夢叶って画家になれた転生主は、ともかくブルアカ本編に関わりたくない 作:木暮鬼一
前世の私は、16歳の頃一体何をしていたのだろうか。
少なくとも画家にはなっていなかった。
それこそ世間に名を轟かす有名人だった訳でもないし、お金持ちのご令嬢に毎度ながら『パトロンになりたいです』とアタックされ続ける日々を送っていた訳でも無い。もちろん平然と銃を持ち歩くどころか、喧嘩や騒動で時たまに発砲するなんて言う非日常な生活とも無縁だった。
かろうじて共通点があったとすれば美術部に所属していたぐらいだけど、それでも部長を務めたことは無いし、私を慕ってくれる弟子を持った事もない。校内を歩いても周囲から握手を求められたり、写真をサインをねだられた事も勿論ない。
どちらかと言うと前世の私は仲の良い友人と共にゲームや映画、大好きな美術を話題に教室の隅っこで熱く語り合うぐらいだった。
たまに私が心から尊敬している美術の〝先生〟と2人きり、長時間に渡って指導を受けたり議論を交わしたりはしていたけど、そう珍しい光景では無かったかな。
そう思うとブルアカ世界に転生してからの私は随分とキャラ変わり……何なら驚きに満ち溢れた人生を送っていると言えるのかな?
まあ今更この事実に気付いた訳では無いけど、流石にナギサ達のような癖の強いブルアカキャラと毎度のように関わっているとこれが普通の世界なんだと誤解をしてしまうね。
それこそ正に去年、サンクトゥス分派やらキヴォトス全土を巻き込んだ犯罪グループ関連の騒動がようやく落ち着いて、情報屋としての兼業も合わせて再び絵を描くだけの日々を過ごせると思いきや……活動再開が絶望的な美術部を救うためにティーパーティーを相手に情報戦を披露したり、長期にわたって放棄されていたカタコンベでよりにもよって【ゲマトリア】の1人、マエストロに邂逅してエデン条約編に繋がる場面に出くわしたりと、原作本編に関わりたくないと強く願う私を無視してこの世界はどんどんとその時空へ引きずり込もうとしている。
もちろんそれだけじゃ無い。
特に最近、セイアからは週に3回か4回の頻度で会いに来て欲しいと何故か訪問回数の増加を懇願され、ミカは暇さえあれば私の下に会いに来てハグをしては遊びに付き合わされ、ナギサに至っては例の記念日云々で味を占めたのか電話を掛けてくることが増えてきて……もはや只の〝知人〟では済まされない親密過ぎる関係をあの3人それぞれと築こうとしていた。
正直なところ笑えるね。
あれだけ『ブルアカキャラとは関わらない。私はブルアカ本編に影響を与えるような存在にはならない』と豪語しておきながら、よりにもよってエデン条約編の騒動の火種となる3人との関係性が次第に深まっていくばかりなんだから。
ああ、分かっている……分かってはいるんだ。
その気になれば私はあの3人との関係を断絶することが出来る。もう世話は十分だとセイアを放棄し、何度も何度も遊びにやって来るミカを拒絶して出禁にし、ナギサ以外の誰かをパトロンとして選んで彼女に対して背中を向けて立ち去る……この選択さえ取る事が出来れば、私はあっという間に彼女達との関係を断ち切ることが可能だろう。
もちろん向こうには想像を絶する精神的ダメージを与えることになる。人によっては、これは裏切りとも言えるはずだ。
でも本来なら私は彼女達と関わることが無いはずの存在。常識的に考えれば正しい選択肢と言えるだろう。
それなのに私は、あの3人との交流をどこか心の片隅で喜び、楽しんでいた。この関係が続いて行けばブルアカ本編に少なからず影響を与えてしまうかもしれないと頭では分かっているはずなのに。
本当、参ったね……前世では全員等しく好きだったブルアカキャラと沢山接していくうちに、気付かない間に私の固いはずの意思が大きく揺らいでいるのかもしれない。
それこそ実感はしている。
セイアの世話をする度、庇護欲が掻き立てられてあの子を可愛がりたいと思うことは多いし、ミカの気分任せな言動に呆れながらも会話やハグをすると不思議と温かい気持ちになる。
なによりナギサとの交流はこう…………よく分からないけど幸福に似た感情が身体を支配しているような感じがして、まるで想い人と一緒にいる喜びを味わっているような錯覚に陥ることがあって謎だ。
もしかすると他2人に比べてナギサだけ律儀に私の『不必要に関わらない』という約束を守っているせいか、久しぶりに会えた時の喜びがひとしおなのかもしれないね……何だか私がナギサに対して恋心を抱いているみたいで癪だけど。
そもそも……ナギサもナギサだ。
私に久しぶりに直で会うと目をいつも輝かせてくるし、わざわざ手作りの苦味のあるロールケーキを用意しては感想を必ず聞いてくるんだ。大のロールケーキ好きの彼女のことだから味が不味いと思った事はこれまで一度も無いし、店で出されるロールケーキよりも全然美味しい。
そしてその感想を毎度ながら彼女に伝えると、ナギサは笑顔で頷いてくるだけで何も言わない……実を言うと、最近はナギサから向けられるその笑みをまともに直視出来ない事が多くなってきて非常に困っているのは秘密だよ。
しかし何故だろう。顔面の美少女レベルで言えば私も中々負けていないという自覚はあるのに、ナギサの笑顔を見ると勝手に耳や頬に熱が集まってドキドキしてしまう。
ちなみにそんな私とナギサの様子を、時々その場に同席しているミカが面白そうに眺めては『ナギちゃんとエスミちゃん、付き合いたての恋人みたいだよね☆』と口に出すのが定番で、ナギサは毎回顔を赤くしては慌てて否定するのがいつもの流れになっていたりする。
流石に変に意識してしまうから私もナギサと同じで必ず否定はしているけれど、彼女が口を慎んだ記憶は今のところ全く無い。
ところで視界の隅では必ずと言っていいほどナギサの付き人兼私の美術における弟子のチェリが胸を押さえて床に座り込んでいたりする。どうもエスミ×ナギサというナマモノCPに過剰な熱を注いでいるせいか、少しでもチェリなりの『尊いシーン』が生まれてそれを目撃しては必ず死にそうになっているらしい……ああ見えて風邪や高熱であっけなく寝込む病弱体質なので心配にはなるんだけど……本人的には平気らしいので、近頃の私は見て見ぬふりをしている事が多くなってきた。
何だかこうして振り返ってみると、転生したら転生したで前世にはない新しい人生を謳歌している気がするね。
とはいえ今の私は2年生。
このまま順調に行けば本編開始前にトリニティ総合学園を卒業する事にはなる。そうなれば『昔、栢間エスミという生徒がいてね……』的な感じで、本編開始時にはもう過去の生徒として扱われる程度で済むはず。
流石につい最近ゲヘナで大きな騒ぎを起こした〝雷帝〟レベルとなると、良くも悪くも歴史上とんでもない事をしでかした生徒として永遠に語られる存在になってしまう訳で、私も出来る限り目立つ行動は控えているつもりだよ。
まあ何にせよ、学園生活も残すところあと少し。
怪我も無く、不祥事も無く、画家として思う存分絵を描きながら私なりの青春、ブルーアーカイブを楽しんでいこうと思う。
ああそれと、最後にもう1つだけ。
画家になるのと引き換えに手にした代償の右手の件だけど……最近、久しぶりに病院の担当医に診て貰ったら、どうやらかなり状態が悪化しているらしい。
痛みが以前よりも増すようになって、加えていつも私が服用している薬の効果が次第に効きにくくなるんだとか。
医者が言うにはそれが来るのは今年かもしれないし来年かもしれない、という事だけど……どっちにしろ先の明るいニュースでは無いのは確かだね。
まぁこれでも2度目の人生を頂いて、かつて叶わなかった夢を実現させてくれた事に変わりはない訳で、その実現した夢と引き換えに手にした努力の末の代償なんだから限界が来るのはむしろ当然のこと。
幸福があればもちろん不幸もある……だからこそ私は、いずれ訪れる現実をちゃんと受け止めようと思う。
栢間エスミの〝画家〟としての人生が終わりを迎える瞬間を。
ちなみ前世のエスミは勉強そっちのけで隙あらば絵を沢山描き続けていたので、割と毎回赤点ギリギリを徘徊し、その度に美術の先生にきつく叱られていた過去がある。
その為、記憶だけを受け継いで転生した今はしっかりと勉強も両立させ、トリニティ総合学園の同学年の間では成績は常に上位をキープしている模様。
もしも仮にブルアカ世界に転生して生徒になれるなら、どんな武器を所持して愛用したいですか?(※作者は愛用するならリボルバーしかあり得ません.)
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拳銃(M1911,グロック等)
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リボルバー(SAA、コルト・パイソン等)
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自動小銃(HK416、AK-47等)
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短機関銃(M1921、MP5等)
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小銃(M1ガーランド、Kar98k等)
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散弾銃(ベネリM4、AA-12等)
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機関銃(MG42、M249等)
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対物ライフル(AW50、ヘカートⅡ等)
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擲弾発射器(M79、ダネルMGL等)
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素手