夢叶って画家になれた転生主は、ともかくブルアカ本編に関わりたくない 作:木暮鬼一
毎度毎度、1話ごとの文字数が多いのに読んで頂きありがとうございます。
文字数が増えると誤字脱字を余計に見落としがちなので、いつも修正等の編集をしてくださりありがとうございます。
感想もいつも丁寧にありがとうございます。
基本は真面目で恥じらいや常識を持つものの、どうしても美術が関わるとネジがぶっ飛び、挙句暴走しがちな『栢間エスミ』をこれからもよろしくお願いします。
「桐藤って……私の裸に興味があったりする?」
その言葉が持つ破壊力は、正直なところ殺人級でした。
事実として、ロールケーキを食している最中だったナギサは驚いた拍子に危うく喉にロールケーキを詰まらせて窒息するところであり、激しく咳き込みながらエスミに対し視線を向けました。
「エ、エスミさんっ!? と、突然どうされたんですか!? ゴ、ゴホッ!!」
「ご、ごめん……そんなに驚くとは思ってなくて」
まさか窒息寸前の事故に至るとはエスミも思っていなかった様子。
見開いた目をオロオロとさせながらも、ひとまず今も咳き込みつつあるナギサの背中を優しくさすります。その間、先の発言について詳しい理由を説明してくれました。
何でも最近、人体の描写に関してエスミなりに満足のいく結果が得られないでいるらしく、いっそのこと基礎をもう一度固めるためにヌードデッサンを始めようとしたようです。
しかしながらトリニティ総合学園はこれでもれっきとしたお嬢様学校です。
そう簡単にヌードモデルを校内に招くことはもちろん、見ず知らずの生徒に『裸になれ』と指示する訳にもいきません。ごく普通のアートモデルであれば面倒な手続きもいらずに済む話となるのですが、今回エスミが必要としているのは文字通り裸体の姿です。
そこで彼女は自身をモデルにすることを決めたのでした。
これでも人を魅了する美貌の持ち主ですし、身体に関しても全く文句はありません。
問題があるとすれば栢間エスミは分裂できないという事でしょうか。つまりモデルになるエスミと、絵を描くエスミは決して両立できないのです。
となれば仕方ありません。自身の裸体を写真として撮ることで後ほどそれを参考に描くしかありません。
そういう訳で今回、エスミはナギサに対し『私を撮るカメラマンになって欲しい』と頼み込んできたのでした。他でもない絵を嗜んでいるナギサであれば、どのような構図やポーズを撮れば良いのか熟知しているはずなのですから。
「プロの画家として活動されているエスミさんに、私がそこまで信用されているのは素直に嬉しい限りですが……しかし、その手の話であればチェリさんなどに頼めば済む話なのではありませんか?」
「もちろん彼女にも提案はしたよ、一応私の弟子でもある訳だし……ただ、勝手に鼻血出して倒れたから止めておくことにした」
「…………そう、ですか」
それは尊敬する師匠の裸体を見てしまう興奮からきた鼻血なのでしょうか。
それとも全く別の理由があったのか。正直、彼女の主人に属するナギサと言えども、チェリの心情に関しては理解が及ばないことが多くあります。
ひとまずナギサは小さく息を吐くと、肩をすくめて首を縦に振りました。
「承知致しました。私で良ければご協力いたします。お時間はいつ頃が良いですか?」
「ちょっと準備があるから、今日の夜でお願い」
「ええ、構いません」
しかしこの時、2人は思いもしなかった事でしょう。
この後、最も騒がしい夜を迎えることになるとは……。
《1-2》
「はあ……まさか私が、エスミさんの裸を撮ることになるなんて……」
時刻がそろそろ夜中に差し掛かろうとしている頃、未だ就寝する事もなく、重い溜息を吐いているのは桐藤ナギサその人でした。
ちなみに彼女がよく普段から使用している机には、美術部から借りた一眼レフカメラが置いてあり、存在感を強調しています。これから美術部部長こと栢間エスミの裸体を撮りに行くため、カメラはそれに欠かせない道具なのでしょう。
もっともカメラの使用者となるナギサはといえば、部屋のべッドに腰掛けて酷く項垂れていました。
無理もありません。
いくらエスミ本人の強い希望とはいえ、これから彼女はエスミの裸体を余すことなくカメラで撮ることになるのです。友人同士でありがちな仲良くツーショットを撮るのとは全く訳が違います。
もちろんモデルが雑誌や写真集の表紙を飾るために撮る撮影とも違い、あくまでも美術資料の一環としてエスミの裸体を隅々まで撮る訳なのですが……いくら美術好きなナギサでもその手の経験は皆無ですし、スマホでは無く一眼レフカメラで人を撮影すること自体初めてです。
(う、上手く撮ることが出来るでしょうか?……あの時はその場の成り行きで引き受けてしまいましたが、今になって思えば、私が指示出しに徹する事で他の方に撮ってもらうという方法が一番良かったのでは……?)
しかしながらナギサの交友関係を振り返ってみても、カメラの扱いに長けている者はそう多くはありません。
加えてあの栢間エスミの〝裸体〟を撮るのですから、変な噂を学園中に広めてしまうような口の軽い者は信用できません。そうなるとナギサの専属の付き人である小樽チェリが最も適任だった訳ですが、当の本人は現在鼻血を出した挙句運悪く風邪を引いてしまい安静中です。
とはいえ、自分以外の誰かにエスミの裸体を撮られると言うのは何とも……正直、嫌な気持ちを抱いてしまいます。
別に恋人でも何でもない自分には、そのような感情を抱く権利は無いというのに。
(いけませんね。このような気持ちを抱いて、美術に真摯に向き合っているエスミさんのお手伝いをする訳にはいきません。気持ちを切り替えましょう)
顔を上げ、両手で優しくパチンッと自身の頬を叩いたナギサ。
ですが今の行動で気持ちが完全に切り替わったとは言い難いものの、ひとまず重苦しい気持ちを抱き続けるよりかは遥かにマシなため、ナギサはべッドから立ち上がりました。
そして机に置いてある一眼レフカメラを手に取ると、何度か操作方法を確認してスムーズに扱えるよう練習を始めます。
やがて彼女がカメラを弄りだして数分が経過した頃、遂にナギサはカメラを手にしたまま部屋を出ました。目指す先はただ1つ、エスミがいる場所です。
『お疲れ様です。これから例の件のためエスミさんの下へ伺いますが、今どちらですか?』
ひとまずモモトークで居場所を尋ねると、数十秒ほどの間を置いてエスミから返事が来ました。文面を確認してみるに、どうやら撮影にうってつけな丁度いい空き部屋を発見したらしく、今はその場所を占拠しナギサの到着を待っているようです。
(そこはエスミさんのお部屋や部室では無いんですね……)
誰にも見られないという点では一番条件が良いはずなのですが、どうやらエスミなりに事情があったらしく、やむを得ず他の部屋を貸し切ることになったようです。
『でも流石にヌードデッサンのための撮影会をしますって、ティーパーティーに正直に伝える訳にはいかないから部屋は無許可で占拠しているんだけどね。出来れば早く来て、お願い』
『無許可……もし誰かに見られたらどうするおつもりですか』
『たぶん大丈夫。事前に確認したけど日中でも滅多に生徒が使わないような部屋だし、扉には鍵が付いていて防音性もしっかりしてる。天井の明かりも申し分ないし、1時間以内に撮影を終わらせれば何とかなると思う』
『分かりました。エスミさんのその言葉を信じましょう。ただし到着まで少し時間が掛かってしまうので、そこを動かずお待ちください。出来れば私が着くまでの間は部屋の電気は点けないでおきましょう。明かりが原因で誰かに気付かれてしまいますから』
『同感。じゃあ到着を待ってるから、桐藤もなるべく早く来てね』
『はい』
最後の文を送り、そのまま一息を付いてモモトークを閉じます。
後はエスミが待つ部屋まで超特急で向かうだけなのですが、これでもティーパーティーに所属し、一般生徒には名家のお嬢様として知られているナギサです。急ぎたい気持ちはあるものの、真夜中の廊下を走るといった目立つ行動はなるべく避け可能な限り早歩きで移動をしました。
(こんな真夜中にカメラを持ち歩き、人目を避けて行動している……私が巡回中の警備なら、真っ先に疑ってしまいますね)
一応、委員会や部では相も変わらず熱心に活動をしている時間帯ではありますが、一般生徒の場合は既に部屋に帰宅して外出を控えている時間帯でもあります。
正実やティーパーティーの生徒による巡回も行われていますので、納得出来る理由がない限りは即刻部屋に追い返されてしまうでしょう。ティーパーティーに所属しているナギサも例外ではありません。
特に彼女の場合はティーパーティーの業務には全く関係ない一眼レフカメラを持ち歩いているのですから、そう穏便に済むとは思えません。
だからこそナギサは慎重に行動を心掛けて…………いるつもりでした。
「あれ、こんな時間に何してるのナギちゃん?」
「ミ、ミカさん!?」
しかし、何と言う事でしょう。
可能な限り巡回ルートを避け、急いでエスミの下へ向かっていた最中、よりにもよってナギサは幼馴染である聖園ミカに遭遇してしまいました。
思いもしなかった人物の登場に危うく手に持っているカメラを落としかけ、ナギサは息を整えながらなぜこの場にいるのか彼女に尋ねます。
「ミカさん。こ、こんな真夜中に何をされているのですか?」
「それはこっちの台詞だよ、ナギちゃん。私はさっきようやく仕事が終わって今から帰る所だけど…………確かナギちゃんって、今日はお仕事が無くて休みのはずだよね? なんで今の時間帯に廊下を歩いているの? それにそんな大きいカメラまで持って」
ミカの視線が先ほどからナギサが持つカメラに注がれ、ナギサは必死にこの場を逃れるための嘘を考えます。
「そ、それは……風景を撮る為です」
「こんな真っ暗な夜に?」
「夜だからこそ、です」
「ふーん……ナギちゃんが写真かぁ……へぇー」
「な、なんですか一体」
「別に~? 私がよく知るナギちゃんは昔からお転婆で、写真撮影に興味を持つような子じゃなかったのになぁ~て思っただけだよ」
「…………それは、最近になって写真撮影に手を出したばかりなので」
「そうなんだ。じゃあ、そのカメラで撮った写真今すぐ見せて☆」
ニコッと無邪気で明るい笑みを浮かべたミカは、静かに片手をそっと差し出してきました。
ナギサはその行動に対し、薄ら笑いを返します。
(今日借りたばかりのカメラですから、私が撮った写真なんて一枚もありませんよ!! 分かってて言ってますよね!?)
何ならデータの抜き出し方法すら分からないのです。
それにミカに無暗に触らせてカメラのデータが吹き飛んでしまっては大変ですし、何か打開策は無いかとナギサは必死に考えます。
そこへ、思わぬ人物が登場しました。
「聖園ミカ。人の私物に容易に触れるなんて、少々失礼じゃないのかい?」
「…………貴女は」
「…………誰?」
ミカの後ろからスッと音もなく登場したのは、サンクトゥス分派所属の生徒、百合園セイアでした。
ちなみにナギサとは何度も会っているので当然面識はありますが、ミカとは意外なことに今回が初対面となります。となればミカが訝しげな視線を向けるのもいわば当たり前で、ナギサは幼馴染にさり気なくセイアの事をざっくりと紹介しました。
「へー、私達と同じティーパーティーでサンクトゥス分派に所属してる子なんだ? でも、あまり会議で姿を見たこと無いけどいつも何してるの?」
「セイアさんは体調が優れないので普段は部屋で業務をされているんですよ、ミカさん」
「ナギサの言う通り、見ての通り病弱な身体をしていてね。あまり外には出れないんだ。まあそんな私でも君の噂や評判はよく耳にはしていたよ。噂通り、無邪気で直感型な……頭を使う必要のない生徒みたいだけど」
「アハハ。何この子面白いね☆ 何となく小馬鹿にされた感じがするけど」
「……ミカさん、落ち着いてください。それよりセイアさんはこんなお時間に外出をされて、どうかされたのですか?」
「ちょっと〝家族〟に会いに外出していたのさ。それで相談事があって直接部屋を訪ねてみたんだが、タイミング悪く不在だった。だから今は自分の部屋に向かって帰宅途中ということになる」
「じゃあ早く帰ったら良いんじゃない? わざわざ私とナギちゃんのおしゃべりに割って入る必要は無いし、身体が悪くなる前に部屋に戻らないと危ないかもよ?」
エスミやナギサを相手にするのとは違い、セイアに対しミカは心底面倒そうな表情をしています。
どうやら彼女との初対面における印象は最悪のようです。
ナギサとしても、まるで水と油のような関係になるのは目に見えているので、あえて追求することはせずセイアに言葉をかけます。
「お一人で大丈夫でしょうか? ご迷惑でなければ付き添いをお呼びしますが」
「結構さ。だけどその気遣いには感謝するよ、ナギサ。今日は体調が優れているし、一人でも全然帰れる。まあ……だからこそ彼女に会いたがったんだが……」
「さっきから聞いてて思ったんだけど、セイアちゃんが会いたがってる人って誰なの? 私たちも知ってる生徒?」
ふとミカがそう尋ねながら疑問を抱くと、セイアは肩をすくめながら『君が知る必要はないさ』とバッサリ答えました。ミカは嫌そうに顔を歪め、ナギサに視線を向けます。
「……ナギちゃん。私達もここから移動しようよ。こんな所で立ち話するより、ナギちゃんの撮影に私も協力してあげるから☆」
「へぇ、撮影を? こんな真夜中に写真撮影だなんて、随分と面白い趣味をしているようだね、ナギサは」
「ねえちょっと、ナギちゃんに話しかけてるのは私なんだよ? セイアちゃんはこの話に全然関係ないよね?」
「それが一体何だい? 私はただナギサの趣味について意見を述べただけなんだがね。そもそも私の言葉にいちいち突っかかる君の方こそ、態度を改めるべきだと思うのだが?」
恐らく仕事疲れでストレスでも溜まっているのか、セイアの言う通り直感で動きがちなミカは段々と不機嫌さを増し、早くも限界を迎えそうです。
会いたかった人が不在で肩透かしを食らっているセイアの方も正直気持ちが落ち着かないのでしょう。わざと挑発しているのか、単純に人付き合いが下手なのか不明ですが、ともかく言葉選びが良くありません。
同じティーパーティーに所属する者同士、余計な争いは生みたくありません。ナギサはわざと2人の間に割って入ると、彼女なりに場を和まそうと口を開きました。
「お2人とも落ち着いてください。このような場所で熱く口論をする事はありません。私達はティーパーティーの一員なんですよ? 所属している分派も違うのですから、私たちの口論が原因で内部分裂など起こしてしまっては大変です。一旦落ち着きましょう」
「でもナギちゃん。私は――」
「ミカ…………お願いです。どうか落ち着いて」
「…………はぁ。うん、分かったよナギちゃん」
「セイアさんも、言い合いに夢中になって体調を崩されてしまっては元も子もありません。お体をご自愛下さい」
「……ああ。そうだね、すまない」
「ありがとうございます。それと私の写真撮影に付き合う必要はありませんよ、ミカさん。ただこの後少しだけエスミさんを撮影してくるだけで――」
「え? 今からエスミちゃんを撮影するの? その大きなカメラで?」
「……なるほど」
「あっ」
失言でした。
せっかく穏便に事を済ませ、疑われることなく立ち去ろうとしていたのに、最後の最後で余計な一言を口にしてしまいました。
結果、ミカは楽しそうにニヤニヤと笑みを浮かべてナギサに迫りだし、セイアは目を細くしながら静かにナギサを睨みます。
「ねえねえ教えて教えて!! エスミちゃんと2人っきりで何するの!? 写真撮るだけ? もしかして可愛い仕草とかエッチな写真も撮るためにそのカメラを用意したの!? でも、こんな真夜中にエスミちゃんに会うって事はそういうことだよね、ナギちゃん!!」
「その話、私にも詳しく聞かせてもらえないかい?」
「い、いえ!! 先ほどのは言葉の綾と言いますか……エスミさんを撮るというのは、美術のために必要な撮影であって、決してそんな不埒なことはしません!!」
「じゃあ私も一緒に行く!! 久しぶりにエスミちゃんに会いたいし、ナギちゃんが本当にエッチな写真を撮らないのか確認しないと!!」
「私も同行させてくれ。こんな真夜中に、やけに高性能なカメラを持ち歩いて彼女に会うなんて……流石に様子がおかしいからね」
「だ、大丈夫です!! これは私とエスミさんとの間に交わした秘密ですので、お2人が付いてくる必要はありませんから!! さ、さあお帰り下さい!!」
「ヤダ☆」
「却下だ」
しかし彼女たちはナギサの叫びを聞き入れることは無く、依然として3人固まったまま言い合いを続けるのでした。
《1-3》
「桐藤 遅いなぁ……」
モモトークで待ち合わせの約束をしてから既にそこそこの時間が経過し、1人寂しく誰も使用していない部屋でナギサの到着を待ち続けているエスミは、窓から見える夜の月を眺めながら溜息を吐きました。
「流石にこの殺風景な部屋で1人は心細いんだけど……しかも暗いし」
彼女が現在いる部屋は、珍しいことに机や椅子といった家具類が一切置かれていない空き部屋であり、狭い割にやけに開放感がある不思議な場所でした。
一応窓にはカーテンが、天井には大きな照明器具が付いてありますが、それでも必要最低限の設備といった感じで、とてもじゃありませんが学業目的で使う部屋では無さそうです。
そのため他の生徒がこの部屋に出入りしている様子は今のところ全く無く、すぐに裸の写真を撮って速やかに解散さえすれば特に問題は無いはずだと、エスミは先ほどからこの部屋に居座っているのです。
(本当は部室とか部屋を使いたかったけど、部室はキオが後輩を引き連れて徹夜モードで制作中だし、私の部屋は鼻血出した挙句風邪までひいちゃったチェリを休ませてるから両方とも無理なんだよね)
とはいえ、タイミングが悪いのは今に始まった話ではありません。
むしろこのような状況を楽しむべきと考え、太陽に代わって夜のトリニティを照らす月を眺めながらエスミはふと時間を確認しました。
残念なことにこのままでは深夜になりそうです。
「……今のうちに準備ぐらいしておこうかな」
この時間になっても尚、この部屋には誰も来る様子がありません。もちろんナギサもです。流石に待ち続けるのも疲れたので、もうこの部屋に足を踏み入れるのはナギサしかいないと判断し、準備と称して一足先に服を脱ぐことにしました。
もちろん少々危険な行為ではありますが、どのみちデッサンのために自身のヌード写真が必要不可欠なのです。もちろんリスクを避けるために延期するという手もあるのですが、明日からしばらくの間は部活や個展関係でエスミが多忙を極めるため、まず余裕がありません。
故にこれは仕方のない行為と自身に言い聞かせ、ナギサが到着次第さっさと撮影を開始出来るようエスミは羞恥心を捨て、自ら服に手をかけます。
まず最初にエスミは制服を脱ぎ捨てると、それを丁寧に畳んで窓側に置きました。
続けてシャツを脱ぎ、今度は靴下、最後は下着です。まるで風呂場で服を脱いでいるかのように自然な動きで脱ぎ捨てます。
とはいえ一応、ここは校舎の一角にある空き部屋なので異様な光景ではあるのですが……。
それに季節的には暑くもなく、寒くもない時期ですが、やはり素っ裸になるというのはあまり気分が良いものではありません。室内のため風が吹いていないにも関わらず〝空気〟そのものをエスミは肌で感じ取ります。
今まで布で覆われていた素肌を今や堂々と晒しているという事実。それが僅かながらにエスミの胸の鼓動を緊張で早くさせるのでした。
「……流石に校舎の中で裸になるのは頭がおかしいけど、これも美術のために必要なことだから…………というか、なんか前に比べてまた胸が大きくなっているような……流石に気のせい?」
既に身長を含め、エスミの身体の成長期はもう止まっています。
そのため彼女の言葉通り胸が成長したというのも『単なる気のせい』ではあるのですが、それでも身体の感覚すら狂わせる程、今のエスミが酷く緊張し過敏になっているのは間違いありません。
ひとまずエスミはその場で何度かヌードデッサンに適したポーズを取って身体の動きや感触を確かめつつ、『早く来てよナギサ!!』と心の中で強く念じるのでした。
(傍から見たらただの異常者だよね、私。こんな空き部屋で裸になっているんだから…………あっ、そういえば窓のカーテンを閉めないと)
何かに気付いた様子で窓へと意識を向けるエスミ。
一応この部屋は上階にあるため外から見られる可能性は低いものの、エスミがやっている事は紛れもなく公衆わいせつ罪に値します。近頃、正実相手に美術講習を開いたばかりですから、 このような罪で彼女たちのお世話になる訳にはいきません。
まあ、それなら初めから裸にならなければ良いだけの話ですが、正直エスミも日々の活動でかなり疲れているのです。あまりにも頭が回らないのでしょう。
(この撮影が終わったら早く帰って寝よう)
そんな事を思いながらカーテンを閉めるべく、窓へと近づくエスミ。
するとその時、誰かがこの部屋に向かって来るのを感じ取りました。しかし急いでいるのか、何やら駆け足で移動しているようです。
「……やっと来たんだ」
思えばモモトークで『なるべく早く来てね』とナギサに伝えてから相当な時間が経っています。遅刻ではなく、もはや大遅刻と言えるでしょう。
まあ何かしらの事情があって遅れたのかもしれませんが、薄暗い空き部屋で待ち続けるのは何気に地味に怖かったので、苦言を口にする権利がエスミにはあるはずです。
彼女は意識を扉に向け、それが開かれるのを静かに待ちます。
直後、急いでこの部屋に入ろうとしたのか勢いよく扉が開かれました。ちなみにこの部屋の扉は、室内に向かって開く内開き式です。
そのためエスミの視界にはまず開閉された扉が映り、直後に慌てた様子で誰かが入ってくるのが見えました。
『遅い。いつまで待たせるの?』
散々待たされた側として、エスミは呆れながらそう口にするつもりでした…………が、いざ言葉を発そうと開いた口は、そのまま動かず止まってしまいます。
「……はい?」
代わりに出てきたのは困惑の言葉。それも、理解に苦しむ低い声でした。
何故ならこの部屋に来たのは、エスミが心待ちにしていた桐藤ナギサでは無かったのです。
身長はエスミとほぼ同じ。彼女と同じく長く綺麗な髪が目立ちます。
ナギサのように清楚かと問われれば〝見た目〟で言えばそうなのでしょう。
しかし違います。相手はナギサではありません。
髪色も瞳の色も、何なら制服すら違います。
少なくとも『栢間エスミ』として人生をスタートさせた今世では初めて出会う生徒ですが、驚くことにエスミはこの相手が誰なのかよく知っていました。
「…………え?」
一方で向こうもエスミに似て困惑した反応を返してきます。
まあ、目の前に文字通り素っ裸の上級生が真夜中の空き部屋にいるのですから当然です。むしろ悲鳴を上げないだけ凄いと言えます。普通は恐怖を抱くところでしょう。
さてエスミは衝撃のあまり固まっていましたが、すぐに立ち直った彼女は恐る恐る確認するように生徒の名を口にしました。
「君は……もしかして、浦和ハナコ?」
「貴女は……栢間エスミさんですか?」
ええ、そうです。
今はブルアカ原作の物語が始まる1年前。かのエデン条約編ではレギュラーメンバーとして登場する才媛にして変態の生徒、浦和ハナコが新入生としてトリニティに入学している年なのです。
大変です。
よりにもよって、あのハナコに裸を見られてしまうなんて…………一体何を言われるのか。
「あの、出来れば服を着て頂けませんか…………学園内で裸になるのは少し、宜しくないかと」
いや、割と至極真っ当なことを言っています。
これはあれでしょうか、ストレス過多で弾けてしまう前のハナコなのかもしれません。そういえば、今は新入生が入学してまだ半年も経っていない時期でした。
まだまだ生真面目で清楚だった頃の浦和ハナコ。なるほど、何だか貴重な姿なため好奇心が湧いてしまいます。
「……あ、あれ? エ、エスミさん!? どうしてそう近づいてくるんですか!? ご自身が今どんなお姿をされているのか気づいて無いんですか!!」
「うわっ、珍しい。まだ初々しい頃の浦和だ」
「あの、エスミさん!?」
気付けばこの貴重過ぎる〝ピュア〟なハナコをより観察したいと、エスミは我を忘れて彼女に近付いていきます。当然ながら素っ裸の美少女がぐんぐんと距離を詰めて来るので、ハナコは羞恥心と困惑が入り混じった声を出しながら後ろへと後退しました。
その瞬間、部屋の外……より正確に言うなら廊下から何人かの声が聞こえてきました。
「いまあの部屋から声が聞こえた気がしたわ!! ハナコさんはあちらね!!」
「こんな真夜中に外出するなんて、早く連れ戻さないと!!」
どうやら彼女たちはハナコを探しているようです。声や足音からして数人ぐらいでしょうか。言葉遣いから察するに上級生、しかもエスミと同年代かもしれません。
彼女たちの存在をきっかけに動きを止めたエスミは、チラッと視線をハナコに向けてみると…………そこには目の前にいる素っ裸の先輩に対する恐怖よりも、こちらに向かってくる集団に対して若干怯えているハナコの姿がありました。
ふむ、これは思っていたよりも事態は深刻かもしれません。
「……よし……こっちにおいで、浦和」
「えっ、ひゃっ、エスミさん!?」
怯えている彼女には申し訳ありませんが、手を握り自分の下へ引き寄せたエスミはそのまま窓の方へと歩みを進めます。
「あ、あの、一体何を……」
「見たら分かるよ」
楽しそうに笑みを浮かべて返事を返し、エスミは窓に手をかけるのでした。
《1-4》
望んでいた学園生活とは程遠い。
トリニティ総合学園に入学して早くも数か月。
新1年生としてこの学園に通っている浦和ハナコはそんな苦しい感想を胸に抱き、今日も今日とて楽しみのない学園生活を送っていました。
正直なところ、ハナコ自身もトリニティ総合学園に通う以上は『平和な日々』を送るのは難しいかもしれないと覚悟はしていました。
どんな生徒であっても、1度か2度は自身の立ち位置を見定めないかぎり平穏に暮らすことは出来ません。政治に派閥争い、令嬢と庶民が入り混じる学園、時には決闘と称した銃撃戦が起きる混沌とした自治区。それがトリニティ総合学園なのです。
ですがトリニティはおろかキヴォトス全土においても屈指の傑物と称されるハナコの場合、平和はおろか自由さえ許されない地獄が待っていました。
入学早々に行われた試験にて3学年の全教科を満点回答。
ティーパーティーに所属している上級生との間で交わした対談では、周囲が唸るほどの知恵や駆け引きを披露し、加えて些細な情報を組み合わせただけで答えへと辿り着く圧倒的な分析能力。
優秀な人材を欲しがるティーパーティーやシスターフッドからすれば、文字通り『数百年に1人の逸材』と称したくなるほど、ハナコの存在は圧倒的であり、かつ人気者でした。ハナコも自身が周囲と違うのは薄々自覚していましたが、これ以上目立つのは良くないと気付いた時にはもう……ハナコの逃げ道は完全に塞がれていました。
日々彼女の下へ押し寄せてくる組織や派閥への勧誘。
彼女の優秀さを妬む生徒達からの陰湿ないじめや嫌がらせ。
かと思えば、それを利用してハナコの下にすり寄って来る腹に一物抱えた者達。
思ったことも口に出せず、否定や肯定の言葉さえ歪曲して広まってしまう日々。
そうして真面目に学生生活を送れば送るほど、周りは一層彼女を囃し立てました。
何気ない一日を送り、他愛もない会話で笑い、学業に本気を出して結果に満足する。
ハナコが抱いた夢の学生生活は、残念なことに入学して早々完璧に打ち砕かれたのでした。
彼女がいる場所はもう学園ではありません。
彼女に服従という選択肢を選ばせるために自由を奪った〝監獄〟だけが存在していました。
やがて彼女は日中の間は全ての生徒から逃げるようになり、次第に自由を求めて真夜中に学園中を散策するようになりました。
生徒の姿が少ない時間帯を出歩き、静かな学園を眺めて心を落ち着かせる。
彼女にとって、これも一種の逃避行動だったのです。思えばこの時から既にハナコの心は限界を迎えつつあったのでしょう。
ですがハナコを追い続ける者は諦めません。
いつしか彼女にとって数少ない〝自由〟な夜の時間も、気付けば逃避の時間へと生まれ変わっていました。
そして今日、ハナコは自分を追いかけてくる謎の生徒達から逃れるべく、必死に校舎内を出歩いていましたが流石に隠れるところが無いと逃れる事は出来ません。
仕方ない。
日中ですら利用する生徒がいないという噂の空き部屋に隠れ、頃合いを見て部屋に帰ってしまおう。
そうして真夜中の校舎を駆け足で移動し、遂に自身にとっての安置である部屋に辿り着いたハナコは、手に力を込めて扉を開けるとそのまま勢いよく中に入るのでした。
「……はい?」
直後、誰もいないと思っていた部屋からまさかの声がしました。ハナコの登場に困惑したような低い声です。
しまった。既に先客がいたのか。
何用でこの部屋にいたのかは知りませんが、迷惑をかける事への申し訳なさで心が一杯となり……ですが自分を追いかけてくる彼女達から逃れるため、どうにか話を聞いてもらおうとハナコが視線を向けた、その時でした。
「…………え?」
そこに居たのは人ではありませんでした。
ああいえ、ちゃんと冷静に見れば確かに相手は人なのですが、驚くことにこんな真夜中の、しかも人気のない空き部屋で彼女は〝裸〟だったのです。ええ、素っ裸です。
文字通り、生まれたままの姿を相手は堂々と晒していました。
くびれのある細い腰。
スラッとした美しく細い足と腕。
ハナコには劣りますが、それでもつい意識を持っていかれそうになる程、大きく成長している真っ白な肌に綺麗な胸。
そして何より、ハナコも無意識に見惚れてしまうほどに美しい顔が、窓から差し込む月の光によって過剰なまでにその存在の神秘さを際立てていました。
普通に考えれば、このような場所で裸を晒すなど奇行に走っているとしか言えません。
恐怖か困惑か。または驚きの感情を抱くのが当たり前です。
しかし不思議なことにハナコは恐怖を抱くことはありませんでした。
おかしな話ではありますが、感動のあまり言葉を失っていたのです。
ハナコにとって今の彼女の姿はまるで〝天使〟のようでした。
《1-5》
ガチャッ、と空き部屋の扉が再び開くと共に数人の生徒が中に入ってきました。
先ほどまでハナコを探していた例の女子生徒たちです。
皆、薄暗い空き部屋を見渡すと、肝心のハナコの姿がないことに揃って首を捻りました。
「おかしいですわね。確か、声はこの部屋から聞こえた気が……」
「私も聞いたけど……でもいないね」
「ただの気のせいってこと……?」
「あれ。でも待って、ちょっとあの窓おかしくない?」
ある生徒が指をさすと、そこには1箇所だけ大きく開いた窓と、外の風でなびくカーテンの姿がありました。
そんな馬鹿な。まさか逃げるために窓から飛び降りたのかと驚いた彼女たちは、全員慌てて窓へ近寄りました。この部屋にはべランダなどありません。そのため窓から出れば当然、真下に落ちてしまいます。
いくら身体が強いキヴォトスの生徒と言えども、こんな視界の悪い真夜中に窓から飛び降りれば無事では済みません。打ち所が悪くて怪我を負った可能性もあります。
「……あれって」
しかしながら窓の下にあったのは固い地面と、そこで横たわる傷ついたハナコの姿ではなく…………そこそこ大きな1本の木でした。
生憎と月の光があっても外は流石に暗く、下がどうなっているのか目視ではよく分かりません。
窓が開いているという事はつまり、ほぼ十中八九この木に向かってハナコは飛び降りたのかもしれませんが、そう断言するのも難しい状況です。
とはいえ逃走者を見失ってしまった以上、これ以上追いかけるのは無謀に等しいと、この場にいる誰もが感じていました。
「まさかあの木に向かって飛んだの? 嘘でしょ……」
「でもこの部屋を見ても隠れる所なんてどこにもないし……あるとしたら外ぐらいだけど」
「仮に運良く木に飛び移ったとして、せめて彼女の無事を祈りましょう。一度外に出たなら、また校舎に戻ってくるはずよ。ひとまず今回の件に関しては一度部屋に戻るしかないわね」
「賛成。もう深夜になるし、あと眠い」
「はぁ。こんな時間に無断で外出しているかと思えば、私達を見るや逃走までするなんて……夜中にこそこそと隠れて何かよくない事をしているのでは?」
「そうは言ってもまだ1年生よ。実際に何か企んでいるとしても、せめて先輩として指導をしないと……」
彼女たちはその場で会話を続けます。
ハナコより上級生なのでしょうか。話の内容から察するに、どうやら夜中に無断で外出している新入生のハナコを部屋に連れ戻そうとしていたようです。
ティーパーティーでもシスターフッドでもなく、かといって正実でも無いようなので、こんな夜遅くまで活動していた何処かの委員会に属する生徒たちなのかもしれません。
「どうやら……悪い子達じゃないようだね」
そのためクスッと微笑を浮かべて、エスミは目の前にいるハナコに小声で話しかけました。
「……エスミさん……それよりも、この状態は流石に……」
「しー……静かに。あの子達にバレちゃうよ?」
「………はい」
「うん。よろしい」
さて結論を言うと、ハナコは別に窓から飛び降りて逃走などしていません。
むしろ彼女たちと同じで、依然としてこの空き部屋に居座っています。もちろん先客のエスミと共にですが。
現在、2人がいるのは部屋の隅……先ほどハナコを探しに来た彼女たちが出入口として利用した、例の内開き式の扉の陰になります。
正に灯台下暗しとはこの事で、エスミがわざと開けた窓はただの目くらましに過ぎず、家具も置かれていない殺風景な空き部屋の状況も相まってか『隠れる場所がないから、ハナコは窓から飛び降り逃走した』と向こうは認識し、まんまと騙されていました。
ですが扉の陰に隠れていると言っても、2人が身を隠すスペースとしては流石に狭すぎます。部屋の照明を付けないでいるおかげで隠密性が増しているとはいえ、共に発育の良い身体をしている少女2人が上手く隠れるためには、不可抗力ながら密着するしか方法がありませんでした。
しかも着替える余裕なんて無かったエスミは相変わらず素っ裸のままであり、服を着ているハナコの身体にエスミの素肌がこれでもかと押し付けられています。
ハナコとしては布越しでも分かるエスミの肌の柔らかさと、ほぼ同じ身長のおかげで自身の胸に押し付けられる彼女の胸が贅沢なまでに形を変えているのが嫌でも目に入り、この状況に緊張すれば良いのか興奮すれば良いのか全く分かりません。
ひとまず、その気になればキスが出来そうなほどに距離が近いエスミから顔を逸らし、早くこの状況が終わりを迎えることを祈りました。
ちなみに窓近くに畳んで置いたエスミの服は今、気付かれないよう2人の足元に移動させてありました。まあ今はそんな情報、正直どうでも良いのです。
何より心配なのはこの姿を彼女たちに目撃され、素っ裸でいるエスミが後日良くない噂や印象を広められてしまう恐れと、最悪公衆わいせつ罪として彼女自身が逮捕される未来です。
そして誤って彼女の裸体を見てしまったどころか、こうして直に身体で触れるという体験までしてしまったハナコの心が、興奮と緊張のあまり停止してしまう事でしょうか。
「…………浦和、大丈夫……?」
すると、なるべくエスミの事を考えないようにと思考を停止していたハナコに対し、何か異変でも起きたのかとエスミが小声で尋ねてきました。
『大丈夫も何も、貴女が裸でいるおかげで色々と良くない事を考えてしまいそうです!!』と叫べれば良いのですが、状況が状況ですからそうはいきません。
ハナコは懸命に顔を横に振ることで心配ないと伝え、少しだけエスミに視線を向けました。
「……っ……ぅ!!」
ですが目の前にあるのは、心配そうな表情を浮かべているエスミの顔でした。
まあ当たり前ではあるのですが、それでもやはり暗い部屋の中でもエスミの顔は依然として美しく、このまま見つめてしまうと後戻りが出来なくなりそうです。
最初は本物の天使かと見間違えましたが、どうやら彼女は女神だったようです。こんな状況下でも一切動じず、冷静な判断が下せるのが心底羨ましく思いました。
(栢間エスミさん……非常に優れた芸術家として数々の作品を生み出し、冷静な判断と行動を取ることが出来る人物にして、魅力的な容姿とその寛大にして温厚な性格から常に引く手あまたの有名人…………噂通り、本当にお綺麗な方ですね)
トリニティにおいて芸術が持つ価値の大きさを、ハナコは当然ながら理解しています。
故にその道を拯めているエスミがこの3年間、自分と同じように〝平穏〟な学生生活を送って来たとは思えません。
もちろん芸術家と才媛という違いこそありますが、共に政治や派閥から求められる存在であることには違いがなく、ここだけの話ですがハナコは彼女のことを純粋に尊敬していました。
出来ることなら〝同族〟として、上手く学園生活を送るためのアドバイスをエスミから聞きたかったのですが、美術部の部長としてだけでなく、創作活動や学業で多忙を極めているエスミに会うのは至難の業であり、気付けばティーパーティーやシスターフッド、正実の生徒と一緒に居ることが多いエスミを見て、もはや会うことすら諦めていました。
(それがまさか、このような形で出会い、エスミさんに窮地を救われるなんて…………いえ、そもそもどうしてこの空き部屋で1人、真夜中に裸でいるのかは分かりませんが……)
もしかするとエスミも日々のストレスで限界を迎えつつあり、気晴らし目的で脱いでいたのかもしれません。
となると数多の生徒から慕われ、人気者の栢間エスミが実は【露出狂】であるという驚くべきビッグニュースをハナコは掴んだ事になるのですが、掴んだどころで使い道がありません。
むしろこの事実は誰にも知られる事がないよう黙っておかねば、とハナコは心の片隅で強く誓いました。
尊敬する先輩の秘密は死んでも守ろう。
それが成り行きで偶然エスミと出会い、こうして窮地を救ってもらった事に対するハナコなりの恩返しでした……色々と誤解はありますが。
(…………というより、エスミさん!! 別に恐怖で怯えている訳ではないので、そうやって私の頭を撫でながら抱き着かないでください‼! 何処とはロには出しませんが感じてしまいます、主に私の大事なところが!! それとエスミさんの大きくてマシュマロのように柔い〝それ〟が先ほどから激しく形を変えているのが嫌でも目に入っていて大変心臓によくありません!! エスミさんのおかげで恐怖は消え去りましたし、怯えてもいないので距離だけでも離してくだ――――ああ、違います違います!! 怖くて震えている訳ではないので耳元で心配そうに囁かないでくださいお願いです!! これ以上、私に新しい扉を開かせようとしないでください!! どうしましょう、口に出して止めようにも私を追ってきた皆さんにバレてしまいますし、このままだとエスミさんにされるがままですし……もしかして天使に見せかけた堕天使ですか!?)
やがてハナコを追っていた生徒達が全員去り、再び静寂が戻った空き部屋にてエスミは素っ裸になっていた事情を説明するのですが……肝心のハナコは〝何が〟とは言ませんが限界を迎える寸前だった為その場で床にへたり込んでしまい、 とてもじゃありませんが会話はおろか話さえ聞いてもらえる状態ではありませんでした。
『そこまで精神が不安定だったの? 私で良ければたまに相談に乗ってあげるからね』
少なくともこの件に関する原因は全て自分にあると思いもしないエスミは、未だ床にへたり込むハナコの頭部を優しく撫でながら慈愛の笑みを浮かべるのですが……怒涛の展開に追いつくのに必死だったのか、それとも深夜テンションに入ってしまったのか、もはや自分が素っ裸でいる事すら忘れている模様で、頭を撫でるためその場でかがんだエスミの〝ある個所〟を直視してしまったハナコは人生で初めて鼻血を出したのでした。
ちなみにこの後『流石に寒いから服を着るね』と、もう羞恥心すら抱いてもいないエスミがようやく着替えを始めるのですが、鼻血を懸命に抑えているハナコはある光景を見て更に衝撃を受けます。
栢間エスミの下着の色は……黒でした。
てっきり綺麗で美しい外見と、寛大にして温厚な性格をしていることから天使の羽のように『白』だと勝手に決め込んでいたハナコにとって、その事実はかなり衝撃だったようです。
割と心底どうでもいい話ですが。
またこれは更なる余談ですが、肝心のナギサはあのままミカとセイアを帰そうとして口論がヒートアップしてしまい、騒ぎを聞きつけた巡回中の生徒によって強制的に部屋に戻されたのだとか。
その連絡を受けたエスミも仕方なくハナコを帰して自身も部屋に戻り就寝したのでしたが…………翌朝、あまりにも恥ずかしく、かつとんでもない奇行に走っていた事をエスミは理解しただけでなく、部屋の窓を開けて長時間素っ裸でいた影響で風邪まで引いてしまったのでした。
さて、既に風邪から回復したチェリに必死に看病されながら、冷静に過去を振り返ることが出来たエスミは後にこう言ったとされます。
『空き部屋なんかより、初めからナギサの部屋で写真を撮れば良かったよね……?』
そうすればナギサがミカやセイアを相手に口論することはなく、自身も彼女の到着を待つために素っ裸となりハナコと偶然の出会いをする事もなければ、こうして風邪を引くことも無かったことでしょう。
とはいえ今となっては全て後の祭りでしかありません。露出は当分の間、禁止です。
栢間エスミの秘密・18
・自身の顔とスタイルの良さをしっかりと自覚しているエスミ。
当然、彼女にも人前で裸になる事に対する恥じらいはあるし緊張だってする。
ただし今回エスミの裸を見た相手がまさかの浦和ハナコだったので『まあ別にハナコなら良いか』と羞恥心が消えてしまっただけの模様。
この当時のハナコはまだ裏表なく〝清楚〟である。しれっと性癖を狂わされたのは事実である。
ちなみに当初の予定ではナギサだけに裸を見せて撮影をしてもらうはずだった為、実を言うと事前にシャワーを浴びたりしてエスミなりに色々と意気込んでいた。
それこそ良い匂いのシャンプーを使用したり、髪をしっかり梳かしたり、手入れとかその他色々…………生憎とその全てを堪能したのはハナコだったが。
ところで後日、予定通りナギサと2人きりで撮影会が始まったのだが……何やら良くない雰囲気になりかけたので途中で中断する事となった。
もしも仮にブルアカ世界に転生して生徒になれるなら、どんな武器を所持して愛用したいですか?(※作者は愛用するならリボルバーしかあり得ません.)
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拳銃(M1911,グロック等)
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リボルバー(SAA、コルト・パイソン等)
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自動小銃(HK416、AK-47等)
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短機関銃(M1921、MP5等)
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小銃(M1ガーランド、Kar98k等)
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散弾銃(ベネリM4、AA-12等)
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機関銃(MG42、M249等)
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対物ライフル(AW50、ヘカートⅡ等)
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擲弾発射器(M79、ダネルMGL等)
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素手