夢叶って画家になれた転生主は、ともかくブルアカ本編に関わりたくない 作:木暮鬼一
……これは健全だ。誰が何と言おうと健全なんだ……。
冗談はさておいて健全か、それとも不健全か。
個人的にはKENZENだと思ってます、はい。
聖園ミカ 『朝チュンの画家』
それは突然でした。
言い換えれば、予兆も無しに放り投げられてきた爆弾とでも言いましょう。
「エスミちゃんって、べッドで寝る時は下着派なの? それとも全裸派?」
「……はい?」
《1-2》
ある日、プライベートで外出をしていたエスミは帰宅時に運悪く大雨に降られていました。
前世の死因を思い出して以降、規模の大小問わず雨に対してトラウマを抱えるようになってしまった彼女にとって、自然の恵みとも言える雨はもはや彼女の人生における最大の天敵です。
故に、さあどのような手段で帰宅するべきかと酷く悩んでいた所、偶然にも買い物を済ませて帰宅途中だったミカに出くわしたエスミは彼女の『近いから私の部屋においでよ☆』という言葉に素直に甘えさせて貰う事となりました。
ちなみに帰宅途中で雨に降られ、その場の成り行きで他人の部屋に上がらせて貰うという経験自体は去年ナギサに路上で助けられた日を含めれば今回で2回目となるエスミですが、運良く車で帰宅途中だったナギサとは違い、普通に徒歩で外出していたミカが便利な乗用車を持っている訳がなく、エスミはミカと共に激しく降り注ぐ雨の中を必死に走る事となるのでした。
結果、ミカの部屋に辿り着いた時には既に2人とも雨に打たれたことで身体がずぶ濡れになっており、このままでは体調を崩してしまうとミカが急いで沸かしてくれた風呂に2人で一緒に入っている最中…………例の発言がミカの口から突如として発せられたのでした。
ところでこれは余談ですが、ミカが所有している風呂場もといバスタブは本来1人仕様のため、大きな羽を持つミカが背後からエスミを抱きしめる形で2人共に入浴しており、今のエスミはいわゆる【後ろ抱き】状態となっています。
そのためエスミとしては背後にいるミカの表情が全く読めないため、先ほどの彼女の質問が果たして本気なのか冗談なのか全然分かりませんでした。
「というか……その選択肢、寝間着はどうしたの?」
ひとまず、普段のエスミは寝る時はいつも寝間着を着用して就寝するため、下着でも全裸でもない『第3の選択肢』を自ら口にしました。むしろ暑がりでも無い限りはそれが当たり前でしょう。
しかしミカは『今回はそういうのはダーメ!!』と無慈悲にも突き返すと、ぎゅうっとエスミのお腹に回している腕に力を込めさらに身体を密着させて来ました。エスミと全く同じサイズの豊満な胸が背中に押し付けられてその形を変えていきます。
しかしながら天真爛漫な活発美少女に後ろから抱きしめられても尚、エスミはその平然とした態度を崩す事はありませんでした。
「聖園。そう密着されると動けないんだけど?」
「大丈夫大丈夫☆ お互い雨のせいで身体が冷えちゃってるし、しばらくは一緒にこうして湯船に浸かっていようよ。せっかく熱々のお湯を入れたんだから、身体がポカポカになるまで長く浸からないと。ねっ、良いよね?」
「はぁ…………まあ、いいよ。逆上せる前にちゃんとこの腕を解放してくれるならね」
「えへへ、やったー!! 嬉しいからもっと抱き締めちゃおうっと☆ お互い裸で抱き合うのって滅多に無いもんね。この機会だし、今のうちにエスミちゃんの身体を堪能しちゃおうかな?」
「いや、その言い方はどうなの? もはや変態のそれだけど……」
「ひどーい。エスミちゃんの身体の事なら私とナギちゃんが誰よりも一番知ってるのに。付き合いが長いのも私達だけじゃんね」
「……過去に何度か一緒にシャワーを浴びただけの仲なんだけど」
「だからだよ。エスミちゃんの太ももに小さなホクロがあって、制服で目立たないけど実は胸が大きいとか、日焼けしてないから身体のお肌が真っ白いとかぜーんぶ……私とナギちゃんだけが知ってる秘密だもん☆」
「一緒にシャワーを浴びたことのある桐藤は私の身体を全然見ようとはしなかったけどね。むしろ聖園は彼女の紳士な性格を見習って欲しいぐらいなんだけど」
「あはははっ、何それ……ナギちゃんってば、いつも勿体ない事してるよね。エスミちゃんの裸を合法的に見れるのになぁ」
「まるでいつも桐藤が非合法で私の裸を見たがっているように言うのは止めなさい。そもそも、聖園は私に裸を見られて何も思わないの? いくら同性でも恥じらいぐらいはあるよね?」
「ううん、全然。 むしろどうして? エスミちゃんやナギちゃんになら私、別に裸ぐらい見られても全く恥ずかしくないよ?」
「ああ、そう……この話はもう終わりにしようか」
観念した、とばかりに彼女は溜息を吐きます。
そしておもむろに湯船に付けていた手を引き上げ、自身の頬を優しく揉み始めるエスミ。その行為に何の意味があるのかはさておき、彼女はただ無心で自身の頬を揉み続けます。
やがてその状態がしばらく続いた後、再び湯船に手を沈めた彼女は浴室の天井を見上げるのでした。
「……それで話を戻すけど、聖園はさっき何であんな質問をしたの? 普通、べッドで寝る時は下着にも全裸にもならないと思うけど。君だって普段寝るときは寝間着のはずでしょ?」
「あれ、もしかしてエスミちゃん……気付いてないの?」
「何が?」
「雨のせいでお互い着てる服が濡れちゃったけど、エスミちゃんって替えの着替えとか持ってないよね?」
「……あっ」
彼女の言葉を聞き、エスミは全てを察しました。
ええ、そうです。
元よりミカの部屋に上がることも、雨に濡れて彼女と共に風呂に入ることも、全ては想定外続きで起きた出来事。
故に、そもそも外泊するつもりが毛頭無かったエスミは今現在、衣服はおろか下着すらずぶ濡れで着ることが出来ない上に、この浴室から出たところで代わりとして着るものが存在しないのです。
となればこの後のエスミの行動としては、このままミカの部屋で一泊するか、誰かに替えの衣服と共に迎えに来てもらうしかありません。
さて、普通であれば誰かに替えの着替えと共に迎えに来てもらうという選択肢の方が最も無難であり得策ではあります。しかし未だ止む気配のないこの大雨の中、わざわざ替えの衣服を持って来させるのはあまりにも酷でしょう。
そのため既にミカから提案されて許諾している事ではありますが、本日エスミは彼女の部屋で寝泊りする事が決まっていました。
しかし先ほども言った通り、一泊しようにも替えの衣服をエスミは持っていません。それに外は依然として大雨が降っているため、替えの服を持って来てもらう訳にもいきません。
一応、好みは別としてミカの私物を借りて着用することが出来ない訳では無いのですが、互いの背丈や体格の差からして恐らくキツキツになる事でしょう。特にまだ高等部1年のミカは身長が未だ伸びきっておらず、対してそろそろ高等部3年になるエスミは最近ようやく160に身長が達したため、2人の背丈の差は歴然としています。
人によっては『着られれば別に何でも良い』と思ってしまう所ですが、一応ミカの私物を借りることになる訳ですから、服を痛めてしまったり万が一にも破損等はさせられません。
こうなると先程ミカが尋ねてきたように下着姿か全裸のどっちかでべッドに寝る事になるかもしれません。
後者は間違いなく風邪を引きそうではありますが……。
(とは言っても……素っ裸になる訳にはいかないし、ミカの下着や服が合うかどうかも分からない……そもそもミカは乾燥機自体を持ってないから私の下着を急いで乾かすのも無理だろうし……もしかして私、詰んでる?)
もう他人の部屋で寝ること自体、今更何の躊躇いもないエスミですが流石に衣服も何もない状態というのは今回が初めてです。
何事にも初めてのハプニングは時として訪れるものの、エスミは背後にいるミカに向けて自身の体重を預ける形で身体を倒すと、より良い案は無いものかと熟考するために目を瞑りました。
「うーん……いっそのことバスタオルで身体を包んで寝るべきかな?」
「エスミちゃん。たぶんそれ、見た目的にかなり危ないと思うよ。たぶん寝てる時に脱げちゃう」
「それ、下着か裸で寝るのも同じだから…………はぁ、じゃあ……布を使って簡易的な服でも作るとかどうかな?」
「裁縫得意なの?」
「全然。下手だよ」
「へえー、意外。何でも出来ると思ってた」
「聖園は私のことを完璧超人か何かだと思ってるみたいだね」
「ちなみに私は裁縫が大得意だよ☆」
「……ふーん」
「えっ、何その反応……ほ、ほら。裁縫が得意な私がエスミちゃんの服縫ってあげるとか名案だと思わない!? お店で売ってるような服は流石に無理だけど、身体に巻き付くぐらいの簡単なモノなら全然すぐに作れるし!!」
「……いらないかな。聖園が編んだものだと身動き出来ない虫になっちゃいそうだし」
「そんな事はしないよ!?」
「本当に? 聖園が裁縫してる姿を見たことがないから、正直信じられないんだけど……」
「もおー酷いよエスミちゃん!! そんなこと言うなら……この、えいっ!!」
「へっ!? まっ、ちょっと!?」
すると裁縫の腕前を中々信用してくれないエスミに少しばかり腹を立てたミカは、なんと彼女のお腹に回していた腕で唐突に彼女の大きな胸を揉み始めたではありませんか。
エスミを後ろ抱きにしている彼女だからこそ出来た行為と言えますが、まあ正直何てことはありません。直感で動きがちな彼女なりに考えた、他愛もない普通の悪戯です。
それにエスミとしても時たまにミカに胸を揉まれる事は多々あるため、最近は反応が薄くなりがちで基本は揉まれた所で全くノーダメージなのですが、最悪なことに今回は互いに湯船に浸かって素肌を晒しているときました。
つまり、ミカの小さくて細い指が自身の柔い胸に食い込むだけに限らず、普段は下着や衣服で守られているはずの敏感な箇所にも遠慮なくミカの手が触れられる訳で……一言で言えば、悪戯をされているエスミは完全に絵図と反応がアウトでした。
「バ、バカッ!! この状況で揉むなんて何考えて――ひゃわっ!? ちょっ、ちょっと待って、そこはヤバ――んっ、ああっ……こ、この、ねえ聖園!! 聞いてるの!?」
「聞こえてるよ。でも残念でした、絶対にエスミちゃんの言うことは聞かないからね☆ ほら、このこの~!!」
「ひゃっ!?……だ、だから、手がいやらしいって……そ、その手を止め――ひっ、んぁっ……と、とまっ、て……ねえ、ね、えって、ばっ!!」
「ふーんだ。雨に濡れたから部屋に上げてお風呂にも入れてあげてるのに、私に全然感謝もしてくれないエスミちゃんが悪いんだからね☆ ほらほら、エスミちゃんってここが弱点でしょ? 今まで沢山揉んで来たから知ってるんだからね!!」
「いや、それとこれは話が別で――ひゃあっ!! だらか、そ、そこを強く揉むなあっ、このバカァ!!」
「問答無用ー!! えーい!!」
恐らく普段から只の友人として接しているミカとしては、エスミに対し〝その気〟は全く無いのでしょう。
そもそもエスミを背後から抱きしめているという体勢上、酷く暴れる彼女を抑えながらも胸を激しく揉む行為に専念しているためか、現在のエスミが大変いかがわしい姿になっている事にすら全然気付いていない様子です。
それに彼女たちが今いる場所は声が反響しやすい風呂場であり、加えてエスミの教育上よろしくない〝声〟は彼女がミカの拘束から逃れようと必死に暴れる事で生じる水音のせいで非常に聞こえ辛く……このままエスミが果てるのが先か、それともミカが事態のヤバさに気付くのが先か、今後の展開が分からないでいました。
ただ1つだけ確かな事があるとすれば、雨に打たれた事で冷めていた2人の身体は既に十分に温まっているという事です。
もっとも、1人だけ明らかに別の原因で顔を真っ赤にしている訳ですが……。
《1-3》
「……何か言うことは?」
「ごめんなさい」
風呂場でのちょっとした出来事から、しばらく後。
あの後、エスミの身に一体何が起きたのか……生憎とその話は彼女の名誉のためにも秘密にするとして、結果的にミカのお仕置きから逃げることも止めることも出来なかったエスミは、気付けば身体の興奮状態が長引いたせいなのかバスタブの中で逆上せてしまったのでした。
そうなれば流石のミカも様子がおかしいと気付く事になり、嬉々として悪戯していた姿から一転……顔面蒼白になりながら大慌てでエスミをバスタブから引き上げました。
そして現在、エスミは彼女の部屋のべッドに下着姿(ミカの)で寝かされ、冷たい水で濡らしたタオルを頭に乗せられた状態で……何故かエスミと同じで下着姿でいるミカに看病をされていました。
下着姿に関しては、いかんせん緊急を要する事態でしたのでミカの独断になります。とはいえ有難いことに下着のサイズ自体は少し窮屈ながらも、別に着心地が悪い訳ではありませんでした。
本当は自身の寝間着も着せようかと悩んだミカでしたが、未だエスミの身体の熱が中々収まらないためそれは控えています。結局、のぼせた身体の状態が落ち着くまでは下着の他に何かを着ることは当分出来ない事でしょう。
とはいえ、何故ミカも下着姿なのかは全く不明ではありますが……。
エスミは頭に乗っているタオルを指先でいじりながら、律儀にも彼女の傍で正座をしているミカに視線を向けます。
「ひとまず私は大丈夫だけど……また今回みたいな事が起きたら大変だし、今後はお風呂の中でああいう行為をするのは絶対に禁止だからね。分かった?」
「あっ、また一緒には入ってくれるんだね。エスミちゃんってば優しい☆ もしかして……私のことが大好きだったりする感じ?」
「……会うのも禁止にしようか?」
「ごめんなさい。大変深く反省しています。申し訳ありませんでした」
「……はぁ」
少しでも調子に乗るのが彼女の悪い部分であり、同時に愛らしい一面でもあります。
これでも今はまだ高等部1年。歳にすれば15歳になったばかりの幼い少女です。
今回は幸運にも命の危機に瀕するほどの事態にはなりませんでしたが、ミカには是非とも今回の失敗をきっかけに成長して欲しいと願い、まだ本調子に戻らないエスミは茫然と部屋の天井を見上げるのでした。
目先にある天井は、汚れ1つなく綺麗です。
「……エスミちゃん。天井を見上げてるけど、あそこに何かあるの?」
「何も……ただまあ、聖園の部屋にしては随分と綺麗だなぁと思って」
「えへへ、そうでしょ~これでもちゃんと時々掃除して……んっ、ちょっと待って。もしかして私の部屋って、エスミちゃんに小汚いイメージを持たれてた感じ?」
「部屋も散らかってないし、服も畳んで棚の中にある……想像してたのとは大違い」
「エスミちゃんの中だと私って普段どんな過ごし方をしてるのかな!? あまりにも自堕落すぎない!?」
「服や私物を部屋中に散らかして、べッドの上で横たわってる訳じゃないんだ?」
「全然そんなことしないから!! もおー、私だってこう見えてティーパーティーの一員なんだからね!! ちゃんと私生活とか立ち振る舞いとか、私なりに色々と気を付けてるから!!」
ぷんすかと頬を膨らませて強く反論をするミカ。そんな彼女に顔を向けたエスミは小さく笑みを浮かべました。
「ふふっ、ごめんごめん。さっきのは冗談だよ。君は考えるよりも感情が先に動くタイプだけど、それでも根はしっかりしている真面目な子だからね。私がちゃんと見てないだけで聖園もちゃんと成長しているのは分かってるつもりだよ」
「何それ、年上マウントのつもり? 私とナギちゃんより1年早く生まれただけでエスミちゃんも全然子供だよね」
「でも君たちより年上なのは事実だから」
「まあ確かに、エスミちゃんって他の先輩達に比べたらかなり大人っぽい雰囲気が出てるけど……うーん。私もエスミちゃんを真似たら今よりも大人っぽく見て貰えるかな?」
「無理だね」
「そんな即答しなくてもよくない!?」
ガーンと酷くショックを受けた様子でミカが頭を下げると、流石に可哀そうと感じたエスミは自身の手を彼女の頭に乗せ、ポンッポンッと優しく叩きました。
「今日は聖園をからかってばかりだね、私」
「……自覚はしてるんだ?」
「だって君、からかうと反応が面白くて。コロコロと表情も変わるし、感情が分かりやすくて見ていて全然飽きない。ストレスを溜めてる時にからかうと自然と落ち着くね」
「じゃあ今までエスミちゃんのストレス発散にさり気無く付き合わされてたってこと!?」
「ほら、そういう所。すぐ反応してくれるね……正直、楽しい」
クスクスと楽しそうに笑みを零すと、自身への雑な扱いは何であれ、彼女が心底満足そうにしているのを見ると本気で怒ろうにも怒れません。
仕方なしに頬を膨らませてプイッと顔を背けたミカは『ふーんだ。エスミちゃんなんて知らない!!』と声高に言うと、不満を露わにして腕を組むのでした。
(……流石にやり過ぎたかな……)
ミカの態度を見てエスミは困ったように自身の頬を指先で掻くと、頭に乗っているタオルをどかし、ゆっくりと上体を起こしました。
気付けば身体の熱は収まり、体調も落ち着いています。吐き気や頭痛もありません。
エスミは自身の体調が元通りになっているのを確認すると、ミカに声をかけました。
「……聖園」
「……ふん」
「……あー……どうしたらその機嫌をなおしてくれそう?」
「……エスミちゃんが私と一緒に添い寝してくれたら許してあげる」
「……えっ……そ、それだけ?」
「うん、それだけ」
「でもそれだと今までと大して変わらない気が……」
「私はそれで十分だよ」
「そう、なら……えーと……お、おいで?」
添い寝程度で機嫌をなおして貰えるなら自分としては一向に構わないと、エスミは大きく腕を広げて歓迎のポーズを見せます。するとその姿を一瞥したミカは満面の笑みでエスミに勢いよく抱き着き、そのままべッドに押し倒してきました。
「わっ……危ないよ?」
「えへへ、でもべッドの上だから大丈夫大丈夫!! それじゃあ、このままだと私達の身体が冷えちゃうから、布団も一緒にかけるね…………よい、しょっと……う~ん……ふかふかな布団の感触とエスミちゃんの肌の触り心地が良くて幸せ~……抱き心地も最高☆」
「そ、そう?……私は中々慣れないけど、これ……」
普段は寝間着で寝るため意識したことはありませんでしたが、下着姿という肌面積が非常に多い今の状態だとミカの肌の弾力やべッドの布の感触が交互に入り混じり、少々変な感じがします。
ちなみにミカはあれこれと足を絡ませたり、背中に腕を回したり、何ならその大きな羽でエスミの身体を包み込むようにして抱き着いているため、お互いに下着姿とはいえ身体は十分なほどに温まっていました。
「雨で濡れちゃったエスミちゃんの服だけど……今お風呂場で乾かしているから、たぶん明日の昼ぐらいには着れるはず。流石に着心地は悪いと思うけど……」
「別に構わないよ。素っ裸で外を出歩かなくて済むならね……それと、この借りてる下着は後日洗濯して返すから」
「エスミちゃんに似合うからそのままプレゼントしちゃっても良いけど?」
「いや、遠慮しておく……流石にピンク柄は恥ずかしい」
きっぱりと断ると、特に不満を抱くこと無くミカは『オッケー』と軽く返事を返し、そのままエスミの胸に顔を埋めてきました……まあ、いつもの事です。
今回は肌に直接顔を埋めているという点さえ除けば、の話ですが……。
「ちょっと、流石にくすぐったいし今回は止めて」
「……エスミちゃんの身体、一緒にお風呂に入ったから私が普段使ってる洗剤の匂いがするね。でも……そっかぁ、これがエスミちゃんの匂いなんだね……うん、良い匂い」
「全然、人の話を聞いてないし……聖園、それ以上変な事するなら添い寝を禁止にするからね。いいの?」
「変な事って……もしかして、こういう事?」
「えっ、待って何する気でい――ひゃあっ!?」
その瞬間、チュウッと何かを強く吸う微かな音と共にエスミの胸元にちょっとした強い刺激が走りました。また、不意打ちにも等しいその感覚は彼女の身体をビクリッと反応させるのに十分なものでした。
さて一体何が起きたのか。
すぐにその原因に察しがついたエスミは顔を真っ赤にします。
「ちょっ、本当にやるなんて――こらっ、聖園!!」
「えへへ。見て見てエスミちゃん、綺麗な白い肌にほら……痕が残っちゃった☆」
「いや『残っちゃった☆』じゃなくて!! 何してるの一体!? 人の肌に痕付けるなんて!!」
「これはね、お仕置き☆」
「はぁっ!? お、お仕置き!?」
「うん。だってエスミちゃん、今日は私のこと沢山からかって来たでしょ? だからこれは私をいじる悪い子のエスミちゃんを懲らしめるためのお仕置き☆」
「このバカッ!! だからって肌に痕を残すなんて何考えて、そもそも風呂場で仕返しはしたから十分で――ひゃっ!?」
激怒したエスミなんて知らないとばかりに『お仕置きだー☆』と意気込むミカは、先程と同じようにエスミの胸や首元に唇を押し付けては次々と痕を付けていきます。
肌に唇を押し付け強く吸い上げる……いわゆる〝キスマーク〟と呼ばれる行為をしている訳ですが、ミカ本人にその自覚は無いのか、もしくは分かった上でわざとしているのか、本人はこの行為自体を大変心の底から楽しんでいました。
もっとも下着姿でミカに足を絡まれ、加えて彼女の羽で包み込まれ、バスタブの時と同じように完全に逃げ場を失っているエスミの方はと言えば、自身の身体に容赦なく降り注ぐキスの嵐と身体の奥底から湧き出る快感に近い謎の感覚に翻弄され、無意識ながらもミカの身体を強く抱きしめながらこの終わりの見えない〝お仕置き〟にひたすらじっと耐えていました。
これまでも何度かミカに身体を触られる事があったとはいえ、よもやキスマークまで付けられるとは一体誰が思うでしょうか。
(これ、私達もう知人じゃなくてただの恋人みたいな事してるよね!? バカなの、何を考えてるのミカは!! )
そもそも彼女だけではなく、ナギサやセイアといった他のブルアカキャラと一緒に何度か添い寝をしている時点でエスミが常に拘る『知人関係』とやらは既に崩壊しているも同然なのですが、果たして盲目なのかその事実にただ気付きたくないだけなのか。
やがて一体いくつの痕を残したのか、ミカ日くお仕置きとやらを終えて大変スッキリした笑顔を見せる彼女の頭上に、遂に我慢の限界を迎えたエスミの【怒りの鉄拳】が振り下ろされるのは……まあ至極当然の事でした。
《1-4》
「……すぅ……すぅ……」
「…………」
真夜中。
遂に怒りの頂点に達したエスミの怒りの鉄拳を食らい、未だ治まることのない頭の痛みに耐えること数時間。
お風呂場とべッドでの計2回に渡る攻防戦と疲労の影響からか、あっと言う間に熟睡してしまったエスミとは別に部屋の主であるミカ自身は未だに寝付けないでいました。
「…………」
目の前には、瞳を閉じて完全に眠りの世界へと旅立っているエスミの美しい顔があります。
以前までは寝不足のせいか目の下に隈が出来ていた彼女でしたが、最近はしっかりと睡眠を確保出来ているようで今のところ目立つ隈は見当たりません。
ミカはそんな彼女の頬を指先で優しく撫でながら、ぼんやりと顔を眺め続けます。
(今日のエスミちゃん……いつもと様子が違ったね……)
頬から耳へと手を動かし、もう熱が引いて冷たくなっている耳をひたすら弄るミカ。
するとその行為にくすぐったさを感じてエスミの身体が微かに反応を見せますが、起きる事はありません。どうやら相当深い眠りについているようです。
(……ねえ、エスミちゃん…………どうしてあの時、雨を見ながらずっと震えてたの?)
ふと思い出したのは、雨の中微かに身体を震わせながら茫然と空を見上げているエスミの姿でした。
(あんなにも弱々しいエスミちゃんを見るのは初めてだったなぁ……いつも落ち着いてて、大人みたいな雰囲気を出すからチェリちゃんやナギちゃんからは凄く慕われてるのに……それでも……そんなエスミちゃんにも怖いものがあるんだね……)
聖園ミカにとって、栢間エスミという存在はいわば一種の憧れの対象でした。
常に落ち着きを払い、難解な言葉を駆使してはティーパーティーのような政治組織を相手に情報屋としての立場と自身の名声を武器に立ち回ることが出来る。
言ってしまえば完璧超人。どんな危険が来ようとも全て跳ね除けてしまうスーパーガール。
それが、中等部の頃よりミカが長いこと見てきた栢間エスミという少女の姿でした。
しかし、そのイメージは今日を以て瓦解したと言えましょう。
たかが大雨。
傘を差してしまえばあっさりと防ぐことができ、傘が無ければ雨の中走って帰れば良いだけのこと。
ですから買い物帰りのミカとしては、別に傘を持参する必要も、急いで近場の店でわざわざ傘を調達する必要もありませんでした。現に彼女以外の住民は雨を相手に苦言を口にしながらも走るか傘を差すかでその場をしのいでいました。
ですがそんな状況下でただ1人……エスミだけは、茫然と空を見上げて何も出来ずにいたのです。
一応雨に濡れないよう近場の建物に避難はしていましたがそれだけ。
傘を買ってくる訳でもない。迎えを呼ぶ訳でもない。誰かと会話をしたり、スマホを眺めて時間潰しをしている訳でもない。
その姿はまるで、恐怖の対象を前にして意識を丸ごと削り取られた人形のようでミカから見ても明らかにあの時のエスミの様子は変でした。
そんな彼女を黙って見過ごせるでしょうか?
いいえ出来ません。
幼馴染のナギサに対するのと同じで、ミカにとってエスミはもう1人の親友であり、大切な存在なのです。すぐに彼女の下に駆け寄り、あれこれと話しかけて接触したのはほぼ無意識でした。
もっとも互いの関係を『ただの知人』と言い張るエスミとしては、あの時のミカの行動は余計なお世話だったかもしれません。
しかしミカはあの時決断した行動を後悔はしていません。
とはいえ、自分の部屋がここからなら近いとエスミに〝嘘〟を吐き、加えて傘も差さずに大雨の中を走って帰宅したのはミカとしても少し強引過ぎたと反省している所ではあります。ただしあの時ミカの手を握っていたエスミの右手は……この安心を手放してたまるかと、必死に手に力が込められていました。
それを追求した所で彼女本人ははぐらかすかもしれませんが……。
(てことは、今日一日ずっとエスミちゃんが私をからかってたのはストレスの発散じゃなくて……もしかして、不安な気持ちを隠すため?)
これはナギサからの受け売りではありますが、人は自身の不安な気持ちを隠すためいつも以上に明るく振る舞い、時として過剰に人に接する事があるようです。
基本エスミは会話をあまり好む性格ではありませんが、今日の彼女は終始ミカとの会話を楽しみ、色々とからかってきました。もちろん彼女が口にしたストレス発散も理由の1つではあったのでしょう。ですがナギサの言葉を信じるなら、あれは自身の弱さを他者に見せない為に取った防衛本能に近い態度だったのかもしれません。
(……それなら素直に言えば良いのに……そんなに私のこと信用できない?)
果たして真意はどうなのか、それは分かりません。
今までの考えは全てミカの考察に過ぎず、目の前で熟睡している本人を今から叩き起こして聞く訳にもいきません。
ミカはじっと彼女の顔を眺め続けると、耳を弄っていた指を今度は彼女の唇に持っていきます。
そして指先でトンッと、エスミの柔らかい唇に触れるのでした。
「……エスミちゃんが私やナギちゃんの事をただの知り合いとしか見てなくても……私は違うからね……エスミちゃんは私にとって、とても大事な友達の1人だから……いつか、私にもその弱さを見せて欲しいなぁ……約束だよ?」
少女はそこで小さく笑うと、触れていた指をそっと自身の唇に持ってきました。
「それに……いい加減、ナギちゃんの気持ちに気付いてあげないと……じゃないと私、本気でエスミちゃんを落としに行くからね」
今もなお静かに寝息を立てて熟睡しているエスミは、その言葉に返事を返すことはしません。
ですがミカは返事を期待することはなく、むしろ言いたい事を言えて満足した様子でぐりぐりと彼女の胸元に自身の顔を強く押し付けてきました。
(……というか、今思い出すと今日のエスミちゃん凄くエッチな声を出してて可愛かったなぁ……最初は普通のお仕置きのつもりだったのに、段々とあの声を聞いてたら私も変な気分になってきて危ない危ない……ちゃんと理性が残ってて良かった)
いつも先を見据えたような空気と共にすまし顔でいるエスミ。そんな彼女の意外過ぎる一面を見られた喜びとでも言うべきか、もしくは新しい扉を開くところだったとでも言うべきか。
どちらにしろ、普段とは大違いの反応を見せたエスミのあの姿をミカは当分忘れることは無いでしょう。今回ばかりは幼馴染であるナギサにもこの件に関しては黙っておくつもりです。
エスミも自ら口を開いて教えるような性格ではありませんし、場合によっては周囲に対し誤解を与えかねません。
しかし……となると今日の出来事はミカとエスミの2人だけが知る『誰にも言えない秘密』に思えて、正直なところミカの心は嬉しさで高鳴り出しました。
もっとも例の〝行為〟を抜きにしたとして、2人で一緒に風呂に入り、下着姿で添い寝をしているだけでも人に言えない秘密としては十分過ぎるのですが……間違いなく、友達未満の関係でする事ではありません。恋人関係でもこのような行為をするかどうかさえ正直怪しいものです。
ですがこの歪な関係は、相手がエスミだからこそ許されているのかもしれません。
「……良い夢を見てね、エスミちゃん……出来たら、今度は友達としてまた一緒に寝ようね」
ぎゅっと再びエスミに抱き着き、ミカは瞼を閉じます。
肌と肌を重ねることで感じるエスミの体温。微かに振動で聞こえてくる心臓の鼓動。かなりの速さで脈打っているのはエスミの心臓か、それともミカ自身のか。
「……おやすみ……エスミちゃん……」
満足そうにして……いえ、幸せそうな笑みを浮かべたままミカは徐々に身体の力を抜いて眠りの世界へと旅立っていくのでした。
《1-5》
「……添い寝で迎える朝……これで一体何度目……?」
寝起きのせいなのか、それとも下着姿で寝ていたせいで寒暖差に喉がやられたのか。いつもに比べて少しだけ声が低くガラガラになりながら、エスミは上体を起こして早々そんな言葉を漏らしました。
ふと隣を見れば自身の腰にミカが抱き着きながら寝ています。
「……んにゃにゃ……んぅ……すやぁ……」
「……熟睡してるし。まあいつもの事だけど…………ほら、私は起きるからその手を離して」
ミカと添い寝をするというのは何も今回が初めてではない為、睡眠中のミカの拘束から逃れるのはそう難しくはありません。
例外があるとすれば、今回は初めて互いに下着姿で寝たという事ぐらいでしょうか。
素肌で抱き合っている訳ですから感触としては妙にこそばゆく、加えてミカの吐息が直にかかっていて正直落ち着きません。
ですが今回も無事に拘束から逃れることが出来たエスミは、先日の仕返しとばかりに未だ夢の旅を楽しんでいるミカの頬をつんつんと指先で突き始めます。
「……むっ……ん、んー?……んぅ……すぅ……」
「……これで起きないんだ」
とはいえ頬を突かれているにも関わらず、昨夜は自分よりも眠るのがだいぶ遅かったのか、この程度の刺激ではミカは全然起きそうにありません。完全に爆睡です。
まあ実のところ彼女がエスミよりも早く起きた事など、今まで一度としてあった事はありません。
「それより……この痕、どうしようか」
深い溜息を吐いた後、エスミはおもむろに自身の胸元に視線を下げます。
そこには昨夜ミカによって付けられた無数の痕……ようは、大量のキスマークがありました。
その数は果たして両手で数えきれるかどうか。あの時は気にする余裕なんて全くありませんでしたが、今こうして自身の身体を確認してみるとミカは随分と多くの痕を付けたようです。
しかも付けられた痕は全て胸元から首元にかけて……かなり広範囲に渡っています。
仮に服を着たとしても全部隠れるかどうか正直微妙です。
ただ変な話ではありますが、このような姿になっておいて昨晩エスミとミカは〝一線〟を越えてはいません。
ミカの言い分を信じるならこれは単なるお仕置きだそうですが、それを周囲に説明したところで信じて貰えるのでしょうか。
むしろ社会的に見れば間違いなくこれは〝事後〟であり、加えて互いにまだ子供でかつ同性同士となればその手の噂が周囲に広まるのはあっという間でしょう。
面倒な事にならなければ良いけど、と心の中で念じながらエスミはここで一旦小さな欠伸をしました。
「ひとまず着るものを用意しないと……ああ、そういえば私の服を乾かしてくれてたっけ?」
あちこちに寝癖が付いている髪を揺らしながら、エスミは寝ている彼女を起こさないようにそっとべッドから降ります。まずは今も乾かしているらしい自身の衣服を見つけるのが先決です。
ちなみに部屋の窓はカーテンで閉められているため外の状況は詳しくは分かりませんが、とりあえず先日の大雨は既に過ぎ去った様子。持参していたスマホは充電が切れて使えないため、部屋の隅にある時計を確認してみると何とビックリ……時刻はもう昼に差し掛かろうとしていました。
「……今日が休日で良かった」
2度目の人生を送っている最中とはいえ、やはり平日に寝過ごすことが一番心臓に悪いのは依然として変わりません。
休日だからこそ誰も自分の身を心配してくることは無いだろうと、エスミは自身の服を求めてあちこち動き回ります。しかしどういう訳か部屋のどこを見ても自身の服が見当たりません。乾かしているはずなのでは?
「……忘れてた。服は風呂場だ」
その時エスミは思い出します。
濡れた衣服は全てお風呂場で乾かしていると、昨晩ミカが言っていました。
いわゆる浴室乾燥機を使った洗濯干しとなる訳ですが、果たしてどこまで乾いているのか。バスタブの中でミカに好き勝手された恥ずかしい記憶を思い出しつつ、エスミは洗濯物が干してある風呂場に足を踏み入れます。
「うーん……もう少し、かな……」
どうやらミカは彼女の衣服だけを優先的に干してくれていたようで、風呂場にはエスミの衣服だけがポツンと存在しています。
ですがいざ手で触れてみると、残念なことに半日程度時間が経ったぐらいでは完全に乾いているとは言えず、昼頃には乾くはずと話していたミカの目論見はものの見事に外れる事となりました。
自身の服から手を離したエスミは肩をすくめて苦笑いを浮かべます。
「どうせ今日は休みなんだし、乾くまで待ってようかな……」
焦ることはありません。
他に急ぎの用事を抱えている訳でも無いのですから、たまにはゆっくりと時間が過ぎるのを待つのも良いでしょう。
エスミは風呂場から退出すると、ミカの寝室に再び移動します。
「……ん~……ん、にゃ……すぅ……」
「……はぁ」
部屋の主は今のところまだ夢の世界から帰ってくる様子はありません。良い夢でも見ているのか寝顔は可愛いです。
とはいえ時刻はもう昼。
一体何時に就寝したのかは不明ですが、流石に昼過ぎまで寝ているのはよくありません。エスミは再びべッドに跨ると、ミカの身体を優しくゆすって起こし始めます。
「ほら、もう昼だよ。そろそろ起きて」
「……んー……い、やぁ……」
「ダメ。流石に寝すぎだからね?……ほら、起きなさい。その布団も離して」
「むー……キス……してくれたらぁ……おきるぅ……かも……」
「それって額と頬の話だよね?」
「……えへへ……すぅ……」
「えっ、嘘でしょ。聞くだけ聞いてそれで寝るの?」
頭を優しくポンポンと叩いても、身体をゆすってみても、ミカは結局起きようとはしません。
そもそも先ほどの会話自体、ちゃんと意識があったのかさえ定かでは無いのです。夢の中ででもエスミに起こされていたのでしょうか? それでキスをねだるとは中々に強欲過ぎます。
「……はぁ。カーテン開けるよ?」
ひとまず未だに部屋が暗いのはよくありません。
返事は期待しないものの、一応彼女に声をかけたエスミは容赦なく部屋のカーテンを開けます。
ちなみにティーパーティーに所属している生徒としてのプライバシー確保のためなのか、ミカの部屋の窓ガラスは全て外から中が見えないよう特殊な目隠しフィルムが貼られており、エスミの痕だらけな下着姿を外の人々に見られてしまう……なんていう心配をする必要は全くありません。
「…………む、うぅ……んー……!!」
さて昨夜の大雨もとうの昔に過ぎ去り、時間は真昼。加えて現在の天気は快晴。
遂にカーテンを開けたことで遮るものが何も無くなった窓は、外の明るく眩しい日の光を存分に受け入れ始めます。
当然、窓近くに設置されているべッドにもその温かみのある日の光が注がれましたが、ミカは眩しさに顔をしかめて体勢を変えるだけで終わり、惜しくも太陽の光で起こすことは叶いませんでした。
「やれやれ……後でまた起こすからね。次はちゃんと起きなよ?」
エスミはカーテンから手を離し、あてもなく再び部屋中を徘徊するとひとまず寝室から一旦立ち去ります。
(そういえば、もう時間帯を考えると今は昼だし何か料理をした方が良いよね……ミカは何が食べたいかな? 私でも作れそうな料理の具材があると良いけど……)
何度もミカの部屋に立ち入った事があるためか、もはや勝手に他人の冷蔵庫の中身を物色する事ぐらい普通の光景となってしまっているエスミ。
その行動をしている時点でもはや『ミカとは只の知人関係』は流石に無理があると、他者は強く思うかもしれません。しかし生憎とそのような事実を突きつける事が可能な者は、この場にはいませんでした。
「えっと、チーズにハム……あと卵と……これはミルクだね。それにそこにあるのは……トマト?……甘い物多すぎない、この冷蔵庫?」
さて昼食を作るために冷蔵庫の中身を物色していたエスミでしたが、どうやら甘味が大の苦手な彼女にとって冷蔵庫の中にある物はあまり喜ばしいものでは無かったようです。
冷蔵庫の扉を閉めた彼女は、ひとまず自身の顎に手を当てて熟考を始めます。
正直なところ、冷蔵庫の前で無防備にも下着姿で立ち尽くすその姿はあまりにも滑稽であり、かつ他者からすれば目を疑う光景ではあるのですが、今この部屋にいるのは自分とミカだけだから大丈夫大丈夫とすっかり安心しきっているエスミは気にもしません。
加えて外は快晴という事もあってか室内はほどほどに暖かく、実を言えばこの格好が一番過ごしやすいと来ました。
しかし、時として状況はあっさりと一変するものです。
「失礼しますミカさん。本日はご一緒にティーパーティーで会談をする予定のはずですが、いつまで寝て…………エスミさん?」
「……え?」
突如として部屋の出入り口の扉が開かれ、いつものようにティーパーティーの制服を身に着けた桐藤ナギサが姿を現しました。
「…………」
「…………」
恐らく、先程の言葉から察するに今日は休日にも関わらずティーパーティーでは変わらず仕事があるのでしよう。
となればティーパーティーの三大派閥の1つであるパテル分派に所属しているミカもまたそれに参加する義務があります。生憎とその当の本人は未だにべッドで熟睡している訳ですが、幼馴染であるナギサはそれを察してわざわざ起こしに来てくれたのかもしれません。
それに彼女たちの仲の良さを考えれば、互いの部屋の合い鍵ぐらい共有していそうなものです。
ですが本来ならミカしかいないはずの部屋に、下着姿で痕だらけの栢間エスミが居るというのはナギサとしても大変予想外だった事でしょう。
「……ん?……えっ??……いや……は???」
ナギサは状況を上手く呑み込めていない様子でミカの部屋を広く見渡し、次に相変わらず下着姿のままのエスミをじっと見つめ、自身の顔を赤く染める事もなく両目を何度も瞬かせます。よほど目の前の光景が信じられないでいるのでしょう。無理もありません
一方で非常に気まずい空気を味わっているエスミも、今この場でナギサに対し何を言っても余計に墓穴を掘るだけと考え、目をそらしつつ口も閉ざしています。
その反応がかえってナギサを誤解させているというのにも関わらず。
「んんぅ~!! よく寝た~……あっ、エスミちゃんおはよう!! 昨日は私のせいで疲れちゃったよね、ごめんね!? 私もやり過ぎちゃったのは自覚してるから、エスミちゃんの身体が心配で……てっ、何でナギちゃんがここにいるの!? あれその恰好……もしかして今日ってティーパーティーのお仕事があったの!? あっ、いや待って、エスミちゃんと私が下着のままなのは別にそういう事じゃなくてね……え、えっと……あの……あ、遊び……的な……」
しかし非常に運が悪いことに、ようやく眠りから目覚めたミカがどう見ても誤解を招く台詞を口にしながらエスミ達の所に姿を現しました。
今まで無言を貫いていたエスミもこの時ばかりは『終わった』と小さく呟き、ミカも自分たちが今置かれている状況を素早く察し、普段とは違って歯切れの悪い言葉を口にしながらオロオロと焦り出します。
するとナギサはここで一旦小さく溜息を吐きました。
「エスミさん……それにミカ……詳しく……説明してください。今、私は冷静さを欠こうとしています」
そしてナギサは笑顔と共に自身の顔をやや斜めに傾けると、この状況に関する詳しい説明を2人に求むのでした。
「……エスミちゃん」
「……聖園……覚悟しよう」
ミカが何か打開策は無いかとエスミに助けを乞いますが、彼女はただ頭を左右に振って現実を受け入れろと返事を返します。
「お2人共、立ち話もあれですからまずは座りましょうか……ああ、時間ならご心配なく。本日予定していた会談は私の方でキャンセルしておきますので」
その後、エスミ達はナギサが抱いた誤解を解くのにそれから約半日……時間にして数時間を費やす事となるのでした。
割とギリギリアウトな気もしなくもないですけど、その時はちゃんとR18版を別で書こうと思ってます。
(そもそもこの作品にR18は不要な気もしますけど)
ちなみに私は二次創作だろうと夢小説だろうと、百合作品の主人公は決まって〝右〟固定一択ですね、はい。
バリネコは正義。
※エスミの貞操は無事です。この後ナギサに説教されてます。
もしも仮にブルアカ世界に転生して生徒になれるなら、どんな武器を所持して愛用したいですか?(※作者は愛用するならリボルバーしかあり得ません.)
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拳銃(M1911,グロック等)
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リボルバー(SAA、コルト・パイソン等)
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自動小銃(HK416、AK-47等)
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短機関銃(M1921、MP5等)
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小銃(M1ガーランド、Kar98k等)
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散弾銃(ベネリM4、AA-12等)
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機関銃(MG42、M249等)
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対物ライフル(AW50、ヘカートⅡ等)
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擲弾発射器(M79、ダネルMGL等)
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素手