夢叶って画家になれた転生主は、ともかくブルアカ本編に関わりたくない   作:木暮鬼一

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ティーパーティー組が、遂に水着実装……。

嬉しさのあまり、全員無事にお出迎えしました。
ナギサ、思っていたよりもある部分がデカくて心底驚きましたが、それよりも水着のインパクトに笑いそうでした。ちなみに日焼けしてサングラスをかけていた部分だけ真っ白なスチル、可愛くてたまらなかったです。
セイアは車運転できることに驚きましたが、楽しそうだったので良しとします。

ミカは、正直清楚な見た目に拍手を送りつつ、想像以上にデカくて困惑しました。自分が創造させていただいた栢間エスミ、彼女と同じ胸のサイズと設定していますが、あれは流石にデカすぎるのでは……?
制服で隠せないだろ……。

とまあ、イベントも楽しくて非常に満足です。
無事に仕事も一段落して、夏季休暇を頂いたので停滞していた創作も少し進展出来て安心しました。

これからも宜しくお願いいたします。




栢間エスミ 『目と耳』

 

 

 栢間エスミが何者かに襲われ、意識不明の重体となった。

 

 その知らせがゲへナ学園よりトリニティ総合学園の下に届けられたのは、ソドムと呼ばれる廃墟で風紀委員会所属の空崎ヒナが彼女を発見して、実に半日が経過した頃でした。

 幸いにも早期発見及びヒナの迅速な応急手当と、緊急手術を行ったゲへナ学園の救急医学部による奮闘のおかげで今にも消えそうだったエスミの命は何とかその炎を灯し続けることに成功しました。

 しかし当時ゲへナの地を襲った冷たい大雨。

 これにしばらく打たれ続けた事でエスミの身体は急激な体温の低下を招き、また何者かによって負わされた身体へのダメージの大きさは決して計り知れないものであり、生徒として籍を置いているトリニティに送り返されて1か月の月日が経過しても尚、エスミの意識が戻ってくることはありませんでした。

 

 現在、栢間エスミはトリニティ自治区内にある大型病院で意識回復に向けて入院中となっており、真相は未だ不明ではあるものの『ゲへナ自治区で襲われた』という事実からティーパーティー側はこれをエスミに個人的な恨みを持つ者による計画的犯行と断定。

 治安が最悪なゲへナのみならず、治安が安定しているここトリニティでも再び襲われる可能性が高いとして、 彼女の病室には常に正義実現委員会から選ばれた精鋭が警護をしている状況となりました。

 

 そしてトリニティ自治区内では大の人気者、かつティーパーティーや政治派閥にとっても貴重な存在でもあるエスミが意識不明の重体となってしまった事は非常に心苦しいものであり、よりにもよってゲへナ自治区で起きた悲劇という事も合わさって、昔からゲへナに差別的だったパテル分派はこれを機に明確に反ゲへナ派へと態度を変え、彼女の責任を強くゲヘナ側に追及する姿勢を取ることとなりました。

 

 とはいえ後輩たちに良き姿勢を見せるべき3年生という立場でありながらティーパーティーに無断で学園を欠席し、あろう事かキヴォトスで最も危険なゲへナ自治区に事前の連絡も無しにたった一人、自ら足を運んだのはエスミ自身となります。

 

 親しい知人にすら行く先や目的も告げずに突然出て行ったという報告が各地で上がるなど、決してゲへナだけの責任では無いとしてサンクトゥス分派やフィリウス分派は『このような悲劇を招いた一因はエスミにもある』という意見を強く主張。

 何もゲへナだけに責任を負わせるのではなく、あくまでも平等に物事を解決するべきと公平な態度を取ることにしたのです。

 ただし結果としてエスミの処遇を巡り反ゲへナ派と親ゲへナ派で大きく対立してしまったティーパーティーは、これ以上エスミの件で学園内に余計な混乱を生まないようにと、ひとまずこの件を表沙汰にしない方向で意見が一致しました。

 

 つまり限られた者だけが知る秘密として、裏の舞台で事態の解決を図る事としたのです。

 

 只でさえ後輩たちからはよく慕われている人望に厚いエスミですので、ゲヘナで襲われ意識不明の重体になったと一般生徒らに知られてしまえば、ほぼ間違いなく大多数がゲヘナに対して明確な敵意を向けることでしよう。

 最悪、学園間の戦争が起きる可能性すらもあります。

 

 そのため栢間エスミの身に起きた悲劇を知る者はティーパーティーや正義実現委員会の上層部を始めとして、今もなお彼女の治療に当たっている救護騎士団の一部、彼女が在籍していた美術部の副部長たちなどかなり限られています。

 故に表向きには『事故による緊急入院』という形で通している状況です。

 当然、彼女に面会出来る者はごく少数。ティーパーティーによる情報規制も行われている状態なため、エスミの事を詳しく知ろうとする者は秘密裏に重い処分が下されているか、口止めを強制されている事でしょう。

 

 おかげで彼女に関する事実を知らない外部からは『天才画家に起きた悲劇』とか『入院は偽装で芸術を追い求め自ら退学した』などと好き勝手に噂され、トリニティのみならず世間の大半がそれらの噂を冗談半分に信じていました。

 しかしながら突如として表舞台から姿を消してしまった天才画家なのですから、誇張された嘘偽りだらけの噂が飛び交うのはむしろ当然の流れです。それにティーパーティー側としては変に勘付かれて事の真相が明るみに出ないのであれば、むしろ有難いとばかりに半ばこの現状を放置していました。

 

 こうして栢間エスミが意識不明の昏睡状態となって更に2か月が経過した頃、トリニティ総合学園の内部ではとある大きな動きがありました。

 それは各委員会、部活、ティーパーティーにおける大規模な組織再編をするイベント。

 

 すなわち、後任の部長や委員長を任命する例の時期が訪れたのです。

 

 これは原作のブルアカ本編に繋がる道の扉が、ついに開かれたことを意味していました。

 

 

 

《1-2》

 

 

 

「ナギサ様。この度はフィリウス分派の次期首長への就任、誠におめでとうございます」

 

 慣れた手つきでナギサの大好きな紅茶とロールケーキを用意し、次期首長に決まった事を心から祝福しているのは、ナギサの付き人を務めている同学年の小樽チェリでした。

 お互い高等部に入る前から『主人』と『付き人』という関係を維持して来た仲です。同い年でありながらも、チェリは彼女に対し常に命の恩人として尊敬の態度を崩そうとはしません。

 それをよく分かっているナギサは感謝の言葉を口にすると共に、目の前に用意されたお祝いの品に手を伸ばすのでした。

 

「ありがとうございます、チェリさん…………まあ、これはとても美味しい紅茶ですね。新しいメーカーの品でしょうか?」

「ナギサ様の次期首長任命に備え、半年前から特別に取り寄せたものになります。気に入って頂けて光栄です」

「そうでしたか。チェリさんにとって、私がフィリウス分派の次期首長になるのはほぼ決定事項だったという事ですね」

「当然です。今のフィリウス分派を率いることが出来るのは、目の前のナギサ様を置いて一体誰がいらっしゃるのでしょうか。それにナギサ様が後任になられることに対し、派閥から反対の手を上げていた者はごく僅かでした。他の方々もナギサ様こそ次期首長に相応しいと判断されたのです」

「……ええ。そうですね」

 

 彼女の言葉でフィリウス分派の〝次期首長〟という極めて強い地位をこの手に掴んだ事を再度実感し、ナギサは喜びと緊張を混ぜ合わせて溜息を吐きました。

 

「3年生が卒業されるまで残り半年を切りました。無事に後任が決まった以上、これからは双方ともに受け持っている業務の引継ぎでしばらく忙しくなりそうですね」

「私はこの先もずっとナギサ様の永遠の付き人です。貴女様のお力になれるよう何処までもお供します」

「そう言って頂けて大変助かります…………ところでチェリさん。美術部の件ですが、本当に宜しいのですか? いくら本来の役職がティーパーティーとはいえ、私のためにエスミさんから任命された副部長の座をわざわざ下りる必要は——」

「いえ、大丈夫です。元より師匠の手助けをするべく副部長に就任しただけで、あの地位に拘る理由が私にはありません。それに首長になられたナギサ様のサポートで今後は美術部に足を運ぶ機会は減ってしまいますし、それならば新部長となった『金剛フラン』の補佐が出来る優秀な人材にこそ、その座を託すべきだと思います」

 

 彼女の口から『金剛フラン』という名を聞いてナギサは少々不安そうに首を傾げました。

 

「フランさん……エスミさんが特別に目を掛けていたと聞く噂の方ですね。ですが彼女は確か、大の政治嫌いで有名だったはずでは? 特にティーパーティーの生徒は誰彼構わず嫌悪しているとも聞いています……てっきりチェリさんと共に副部長を務めていたサンクトゥス分派所属のキオさんが次期部長になられるとばかり思っていたのですが……」

「そうですね……ナギサ様のご意見と同じく、私も彼女が後任になると内心確信していたのですが…………どうやらフラン。前々から師匠に後任として密かに期待されていたようで、私達には内緒で次期部長としてフランの名が記された書類を彼女自ら学園に真っ先に提出していたようです。部員の大半…………まあ私やキオと同じ分派に属する生徒からは政治嫌いのフランの部長就任に対し、かなり反対の声が上がりましたが、先代の部長である師匠がフランを次期部長に任命した事実は変わりませんし、その理由を聞こうにも師匠はまだ意識が回復していない状態です。結果的にフランが次期美術部の部長に就任することで決定となりました」

「…………」

 

 ナキサの目がやや細くなり、視線が手元へと落とされます。

 その様子を眺めながら、ひとまずチェリは言葉を続けました。

 

「ちなみにキオは引き続き副部長に就任となりました。彼女の実力とカリスマ性は師匠にも負けず劣らず優秀です。師匠が署名した書類にはしっかりとキオの名が書かれていたようなので、たぶんフランのストッパーになってくれる事を師匠は期待しているのでしょう。ああそれともう1つ、私が下りた事で空いてしまった片方の副部長の椅子ですが、こちらは新部長となったフランの任命で『小豆リノ』が座る事となりました。これといって有名な成績を部活内で残している生徒ではないのですが、ナギサ様は彼女について何かご存知でしょうか?」

「……いえ。実を言うとエスミさんが率いていた美術部について、そう詳しくは知りません。差し支えなければ、そのリノさんという方について深くお聞きしても宜しいでしょうか?」

 

 チェリは当然です、と言わんばかりに大きく頷くと小豆リノについて簡潔にこう説明しました。

 

「リノは先程話したフランと同じく庶民出身の生徒になります。2人共、師匠の才能に惚れて芸術への道を歩んだ同志ということらしいですが……入学初日に偶然出会い、その場で意気投合したという話しか私はよく知りません。お互い、師匠に対する尊敬の念はかなり強いのですが、政治嫌いで私やキオみたいなお嬢様生徒すらも目の敵にしているフランを過激派と称するなら、リノは反対に穏健派です。ただしフランのように目立つ態度を取らないだけで、普通に政治やお嬢様生徒を毛嫌いしているのは彼女と同じですが……」

 

 手に持っている紅茶入りのカップに視線を向け、何かを考えるかのように黙るナギサ。そして首を傾げつつ、疑問に満ちた声をチェリに向かって投げました。

 

「お2人がそのような態度を取られている事に何か心当たりなどはありますか?」

「いえ残念ながら全く……キオとフランの相性は最悪を超えて絶望レベルに酷いもので、それは私に対しても同じです。言葉を交わそうにもあまり長続きはしませんし、理由を探る以前にそもそも相手にもしてもらえません。特にリノに至っては元々口数が少なく表情筋も死んでいるダウナー系女子なので……その、こう言ってはあれですが近寄りがたい雰囲気があるのです。あまり有益な情報は手に入っておりません」

 

 ちなみにチェリが耳にしたリノの噂で、実は彼女は〝同性愛者〟であるとか〝闇市場に頻繁に通っている問題児〟いう話を何度か耳にしたことがあるのですが、表情筋が死んでいて口数が少なすきるリノの様子を見るに、単純に人に興味がないだけで周囲が勝手に誇張した噂に過ぎないのでしょう。

 それにあれでもフランとリノ共に優れた芸術家としての才能を持つ生徒達なのですが、どうも癖が強すぎるのが目立つあまり芸術の面ではそれほど評価されていない気がします。

 

 とはいえ彼女たちについて深く気にする事はないと、チェリは考え事を中断しました。

 

「以上が新体制となった美術部の現状となります。3年に進級するにあたり、私は副部長から部員へと変わりましたが、この身は依然としてナギサ様にお仕えするためにあります。師匠の意識が回復するまで当分の間は美術部に足を運ぶことはしません。しばらくの間、常にナギサ様のサポートを優先致します」

 

 そこで言葉を区切り、気付けば空となっていたナギサのカップに新しく紅茶を注ぎ、チェリは薄く笑みを作りました。

 

「そういえば今日で早くも2か月と1週間が経過しましたが、久しぶりに師匠に会いにいかれませんか? 前に面会したのは数週間も前ですし、積もる話もあることでしょう。首長としての引継ぎの業務は後日行えば問題はありません。」

「ええ……それはとても素敵なお誘いですね」

 

 2か月という期間の長さに色々と思うところがあったのか。

 少しの間を置いて、ナギサはやや嬉しそうに言葉を返しました。

 

 

 

《1-3》

 

 

 

 エスミが入院している病院はトリニティ自治区のほぼ中枢にあります。

 

 このトリニティ自治区内では最大規模を誇る病院であり、政治家や富裕層のみならず多くの住民が昼夜問わず利用しているこの施設は、基本夜の時間帯を除いて静かな場所などは一切存在しません。後にティーパーティーでホストの座に就く事となる桐藤ナギサが堂々と館内を歩いても、誰1人として彼女の姿を気にしないほど活気にあふれ賑やかでした。

 

 ちなみにエスミが眠っている病室はほぼ最上階にあります。

 外部に余計な情報が渡らないよう、そして再び襲われないようにと病院には無理を言ってⅥP専用の個室を与えられている状況です。そのためエスミが眠っている病室のフロアには正義実現委員会から派遣された精鋭のみが巡回しており、このフロアに足を運べるものは文字通りエスミと親交の深い関係者のみとなっているのです。

 

「ナギサ様とチェリ様ですね。既に来訪の件はお聞きしています。どうぞ、こちらへ」

 

 さて事前に連絡した通り、ナギサ達が来訪することを聞いていた正実の生徒は何も不審に思うことは無く、2人を真っ先にエスミがいる病室へと案内します。

 フロアには彼女達を案内している生徒を含め、他に正実の生徒が3人ほど。全員、エスミと同じ3年生で今年いっぱいで卒業してしまう正実の精鋭達でした。あまり個人的な付き合いでエスミと直接関わった事は無いようですが、それでも学園の有名人である同い年の生徒が重体となった事に心は痛めているようで、常に真剣な表情で任務に励んでいます。

 

「実はつい先日、サンクトゥス分派の次期首長に就任されたことを報告しに、セイア様がご友人のキオ様を連れて面会に来られたばかりでして。本日はナギサ様もその件で来られたのでしょうか?」

 

 すると彼女達を案内していた正実の生徒がそう尋ねてきました。

 ナギサは視線を一度だけ彼女に向けると、そのまま視線を前に戻して深く頷きます。

 

「はい。これから引継ぎの業務で忙しくなると思うので、その前にエスミさんにお会いして世間話でも、と思いまして」

「なるほど、そうでしたか。まだエスミ様の意識は回復されていませんが、容体は非常に安定しています。きっとそう遠くないうちに目覚めるはずだと病院の先生が仰っていました」

「……それは……良い話を聞けました」

 

 依然として目が覚めていない事実は変わりませんが、このまま永遠に目覚めないよりはだいぶマシな知らせでした。チェリも少しだけ安堵した様子で息を吐いており、ナギサは一言だけ『ありがとうございます』と感謝の言葉を口にします。

 

 そうして無事にエスミが眠る病室へと案内されたナギサとチェリ。

 

 2人を案内した正実の生徒はこれで用件は済んだとばかりに『何かあればすぐにご報告を』と言い残して退出すると、病室にはナギサとチェリ、そしてベッドの上で眠り続けているエスミの3人だけが残されました。

 定期的に聞こえてくる心電図の音がまるでメトロノームのように音を刻み、この場の時間の流れを表現しています。

 一方でナギサは悲痛な表情をしながらその場で立ち尽くしていました。

 

「……ナギサ様。行かれますか?」

「……はい」

 

 その様子を心配そうに眺めていたチェリはそっと彼女の背中に手を当てると、優しく丁寧にエスミの下へと彼女を案内します。やはり何度見ても今のエスミを見るのは心苦しいのでしょう。あまりにも動きが鈍く、まるでナギサすらも病人になっているかのようでした。

 しかしそれでも来たからには声を掛けて欲しいと、チェリは彼女を鼓舞するかのように文字通り背中を押し、エスミの傍に置いてある椅子へ座らせました。

 

「師匠……お久しぶりです。前にキオと共に面会しに来て以来となりますが、今日はナギサ様と共にやってきました……さあ、ナギサ様もお声をかけましょう」

「ええ…………その、エスミさん……お久しぶりです。ナギサです」 

 

 当たり前ではありますが、未だに意識が回復していないエスミから返事が返ってくることはありません。

 それでも直にエスミに会って声をかけたという事実が変わることはなく、ほんの僅かですがナギサの心はほんのりと温かくなりました。

 

「……ん?」

 

 するとここでチェリは周囲を見渡し、以前に比べて何か変わっている所はないかと観察を始めました。とはいえここは病室です。そう大きな変化がある訳ではなく、ちょうど病室の隅に置かれているいくつかの〝画材〟だけが目に映るだけでした。

 それは美術を愛してやまないエスミの為に、せめて意識が回復するきっかけになればと用意されたエスミの私物でした。当然、美術部にいる部員によって厳選されたモノであるため決して怪しいものではありません。

 しかしながらチェリはその画材にどこか異変でも感じたのか、じっと視線を向け続けています。

 

「……チェリさん? どうかされましたか?」

 

 ところが彼女の様子を気にしたナギサの言葉で我に返り、チェリは『いえ、何でもありません』と言葉を返すと、そのまま向こうに置いてある画材から目を離すのでした。

 久しぶりに来たせいで随分と緊張しているのかもしれないと、チェリは気分転換のために自分だけ退出することにしました。

 

「……すみません、ナギサ様。少し下の階で飲み物でも買ってきますので、一旦席を外させていただきます」

 

 そうナギサに対し一声かけたチェリは最後に師匠であるエスミに視線を向けると、ぎこちない笑みを浮かべて早足で病室から出ていきました。

 

「…………」

 

 さてエスミと一対一で残されてしまったナギサは何ともいえない感情を抱きながら、ひとまずベッドで眠る彼女の顔を眺めます。

 もっともその身体には無数の点滴が打たれており、出血をしたらしい頭部には依然として包帯が巻かれているなど、あまり視界に収めて良いものではありません。特に芸術家であるエスミにとって大事な利き手であるはずの〝右手〟は原因不明の何かによって深く刺されたらしく、手術の後に右手全体を覆うようにして包帯が巻かれています。

 一応、経過を観察した医者の話では『ひとまず神経は生きている』との事でしたので、今までのように筆を持って絵を描く行為自体は出来るのでしょう。ただし手の持ち主であるエスミ本人が意識を回復しない限り、右手の感覚や扱いに関する状態は全く分かりません。

 また他にも崩れた建物の下敷きになったことで骨折や打撲等の酷い怪我も負っているため、無事にエスミが目を覚ましたところで、病院での長いリハビリ生活が彼女を待っていることになります。果たして彼女が学園に復帰できるのはいつになるのやら……数か月後でしょうか。それとも数年でしょうか?

 

「……エスミさん……そろそろ……起きて、私と話をしてくれませんか?」

 

 気付けばもう2か月。そう、2か月です。

 エスミと最後に言葉を交わしてからずっと、ナギサは記憶の中にあるエスミの言葉を思い出しては、その声色を忘れまいと必死でした。

 しかし人間が最初に忘れるのは『声』と言うだけあり、中等部の頃からあれほど多くの言葉を交わしてきた仲であるはずのナギサもまたその例外ではなく、日々が経過するごとに彼女の記憶の中にあるエスミの声は徐々にその形と存在を崩していきました。

 今となっては何度も聞いたはずのエスミの素敵な笑い声さえ思い出せません。

 

「……どうか、お願いです……私とミカさんを置いて、遠くに行かないで下さい……」

 

 かろうじて怪我の1つも負っていない左手を自身の両手で握りしめ、ナギサは彼女が眠っているベッドに向かって身体を斜めに倒します。

 エスミが生きている事を示す心電図の音が、定期的に部屋中に鳴り響きます。もはやこの音だけが、彼女から発する〝声〟であり心臓の〝鼓動〟と言えるでしょう。ナギサはその音だけを聞きながら、ただひたすらエスミの顔を眺め続けるのでした。

 

「エスミさん……覚えていらっしゃいますか?……まだお互いに中等部だったあの日、ワイルドハントに転校するつもりでいたエスミさんを強引にも引き止め、私はトリニティに通わせることを無理やり約束させました……あれはただ貴女の活躍を傍で眺め、叶うなら共に学園に通い、言葉を交わしたいと願った私のエゴでした。当時はその事実に喜んでいた私でしたが……結果的にこの3年間、エスミさんには大変な日々を送らせてしまいました……」

 

 噂で聞いたことがある、まだ彼女が高等部1年の頃に美術部の件で起きたサンクトゥス分派との衝突。

 彼女は望まない政治闘争に自ら介入し、これを見事解決してみせると、今度は保身と愛する美術のために慣れない情報屋になることを決断。非常に多くのパイプを持ち、数多の情報を駆使して政治家たちと対等に渡り歩き、最終的に存続が危ぶまれていた美術部を救ってはその部長に就任するなど、栢間エスミという少女が送ってきた高等部3年間の人生はかなり色濃く、かつ壮大でした。

 ただし、彼女が本当に送りたかった人生はこんなものでは無いはずです。

 

 まだ中等部だったあの日、遂に夢だった画家という職を手にしたエスミは、恐らくただ芸術だけを追い求める日々を送れることを信じていた事でしょう。

 本当なら、こんな政治や権謀術数に明け暮れるトリニティでの暮らしに心底うんざりしていたはずなのです。それにも関わらず、ナギサはそんな彼女を自身のエゴのために無理やりトリニティという牢屋に閉じ込めてしまいました。

 

 その結果、どうでしょうか?

 

 今のエスミは、あれだけ嫌っていた政治闘争に自ら介入したことで常に精神を摩耗し、大好きな芸術活動に時間を割くよりも美術部の運営にひたすら死力を尽くす日々を送っていました。

 幸せな時間を送れているとは到底思えません。

 挙句の果てにはゲヘナの地で何者かに襲撃され、こうして重傷を負ってしまったのです。彼女のもう一つの命とも呼べる利き手に怪我を負うほどに……。

 

 正直、ナギサは自身を恨んでいました。

 彼女をこんな目に遭わせたそもそもの一因は、彼女をこの息苦しいトリニティに閉じ込めてしまった昔の自分の我儘なのですから。

 

「すみません……申し訳ありません、エスミさん……あの日、貴女をワイルドハントに見送ることが出来ていれば……貴女をこのトリニティに閉じ込めないでいれば、こんな苦しい3年間を送らせることも……こんな姿にさせることも無かったのに……!!」

 

 不思議と涙は出ませんでした。

 それでも酷い重傷を負ってしまったエスミの心を代弁するかのように、ナギサの口から出てくる言葉はどれもが辛く、悲しく、痛みに溢れていました。

 

 しかしながら、目の前で今も尚眠り続けている少女の目が覚めることはなく、ナギサは涙こそ流せないものの項垂れた様子で彼女が眠るベッドにしがみつきます。その間、彼女の口から出てくるのは『すみません』『私のせいで』という言葉ばかり。丁寧に整えた髪が乱れるのも構うこと無く、指先がベッドのシーツに食い込むのも気にしません。

 まるで壊れた玩具のように、繰り返し同じ言葉をナギサはエスミ相手に吐き続けます。

 

「……ナギサ様……」

 

 一方でその様子を病室の出入り口で眺めていた付き人のチェリは、見るも無残な姿を晒しているナギサに対し何と声を掛けたら良いのかと立ち尽くし……やがてそのまま静かにドアを閉めると、手に持っている〝3人分〟の飲み物に視線を落とし、悲痛な溜息を吐いてその場を立ち去るのでした。

 

 結局、この日も栢間エスミが意識を回復することはありませんでした。

 

 

 

≪1-4≫

 

 

 

 『彼女』が、永い眠りについた。

 

 まるで1つの芸術作品が未完のまま保管され、常に補修だけが施された状態で倉庫に眠るかのように、彼女は……ボクにとって人生の先輩でもあり、上司でもある偉大な先輩、栢間エスミこと『ボス』はその綺麗な翡翠色の瞳を閉じてしまった。

 きっと今もこうして、彼女の身体に触れることが許された者達によって懸命に看病をされていることだろう。

 正直言って、無事に目が覚めるのかさえ分かっていない。

 

 だが作品が未完のまま終わりを迎えることは許されない。

 

 一度この世で創造されたのなら、完成を迎えるその日まで作品は長く生き続けなくてはいけない。

 鑑賞者が目にして良いのは、作品の制作過程なんかじゃない。むしろ作品が完成し、それが誕生までに至った経緯をまとめて知る事こそが芸術鑑賞の醍醐味であり、真理だ。

 少なくとも、ボクをこっちの世界に引き込んだ張本人でもあるボスが、その輝かしい〝人生〟という名の作品を完遂させずに志半ばで死ぬことをボクは決して許さない。後世の世に広く長く伝わり続けるためにも、貴女にはここで倒れて貰っては困る。

 だからこそ、お見舞いと称して用意されたボスの私物でもある画材……その中にひっそりと設置した盗聴器を使いながら、ボクは常に彼女の容態やその周囲に居座る関係者たちの近況を耳に入れることにしていた。

 

 するとこの2か月という期間の最中で、随分と面倒な話を手にする事が出来た。

 

 それはボスと随分仲良くしているサンクトゥス分派の百合園セイアが、所属している分派の次期首長に就任することになったという事だ。困った。非常に困ってしまった。

 ボスが意識不明の重体でトリニティに運び込まれた時は、あまりのショックで1週間ほど寝込んだという話が出回って次期首長の就任は絶望的だと言われていたのに、どうやらボクの知らない所で『今度は私が彼女の身を守る』とか何とか口にして再起し、瞬く間に他の有力者を蹴散らして次期首長の座を掴んでみせたらしい。

 まったく、恐れ入った。

 ボスの事になると周りを気にせず、ひたすら彼女に夢中になってしまう人物がこのトリニティには少なくとも3人はいるけど、その中でも百合園セイアは格別だった。ボスの行動に一喜一憂する生徒なんて、この学園では大して珍しくはない。だがセイアという生徒はその誰よりも反応が過剰だった。

 そんな彼女がサンクトゥス分派の首長に就任した。

 これを吉報と捉えるか、もしくは凶報と捉えるのか。

 

 ボクの親友にして、ボスから直々に後任として美術部の次期部長に任命された金剛フランの意見は、言わずもがな後者だった。

 

 彼女はボクにこう言った。『これからは、サンクトゥス分派は栢間様の生活を脅かす真の敵だ』と。

 それはそうだろう。今後は重傷を負ってしまったボスの保護を目的に、サンクトゥス分派がこれまで以上に介入してくる事になる。副部長として居座っているサンクトゥス分派所属のキオは当てにできない。彼女はボスに尊敬の念こそ抱いてはいるものの、セイアとは1年の頃から親交を育んできた親友の間柄で、分派に対して絶対的な忠義を誓っている。

 セイアが望み、分派がそうすべきと行動を開始したのなら、キオはそれに黙って従うはずだ。彼女の優先順位はいつだってセイアとサンクトゥス分派なのだから。

 このままでは最悪、ボスの人権が脅かされる恐れがある。

 ボクと親友のフランはその未来を阻止するべく既に秘密裏に動いていた。

 

 それとこれは余談だけど、ボクとフランは決して『栢間エスミの大ファン』繋がりだけで親友という関係を築いた訳じゃない。

 

 実を言えばお互い、ボスの下で学園に関するあらゆる『情報収集』を行う仲間同士だ。同志と言ってもいい。

 裏では情報屋として活動し、日々周囲の動きを警戒しているボス。ボクとフランはそんな彼女の裏の活動を支えるべく、常に最新の情報と噂をこの学園に入学した1年の頃から提供し続けてきた。

 真偽は不明でも、それを元に行動を移すのはボス次第だ。だからこそ、ありとあらゆる情報を学園の各地から集めることだけに時間を注ぎ、事実としてボクはその活動に日々喜びを感じていた。

 と言うのも、ボクの家族の出身はクロノスジャーナリズムスクール。

 生活拠点をこのトリニティに移して以降、政治専門のジャーナリストとして活動を始め、その様子を幼少期の頃から眺めていたボクは必然とその技術やノウハウを受け継いでいた。ボスはその適性が生かされる道を、このボクに与えてくれたのだ。

 

『君、私の耳と目になるつもりはない?』

 

 あの日、真剣な表情と共にボスはそう言葉をかけ、彼女の裏の世界にこのボクを招待してくれた。

 断る理由なんて無かった。彼女の芸術家という立ち位置に憧れを抱いて、後を追うように芸術を学び、同じ学園に入学したボクに対し、彼女は贅沢にも更なる一歩を近づく権利をボクに与えてくれたのだ。

 ボクは友であるフランも同じ立場に立たせてほしいとボスに彼女を紹介した。

 

 優しいことに、ボスは首を横には振らなかった。

 

 以降、ボクとフランは彼女のために懸命に働いた。

 政治嫌いの過激派で有名なフランは、その立ち位置を利用して彼女に同調してくれる庶民派の生徒から情報を入手し、ボクはあの手この手で分派や他派閥から情報を抜き取っていった。連絡や情報の引き渡しは〝芸術〟に関する暗号や画材を用いるようにして、周囲に正体がバレないよう、そしてボスとの関係を疑われて怪しまれないよう常に徹底した。

 愛弟子という有難い地位を手にしている小樽チェリも、ボスから一番の信頼を寄せられている本目キオも、ボク達の真の正体について気付いていない事だろう。

 しかし油断は出来なかった。少しでも気が緩めば、容易く勘付かれる危険性が潜んでいるのだから。

 さて、そういった緊張の走る環境下で長く過ごしていくと、最初は栢間エスミのファン繋がりで友好を築いたフランとの仲もより深く、より強固になっていくのを肌で感じるようになっていた。気付けば互いに秘密を共有し、ボスの為なら命も惜しまないと固く約束するほどの仲にまで進展していた。

 本当はボクとフランが抱くボスへの個人的な想いは、似ている様で実は全く違う。それなのに不思議と互いにウマが合い、彼女に関わる方針で揉めたことは今まで一度だって無い。

 

 だから、なのかもしれない。

 

 ボスが何者かに襲撃を受けて意識不明となったあの日、フランはボクに対しこう言った。

 

『私とリノで栢間様を守ろう。あの方に指一本触れさせないためにも邪魔なティーパーティーを瓦解させる』

 

 真剣な表情だった。

 しかし彼女の口から出てきたのは、長年トリニティ自治区を管理してきた学園の生徒会を崩壊させるという非常に恐ろしい話だった。でも不思議と、当時の私はそれを拒絶する気にはならなかった。

 過去に起きた悲劇の件で、富裕層や政治に対して人一倍嫌悪感を抱いているフランに対して同情していたのか、ボスのことを神聖視し最悪暴走する恐れがある彼女を止める事が出来るのはボクしかいない、とでも思ったのか。

 それとも共にボスの下で活動してきた同志として親友として、果てまで付き合うと決めたのか。

 その理由を今更探すつもりはない。

 

 ただ確かなのは、ボクは彼女の意見に賛同した。それだけだった。

 

 フランは勿論喜んだ。いや、喜んでくれた。

 彼女は『リノが居れば心強い。共に頑張ろう』と声をかけてハグまでしてくれた。今思えば、美術部の副部長にボクを任命したのは彼女なりの恩返しだったのかもしれない。

 生憎と人付き合いが苦手なボクからすれば別にどうでもいい役職だけど、不思議と悪い気はしなかった。

 それにフランが計画した復讐の実現のためには、そういう役職がボクにも必要だったのだ。

 というのも、ティーパーティーを瓦解させるためにはボクたちの立ち位置はあまりにも弱い。弱過ぎた。あれだけボスが必死に築き上げた美術部も、巨大組織のティーパーティーや三大分派を前にすれば、容易く崩れてしまう砂の城だ。ただの一般生徒でしかないボクやフランが相手したところで、どうなるかなんて目に見えている。

 

 そこでフランは一計を案じた。

 

 ボクたちの立場を脅かすことなく、むしろ協力者となってくれる生徒をティーパーティーから見つけ出したのだ。こういう悪巧みに関して彼女はともかく賢い。そして、非情だ。

 彼女はまずこう考えた。

 『ティーパーティーを瓦解させるには、まず栢間様の件で三大分派をそれぞれ仲違いさせる』と。その為にはボスと関りの深い人物に表舞台に立ってもらう必要がある。

 とはいえ、ボクたちに協力者として目を付けられたその生徒は政治の表舞台に立つことにかなり消極的だった。『私には関係ない』とか『こういうのは性に合ってない』など、そう色々と理由を述べては自由気ままに過ごしていた。一応、ボスと関りが深いその生徒は彼女の身に起きた悲劇について、それなりに強く思うところはあったらしい。しかし自分が出る幕じゃないと言わんばかりに完全に閉じこもっていた。

 フランはそんな彼女にある〝情報〟を差し出したのだ。

 

『栢間様はあの日、自ら望んでゲヘナに行かれた訳ではありません。むしろ彼女を呼びつけたのは招待状などというモノを寄越してきたゲヘナ側です。あの方の身に起きた悲劇。それを招いたそもそも原因は、間違いなくゲヘナ学園にあると言えるでしょう』

 

 それはボスとフランの間にだけ秘密とされていた、唯一無二の情報だった。

 現にボスがどうしてゲヘナに行くことになったのか。その真実を知るのは彼女を呼び寄せたゲヘナの生徒と、ボス本人、そしてその招待状を直に目にしたフランだけしか知らない。

 既に知っての通り、ボスは依然として目を覚まさないので詳細は聞けず、彼女を呼び寄せたというゲヘナのある生徒も忽然と姿を消してしまっていた。

 おかげで事の真相を把握出来ていない周囲は勝手に仮説を立ててはゲヘナ学園と栢間エスミ、一体どちらに非があるのかと常に議論を交わし続けて無駄な時間を消費させていた。

 

 フランが提供した情報は、正にその議論に一石を投じる大きな証拠と言えたのだ。

 

 当然、フランから話を聞いたその生徒は瞬く間に態度を豹変させた。

 元々ゲヘナに対して良い感情を持っていなかったのかもしれない。その生徒はボスがあんな姿になったのはゲヘナのせいだと強く信じるようになり、そんなゲヘナと友好関係を築こうとするフィリウス分派や、中立を保とうとするサンクトゥス分派に対し強い憤りを覚えるようになった。

 フランはそこから彼女に所属している分派の首長になるよう進言。ボスを守れるのは貴女しかいないと、その生徒の心を焚きつけた。幼馴染の彼女だけでは力不足だとか、病弱のセイアには荷が重いなどと語りかけ、貴女とその分派だけがエスミを守れると何度も何度も強く説得したのだ。

 結果、その生徒は今までの自由気ままな生活は一体何だったのかと疑いたくなるほど、見事に次期首長の座を勝ち取ってみせた。

 

 こうしてボクとフランの協力者となった生徒、パテル分派の次期首長、聖園ミカは誕生した。

 

 これにより来年のティーパーティーは、サンクトゥス分派の次期首長、百合園セイア。

 フィリウス分派の次期首長、桐藤ナギサ。

 パテル分派の次期首長、聖園ミカ。

 以上の3名が各分派のトップとして君臨し、ティーパーティーを運営する事となる。奇しくも全員、ボスと深い関りを持つ生徒たち。ただし各々が抱く想いや信念は別々で、ボスの事に関しては全く足並みが揃わない異分子の集まりでもあった。

 

 この時点でもうフランの計画は半ば完遂したも同然。しかし彼女はそれで満足することは無かった。

 

『次のステップに移ろう……周囲からの信頼を失うような、何か大きなスキャンダルか不祥事がティーパーティーに起きると良いかもしれない。運が良いことに、ミカ様から〝ある計画〟について協力をお願いされたんだ。もしかすると、これは使えるかもしれない』

 

 ボクは尋ねた。それは一体何かと。

 すると彼女は、夢見る少女の姿を嘲笑うかのようにしてこう答えた。

 

『アリウス分校。ミカ様は、遥か昔にトリニティから追放されたその学園との融和を望んでいるらしい。これが吉となるか凶となるかは、私には心底どうでもいい。ただこの件、使い方によってはティーパーティーを破滅させる凶器に変える事が出来るかもしれない。どうかな、リノ。とても良い案だと思わない?』

 

 ボクは答えた。良いかもしれない、と。

 でもこの時、ボクの心の中に生まれたのは喜びでも称賛でもなく、聖園ミカが善意で思いついたであろう願いすらも自らの復讐のための道具として利用できるか考えてしまう、親友に対する恐怖だった。

 

『美術部の部長になった私なら、部長権限を使うことでシスターフッドが管理している大聖堂の倉庫に自由に立ち入りが出来るらしい。そこでアリウス分校に関わる書類や情報を提供して欲しいと言われたよ。リノには引き続き、病室に仕掛けた盗聴器から他の分派に関する情報を徹底的に集めて欲しい。私達は栢間様に直接お会いできる許可を貰っていないから、しばらくは盗聴で近況を探るしかない。怪しい話や興味深い話があったら全て教えて。少しでも栢間様の事で向こうの弱みを握れるなら何でも手に入れないと……大丈夫。私達の行動はきっと、栢間様のためになるから』

 

 ボクは本当に、彼女を止めずにいて良いのだろうか?

 分からない。分からなかった。

 この行為が、この計画が、本当にボスの為になるのか。その理由がまだ分からない。

 少なくともこのボクが……小豆リノに今出来る事は、ボスの為と常に言いながら、次第に狂い始めている親友の計画にひたすら頷いて協力する事だった。

 

 

 

 そしてボスが意識不明の重体となった日から4か月が経過した頃。

 

 遂に、彼女が目を覚ました。

 

 

 

もしも仮にブルアカ世界に転生して生徒になれるなら、どんな武器を所持して愛用したいですか?(※作者は愛用するならリボルバーしかあり得ません.)

  • 拳銃(M1911,グロック等)
  • リボルバー(SAA、コルト・パイソン等)
  • 自動小銃(HK416、AK-47等)
  • 短機関銃(M1921、MP5等)
  • 小銃(M1ガーランド、Kar98k等)
  • 散弾銃(ベネリM4、AA-12等)
  • 機関銃(MG42、M249等)
  • 対物ライフル(AW50、ヘカートⅡ等)
  • 擲弾発射器(M79、ダネルMGL等)
  • 素手
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