それでは、どうぞご覧ください。
side:リエン
リムルがドワルゴンに職人を探しに行った後、僕は守護者として慣れないながらも村の立て直し作業の指揮を執り続けていた。朝は、前からの習慣の弓と剣の鍛錬をして……
「リエン様、ここなのですが……」
「うん、そこは―――」
「リエン様、これはどこに……」
「それは、広場の方に―――」
昼間は作業の様子を村の周辺の警戒も合わせて見て回りつつ、作業の報告を聞いたり、人手が足りない場所の手伝いをしていた。そして夜……みんなが寝静まった後で、他の種族からの襲撃が来ないかを見張っていたのだ。このくらいは守護者として、当たり前にしないと………すると、
「り、リエン様……流石に少しお休みになっては……?」
リグルドがそう声を掛けてきたのだ。
「いや、このくらいは平気なんだけど……」
「そうは言いましても………リムル様が旅立たれてから、お休みになられていませんので……」
「本当に大丈夫だから……これくらいで僕が倒れることはないし」
この身体は人間だったときよりも便利になっていて、数日間眠らないくらいはどうということはない。
「それに、今は僕がこの村の留守を預かっているんだ。僕が一番働かないと………」
僕がそう言うのを聞いて、リグルドは……
「我らのことをそこまで……ですが、何卒お休み頂けないでしょうか。我々はもちろん、リムル様もお帰りになられた時にご心配されると思いますので……」
……まぁ、それでリムルやみんなに迷惑をかけるわけにはいかない、か………それに言う通りにしないと―――
「………分かった。じゃあ少しだけ休ませてもらうけど、何かあったらすぐに呼ぶこと」
「承知いたしました!」
そう言われた僕は、渋々休憩をとることにするのだった………もちろん、異変が起きたらすぐに分かるように、霊眼や魔力感知、強化六感はつけたままでだけど。
side:リムル
村を出発してから数日後、武装国家ドワルゴンに到着した俺は、有名なドワーフの職人であるカイジンやガルム、ドルド、ミルドのドワーフ三兄弟に出会うことができた。さらには、カイジンたちのピンチを助けたことで、俺は諸々の打ち上げとして、カイジンたちにエルフのお姉さんたちが接客してくれる店へと連れて来られていた………もちろん、村に来てくれる技術指導者の件もカイジンが何とかしてくれることになり、交渉の方もしっかりと成功させたのだ。
そして俺は、エルフのお姉さんたちに囲まれ、味は分からないものの酒を飲みながら会話を楽しんでいると……
「スライムさん、これやってみない?」
「え?」
褐色のエルフのお姉さんに、そう言われたのだ。
「私、これ得意なんだ。結構すごいって評判なんだよ?」
す、すごい……?それってどんな―――って……
「水晶玉……てことは、占い?」
「正解!」
少し期待と違ったけど………せっかくだし、何か占ってもらうことにしよう!
「じゃあ、お願いしようかな。それで……何を占うんだ?」
「そうね………あっ!」
「?」
「せっかくだから、スライムさんの運命の人とか?」
「えっ?」
「旦那、やってもらったらどうだ?」
「なら……それで!」
「うん!任せて……!」
運命の人か………まぁ、人というか、運命のスライムだったりして―――
「あっ!見えてきたわよ」
「おっ?」
その言葉に反応し、みんなが水晶玉に注目すると同時に、何かが浮かび上がってきたのだ………そこには、白いマントを羽織った黒髪の女性と5人の子供たちが映し出され、何処かに行こうとしてる女性を子供たちが涙ながらに引き止めているように見えた。
「まさか……」
「?何か知ってるのか?」
「その人……『爆炎の支配者』シズエ・イサワかもしれないぜ?」
「爆炎の支配者……有名なのか?」
「あぁ、ギルドの英雄で見た目は若いが、もう何十年も活躍していたんだ。今は……どっかの国で若手を育ててるって聞いたことがあるな」
というかシズエ・イサワって………この人、日本人だよな……?何処にいるかは分からないけど、今度会いに行ってみることにしよう。
「それにしても……」
「ん?」
「綺麗な人だったな?」
「!そ、そうだな……」
「……顔赤くなってるぞ?」
「え!?……って、スライムだから顔色変わんないし」
確かに美人だったけど………運命の人、か……。
「あれ?まだ何か……」
「えっ?」
「まだいるのか……?」
どうやら俺の運命の人はまだいるみたいで、今度は別のものが水晶玉に映し出される………そこに映っていたのは―――
「!こりゃ、さっきの人に負けず劣らずの「り、リエン!?」だ、旦那?」
『?』
俺の弟であるリエンだったのだ……な、何でリエンが……?
「この獣人の娘さん、旦那の知り合いか?」
「知り合いも何も……俺の弟だよ!」
「え!?スライムさん、弟さんがいたの?」
「この子が……?」
「妹さん、じゃなくて……?」
……まぁ、初めてリエンを見た人からすると、そういう反応になるよな………本人も自覚はあるみたいだけど。
「あ、あぁ……俺の知ってるリエンよりも、成長はしてるけど……」
そう、水晶玉に映っているのは確実にリエンだと分かったのだが……今のリエンよりも背が高く、長くなった髪をポニーテールにして一つに纏めている姿をしていた。それに、綺麗になってるし………さらに手には弓を、腰には刀を差していたのだ……すると、水晶玉の中のリエンは弓を構え、何かを狙い始めたのだ。だが、その狙っているものには黒いもやがかかっていて、一体何なのかが分からなくなっていたのだ……そして、リエンが矢を放った瞬間……
「あっ、終わっちゃった……」
水晶玉には何も映らなくなってしまったのだ……それから話題は、リエンのことになったのだが………水晶玉の中のリエン、何だか表情がいつもより冷たかったような……。
side:リエン
リムルが旅立ってから一週間が経った頃……
「リエン様!」
「どうかした?」
いつものように鍛錬をしている僕に、リグルドが何かを報告しにやってきたのだ。
「それがですね……森の各地からゴブリン村の族長たちが訪れ、面会を求めているのですが……」
「面会?」
「はい。どうやら、リムル様とリエン様の噂を聞いたようでして……」
噂……ゴブリンが牙狼族に勝つなんて本来はあり得ないことみたいだから、その関係だろうか。でも………
「……」
「リエン様……?」
この村が牙狼族に襲われている時、今ここに訪ねてきたゴブリンたちは、一度はこの村を見捨てたことになる………そんなゴブリンたちを仲間にしたとして、後で裏切られないだろうか……。
「いや、何でもないよ」
「それで……如何されますか?」
「……」
この村を見捨てたのに今更助けを求めてくるのは、僕としてはさすがに信用できない……けど、
「……リグルドはどうしたいの?」
「わ、私……ですか……?」
「そう。ゴブリンロードであるリグルドの意見………というよりも、正直な気持ちを聞きたい」
僕はあくまでリムルの代理だ………いくら僕が他人を簡単に信用できないとはいえ、それをみんなに押し付けることはできない。
「……リエン様のおっしゃりたいことは分かります。ですが、彼らもまた同胞……どうか、守護をお与えいただけないでしょうか」
そんなリグルドの言葉を聞き、僕は……
「………分かった。最終的に決めるのはリムルだけど……僕も直接、話だけは聞いてみることにするよ」
「承知しました!では、こちらに待機させておりますので……」
早速リグルドについて行くと、そこには4人の村の長を先頭にした500人ほどのゴブリンの集団がいたのだ。
「初めまして、僕はリエン=テンペスト。この村の守護者をしている者です」
「!お初にお目に掛かります!この度、我らは―――」
村の長たちの話によると、前のこの村と同じように、ヴェルドラが消えたことで、他の種族に淘汰されそうになっていた………そんな時にこの村の噂を耳にし、リグルドたちの主であるリムルの庇護を求めに来たのだという……。
「どうか我らを、庇護下に加えていただけないでしょうか……!」
「……」
そう必死に頼んできたゴブリンたちであったが、僕の答えは既に決まっていて……
「……今は主のリムルが不在ですので、リムルが帰ってくるまでは、一先ずこの村にいてください……ただ、何か不審な動きがあれば、その時はここから立ち去っていただきますので、そのつもりで」
「も、もちろんです!感謝いたします、リエン様!」
『ありがとうございます!』
僕はゴブリンたちに釘を刺しておき、リムルが帰ってくるまでは保護することにしたのだ。その先はリムル次第になるけど………きっとリムルは受け入れるだろうな………。
読んでくださり、ありがとうございます。
今回は、ここまでとなります……リエンはリムルとは違う視点で、守護者をやっていく様です。その行動が、今後どのような影響を及ぼすのか……。
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それでは、次回の話もよろしくお願いします。