夢叶って画家になれた転生主は、ともかくブルアカ本編に関わりたくない 作:木暮鬼一
「皆、私の身勝手な頼みを聞き入れてくれてありがとう。おかげで助かったよ」
全部で10人以上はいる襲撃犯が縄目のロープでぐるぐる巻きにされた状態で道路に放置されている中、栢間エスミは6人のスケバンたちを前にして深くお辞儀をして礼を述べていました。
今回の襲撃、エスミが保険と称し『念には念を入れよう』という事で招集させてもらったスケバンたちの加勢が無ければ、恐らく戦闘が長引くか想定しない被害が生まれていた事でしょう。物量では当初向こうが勝っていたものの、やはり喧嘩慣れしている集団と実力が傑出しているカヨコの組み合わせは無敵に等しく、思っていたよりも最小限の被害で襲撃を食い止めることができました。
まあエスミとしては一か月前に列車で少し会話をしただけの交流しかない彼女たちを頼るのは正直申し訳ない気持ちがあったのですが、スケバンの皆は意外にも快く引き受けてくれました。
というのも、彼女たち日く『周りからは敬遠されがちな不良のアタイらと普通に会話してくれた優しいアンタの力になりたかった』という事でした。
あまりにも良い子たち過ぎて感激から涙が出そうになったのはここだけの秘密です……知らない間に『ダチ』認定を受けていたのは衝撃でしたが。
とはいえ、場合によってはトラックの横転等で怪我人が生まれる恐れがあったため、改めてエスミは彼女たちに深く感謝を述べるのでした。
「気にすんなって。アタイらが来なかったら、向こうのこえー顔つきのハンドガン持ちと2人だけで挑むつもりだったんだろ? 喧嘩慣れしてるアタイらに頼んだアンタは正しいさ」
「そうそう。新人たちも良い経験が出来たと思うし、お互いにウィンウィンってやつだよ」
「私はエスミちゃんの名前が知れてハッピーだし、何より頼られて最高だったよ‼ そ・れ・で、このあと一緒にカフェに行かない!?」
「車酔いしやすい性格なんですが、ストレス発散に丁度いいサンドバッグがそこらへんに居たんで気にしてないです。まあ、出来れば次アタシたちを呼ぶときは移動だけは車両以外でお願いします」
「……みんな、本当にありがとう」
エスミはこの場でも恥ずかしさから黙ったままの新人2人のスケバンにも目を向けて『助かったよ』と笑顔で感謝の言葉をかけると、2人は無言で頭をぶんぶんと勢いよく縦に振ると、そのまま顔を真っ赤にして4人組の後ろへと隠れました。
ふむ、ちょっと刺激が強かったのでしょうか?
戦闘終了からまだ時間はあまり経っていないので、興奮からエスミの頬が赤くなっていますし、見方によっては少々妖艶に映ったのかもしれません。やたらと見た目に関して言及されることの多いエスミなので、少し外見を隠す必要性がありそうです。
「んじゃあ、アタイらはこの襲撃して来た雑魚共を風紀の連中に突き出してくるわ。エスミはまだ仕事が残ってるんだろ? 頑張れよ」
「画材メーカーの方には連絡を入れておくし、レッカー車と助けが来るまでは積み荷の商品と運転手のおっちゃんの警護はアタイらに任せな」
「無事に終わったら一緒にカフェに行こうね‼ 約束だよエスミちゃん‼」
「このバカの頼みは無視して構わないので、そちらは道中気を付けてください。あとこれ、襲撃犯のリーダーが持ってたタブレットです。必要になるかと思ったのでパクッておきました」
1人だけどこぞのピンク髪よろしく過激なスキンシップと交流をねだってくるので、エスミは苦笑いを浮かべながら『じ、時間があったらで……』とやんわりと断ると、もう1人から手渡されたタブレットを手にして別れを惜しむように彼女たちに手を振りながらその場を離れます。
正直、彼女たちと出会えたのはエスミにとって幸運であり、かつ嬉しい出会いでした。
《1―2》
エスミがスケバン達から離れて向かったのは、襲撃犯たちが利用していた一台のバンでした。
タイヤを前輪破壊された走行不能のトラックに、窓ガラスを粉砕されかつ銃弾で穴だらけとなった車両を除けば、襲撃犯が利用していたこのバンだけが利用できる車になります。
あとはこれを使って彼らが強奪した物資を届けるつもりの場所に向かうだけであり、そこでサンクトゥス分派が関わっている証拠を掴み、ついでにその場にいる関係者もろともボッコボコにしてやる予定です。
さていつでも出発できるよう準備が整っているバンの傍には、車に背中を預けて腕を組み遠くを眺めている鬼方カヨコの姿がありました。
エスミが『随分と様になるキャラだよねぇ』と感心して近付くと、彼女の存在に気付いてカヨコが振り返ります。
「あれ、もう別れの挨拶は済んだの?」
「うん。終わったよ。そのうちまた会いそうな気がするからね」
「へえ、じゃあまたゲへナに来てくれるんだ」
「迷惑かな?」
「まさか。私もエスミにまた会えるなら嬉しいし、今度は普通に街中を一緒に出歩きたいって思っただけ」
「そう……じゃあ、この件が片付いたら鬼方の用事に付き合うよ」
「珍しい。私とはあまり関わりたくないんじゃ無かったの?」
「私の個人的な報復に付き合ってくれてるし、小さくは無いリスクも背負ってくれているからね。結構迷惑もかけてるし、全然構わないよ」
「じゃあ今度、私の好きなバンドのライブに一緒に来て。エスミにも聴かせてあげたいから」
確か原作の鬼方カヨコは音楽関係でヘビメタ好きだったな、とボンヤリと思い出しながらエスミは間を置かずに『約束だよ』と優しい声で返事を返しました。
「それじゃあ、残りの作戦を開始しようか」
「そうだね。スケバンの子達からこのタブレットを渡されたし、あの用意周到な襲撃を見ると全てのヒントはこの端末の中にあると思う。確認しよう」
2人はバンの中に乗り込むと、渡されたタブレットを起動して中身を確認します。
すると端末には、各企業が所有しているトラックがどのルートを通って物流センターに物資を運んでいるのかが丸わかりのデータが保存されており、他にも出発日時や積んでいる物資の詳細が事細かく記録されたデータまであります。
「これは……随分と親切すぎるサポートだね」
カヨコは眉をひそめ、エスミが持っているタブレットを覗き込みながらそう呟きます。
「見た感じ保存されているデータは随時更新されているみたいだね。他の用途も使えるサポートアイテム、と言った所かな」
「最新の機種を使っているし、たぶんその見方で合ってると思う。となると何処かに目的地が記されているデータがあると思うけど……流石に量が多いし、ロックされているデータばっかり…………」
「なら私が探す。任せて」
そう言うや忙しく指でタップしては端末に保存されている全データを隅々まで凝視していくカヨコ。何かの法則でもあるのか片っ端からロックの掛かっているデータをこじ開けていき、エスミからすれば『そんなに顔を寄せると目を悪くするよ?』と声を掛けたい程でしたが流石に口は閉ざしました。
原作でもデータ解析にはそれなりに秀でている彼女なので、IT関係はずぶの素人であるエスミが仕事の邪魔をする訳にはいきません。
あとこれは割と関係ない話ですが、タブレットそのものを持っているのはエスミな為、カヨコは端末をよく見るためかエスミに身体がくっつくほど密着しており、何ならエスミの肩に頭を預けている形でタブレットを操作していました。
つまり何が言いたいのかというと、まるで〝イチャイチャしている恋人〟みたいな状況にエスミは大変困惑していました。あまりスキンシップはおろか触れる事すら控えている身なので、こういう場合の対処法がまず分かりません。
一応すこし前にミカと抱き合って寝るというかなり特殊なプレイを経験していますが、そもそもあの当時はエスミのメンタルが手酷くやられており、孤独に頑張っていた事からつい他人に甘えたくなってしまったが故の行動なのでノーカンです。
やがて時間にして10分か15分が過ぎた頃、カヨコは満足気に『目的地を割りだしたよ』とデータ解析の仕事を完了させました。
「流石だね、鬼方……ひとまず、離れてくれる?」
端末に表示されている目的地を確認し、さあ仕事は終わったから離れてくれと優しくカヨコの身体を押し退けるエスミ。カヨコも気分に流されてなのか、それとも悪乗りだったのか、変に抵抗する事はなく素直に運転席の方へと身体を移動させました。
「スキンシップは嫌だった?」
しかしカヨコがそう申し訳なさそうに尋ねてきたので、エスミは少しだけ返答に困りながら首を横に振ります。
「嫌……では無いけど、流石に私が勘違いをするから控えて欲しい……かな?」
「ふーん。私は本気だから別に勘違いしなくても良いのに」
「そう…………ふえっ!?」
突然の爆弾発言に驚いたエスミが勢いよくカヨコの方へと顔を向けると、そこには『悪戯成功』と言わんばかりに笑みを浮かべて頬杖を付いているカヨコの姿がありました。
間違いありません……エスミは彼女に揶揄われたのです。
「…………騙したね」
「ふふっ、恥ずかしがってるエスミの顔は新鮮だね。良いのが見れたかな」
「…………見るな」
「そう言われると余計に見たくなるけど?」
「……恥ずかしいから止めて」
まんまと騙されたという羞恥心から赤く熱を帯び始めた耳を手で隠し、エスミは彼女から視線を外しましたが、それでもカヨコからの視線が外れる訳がなく次第に〝視られている〟という状況に冷静さを失ってきました。
「……じ、時間もないし、早く目的地に行くよ……ナビは私が代わりにやるから……ほ、ほら、鬼方も車の準備して?」
流石にこんな状況が長く続いてはいけないと察したのか、慌ててタブレットを両手に持って地図アプリで目的地を設定し始めるエスミ。それでも熱を帯びている耳や頬はまだ赤いままであり、加えてキョロキョロと様子を窺うようにカヨコを見つめてくるので、容姿の整っている美少女がそのような姿で間近にいるのは中々に目に毒でした。
「……エスミって、絶対〝ネコ〟だと思うから、他の人と関わる時はなるべく自分の身に気を付けた方が良いよ」
「えっ、ね、猫? 私ってそんな性格に見えるの?」
気遣いからそう忠告したカヨコでしたが、肝心のエスミはその『ネコ』という言葉を勘違いして受け取ったようです。まあ意味が分かっていても強く否定するのが目に見えるので、あえてカヨコは何も言わず車のエンジンを始動させました。
「それじゃあ、ナビの方はよろしくお姫様。さっきの発言は…………まあ気にしなくて良いから」
「…………変な意味じゃ無いよね?」
「気になるなら調べてみたら? それでエスミがどう反応するのか私は楽しみだけど」
そう楽し気に言うやカヨコは車のアクセルを強く踏み、タブレットの地図アプリに表示されている目的地に向かって出発しました。
さて道中に『ねえ待って、これ一体どういうこと!?』とスマホ検索で〝ネコ〟の意味を調べたエスミから顔を真っ赤にして抗議されるのですが、カヨコは笑みを零しつつ無視を貫くのでした。
《1―3》
少女はお金を欲していました。
理由は単純。将来に向けた貯金です。
とはいえ、毎月お小遣いとして一定の金銭が少女の懐には入っていましたが、それでも彼女が目指す『会社の起業‼』という夢には遠く及ばないため、ー攫千金とまでは行きませんがともかく大金を欲していました。
しかしながら彼女はまだ中等部の2年。
彼女が生まれ育っているゲへナ自治区では高等部に進級しない限り、高収入のバイト活動は認められないというルールが定められています……まあ、無法地帯となっている現在では既に意味を成していないのですが、無駄に真面目過ぎる少女は律儀にもそれを日々守っていました。
「……どうすれば良いのかしら……」
そんなある日、途方に暮れて学校から帰路についていた少女。すると街中を歩いている中、彼女はすれ違う大人たちの会話でこんな話を聞いたのでした。
「おい知ってるか。自治区外れの工場で働けば1か月に給料が50万貰えるらしいぞ」
「……え?」
それは偶然でした。
たまたま少女が大人たちの通う酒場近くを出歩いた為、酒の飲み過ぎで酔っていた大人達の会話を偶然耳にしたのです。丁度悩んでいたお金に関する答えがすぐ傍に転がり込んできたのです。立ち止まった少女がつい聞き耳を立ててしまったのは仕方がないと言えるでしょう。
「おい、それ本当なのか?」
「本当だって。知り合いから聞いた確かな話だ。なんか運ばれてくる品にラベルを張り付けたり、箱に詰めたりするだけの簡単な仕事らしい」
「それで月に50万? 流石に怪しすぎるだろその工場」
「まあな。けどゲへナの出身じゃなければ大歓迎の工場らしいぞ。住まいも食事も提供してくれるらしいし……その代わり辞めない限りはずっとそこに居続けるみたいだけどな。外との連絡も禁止だ」
「ああ、なるほどな。いわゆる出稼ぎってやつか。けどなんでゲへナの奴は駄目なんだ?」
「そんなの決まってるだろ。こんな治安の悪すぎる自治区出身の奴が行った所で、悪評が目立つしイメージダウンってやつだよ。意外と大儲けしてる会社みたいだし、そういうのは嫌なんだろ」
「それもそっか。じゃあ仕方ないな」
「意外と他の自治区からバイト感覚で来てる生徒もいるみたいだし、待遇も良さそうなら受けてみるのはアリだぜ」
「けど俺らはゲへナの市民だろ、さっきお前が言ってた通りなら無理じゃないか?」
「そこはまあ、変装でもすれば分からないだろ」
「無理だろ」
その後、大笑いした彼らはすぐに別の話題へと切り替えたため、そう真面目に考えるつもりはない話だったのでしょう。ただの酒の肴として話しただけなのかもしれません。
「……これだわ」
ただ生憎と、大金を手にする事だけを目指し聞き耳を立てていた少女は違うようでしたが……。
「確か、学校は再来週から長期休みに入るはずだったわよね? 一か月だけお金を稼ぐなら期間は十分。今の話が本当なら50万が一度に手に入る大チャンスだわ‼」
幼い子供の思考と言うのは案外単純なもので、利益が目の前にあればすぐ飛びついてしまいます。
結果として少女はその後すぐ、大人たちが話していた自治区外れの工場とやらを自ら歩き回り情報収集して突き止め、学校が長期休みに入るや否や、早速何の危機感も抱くことなく自治区外れの工場に1人で向かったのでした。
ちなみにゲへナの者だとバレないよう、少女はなるべく変装をしました。
ピンク色の髪を別の色に染め、頭にある目立つ角は隠すようにして大きめの帽子をかぶり、元々掛けていたメガネはフレームの形状が違うものに変えて服はなるべく作業の邪魔にならないよう地味な作業服を購入するという……いわば、見た目をガラリと変えたのです。
果たしてゲへナの特徴である角だけを隠せば良かったのではないか、という疑問が抱く所ですが少女なりに真面目に考えた末での変装です。
そして『これで完璧ね‼』と意気揚々と工場に向かった少女は……あっさりと追い返されました。
「ど、どうしてえぇぇぇぇ!?」
当たり前です。
たかが帽子をかぶっただけで目立つ角が隠せるとは思えませんし、何より彼女は面接官に渡した学生証の存在を忘れていました。出身地区や名前、ご丁寧に顔写真まで載っている学生証は、少女がゲへナの生徒であると強く物語っていました。ようは少女がポンコツ過ぎたのです。
それに大人たちが冗談で言った変装云々を割と真面目に信じたのもいけませんでした。
しかし無下も無く追い返された少女でしたが、工場を出る時に彼女はある光景を目撃しました。
「……あら。あれって、バンよね?」
それは彼女の言う通り、バンでした。
ですが何処かの企業が持っているようなバンでは無く、何というか民間用に販売している標準モデルに思えます。
また無地の塗装がされているバンの荷台から何かを下ろしている作業員と、そのバンの運転手らしき 2人の高等部の生徒らしき姿がそこにはありましたが、下ろされている物資らしき物には少女がよく見かけている企業のラベルが貼られていました。
「……確か、ゲヘナの画材メーカーのラベルよね、あれ?」
別に博識な訳ではありませんが、記憶にあるゲへナの画材メーカーと全く同じラベルが貼られている事に疑問を持った少女。調べた限り、この工場は別に画材を取り扱うような所では無かったはずです。ラベルを張り付けるという作業が何か関係しているのでしょうか?
直後、周囲を出歩いていた警備員らしき大人に見つかった少女は、突如として彼に捕まってしまいました。
「えっ‼ な、なに、何なの!?」
別に何も悪いことはしていないのに、と突然の状況に少女はただ狼狽えるしかなく、何やら慌てた様子で無線に連絡を送る警備員によって、あっという間に少女は工場内のとある部屋に監禁されてしまいます。
何でも少女を連行した警備員たちの話では、偶然にも彼女が目撃したのはゲへナ自治区の企業から強奪した物資の荷下ろし作業だったらしく、同じゲへナ自治区から面接にやって来た少女をゲヘナから寄越されたスパイか何かと勘違いして監禁したようでした。
「な、なななな……何ですって――――!?」
ハッキリ言わせて貰うと、運が悪いとしか言えません。
少女はただ大金欲しさに出稼ぎにやって来た無垢な中等部です。それが彼女のポンコツさからゲへナの生徒であると露見し、かつ帰り際にたまたまゲへナ自治区から盗んだ物資を荷下ろしている場面に遭遇するなど誰が思うでしょうか。
しかしながら彼女のポンコツさと運の悪さのおかげとはいえ、この工場がゲヘナの大人たちが『怪しい』と話していた通り、どうやら盗んだ物資を偽造工作して民間に売りさばくことで利益を上げていた悪徳企業だと気付けました。
気付いた所で肝心の少女は捕まって監禁されているのですが……社会勉強の代わりに自由を失ってしまっては全く意味がありません。
「ど、どうするべきかしら……警備員に荷物は取り上げられたし……こ、この部屋から出る方法なんて私には思いつかないわ……」
少女はまだ社会の怖さや厳しさを知らない中等部という年頃です。
今の自分が置かれている状況がいかに不安定で危ないのか、その肌で実感しつつも彼女には対処する術が全くありません。最悪口封じとして消されてしまうのでは、と映画でよく見る犯罪組織の光景が目に浮かび、少女は徐々にこみ上げてきた恐怖心から身を縮めて涙を流し始めました。無理もありません。監禁された部屋は暗いですし、何も物が置かれていない無機質な部屋なのです。
いかんせん会社の事をよく調べもせず、大人の話を鵜呑みにして大金欲しさに行動したのは自分自身ですが、どう反省しようにも徐々に迫りつつある絶望に染まった現実に少女は押し潰されそうでした。
「…………怖いわ…………誰か、た、助けて……」
すると彼女の弱気な声が漏れた途端、いきなり工場内で警報が鳴りだしました。
「……?」
続けて工場内の天井に設置されているスプリンクラーが一斉に発動し、少女が監禁されている部屋も例外なく水が降り注ぎ始めます。警報と共にスプリンクラーが発動したという事は、つまり工場内で火事が起きたのでしょう。
しかし何故このタイミングで?
直後、警報に驚いて部屋の外で忙しく走り回っている人々の声に銃声が混ざり始めました。それは間隔が空いた状態で響いていましたが、次第に警備員たちが手に持つ銃火器の激しい連射音も混ざりどうやら銃撃戦が行われているのが分かります。手練れによる襲撃でも受けているのか中々対処が出来ていないようで、加えてその銃声が段々と少女のいる部屋に近付いてきます。
「え、な、何。何が起こってるの?」
ひとまず部屋の外ではヤバいことが起きているのは明白です。
少女は部屋の隅に移動し、もしもの時に備えて身体を守るようにして被っている帽子を握りながら小さく縮こまりました。
「…………ここだね」
激しい銃撃戦が依然として外で繰り広げられている中、微かに少女の耳が拾ったのはある女性の声でした。瞬間、ドアに向かって何発か銃弾が撃ち込まれ、金属の甲高い音が部屋の中にまで響きわたります。
「きゃあっ!?」
つい反射的に悲鳴を上げた少女でしたが、次に彼女が目にしたのは留め具の外れたドアを蹴り飛ばしてきた1人の女性の姿でした。
バタンッ、とドアが勢いよく部屋の中に倒れ、その上を踏み歩くようにして静かに入室してきた人物。
それは見る人を惹き付けてしまうような綺麗で、とても整った容姿をしている美少女でした。
歳は少女より1つか2つ上で、たぶん高等部でしょうか。
薄い青色の髪に翡翠色をした瞳を持つ垂れ目。服装は襟付きのシャツにテーラードジャケットといった清楚っぽい恰好で、頭にはベレー帽をかぶっています。そして左手にはやや古いリボルバーを手にしていますが……間違いありません。外で見たバンの運転手らしき人物です。
スプリンクラーから放たれている水でお互いに全身はびしょ濡れになっていますが、それでも激しい銃声が外で響きわたる中、騒音も水の冷たさも気にしないその勇ましい美少女の姿は、不安と絶望から震えていた少女に強い安心感を抱かせました。
カッ、カッ、と音を立てながら美少女はゆっくり少女の下に歩み寄り口を開きます。
「君、ここに働きに来たんだろうけど、ちゃんと社会の怖さを学んでおかないと駄目だよ。ゲヘナ近くだとこういう犯罪に浸かってる企業なんて別に珍しくも無いんだし、バイト探しは慎重にやらないと」
「あっ、わ、私……こんな事をしてる場所だなんて知らなくて……」
「そう……なら私が君を守ってここから逃がすから、今度はちゃんとした所で働くようにね……約束出来る?」
「……え、ええ。約束するわ‼」
「良い返事だね。じゃあ私の手を掴んで……安心して。君に傷一つ付けさせないよ」
真っすぐこちらを見つめ、そう恥ずかしげも無く言い放った彼女のその言葉は、少女の心を確かに奪いました。
「…………綺麗」
それは意識して呟いた言葉ではありませんでした。しかしこの時、スプリンクラーで濡れた髪の毛先から雫が垂れ落ちていく中、部屋の外にある照明の強い光を背後に優しく右手を指し伸ばしてきた美少女の姿が、少女にはまるで〝天使〟のように見えたのです。
これが、当時まだ中等部だった幼い陸八魔アルと、既に有名な画家として活動していた栢間エスミが初めて出会った瞬間でした。
栢間エスミの秘密・11
・前世ではノマカプを中心に作品を漁るオタクだったので意外と百合用語は知らないし、それは今世でも同じ(流石に最近は念のため調べてはいる)。
本当は百合も薔薇もいけるオタクだが、前世の知識全てを引き継いでいる訳では無く、単に忘れてるだけの可能性も高い。
ちなみに本人は自身を生粋の『タチ』だと思い込んでいるらしい。
ミカ 『うん、それは無いね☆』
ナギサ『あり得ないです』
カヨコ『いやそれは無理がある』
エスミ『…………解せない』
もしも仮にブルアカ世界に転生して生徒になれるなら、どんな武器を所持して愛用したいですか?(※作者は愛用するならリボルバーしかあり得ません.)
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拳銃(M1911,グロック等)
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リボルバー(SAA、コルト・パイソン等)
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自動小銃(HK416、AK-47等)
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短機関銃(M1921、MP5等)
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小銃(M1ガーランド、Kar98k等)
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散弾銃(ベネリM4、AA-12等)
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機関銃(MG42、M249等)
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対物ライフル(AW50、ヘカートⅡ等)
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擲弾発射器(M79、ダネルMGL等)
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素手