それでは、前回の続きからどうぞご覧ください。
side:リエン
リムルたちと別れ、カイジンさんたちに武器の感想を伝えに行った後、僕は村が見渡せる丘で考え事をしていた。するとそこに……
「いい景色だね」
「!」
「隣、いいかな?」
長い黒髪に白いマントを羽織った冒険者……シズさんが僕のところへとやってきた。
「えっと……何でここに?」
「そんなに警戒しなくても大丈夫……ただ、お話したいだけだから」
「……」
まだあまり信用できてないものの、話をするくらいならいいと思い、僕は黙って頷く。それを見たシズさんは、僕の隣へと腰を降ろした。すると早速……
「ねぇ、狐さんはどうしてこっちに?」
「……こっちって?」
その言葉の意味を理解していたものの、僕は敢えてそう返したのだが……
「あなたもスライムさんと同じ転生者、なんでしょ?」
確信を持った目で、シズさんはそう訊いてくる………これは、誤魔化し様がないな……。
「……何でそれを?」
「スライムさんから聞いたの。さっきはあまり話せなかったから、良ければ話し相手になってくれって」
「……」
リムルか……わざわざ教える必要もないだろうに。でも、人間と仲良くしたいと思っているリムルからしたら、僕も人間と仲良くなって欲しいと思うのも当然か……。
「えっと……僕が転生した理由、でしたっけ?」
「うん……あっ、思い出したくないとかだったら、無理に話さなくても……」
僕に気を遣ったのか、シズさんはそう言ってくれた。
「別にそれは大丈夫ですよ」
「えっ?」
「といっても、ほとんどリムルと同じですよ?殺されて、気が付いたらこんな感じに……」
「そうなんだね………狐さんって歳はいくつだったの?弟って言うからには、スライムさんよりは若そうだけど―――」
「15歳ですよ」
「っ……!」
僕の年齢を聞いたシズさんは、何故か驚いた表情をしていた。
「それがどうかしました?」
「!いや、そんなに若いとは思わなくって……狐さん、何だか雰囲気が大人びてるから」
大人びている、か………あの人には『もっと子供らしくしろ』って言われたっけ……。
「この世界に来てから、スライムさんとはずっと一緒なの?」
「はい……最初はリムルと一緒に行くつもりはまったくなかったんですけど、あっちから当然みたいな感じで連れられてきて……」
正直なところ、リムルのこともヴェルドラのことも、最初はあまり信用してなかった……少なくとも、人間よりは信用できてた気がするけど……。
「そうなんだね……でも、狐さんが優しいスライムさんと一緒にいられて良かった」
「……そうかもしれませんね。リムルは僕と違って優しいですから」
今となっては、この世界で兄の一人となってくれたリムルのことは、信用できるようになっている……お人好し過ぎるのは、正直どうかと思うけれど。もう一人の兄であるヴェルドラも、リムルとまではいかないけど、信じることができていると思っている。それに……
「……前の世界じゃ、
「?あの人……?」
「!……聞こえてました?」
「うん。というよりも、口に出てたんだけどね……もし良かったらさ、その人のこと聞かせてくれない?」
「……別にいいですけど、あなたにとって面白い話かどうか……」
「気にしなくてもいいよ。私が聞きたいって言ったんだから」
「そういうことなら……」
僕はそう言われ、この世界で初めて『あの人』のことを話し始めた。
「その人は……僕の師匠なんです」
「師匠?師匠って、何の?」
「これです」
僕は背中に背負っている弓と、腰に付けている剣を指差す。
「弓と剣の……」
「それ以外にも、僕が知らなかったことを沢山教えてくれました」
シズさんは師匠の話を、時々相槌を打ちながら聞いてくれていた………僕自身のことは、あまり話さなかったけど。そんな風に話を続けていると……
「それで―――?どうかしました?」
シズさんが何故かこちらをじっと見て微笑んでいるのに気付いた僕は、そう尋ねてみたのだ。
「狐さんは、そのお師匠さんのことが本当に大好きなんだなって」
「?何でそう思うんです?」
「だって狐さん、嬉しそうにそのお師匠さんのこと話しているから」
「!」
嬉しそう、か………そんな顔してたんだ、僕……。
「でもそれだけ、お師匠さんはあなたにとって大切な人なんだね」
「もちろん……あの世界で唯一、僕に優しくしてくれた人で………ただ一人の家族ですから」
「家族……」
でも、師匠はあのときに………
「……許さない」
「!」
すると……
「狐さん……その、お師匠さんは「おっ、ここにいたのか!」!」
シズさんが何かを言いかけたところで、リムルが僕たちのところにやってきたのだ。
「リムル?何か用?」
「あぁ、そろそろ食事の時間だから呼びに来たんだ」
シズさんと話をしているうちに、どうやらそんな時間になったようだ……。
「シズさーん!」
「あいつらも来たみたいだな」
リムルの後ろから、エレンさんたちもシズさんのことを呼びながらやってくる。
「もしかして、リエンさんとお話ししてたの?」
「えぇ」
そして、エレンさんと話しているシズさんを見て……
「リムル、僕は先に行ってるから」
「あ、あぁ」
「シズさんたちもまた後で」
「!あぁ、はいまた」
「リエンさんも一緒に食べましょうねー!」
僕はそう声を掛け、先に村へと戻ることにするのだった……。
side:リムル
「ところで、2人で何の話をしてたんだ?」
「あ!それ私も気になるかも!」
村へと戻っていくリエンの後ろ姿を見ながら、俺はシズさんにそう訊いてみた。
「狐さんのお師匠さんの話をね……でも狐さん自身のことは、あまり詳しく訊けなかったけど」
「そうか……ん?お師匠さん……?」
「あれ?狐さんから聞いたことないの?」
「いや、初耳だな……」
聞いたことのない話に、俺は思わず首を傾げる。お師匠さん……リエンは前に武術が得意って言ってたから、それを教えた人なのかな?
「えっ?じゃあ……狐さんが15歳ってことも?」
『え!?15歳!?』
そんなに若かったのか!?ということは、リエンはまだ10代で……。
「あの歳でしっかりしてるなぁ……」
「ほんとでやすねぇ……」
「何だか雰囲気が大人びてたしね……」
リエンの年齢を知った3人は、それぞれが感心した様子を見せる。
「やっぱり……」
「やっぱり……?」
「えっと、これは私の経験上の話だけど……ああいう子は、あまり自分のこと話したがらないから」
「あっ、そういえば……」
まだ洞窟の中にいる時に、リエンに何度か前世のことを訊いてみたことがあった……だが、リエン自身があまりそのことを話したがらなかったのと、洞窟を出てから色んなことがあったせいか、結局ここまで何も聞けずじまいでいた………。
「……よし、明日にでもリエンに色々聞いてみることにするよ」
「でも、無理に話させないようにね?」
もちろん、俺もそうするつもりでいる。
「分かってるよ。さぁ、そろそろ行こうか」
「えぇ」
俺はそう言い、シズさんに抱えられながら村へと戻っていくのだった……。
side:リエン
シズさんと話をした翌日、僕とリムル、リグルド、リグルは4人の見送りに来ていた。今は村の入り口のところで、シズさんとエレンさんを待っているところだ。
「リエンさんも、ありがとうございました」
「いや、僕は何も……お礼ならリムルに―――」
すると……
「お待たせ!」
「ごめんなさい、遅くなって」
エレンさんとシズさんが、僕たちのところへとやってきたのだ……その時、
「っ!?ううっ……!」
「?」
「シズさん?」
シズさんが急に苦しみだしたのだ。それと同時に……
《告。個体名:シズエ・イザワより、魔素の急激な漏出を確認。》
明察者がそう報告してきて、霊眼に映る魔素の光の量も急激に増えたのだ。
「っ!みんなシズさんから離れて!」
『!?』
僕がそう声を上げた直後、シズさんはその場に膝を突き、付けていた仮面にひびが入る。そして、シズさんを巻き込むように火柱が上がり、それは瞬く間に空を黒く覆いつくしたのだ。
「な、何が起きてんだよ!シズさん、一体どうしちまったんだよ!?」
「シズ……シズエ……って、まさか!?」
「どうかしたのか?」
「もしかして……『爆炎の支配者』、シズエ・イザワでやすか!?」
「それって、50年くらい前に活躍したっていうギルドの英雄……精霊使役者の……!?」
シズさんの正体に気付いた3人は、戸惑いを隠せずにいた。すると、僕たちの前にはシズさんの代わりに炎を纏った巨人と、その周りには炎の小さい竜のようなものが数体飛び回っていた。あれは一体……?
《告。個体名:シズエ・イザワと契約していた炎の上位精霊イフリートと推測。周りを飛行しているサラマンダーは、イフリートが召喚した個体の模様。》
「……」
その情報を明察者から聞いたのと同時に……
「おい!お前たちはリエンと一緒に離れてろ!ここは俺が何とかする!」
イフリートを見たリムルが、僕たちに避難するように言ってくる。だが……
「逃げるわけにいくかよ。あの人が俺たちに殺意を剝き出しにしている理由は分からんが」
「俺たちの仲間でやんす!」
「ほっとけるわけないわよ……!」
「「……!」」
本当に、シズさんの仲間はいい人たちばかりだ………前世の僕の周りも、こんな人たちばかりだったら―――いや、そんなこと気にしたところで意味はない。今は―――
「リムル」
「!リエン、お前は「周りのやつは僕が何とかするから、その間にシズさんをお願い」え!?」
僕はそれだけ言い残し、弓を構えながらイフリートへと走り出していくのだった……。
読んでくださり、ありがとうございます。
次回はイフリートとの戦闘に入っていきます。リエンの戦う姿も多く書かれると思いますので、どうぞお楽しみに……。
良ければ、感想や評価をしていただけるとありがたいです。
それでは、次回の話もよろしくお願いします。