2023年に入り、春季キャンプも経て。
今年こそ優勝を狙う我ら神奈川は、早速3月から始まるオープン戦に向け、各々が準備に取りかかっている。
昨年終盤に入団したばかりのルーキーたちも、きびきびとしたいい動きを見せていて、特に柳田はドラ1というのもあり、オープン戦から積極的に起用されるだろう。
また、ドラ2キャッチャーの伊東はすでに開幕スタメンが球団内部で決まっている。
打撃面をテストするためでもあるが、なによりキャッチャーとしての力量を確かめるためだろう。
ただひとり気がかりなのは、ドラ4の藤浪だ。
春季キャンプでは前評判どおりコントロールが定まらず、実戦形式では暴投や四球を連発していた。
唯一安定感がありそうだったのが、伊東とバッテリーを組んだ時のみ。
この時は奪三振ショーを繰り広げ、試合を作れていた。
が、伊東以外とは不安定すぎるので、当分は伊東ありきでの運用になるはずだ。
そうしてオープン戦が始まる3月に差しかかったわけだが、今日は横浜スタジアムでの一戦。
ホームでのオープン戦に先発登板するのは、昨季では安定した活躍でチームを支えた和田。
阪神との一戦。和田は2回までの登板。この条件の中でどこまで戦えるか。
マウンドにいる和田の視線の先には、キャッチャーの伊東。
伊東が一度サインを送り、和田も頷いて。
セットポジションに入り、左腕を振り下ろす。
投じられたのは、あまり多用しないカーブ。
それが外角低めギリギリの際どいところに入ったらしく、審判がストライクを告げる。
伊東がミットを構え、和田がそこへ投げる。
2球目はインコース、高めのストレート。ストライクゾーンに入っているようで入っていないこのボールを、相手打者が空振りしツーストライク。
追い込んだ3球目は、緩急自在な和田が得意とするサークルチェンジ。
内角低めに緩むこの球を打者は思わず空振りしてしまい、まずは奪三振でワンナウト。
続く2、3番からも三振を奪い、和田が最高の立ち上がりで1回を締めた。
神奈川の攻撃では、1番セカンド山田がいきなり打ってセンター返し。
続く2番サード小笠原がライト前へのヒットで出塁。
3番センター秋山が初球をレフトスタンドに叩き込み、いきなりのスリーランホームランで先制に成功。
4番ファーストのバースは球を選んでフォアボール。
5番ライト柳田がレフトに長打を放ち、これで無死二・三塁。
6番キャッチャー伊東がライトとセカンドの間にポテンヒットを放ち、これで4得点だ。
いい具合に試合を作れている。
試合の中にいなくとも、そのようにわかるワンサイドゲームだ。
阪神相手にこの優勢っぷりなのだから、ベンチの中監督も笑みが止まらないようだ。
最終的にこのオープン戦は8-0と神奈川の圧勝に終わった。
和田、藤浪、宮西、藤原の投手リレーは圧巻の内容で、阪神打線は完全に封じられていた。
この試合で、伊東とのバッテリーなら藤浪も球があまり荒れずに済んでいるらしいので、早速一軍の先発ローテ入りを果たすようだ。
「……これ、いけるよ。優勝」
そんな言葉をベンチに座って口にしたのは、興奮冷めやらぬ様子の中監督だ。
確かに阪神打線をこの投手リレーとはいえ封じれたのは大きい。
……優勝を口にするほどの興奮。その理由があるようだ。
「どうしたんですか中さん、そんなに笑って」
「いけます、これなら。うん、絶対に。絶対いけます、間違いなくいけますよ」
「一旦落ち着きましょう中さん」
なにか思うところがあるのは間違いないようだった。
「今日の試合、よかったんですか?」
率直にそう問うてみると、
「うん、今までで一番いいかもしれない」
という答えが即行で返ってきた。
「それは、どうして?」
「秋山、バース、柳田……他もいいですが、やはり今はこの三人が飛び抜けている印象です。ただ……」
中さんは顎に手を当て、口を開く。
「他も仕上げてくるでしょうから、シーズン中はたぶん、もっと凄い爆発をすると思いますよ」
「それは……?」
「シーズン中のお楽しみってやつですよ、長月さん」
どうやら中監督はこのオープン戦だけでも、十分すぎる手応えを感じているようだ。
オープン戦でこの圧勝、中監督からもお墨付きを貰った打線、投手陣の好調っぷり。
これなら確かに、シーズンを戦い抜けそうだ。
俺もこの一戦を観戦しただけでも、今季の充実っぷりを窺えることができた。
――他球団の話題を、知るまでは。