夢叶って画家になれた転生主は、ともかくブルアカ本編に関わりたくない 作:木暮鬼一
転生主の独白タイム
生まれ変わることが出来るなら、来世では画家になりたい。
これは私、
前世における私はごくごく平凡な日本市民……から随分とかけ離れた、狂人レベルの美術オタクと言えた。幼少期の頃から美術文化に触れ、美術専門の高校に通い、社会人として新卒時代は美術関係の職場に就き、休日は遠い美術館に足を運ぶ日々。振り返ってみてもドン引きするほどに美術三昧の日々である。
絵画作品を買っては自宅に展示するような文化を持つ海外とは違って、美術分野は趣味にしては
そんな私が前世である日、不幸にも水害に巻き込まれてあっと言う間に人生に終止符が打たれてしまうと、気付けばどういう訳か【ブルーアーカイブ】の世界に転生していた。
そう、転生してしまったのだ、事もあろうにゲームの世界へ。
流石に前世では度を越えた文科系の美術オタクだっただけに、転生先が銃声と爆発が日常茶飯事でヒャッハーな世界になるとは誰も思いもしないだろう。出来れば過去の
ただし前世の私はこれでも雑食系のオタクでもある。映画や漫画、アニメにゲームも
当然、ソシャゲの3つや4つスマホにDLしている事も普通だったし、中には課金するほど遊びこんだ作品も何個かあった。ほとんどは2年以内でサ終してしまったけど。
ブルアカことブルーアーカイブも、前世ではたぶん数年ぐらいは続けて遊んでいたゲームだったので思い入れはかなり深い方になる。むしろ特徴的すぎる世界観のおかげで、転生してすぐに自分の現状に気付けたのだから私にとっては
好きだったゲームの世界に運良く転生したから何とかなるかも、と現実をありがたく受け止めるのも存外に早かった。
ということで神の思し召しか輪廻転生の作用か、意外な形で前世の記憶持ち状態で第2の人生を歩むチャンスを頂いた私は冒頭で話した通り以前の夢を叶えることにした。
つまり、画家になると。
悲しい話ながら前世は画家を職業として選んだとしても、それ一本で生きて行くのはかなり厳しい世界だった。加えて私自身、絵に関する特別な才能は無い方だったし、それを補うために努力しようにも時間と資金は限られ運すら味方に付けないといけない。
最終的に社会人生活の最中で余裕を持てたら目指してみようという考えに落ち着いたものの、気付いたら水害の被害にあって私の人生は突然終わりを迎えた訳だから、未練たらたらに『来世は画家として生まれ変わりたい』と願っていた身としてはこの転生は大チャンスでしかない。
幸運にも私が生まれた場所はトリニティ自治区。
キヴォトスの中では富裕層が多く集まる場所であり中でも美術分野にはめっぽう
本当は前世の記憶が正しければワイルドハント芸術学院が一番美術に特化しているはずだったので、少しだけ……ほんの少しだけ惜しいなと思ったりはした、うん。
ただし前世で成し遂げることが出来なかった夢を果たせるのなら文句はない。
そこで私は夢に向かう始めの一歩として、まだ四足歩行の状態から絵を描き始めた。つまり、絵の修行だ。夢を叶えるための努力は早いに越したことは無いし、何より私自身気づかないだけで才能が埋もれている可能性がある。それを
まあ常識的に考えて、物心がつく前の赤子が絵を描き始める訳だから家族には当然驚かれたし、幼少期の大部分を絵を描く時間に当てて同年代との交流を疎かにしたので、前世でいう小学生にあたる年齢まで成長した頃には『エスミは友達が作れるだろうか?』と周囲から大変心配されてしまった。
みんなには心配をかけて大変申し訳ないと思っている。私も身近にそんな子供がいたら間違いなく将来を心配する。
だけど私はこう見えても前世では元社会人だ。
特に人付き合いが重視される営業とか接客経験もあるので、友達とまではいかないけど親密な交友関係を築くのは意外と簡単だった。そもそも女の子しかいないこの世界……良い意味でも悪い意味でも助かった。
流石にまだまだ幼い年頃なのでトリニティ特有の
言うなれば知人以上友人未満といった感じで、広く浅く交友関係を築いていったのだ。
こうして私の幼少期は、ともかく心配されない程度の人付き合いと夢を叶えるため絵の修行で日々明け暮れる事となった。
やがてそうした陰ながらの努力と表における社交性をフルに活用したおかげか、私はトリニティの富裕層たちが主催する芸術コンクールを知人から紹介されたのだった。私が画家志望であることを聞いてわざわざ伝えてくれたらしい。感謝しかない。
ただし素人玄人問わず作品の応募は自由と聞いたが、流石に富裕層が主催する格の高いコンクールとあってか、私は初めての体験に不安で圧し潰されそうになったのは今では良い思い出だ。一応言っておくが、当時の私は中等部だ。
ただ努力は私を裏切らなかった。
私が完成させた作品は見事【入選】という形で評価を頂くことが出来たのだ。この世界に転生した私にとっては、初めての美術作品制作で初応募だったこともあり上出来すぎる結果だった。
人によって画家になるための定義は様々ではあるけど、一応これで私は【画家見習い】として出発が出来たことになる。
故に、応募結果が届いた時はつい小躍りをしてしまったし家族も知人も大喜びだった。
そしてこの騒ぎは三日三晩続いた…………は、流石に全力で回避した。近所迷惑である。
まあ本心としてはもっと上の賞を狙っていた訳だけれど、中等部の少女が初応募にして手にする評価としては妥当と言う他ない。
むしろ長い年月の努力と前世の知識をフル活用しても入選止まりだったのだから、やはり美術というのは奥が深く厳しい世界だ。もしくは古典的な内容として天使を題材にした油彩画だったこともあり、真新しさや意外性を求める審査員からは受けが悪かったのかもしれないが……。
とはいえ私としては十分過ぎる踏み出しだったのは変わりない。
確かにより上の賞を取ることが出来れば、胸を張って堂々と画家デビューを宣言出来たに違いない。
ただ入選という形でも評価を頂くことが出来たのは事実で、これはこのブルアカ世界で私の画家としての才能が周囲から認められた証拠でもあった。素直に嬉しい。
焦ることはない。今回のように実績を積み重ねて、画家見習いから本当の画家に成長すれば良い。
会場で展示され、遂に来場者たちにお披露目となった自身の作品を眺めながら私は心の中でそう決意した。
異色すぎるのか、それとも古典的すぎるのか、生憎と私の作品を見てくれる来場者は数えるほどしかいなかったけど、それでも『私の作品』を見てくれているという喜びの方が遥かに勝っていて悲しむことは無かった。
そうして
いや、今更ながら私がようやく彼女に気付いたのだ、これが。
うーん…………いや、君いたのかい!? と、心の中で叫ぶほど。
はっきり言おう。私はこの時、ブルアカ世界のトリニティ自治区で生まれておきながら、ナギサを含めた彼女達【ブルアカキャラ】の存在をこの瞬間まですっかり忘れていた。それはもう脳の片隅に留める事すらなく綺麗さっぱり。
ただこればかりは仕方ないと言い訳させてもらう。
何しろ私が転生してからこの日まで、ブルアカのキャラに誰一人として出会うことが無かったのだ。メインキャラはもちろんネームド持ちのCV未定キャラですら全然である。異常とも言える事態だろうこれは。
当然、ゲーム本編では『〇年前』とか『〇日前』といったテキスト表記は目にした事はある。ただし〝それだけ〟だ。暦や西暦が出てきた覚えはないし、そもそも〇月〇日といった概念すら目にしたことがない。
つまり、ブルアカ世界に転生した私はあろうことか、ゲーム本編における時系列のどの辺りに自分がいるのか完全に把握出来ていなかったという事になる。加えてブルアカキャラに誰一人として出会わないとなれば、余計に状況判断が狂ってしまう。
不幸にも前世と同じく美術狂いのオタクとして日々を邁進していた私は、公の場に出続ければ彼女たちに出会う確率が高くなるという可能性に気付く事が出来なかったのだ。単純に知ろうともせず後回しにしていたとも言える。
そして、ここからが問題。私は彼女達に絶対に関わりたくない。
当たり前だろう。
前世で遊んだブルアカ本編に【栢間エスミ】というネームドキャラは存在しないし、芸術オタクで画家になろうとするならワイルドハント芸術学院という学園があるのだから、そこがメインとして注目されれば良い。
私自身ゲームの主人公に自己投影はしない主義で、あくまでも作品上の物語を観客席から眺める物語鑑賞主義のゲーマーである。転生してしまった以上は仕方ないものの、極力彼女たちに影響を及ぼしそうなキャラにはなりたく無い。
それに私はゲームのキャラは誰でも構わず愛する箱推しオタクだ。
余計な感情で一個人を特別贔屓するつもりは無いし、それが原因で物語の根本を変えてしまうのは駄目だ。
だからこそ私は、もしブルアカキャラに出会う事があっても直接的な関わりは避け、出来ればゲーム画面に少しだけ顔を見せるモブキャラとして徹することを望んだ。
しかし現実は非情だ。
もしくはブルアカの神様(実在するのかは知らない)あたりが私に彼女達と関わりなさいと願っていたのか、作品を眺めていた桐藤ナギサは誰かを探しているのかキョロキョロと周囲に顔を向けると、ふと何かに気付くようにして後ろに立つ私に振り返った。
ふむ、素晴らしいほどに運命的なファーストコンタクトである。
作品を眺める少女がふと後ろを振り返れば、そこには画家が立っていた。周囲には誰もおらず、その場にいる2人だけが感じた特別な出会い…………ちょっと今後の創作に使える場面だなと感心して微笑んでしまった自分を無性にも殴りたくなった。あと普通に間近で見るナギサめっちゃ美人だしね。危うく見惚れそうになったよ。
ちなみに初対面のナギサは本編の姿よりもやけに幼く背が低い。見たところ中等部といった所だろうか。私と同年代の可能性が高いな。
さて…………さあどうする?
まさか芸術コンクールの展示会場にあろうことか桐藤ナギサが来るとは思いもしなかったので対策なんて何も考えていない。
それを考慮する事すらしなかった私にも非はあるが、彼女が美術に精通していたという情報は初耳だし(単純に私がよく調べてなかっただけかも)第一存在を忘れていたのだから無理がある。
そもそも私はナギサ達と自分は同年代であるという衝撃の事実にショックが隠せない。これはつまり、いずれ私もトリニティの生徒としてブルアカ本編に介入してしまうという事であり、傍観者を貫きたい私にとってこれは由々しき事態である。
どう回避するべきか、一言だけ声をかけて立ち去ろうか?
いっそのこと『私もこの作品を見てました。凄いですねー』とか雑な感想をぶちまけて退散するのが最適かもしれない。運が良いことにお互い目が合っただけである。まだ一言も会話を交わしていない。
大丈夫。まだ逃れる術はある。私は笑みを浮かべたまま口を開いた瞬間--。
「もしかして、この作品の画家さんですか?」
なぜ分かった!?
まだ身元も明かしていない名前も言っていない、ナギサと同じ幼い外見をしている私を見てどうして作品を描いた画家だと分かるのか? 私は困惑した。それはもう大パニックでてんやわんやだ。
確かに作品の傍には作品名と作者名が記されたプレートが掲げられているけど、そこに【栢間エスミ】というバカ正直すぎるほど私の本名が書かれていたとしても、ナギサの目の前にいる幼い少女が画家であると一目で分かるとは思えない。そもそもこのコンクールに絵を出しているのは大半が高等部か大人達だらけなのだ。
だが私はどこか納得するところがあった。
なるほど、これが後にトリニティ総合学園でティーパーティーの代表を務める事となる桐藤ナギサの実力なのか、と。
例えその外見がまだまだ幼く、声もあの透き通った早見沙織さんボイスには少しだけ届いていないか弱き少女であっても、既に人を見極めるその観察眼は脱帽せざるをえない。
故に私は逃げることを断念するしかなかった。非常に……大変非常に悔しい話だが、自分が努力して完成させた作品を前にして『違います』などと口が裂けても言えるはずが無かった……。
自分のことを一目見て画家であると感じてくれたナギサに対する深い感謝と、この場から逃げたいのに美術オタクとして作品を前に嘘が吐けない正直者すぎる自分に対する苛立ちが交互に来て、結構しんどい。
「……そうだよ」
だから複雑な感情が混ざり過ぎて、つい声が低くなって言葉を返してしまったけど、別に君に対して怒っている訳じゃないから誤解しないで欲しいナギサ。
私は自身の情けない姿に溜息を吐きそうになるのをこらえ、ひとまず肩をすくめる程度で終わらせた。
まあ……出会ってしまったのなら仕方ない。
こうして関わりが生まれてしまったのは、はっきり言って誤算で全然求めてはいなかったけど、まだ現時点では知人程度の関わりだ。
今回の桐藤ナギサとの初出会いは大事に思い出として受け止め、今日を最後に彼女とは二度と会わないことにする。関わる事もしない。
単なる作品の画家とその鑑賞者が少しだけ言葉を交わしただけ、として私は適当に会話をして切り上げる方向に移行する事にした。
「貴女の作品に一目愡れしました。是非とも私に、専属のパトロンとして貴女を支援させてください」
だが彼女はそう簡単に逃してくれようとはしなかった…………!!
しかもあろう事か、まだ画家駆け出しの私を相手にパトロン契約を持ち出してきたのだ!!
一応ブルアカ世界の美術概念を学ぶ上で、トリニティ自治区は画家や芸術家のパトロンになる富裕層がかなり多い自治区で有名であるとは知っている。家の影響力の拡大や派閥争いの牽制だとか思惑は様々だけど、この自治区がやけに美術文化に寛容なのはこれが理由の一つだからか、と腑に落ちるほどだった。
そうなると富裕層の1人であるお嬢様のナギサがこうして『パトロン』のことを持ち出すのは自然ではあるし、入選という形で評価を貰った画家見習いの私を誘うのも分からなくはない。
それに誰だって趣味の芸術活動に専念できる環境を与えてくれるなら、喜んで相手にパトロンになって貰いたいだろう。
だが私はごめんだ。
2度も言うようだが私はともかくブルアカキャラ達には関わりたくない。出来れば交流を持つことすら避けたい。視界に入ることも、その耳に名前が届くことも無くしたい。
元オタクとしては、こうしてナギサと直接言葉を交わしている現状に少しだけ感動は覚えるものの、いずれ来るだろう【エデン条約編】に私が介入するのは何としても避けたい。もちろん他のシナリオも同様だし、ほとんどは中身を忘れてしまっているがイベントシナリオ等も同じだ。
だから私はなるべく冷静を装いながら、次々と言葉を投げてくるナギサとの会話を続けた。一方的に話を打ち切るのは初対面としては印象が最悪だし、いくら関わりたくないと言っても出来れば双方ともに円満に別れたい。
そこで頃合いを見計らうようにして会話を続け、どのタイミングで打ち切るか様子見することにした。
まあ会話の途中で、ナギサがこの出会いを運命だとか言い出したときは流石に驚いたけど……案外ロマンチストなんだね、君。意外だよ。
ただ再度繰り返すようにしてパトロンの事を持ち出してきたナギサに対し、私はしっかりと感情をこめて拒絶の言葉を言い放った。
「ごめん。それは無理」
「……え?」
……いや待ってそんな絶望した顔をしないで!?
見た目がまだ幼い中等部のせいでやけに感情が表情に出ているし、ただの提案というか誘いを断っただけなのに、何だか【自信を持って愛のプロポーズをしたら拒否された恋人】みたいな空気を醸し出さないで欲しい!! 君はそういうキャラじゃ無いはずだ!!
桐藤ナギサのことはブルアカキャラの1人として普通に好きだから、そんな反応をされると流石の私も心が痛いし、別に中等部ナギサの曇らせ概念なんて私には全然ありがたくも無いのだが!?
「悪い方に勘違いしないで。私はただ、パトロンとか専属とか関係なく自由に画家をやっていきたいだけだから……ビジネス上の付き合いであれば一応考えておくけど」
おかげで、素直になれないツンデレキャラみたいな誤魔化しをする事となった私……。
これでもブルアカ世界に転生した恩恵か、自身の容姿には限りなく自信はある方だけど(いっそのこと自分自身をモデルにしようかと真剣に悩むほどには)前世の人生を含めればそこそこ良い歳をした元社会人なので、不可抗力とはいえツンデレキャラは中々に心がきつい。
でも別にナギサに言った言葉の全てが嘘と言うわけでもない。
このブルアカ世界では富裕層がかなり多く、かつ美術文化に寛容なトリニティ自治区で過ごしている以上、より本格的な画家活動をするならパトロンとして支援してもらうのが限りなく成功に近付くはずだ。
しかしそれはすなわち、必然とその支援するパトロンの保護下に入ると同時に派閥に属するという事でもある。またこれを描いて欲しい、あれを描いてほしい、それをモデルにして欲しい、といった制作に関する注文も付けられる可能性が極めて高い。
それはごめんだ。
私は趣味として絵を描き、美術オタクとして可能なところまで美術を追求したいという想いがある。締め切りに迫られるのではない。限られた技術に
職業として仕事人のような画家を私は目指している訳ではないのだ。
ナギサの提案を断ったからと言って、決してほかの人をパトロンに選ぶという事はない。
これは私に与えられた2度目の人生を謳歌するうえで選ぶ、自由だ。
だから桐藤ナギサ、私のことは諦めよう。
君には仲の良い幼馴染がいるわけだし、後に学園で少し重い感情を寄せる事となる後輩が出来るし、何よりこの世界には【先生】がいるはずなのだ。
だから、私の存在は今日を以て終わりとしよう。ビジネス上の付き合いであれば、顔を合わせる必要もない。代理人でも使えば良い話だ。
さらばナギサ。そろそろ逃げたいので私はここで失礼するね。
「そ、そうですか……な、なるほど……あ、それでしたら友--」
「残念だけど、友達になるのもお断り。あくまでも知人としての枠に留めて」
だがこの少女、諦めることもせずに最終手段として【友達】を提案しようとして来たぞ!?
無敵か!? メンタル最強か!? パトロンを断った時に本当に絶望の表情を浮かべていた美少女なのか君は!? どうして私に逃げの一手を踏ませてくれないんだ!!
あと私を友達に持つのは止めてくれ、後のエデン条約編で『お友達ごっこトラウマ事件』を迎える運命にある君が更なる悲劇を持とうとするな!! 私はこれでも常識人の立ち振る舞いが出来るだけの狂った美術オタクなんだぞ!! まともな付き合いが出来ると思うな!!
そんな心配や不安が瞬時に浮かんでしまったので、ついナギサの言葉を途中で遮るほどの勢いで拒絶の言葉を返した私。
幸運なことに、私の必死な拒絶に何かを察してくれたのか、彼女はパトロンの提案拒絶の時ほど大きなショックを受けることは無く『……はい』と小さくだが頷いてくれた。
結構。
出来れば心に傷をつける形で別れるのは避けたかったけど、未来を考えるとこの方法しか無かったので許して欲しい。
ただその顔を最後の見納めにするのは、まあぶっちゃけ後味が悪すぎる……。
でも口に出した言葉を今更無かった事には出来ないので諦めるしかない。
こうして両者ともに円満とは言えない別れを作ってしまった事に、私は非常に申し訳ないと思いつつ一方的にナギサに別れの挨拶を送ると、半ば逃げる形でその場を去ることにした。
せめて彼女の今後の人生に幸福が訪れますように、と祈って。
後日、満面の笑みとともに『ご一緒に美術館に行きませんか。後学の為、美術館を貸し切りにしてあります』と魅力的過ぎる〝悪魔〟の誘いをしてくる桐藤ナギサの姿がそこにはあった。
ちなみに私は『行く』と食い気味に即答してしまった。あまりにも、バカである。
誤字脱字チェック、感想、誠にありがとうございます。
久方ぶりにハーメルンに戻ってきましたが、無理のない程度にこの作品を投稿していこうと思います。
次回からは栢間エスミの高等部1年生編を開始予定です。
この作品の番外編・IF等を題材としたR18版作品の次回の読みたい話に関するアンケート(※すべて純愛をテーマにし、かつ恋人になっている前提の作品になります)。作者の都合にはなってしまいますが、来年2026年の2月頭に投稿出来ればと思っています
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栢間エスミ×浦和ハナコ(先輩後輩IF)
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栢間エスミ×仲正イチカ(正実IF)
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栢間エスミ×聖園ミカ(生徒会IF)
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栢間エスミ×鬼方カヨコ(ゲヘナIF)