それでは、どうぞご覧ください。
side:リエン
「よ、ようこそお客人方……私はこの村の長を務めているものです」
僕はリムルと共に、ゴブリンの村へと案内されていた。
「ご丁寧にどうも……」
「ど、どうもよろしく……で、自分にお願いとは何ですか?」
「は、はい、実は―――」
ゴブリン村の村長によると、最近魔物の動きが活発になり、近隣の魔物がこの村に襲撃を仕掛けてくるようになったらしい。ゴブリンたちも村を守ろうと応戦したものの、苦戦を強いられていた。そんな状況の時に出会ったのが……
「えーと……自分スライムなもので、期待されているような働きはできないかと……」
僕たち………というよりも、リムルなのだという……。
「そんなご謙遜を」
「ご謙遜を」
「?」
「ただのスライムにそこまでの
妖気……基本的に魔物は、それで相手の力量を判断するんだっけ……。
(うわっ!?)
(?どうかしたの?)
(い、いや!何でもないぞ?)
(……?)
「さ、さすがは村長、分かるか?」
「もちろんでございます。漂う風格までは隠せておりません」
「そうか、分かってしまうか……お前たちは中々見所があるようだな?」
リムルは今の今まで妖気を出しっぱなしにしていたが、どうやらゴブリンたちを試していた……
「おぉ、我々を試されていたのですね?その妖気に怯える者も多かったもので、助かります……」
「そ、そうだな。怯えずに話し掛けてくるとは、見所があるぞ」
「……」
……のかな……?
(なぁ、リエン?)
(何?)
(もしかしてお前、俺が妖気を全開にしてるのに気づいてたり……)
(うん、霊眼でもはっきりと)
(な、何で言ってくれなかったんだ……?)
僕はリムルにそう訊かれるが……
(いや、何か考えがあってそうしてるのかと思って……)
(そ、そうか………って、お前は何で妖気を出ていないんだ?)
(何でって……初めから抑えてたよ?)
(抑えてた……?)
(それに、わざわざ妖気を出しておく理由もないし)
(それは………まぁ、そうだよな……)
「そ、それでですね、お願いというのが―――」
村長の話によると、東の地から約100匹の狼の魔物………牙狼族が押し寄せてきて戦いになった。本来、牙狼族1匹に対してゴブリン10匹で戦っても勝てるかどうかという戦力差だという。その戦いでゴブリンの戦士たちが多数討ち死に……その中には、村の守護者である名持ちの戦士もいて、牙狼族の数の情報はその戦士が命懸けで得たものだった。
「その戦士の名は『リグル』……私の息子で、これの兄でした……」
「っ……」
「そうか……悪いことを聞いた」
「……」
家族を殺された………か。すると、それを聞いて……
「……村長、1ついいか?」
「は、はい……?」
「俺たちがこの村を助けるなら、その見返りはなんだ?」
『!』
「お前たちは俺たちに、何を差し出せる?」
リムルがそう言うと、ゴブリンたちは驚いたような表情をする……。
「わ、我々の忠誠を捧げます!我らに守護をお与えください!さすれば我らはリムル様に忠誠を捧げましょう!!」
村長がそう言って頭を下げると、その息子のゴブリンも続いて頭を下げた………その時、
「?」
僕のスキル『強化六感』によって、微かな音と気配を感じ取ったのだ。そして、その直後……
「ウオオオォォォーーーン!!」
ここからそう離れていないところから、狼の………おそらく牙狼族と思われる魔物の遠吠えが聞こえてきたのだ。
「が、牙狼族だー!?」
「もうおしまいだ!!」
「は、早く逃げよう!」
「逃げるってどこに!?」
それを聞いたことで、ゴブリンたちはパニックに陥る………それを見て、リムルは……
「ビビる必要はない。これから倒す相手だ」
『!』
「で、では……!」
「お前たちのその願い、暴風竜ヴェルドラに代わり………
このリムル=テンペストが聞き届けよう!」
『!!』
こうしてリムルは、ゴブリンたちの主……守護者となり、この村を牙狼族から守ることになったのだった……。
「ところでリムル様、そちらの方は……?」
「?誰って………あ」
………そういえば、話を聞くのに集中してて、僕の自己紹介はまだだったな……。
「お前たちにも紹介しておく。俺の弟のリエン=テンペストだ」
「僕は狐霊族のリエン=テンペスト。リムルと同じく力を貸すから、よろしく頼むよ」
そう自己紹介をすると……
「あ、ありがとうございますリエン様!リムル様と同様、貴方様にも我らの忠誠を捧げましょう!」
「え?いや、別に僕に忠誠とかは―――」
村長がそう言うのに続いて、周りのゴブリンたちは僕にも頭を下げる。
「……」
(リエン?どうかしたか?)
(いや……)
もちろん、僕もこの村とゴブリンたちは必ず守るつもりだし、必要とされているなら守護者にもなる。でも……主みたいなのは、リムル一人だけの方がいい気がする……。
その後、リムルは戦いで負傷したゴブリンたちの治療を、僕は洞窟で手に入れた魔物のスキルを使い、村の周りにある柵の強化を済ませた。それが終わり、手が空いた僕は……
「………っ!」
村の外れの方で、『風変化』のスキルで作り出した風の弓………『風弓』とでもしておこう………それの感覚に慣れるために、周りの木を的の代わりにして鍛錬をしていた………ダメだ、もっと上手くやらないと―――
「あ、あの、リエン様!」
「?」
すると、何匹かのゴブリンたちが、僕へと近づいてくる。
「……どうしたの?あと、僕に『様』とかはいらないから」
「!そ、そんな恐れ多い……」
「恐れ多いって……」
守護者なのは僕も同じ……でも、主はリムルだけのはずなんだけど……?
「それで、何か用?」
僕が構えを解きながらそう言うと……
「は、はい!その……
少しでいいので、俺たちに弓を教えてくれないでしょうか!!」
「弓を……?」
先頭のゴブリンが、緊張した面持ちでそう頼んできたのだ………僕としては、教えることに何も抵抗はない。むしろ生き残るために、やれることはやっておいた方がいいだろう。そして、おそらくゴブリンたちがこう頼んでくる理由は―――
「………分かった」
『!』
「時間もないから、そう多くは教えられないけど……それでもいい?」
『!はい!』
こうして時間の許す限り、ゴブリンたちに向けて上手く弓を使うコツなどを教えたりすることになったのだ。
そして日は暮れ、僕はリムルやゴブリンたちとの打ち合わせ通りに、村の周りを霊眼・魔力感知だけではなく、強化六感も使って見張っていた。この戦いにおける僕の役割は、周りの監視と警戒だ。こうしておくことで、不測の事態が起きてもすぐに対応できるようにする作戦だ。すると……
(リムル、来たよ)
(!あぁ、ありがとう……じゃあ、打ち合わせ通りに頼むな。あと、無理だけはするなよ?)
(了解)
牙狼族がこちらに向かってきているのが見えた。リムルは村の正面で牙狼族を迎え撃ち、僕は村の後ろの方で側面や背後からの奇襲に備える。
「止まれ!」
「!……スライムだと……?」
「そうだ!」
「矮小なスライム如き、捻り潰してくれよう!」
その族長の言葉を合図として、周りの牙狼族たちが村へと襲い掛かろうとする………が、
「!あれは……!」
「スキル『剛糸』さ」
攻撃を仕掛けた牙狼族たちは、リムルが張り巡らせた『剛糸』によって次々と倒されていく。
「!スライム、お前の仕業か……?」
「そうだ!」
「小賢しい真似を……行け!」
その言葉と共に、数匹の牙狼族が剛糸を躱してこちらに向かってくる。だが……
「はぁっ!」
「!?」
それをゴブリンたちが弓で仕留めていく………昼に弓を教えたゴブリンたちも、上手く戦えているみたいだ。すると……
「う、うわああああ!?」
「!」
離れたところで牙狼族に襲われそうになっているゴブリンを見つけ、僕は……
「っ!」
「ぐっ!?」
「!」
風弓ですぐさま牙狼族の頭を射抜き、こちら側に犠牲を出さないようにしていた。さらに……
「!」
こちらにも、数匹の牙狼族が奇襲を仕掛けようと向かってきていた………想定通り……!
「……」
僕はすぐさま風弓を構え……
「!り、リエン様!」
「大丈夫。みんなは守りに集中して………っ!」
『!?』
奇襲を仕掛けてきていた牙狼族たちの頭を、一気に射抜くことで仕留めたのだ。その時……
《告。ユニークスキル『
牙狼族をずっと見ていたせいか、解析が進んでいたらしく、新たに三つのスキルを獲得したようだ。ユニークスキル『解明者』………霊眼は元々、このユニークスキルに含まれているスキルで、これのおかげで僕は洞窟内の魔物を解析し、スキルを獲得することができていたのだ。その一方で……
「ちっ!矮小な魔物の分際で……許さんぞ!」
「!親父殿!?」
村の正面では、牙狼族の族長が剛糸を嚙みちぎってリムルの方へと向かっていた。そして、剛糸を仕掛けた場所を突破して飛び上がり、リムルへと襲いかかろうとする………が、
「なっ!?」
突然、空中で動きを止める。
「こ、これは……!?」
……どうやら、あれが効いたみたいだ。
「『粘糸』さ」
「くっ!こんなもの……!」
それは、リムルが剛糸と一緒に仕掛けておいた『粘糸』で、牙狼族の族長の動きを見事に封じていた。そして……
(水刃!)
リムルは水刃を放ち、牙狼族の族長の首を落としたのだ。
「お、親父殿……!」
族長が死んだことで、他の牙狼族たちに動揺が広がる。すると……
「聞け!お前たちのボスは死んだ!選べ……服従か、死か!」
リムルはそう言って選択肢を与えたのだが……
『っ……』
牙狼族はその場から動けずにいた………まぁ、その選択肢だとね……。
(リムル)
(!リエン!そっちは無事か?)
(うん、こっちはみんな無事だよ。それで………全部聞いてたけど、これどうするの?)
(!き、聞こえてたか………うーん……あ!)
(リムル?)
(いいことを思いついた……捕食!)
すると、リムルは牙狼族の族長の死体を捕食し……
『!?』
「今回だけは見逃してやろう……我に従わぬというのなら、この場より立ち去ることを許そう!」
牙狼族の族長へと姿を変化させ、『威圧』をすることで生き残った牙狼族を追い払おうとした。だが……
(あ、あれ?まだ戦うつもりか……?)
牙狼族はそのまま少しずつリムルへと向かってくる。このまま戦いが続くのか………とリムルも僕も思っていたが、
『我ら一同、貴方様に従います!』
「……え?」
「……ん?」
牙狼族たちは、リムルに服従する姿勢を見せたのだ。
「り、リムル様……これは……?」
「うーん……俺たちの勝利ってことでいいんじゃないか?それに、戦う必要がなくなったのはいいことだしな!」
そのリムルの言葉に、村の正面にいるゴブリンたちは勝利の歓声を上げる。それは、こちらにいるゴブリンたちにも聞こえた様で……
「リエン様、これって……!」
「……うん、僕たちの勝ちだよ」
『!やったーー!!』
『勝ったぞーー!!』
僕がそう言うのを合図に、声を上げて喜んだのだ。こうして、リムルが牙狼族を仲間にするという形で、戦いは終結したのだった……。
読んでくださりありがとうございます。リエンは弓を主に使っていますが、近接戦闘となれば剣や体術もバランスよく使います。
以下が今回出てきたリエンのスキルです。
解明者(テラスモノ):霊眼が含まれているリエンの持つもう一つのユニークスキル。霊眼によって見たものの解析を主に行う。
強化六感:文字通り五感と第六感(直感)の六つを強化するスキル。これにより、リエンは遠くの会話を鮮明に聞き取り、遠くにあるものをはっきり見ることができる。
今のリエンのステータスについては、次回の後書きで公開する予定です。
それでは、次回の話もよろしくお願いします。