弱小球団のGMになりまして   作:佐月檀

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 前話のアンケートにご協力いただき、ありがとうございました。


神様仏様――――

 シーズンも最終盤となった10月。

 しかし今日も今日とて、懲りずにスカウトに出向いている。

 かじかむ鼻の下を指で擦りつつ、携帯を起動し目を通す。

 目の前にそびえるのは、大分県にある某大学。

 今日はその野球部に用があり、こうして訪れたわけだが……。

 

「……ここにいたのか、広島出身の選手って」

 

 この大学にいたのは少し予想外だったが、今こうして他球団の目を掻いくぐれているのは間違いない。

 もうすぐ卒業という情報もあるし、思い切って訪ねてみる。

 そういう連絡も取っているし、もう午後を回り予定時刻にもなっている。

 大学に足を進めようと――

 

「……そこのオニーサン、もしかしてここになにか用事かい?」

 

 する直前、背後から声をかけられた。

 振り向くと、そこには糸のような目をした気のよさそうな少年が自転車に乗って止まっていた。

 

「あ、ああ。うん。ちょっと込み入った用事があってね」

 

「…………もしかしてなんやけど、プロ野球の人かい?」

 

 糸目を見据えると、逆に見透かされているような気さえしてくる。

 そんな青年だから諦めて素直に首肯すると、

 

「おお! ホンマやったんか! そこの大学、ここらじゃちょっと強いけんなぁ……」

 

「……マジ?」

 

「うん。大いにマジや。一回そこの打者とやらせてもらったからボクが一番ようわかっとる」

 

「え、キミも野球やってんの? ポジションは?」

 

「ま、高校生やけどな。ポジションはピッチャーや。ストレートとスライダーぐらいしか取り柄あらへんけど」

 

「…………ふむ」

 

 ひとつ思い立ち、その少年の腕をがっしり掴む。

 

「突然ごめん、プロ野球のスカウト現場、興味ない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先の少年の帯同を急遽大学側にお願いしたところ、なんとか許可が降りたので、その少年を伴い、部室に入り目当ての人物を待つ。

 と、3分もしないうちに背の高い細身のハンサムが入ってくると、一礼してひと言。

 

「すみません、遅くなりま……し……た……」

 

 ハンサムは少年と目を合わせると、大声をあげ目を見開く。

 

「お前……なんで()()いんの!?」

 

 ……ん? また?

 

「おう久しぶりやね。ギーちゃん」

「ギーちゃんじゃねぇよ!? いやなんで!?」

「おっと、ギーさんのほうがよかったかい」

「そういう問題じゃねぇよ!?」

 

 すまない、とハンサムに声をかけると、ハッとしたのち、深く頭を下げてくる。

 

「すんません、取り乱しました……」

「……ふたりとも、なんかあったの?」

 

 ふたりの因縁らしきものを聞いてみることに。

 

「いやこいつ、去年も今年も野球しよう野球しようって絡んできてて……で、本当にやったらですよ、こいつの球、やたら速く感じるんですわ……」

「なんやそんなに。褒めても球ぐらいしか出らんよ」

「え、高校生と大学生で野球を?」

「いや、こいつひとりでここに殴り込んできやがったんですわ」

「ええ……」

「なんでも、『対戦相手がもうおらへん』とかなんとか……」

 

 高校生のほうを見向いてひと言。

 

「キミ、だいぶ変人だぞ」

「だからそんな褒められたら照れますから」

「いや褒めてねぇよ!?」

 

 まあまあ、と割って入って、ハンサムを見据える。

 

「さて、キミがこの大学最強打者の柳田悠也(やなぎだゆうや)、だね? 単刀直入に言うけど、我が球団――神奈川ブルーホエールで、1位指名してもいいかな?」

 

 ハンサム――柳田は大きく首を縦に振り、次にまた頭を下げてくる。

 

「ぜひお願いします! どこからも声かかってこなかったんで……」

「なんやギーちゃん、指名なしやったん?」

「だからギーちゃん言うなって!?」

 

 と、隣にいた少年を思い出し、ひとつ尋ねる。

 

「そういや名前聞いてなかったね。そこな少年、名前は?」

「お、そこ聞いてくるんか」

 

 少年が鼻を鳴らし口を開こうと、

 

「こいつ、稲尾智久(いなおともひさ)っていう高校生です」

「ちょっ、ギーちゃん! それはないやろって!」

 

 した直前で、柳田が口を挟んでくる。

 

「……ふむ」

 

 名前を聞いて、顎に手をやる。

 

「柳田くん、ちょっと申し訳ないんだけどさ」

 

 ――そこの稲尾くんとやらと1打席勝負してみてくれない?




 次回かその次あたりにまた掲示板回を挟むかもしれません。
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