それでは、どうぞご覧ください。
side:リムル
村を出てから約一週間……あっちで裁判などに巻き込まれたりしたものの、俺はドワルゴンから最高の技術者であるカイジンたちを連れ、村へと戻ってくることができた。
「お帰りなさいませリムル様!ご無事でお戻りくださり、何よりでございます!」
「あぁ、ただいま。村に変わりはないか?」
「はい!リムル様が留守の間、リエン様が我々をお守りくださっていたおかげです!」
「そうか……」
俺がいない間、リエンはリグルドたちと上手くやってくれていたようだ。
「あれ?そういやリエンは?」
さっきからリエンを探しているが、近くにその姿は見当たらない………出迎えの集団の中にもいなかったしな……。
「リエン様でしたら「僕がどうかした?」!」
すると、俺たちの横から現れたリエンが声を掛けてくる。
「お帰り、リムル。交渉は……上手くいったみたいだね」
「まぁな?お前も元気そうで良かったよ」
「……それでさリムル、帰ってきて早々なんだけど………」
「……?」
「取り敢えずこっちに来て」
そんな風に言ってくるリエンについて行くと……
「な、何だこれは!?」
俺の目の前には、この村のホブゴブリンやゴブリナ、嵐牙狼族たちを合わせた数以上のゴブリンたちが集まっていたのだ……な、何人いるんだこれ……?
《解。ゴブリンたちの総数、およそ500》
ご、500!?そ、そんな数が何でこの村に……?
「この村の噂を聞いて、他の村からやってきたんだって」
「え?噂……?」
「牙狼族を仲間にしたから、それのせいかもね」
リエンから話を訊くと、このゴブリンたちは俺たちが来る前のこの村と同じく、ヴェルドラがいなくなった時期から他の種族に淘汰されそうになっていたそうで、そんな中で牙狼族を下した―――正確には仲間にしたこの村の噂を聞き、庇護を求めてここまでやってきたのだという……それに対しリエンは、俺が帰ってくるまでは保護することを決め、最終的な決定は俺にさせる方向で話を進めたらしい……。
「それで……リムルはどうするの?」
うーん……なんかヴェルドラを俺の胃袋に入れたことで、思ったよりも色々なところに影響が出てるな………今は村を復興させている最中だが、ここで追い返すもの無責任な気が……。
「……分かった!来たい奴は来い!」
『……!』
考えた末、俺がゴブリンたちを受け入れることを告げると、リエンは……
(……いいの?)
思念伝達で一言、そう聞いてきたのだ……。
(?何がだ?)
(このゴブリンたちは、一度はリグルドたちを見捨ててる。今は何もしなくても、いつかは……)
まぁ、リエンの言いたいことも分かる……だが、
(こうなった以上、受け入れるしかないだろう?見捨てるのもあれだし……それにお前だって、すぐには追い返さなかっただろ?)
(……主でもない僕が、勝手に決めるわけにもいかないし………)
うーん……俺の立場を考えてくれるのはありがたいけど、そんなに遠慮する必要はないんだけどな……。
(リエン、何かあったら遠慮せずに俺に言えよ?)
(?どうしたの急に?)
(いいから……分かったか?)
(……分かったよ)
……何やら間があった気が………取り敢えずは、このゴブリンたちにも名前を……うん?
(あれ?俺、今からこいつら全員名付けるの……?)
(まぁ、当然そうなるね……今回は休み休みやろうか)
(……)
そうして俺は、約500人のゴブリン全員に、二日間かけて名付けをするのだった………ちなみに今回は、魔素量に注意して名付けをしたから、スリープモードにはなることはなかった……。
side:リエン
リムルが帰ってきてから数週間が経った。ドワルゴンからリムルが連れてきた職人……カイジンさん、ガルムさん、ドルドさん、ミルドさんたちのおかげで、建築、衣類面の技術指導も進めていくことができていた。カイジンさんたちは、とても優秀な職人たち………なのだが、
「おう!リエンのお嬢!」
「こんにちは、カイジンさん………あとお嬢じゃないです」
「いらっしゃい!お嬢!」
「だからお嬢じゃないですって……」
「何かご用ですかい、お嬢?」
「いやだから―――」
「……」
「……せめて何か言いません……?」
何故か僕のことを『お嬢』と呼んでくるのだ……。
「えっと……何で僕のことをお嬢と……?」
「あー……それはだな―――」
カイジンさんの話によると、リムルたちはドワルゴンでエルフの女性が接客してくれる店に行ったらしく、そこで占いが得意なエルフさんにリムルの運命の人を占ってもらったのだそう……そこで水晶玉に映し出されたのが、黒髪の女性と……今とは姿の違う僕、だったのだという。その時の第一印象が強かったのか、僕をお嬢と呼んでいるのだそう………自分の容姿が女性寄りなのは分かっているけど、その呼び方はさすがに……。
「……その話は一旦置いておいて、前に僕がお願いしたやつって……」
「あぁ、これだろ?」
そう言ってカイジンさんは、弓と片刃の剣を一つずつ渡してくる。
「今はまだ仮のものにはなるが、ある程度は使えると思うぜ」
「ありがとうございます。早速試してきます」
「おう!後で感想聞かせてくれよ?」
そう、僕が頼んだのは普段使いの弓と剣……さすがに刀はないので、形の近い片刃の剣をお願いした。それでも、どちらもシンプルなものながら、完成度が高いことが分かる……やっぱり、有名な鍛冶師なだけはあるね。
それから森の中で、弓と剣をそれぞれ試していると……
「!リエン様!ここにおられましたか」
鍛錬中の僕のところに、リグルドがやってきた。
「?どうしたの、リグルド」
「実は、この村の近くまで人間……冒険者らしきものたちが来ておりまして―――」
………人間と会うときがくるとは思っていたけど……僕が考えていたよりも早かったな。その後のリグルドの話によると、どうやらその冒険者たちは、魔物に襲われていたところをリムルに助けられた様で、お腹を空かせていたためこの村に招いたのだという……。
「……分かった。わざわざ報告ありがとね」
そう言って僕は、いつもの鍛錬へと戻ろうとしたのだが……
「あの……リエン様は、会いに行かれないのですか?」
「……」
そう訊かれ、手を止めてしまう………本当なら、この村の守護者として挨拶ぐらいはするべきなのだろうけど……
「……人間たちへの対応は、リムルがしているんでしょ?」
「は、はい……腹を空かせているようでしたので、食事を出してもてなしています」
「なら、僕が直接会いに行く必要もないよ。邪魔になってもいけないし」
「……承知いたしました。リムル様にも、そのように伝えておきます」
リグルドはそう言ってリムルのところへと向かい、僕も鍛錬へと戻ることにした……。
一先ず鍛錬を終えた僕は、この村に訪れた人間たちのことを考えながら歩いていた……もちろん、弓と剣の使い心地は満足のいくものだった。すると……
「おーいリエン!」
リムルが僕のところへとやってきたのだ……その後ろに、4人の人間たちを連れて。おそらくこの人間たちが、リグルドの言っていた冒険者なのだろう……。
「リムルさん、もしかしてこの子が?」
「あぁ、俺の弟のリエンだ」
リムルのその言葉に続けて……
「……初めまして。リムルの弟で、狐霊族のリエン=テンペストと申します」
僕はそう挨拶をしながら会釈をした……今のところは、何も怪しい動きはなさそう。でも、何でこの森に……?
「これはご丁寧にどうも……俺はカバル、こっちはパーティーメンバーのエレンとギド。そして、一時的にパーティーに入っているシズさん」
「どうも……それで、皆さんは何でこの森に?」
僕は直接、そう訊いてみることにした。
「リムルの旦那には説明したんだが、俺たち3人はギルドの依頼で調査に来たんだ。シズさんは目的地の方向が同じってことで、臨時メンバーとして入ってもらっている」
「……」
調査……もしかしたら、この村のことも……。
「リエン?さっきから黙り込んで、どうしたんだ?」
「!いや……さっきまで鍛錬してたから、少し疲れたのかも……」
僕は咄嗟にそう誤魔化した。
「もしかして、それが例の?」
「うん、そうだよ」
「へぇ……さすがはウチの職人たちだな」
……どうやら、変に思われることはなかったようだ。
「では、僕はこれで」
「あれ?どこか行くのか?」
「……これの感想聞かせて欲しいって言われてるんだ」
僕はそう言うと、足早にカイジンさんたちの工房へと向かうのだった……。
読んでくださり、ありがとうございます。
遂にリエンが人間たち……そして、リムルの運命の人であるシズと出会いました。リエンはこの先、この4人とどんな関係を持つのか……。
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それでは、次回の話もよろしくお願いします。