渉を申し込もう。
「おーい、この選手を獲ろうと思うから、これの代理人に連絡してくれ」
レポートにある『
電話越しとはいえ代理人と話してみると、明らかにおかしい話が飛び出してきた。
先の外国人選手は本職は
足が弱く走塁が致命的な弱点なはずだが、なぜか盗塁の指示を頻繁に出されたり。
とにかく、彼を上手く運用できていない実態が出てくる出てくる。
これには代理人もかなり参ってしまっていて、
『できるなら高額なオファーを要求したいが、今はもうそれどころではない』
なんて言葉が飛び出すほど。
それに守備や走塁面でミスを重ねてしまい、本人の一番得意な打撃にすら影響が出始めているらしい。
そういうわけなので、
「よろしければ、我が球団に来てくれませんか? 契約金はほどほどにしてくださいね」
と苦笑混じりに返すと、
『まだ本人の意思確認はできていないが、恐らくその求めには応じるはずだ。その際の契約金は……そうだな、日本円で5000万円、年俸はその半分でお願いしよう』
「わかりました。契約金は6000万円、年俸はその半分を提示させてもらうんで、本人へ伝えてください」
正直、これほどの野手がこんな契約金でいいのかと悩んだが、最終的にそのような結果となった。
こうして、神奈川はひとりの外国人野手の獲得に成功した。
本人も快諾してくれたみたいで、すぐにでも来日するとの返答があった。