夢叶って画家になれた転生主は、ともかくブルアカ本編に関わりたくない   作:木暮鬼一

38 / 54

ワイルドハント芸術学院の生徒が、遂に実装……

これは夢なのでしょうか。夢なのか?
最終的には画家とか彫刻家とか、そういうレベルの生徒が実装されるフラグが遂に来てしまったという事でしょうか……最高か?

あまり期待しすぎるというのもアレですが、作者の最推しであるヴィセント・ヴァン・ゴッホみたいなキャラが出てくれると発狂して喜びます。それをモデルにした生徒とかでも全然有りです。


あとアリウス分校の新章、おめでとうございます。
めっちゃ自分好みの新キャラがいて驚きました。あのクール系女子、どんなキャラなのか今からでも実装の9月が楽しみになりました




栢間エスミについて4

 

 

 

 触覚過敏。

 

 それが私の利き手である右手に突如として現れた症状の世間一般的な名前らしい。

 他の言い方だと『触覚防衛』または『触覚過敏』とも言うみたいだけど、触覚過敏の方がよく使用されている名称みたいなので、私も今後からはその名称を使おうと思う。

 

 さて気になるこの症状の詳細だけど、本来なら気にならない接触や刺激に対し、過剰なまでに不安や不快感、痛みを感じてしまうという日常生活にかなり支障をきたすものらしい。身体全体に現れることもあれば、私のように右手だけ部分的に症状が現れる事も時にはあるという。

 基本、この触覚過敏は先天的に生まれ持つことがケースとしては非常に多いものの、ごくまれに後天的に発症するケースも割と少なくはないようで、その主な原因は皮膚や神経の損傷、または手術による外傷からの回復後に突如症状が現れることがあるらしい。

 他にも薬の副作用や精神的ショックやトラウマなどが引き金になることもあるらしく、後天的と言ってもその発症の原因は非常に様々だったりする。

 

 奇しくも後天的に触覚過敏となってしまった私の場合、従来とは違って刺激に対する反応が特に敏感になってしまったようで、それこそ他人に手を握られるとか、または指先で触れられるだけでも過剰に身体(厳密には利き手だけ)が反応してしまうことが判明した。

 少なくともナギサとかミカ、セイアといった付き合いの長い見知った知人ならともかく、交流も浅い見知らぬ赤の他人に触れられると酷い不快感に襲われてしまうため、幸い痛みこそ無いものの不用意に触れられることに対して私は強い抵抗感を抱くようになってしまった(症状を診察してくれた医者や看護師には、その件で大変ご迷惑をかけてしまったけど……)。

 

 また他にも刺激を過剰に受け取るというこの特殊な症状のせいか、物を持った時やそれを扱う際、手に十分な力を入れにくくなるという間接的な問題も生じるようになってしまったらしい。

 実際、試しに病室で絵を描いた時は鉛筆や筆それぞれの使用感覚が今までとはだいぶ変わっていて、筆先に込める力の加減がかなり弱まっているのを実感した。自分では強く筆先を押し付けているつもりでも現実ではあまり強弱のついた描写になっていなかったのだ。

 

 とはいえ、だ。

 意外と絵を描くにあたって筆圧や大きな力はあまり必要が無かったりする。

 

 重要なのは筆先のコントロールと技術。そして観察力や表現力、加えて絵を描き続ける持続力が最も大事となる。

 むしろ力を必要とするのは彫刻や版画制作といった分野のほうであって、そっちは私の専門外の分野なのであまり足を踏み入れることは無い。つまり、触覚過敏になった所で私の大好きな絵を描くという芸術活動に対する悪影響は微々たるものだった。

 

 しかし芸術活動ではあまり問題が無くても、日常生活ではそれなりに支障をきたすのは事実。元から利き手を芸術以外で使用することを極力控えていたとはいえ、多少は利き手も使わざるを得ない状況も時には発生するし、銃の装填や整備、画材の準備に関して両手は間違いなく必須となる。

 出来れば以前に近いレベルまで握力を出せるようになりたいし、なるべく利き手に刺激を与えないような対策も必要だった。

 

 そんな時だった。私は病室の隅に置かれていた、ある備品に目を付けた。

 

 その正体は、手袋。

 

 もちろん普通の手袋かと問われれば、それは違う。この17年間の人生で私はあまり手袋を頻繁に使うことは無かったし、正直なところ私物として持ってもいなかった。ようは私の私物じゃないという事になる。

 気になるこの手袋の正体は、あの日私を襲撃しに来たアリウス分校の生徒、錠前サオリが常に身に着けていたものだった。そう、この手袋は彼女の私物なのだ。

 その手袋の詳しい特徴を伝えるなら、全体を黒色に染められた文字通り革手袋だった。

 特殊部隊としてアリウス・スクワッドを率いている錠前サオリにピッタリな、色々と加工や手入れが施されている立派なもので、意外にも目立った傷がない新品同然の姿をその手袋は保っていた。

 とはいえ疑問もある。一体全体どうしてそんな代物がこの病室に置かれていたのか。しかも本来の持ち主の手から離れ、その手袋は今こうして私の下にある。

 

 どうしてなのか?

 

 私は診察してくれた医者に『どうしてこの手袋がここに?』と質問すると、どうやら意識不明の私がゲヘナで発見された時、ナイフで刺された利き手には既に包帯で応急処置が施され、大雨で手が濡れないようにとこの革手袋が私の利き手にはめられていたらしい。

 本来なら通常の革手袋は雨や水に滅法弱いのだが、しっかりと防水加工等がされていたこの革手袋は大雨から私の利き手を無事に守り通したのだ。

 そのため、その場の状況からてっきりこの手袋も私の持ち物か何かだと判断されてしまい、一度業者の手で完璧な手入れをされた後、こうして病室にサオリの私物であるはずの手袋が置かれる事となったらしい。

 

 正直なところ、驚いた。

 

 職務や任務には忠実なサオリの事なので、私をあのまま見殺しにしたとばかり思っていたけど、どういう心境の変化なのかわざわざ利き手に応急処置を施して、雨に濡れないようにと自分の貴重な私物まで分け与えてくれたらしい。

 互いの心が近づくような運命的な出会いをした訳でもないのに(むしろ殺し合いをした方だけど)、全くもって不思議だった。

 しかしそうなると、ナギサから直にプレゼントされた例のナイフはサオリが応急処置をするために私の手から引き抜いて、どこかに〝捨てて〟しまったのかもしれない。あのナイフは私にとってかなり大切な物だったけど、サオリからすれば『少し便利な鋭いナイフ』でしか無いのでわざわざ残す理由も無い。

 

 正直なところ仕方ないと言えた。

 

 とはいえ失ったナイフの代わりに得たこの革手袋、信じがたい話ではあるけど私にとっては人生の転機でもあった。

 何故ならこの革手袋。本来は高身長のサオリの私物であるため少しばかり私の手には大きすぎたものの、触覚過敏の影響をあまり受けないほど着け心地自体は大変良く、むしろ手袋越しなら大して刺激を受けないことが判明したのだ。

 という事はつまり、この革手袋を常に着用している限り、以前のようにその場に適した力加減を出せることが可能となっただけに限らず、利き手に対する刺激もある程度は緩和できるので、私にとってこの発見は朗報だった。

 

 ただし片手だけ黒の革手袋をするというのは意外にも目立つ。かなり目立つ。

 

 医者による診察が終わり、怪我の経過観察のため更に1週間の月日が経過した後。ようやく私への面会が許可されると、初日からかなり多くの生徒が私の見舞いに駆け付けてくれるようになった。

 そして来てくれた生徒のほぼ全員が……ベッドで横たわりながらも、常に革手袋を付けている私の右手に注目した。

 それからは正に喧騒だった。

 ある生徒は『保護用の手袋ですか?』と興味深そうに尋ね、またある生徒は『皮膚に何か後遺症が!?』と訝しげに尋ねる。確かに4か月も意識不明だったせいで筋力がだいぶ衰え、満足に身体も動かせない今の私を見れば、何故片手だけ手袋をしているのか謎だったことに違いない。特に病人の私はしばらく外出も出来ないので見た目を気にする必要がなく尚更だった。

 なので、私は説明した。

 利き手だけ触覚過敏になってしまったこと。その結果、過剰なまでに手が刺激を受け取り、日常生活に支障をきたすようになったこと。そしてこの革手袋を付けていれば、何とか症状を緩和できるということ、その全てを。

 

 そう、私は説明した。説明したのだ。1人1人、全員に。

 

 私の見舞いに来てくれた生徒はざっと数えただけでも数十人強。これでも私が入院させて貰っている病院側の自己判断で、私との交流が深い生徒にだけ特別に面会を許可してくれたようだけど、それでも数はかなり多かった。たぶん1クラスか、2クラス分の生徒を相手にしたと思う。

 それこそ同い年の同級生から下級生まで様々。

 だけど面会をしに来た大部分がブルアカ本編の中枢になる生徒達……いわばナギサやミカ、セイアと言った後の3年生となる現2年生組だった。しかも現1年生組に関してはまだ入学して日が浅く、私と関わった時期なんて非常に短かったにも関わらず、ハナコやイチカといった少女達がわざわざ駆け付けてくれた程だ。

 

 私、思っていたよりも多くのブルアカキャラと親しい交流をしていたんだ? と、己の立場を強く実感したのは正にその瞬間だったと思う。

 

 彼女達の大半は私の現状に涙を流すか、または憤りを見せるばかりで終始落ち着きがなかったけど、それでもこうして心配され、直に面会に来るほど彼女達全員に慕われていたという事実は私に何かしらの影響を与えた。

 

 もっとも、それは『ブルアカの表舞台から立ち去るのがこれで余計に難しくなった』と悲観する方だったが。

 

 

 

≪1-2≫

 

 

 

 さて私が意識を回復して早々、触覚過敏という症状を持つことが発覚して早くも3週間が過ぎた。

 

 意識不明の期間がおよそ4か月。そして私の意識が回復して更に3週間。

 気付けばもう半年近くもの間、私はベッドに横たわる生活を続けていた。おかげで元々無いようなものだった筋力は酷く衰え、魅力的な17歳の若々しい体力も著しく低下。これでは真っ当な生活なんて送れるはずが無い。ここから以前の体力を取り戻すリハビリ生活が始まるとすれば、私は今年1年の約半分以上を病院で過ごすことになる。

 となれば長期の入院によって規定の出席数が全く確保出来ないという事でもあり、学園側の厳しい判断によって『栢間エスミの留年』が正式に決まったのは、いわば当然のことだった。

 私も医者から4か月も意識不明だったと知らされた時は、これで私の留年はほぼ決まってしまったと半ば諦めていたので正直そんなに悲観はしていない。ただしこの留年決定により、私はブルアカ原作の舞台に強制的に参加することが事実上確定となり、その方面でのショックがかなり大きかった。思わず体調不良を訴えて1日中寝込んでしまったのも、今となっては仕方ないと言えるはずだ(その日、見舞いに来てくれた生徒には酷く心配をかけてしまったけど)。

 

 そして、そこから更に何やかんやあった末に医者の判断でようやく私のリハビリ生活が始まった頃、それに合わせる形でティーパーティー主導の〝事情聴取〟が始まった。

 

 思えば私が意識不明の重傷を負ってしまった場所は、長きに渡ってトリニティと対立してきたゲヘナの地。

 当然、これは学園間にとって非常に大きな問題となり、私が意識不明の間もずっと議論されていたらしい。

 

 特に重要となったのが……一体誰が栢間エスミを襲ったのか、だった。

 

 キヴォトス各地で暗躍している犯罪組織なのか。

 それともゲヘナの住民による無差別、または計画的な犯行だったのか。

 または誰にも想像できない全く無関係な第三者が行った事なのか。

 その内容によっては今後、トリニティとゲヘナの関係が大きく変わる可能性がある。正にかなり重要な意味を持つものだった。双方が慎重になり、かつ危険物を扱う形で恐れるのもいわば当たり前。

 ただし生憎と肝心の目撃者はおらず、加えて私を襲うことで得られるメリットが全く分からないとして、この件は常に平行線を走り続けていたらしい。ティーパーティーの方でも、私に非があるのかどうかで完全に内部分裂を起こしているらしく、一向に決着がつかない状況だった。

 

 そこへ遂に私、栢間エスミが意識を回復してこの世に帰ってきたという朗報が飛び込んできた。

 

 きっとティーパーティーからすれば、ずっと停滞していたこの一件を瞬く間に解決出来ると心底喜んだ事だろう。どんな形であれ、襲われた張本人である私の口から出てくる言葉が全ての真実であり、それが何よりの証拠と言えるのだから。

 しかし私は希望に満ちた目を向けてくる彼女達に対し、悲痛な様子でこう答えたのだ。

 

『覚えていない』

 

 その瞬間、彼女達の顔は瞬く間に青ざめ、誰もが頭を抱える事となってしまった。

 希望から一転。どん底に突き落とされた気分だったのかもしれない。

 私は続けて彼女達にこう説明した。

 

 あの日、私は気分転換を兼ねてソドムという廃虚に足を運んだ。しかしそこで誰かに襲撃はされたものの、犯人の正体は分からず、気付けば瓦礫に埋もれていた。ほとんど記憶が抜け落ちてしまって明確には思い出せない。だから残念だけど、君達の力にはなれない。

 

 その場に居合わせた医者の見立てでは、触覚過敏という特殊な症状も出てしまっている事から、私は記憶喪失になってしまっているのだろうと言われた。

 もちろん本当に記憶喪失になっている訳じゃない。私は今でもあの日の出来事は全て覚えている。しかし残念ながら〝今の時期〟に彼女達……サオリを含めたアリウス分校の存在をトリニティやゲヘナに知らせるのは良くないと判断した。それだけだった

 そもそも、この時期は原作が開始するもっと前。いわば前日譚と言うべき段階なのだ。

 例のトリニティが舞台の物語終盤でついに表舞台に姿を見せた黒幕のアリウス・スクワッドとアリウス分校。それと対峙するトリニティとゲヘナの共闘が原作の数ある名場面の1つなのだから、この段階でアリウス分校の存在を彼女達に気付かれる訳にはいかない。

 

 だからこそ私は深く悩んだ末に〝記憶喪失〟などという慣れない演技をする事にしたのだ。正直、あの襲撃の場に目撃者がいなかったことに少なからず感謝すらしている。

 

 その後、諦めきれず何とか真実を捻りだそうとする周囲に対し、私は医者の力も借りて記憶喪失(嘘)になった事を無理やりにでも信じてもらうと、もはやこれ以上の追及は全く意味が無いとして私に対する事情聴取は早々に終わりを告げる事となった。

 これによって期待していた答えが得られずに無駄骨で終わってしまったティーパーティーは、何とか例の件を片づけたいと苦慮した結果、最終的に『ゲヘナ学園と栢間エスミ、双方に非があるものとして責任を取ってもらう』と決断。

 ようは〝雷帝〟が失脚して以降、次第に治安が悪化しているゲヘナに対し、再び同じ悲劇が起きないよう治安改善を徹底するように進言。場合によっては連邦生徒会による介入も辞さないと忠告し、私の入院費用はゲヘナ側が全て負担してくれる事となったのだ。

 とはいえ余計な面倒ごとを抱えてしまったゲヘナとしては、自治区の治安維持の強化と私の入院費を負担するだけで本件が問題なく片付くのなら、むしろ僥倖とばかりに早々に対応してきたので、その動きが余計に腹立たしいと一部のトリニティ生徒達から強い反感を買うこととなってしまったのだが……まあ仕方ないと思うしかない。

 それに原作のゲヘナの状況を思い出してみれば、治安維持の強化もあまり期待してはいけない。

 

 さてゲヘナ側の話はここで一旦終了するとして、何よりも一番大きな話題となったのは、被害者である私が取るべき〝責任〟の方だった。

 

 当たり前のことながら、私はこの件において一番重要な立ち位置にいた。

 突如として単身でゲヘナに向かい、学園には無断で授業を欠席。その後、何者かに襲われてしまった挙句、ゲヘナの地で意識不明の重傷を負った状態で発見される。

 おかげで意識を回復するまでの約4か月間。ゲヘナとトリニティ双方は本件の対応に酷く苦労する事となってしまった。言ってしまえば私は、双方を面倒ごとに巻き込み、かつかき乱した全ての元凶だったのだ。

 しかし生憎と事件の詳細を知るはずの私は襲撃のショックで記憶喪失(厳密には嘘だが)となってしまい、当事者でありながら真実を語ることが出来ないときてしまった。加えて触覚過敏という症状まで現れてしまったことで、学園側としては『既に十分すぎるほどの罰を受けている』として私の対応にかなり頭を悩ませてしまったのだった。

 

 とはいえゲヘナに責任を取って貰った以上、元凶である私にも罰は必要不可欠。

 

 その結果、既に私の留年が確定していることから学園側は『美術部からの強制退部』という形で私に責任を取ってもらうことを決断。簡単に言ってしまえば芸術家である私に対し、今後は美術部に関わることを永遠に禁止するという対応を取ったのだ。

 もちろん美術に対する愛が深い私にとって、この罰は酷く悲しいものではあった。だけど全ての元凶とも言える存在の私がそれに強く反対することは出来なかったし、何より芸術活動の停止を言われていないだけ有難いと思っていた。

 それに、既に美術部の方は後任の金剛フランが上手いこと運営していて、世代交代はちゃんと機能していたので心配は無用だった。本当は反政治思想が強いフランが良いリーダーになれるよう、引継ぎの日まで私が傍で指導するつもりでいた訳だけど、どうやら今のフランは自身の強い反政治思想を抑え、なるべくティーパーティーを相手に積極的に関わっているらしく、聞く話によれば近頃はパテル分派首長になったミカとの交流がかなり増えているらしい(ミカのお嬢様らしくない態度がかえって反政治思想のフランには良かったのかもしれない)。

 前回に引き続き副部長に就任した本目キオから聞いた話によれば、最近のフランは何処か『使命感に燃えている』と言わんばかりに部の運営に全身全霊を注いでいるみたいなので、もう私が彼女達の身を心配することは無いと痛感した。

 

 まあ例え万が一にでもフランが暴走した際は、副部長であるキオに全力で彼女を止めるようお願いはしたし、幸いにも同じ副部長の座には小豆リノがいる。1年の頃から私専属の情報収集をする人材として協力してもらっていた彼女は、同じく情報収集を目的に活動していたフランとかなり仲が良い。それこそ2人の関係は唯一無二の親友関係を築いていた。

 だからこそ、フランが暴走しないよう彼女の助けになるよう常にサポートをしてあげて欲しいとリノには直接言ってあるので、フランが率いる美術部をあまり〝不安視〟することは無いと思いたい。

 そうでなくてもリノからは定期的に情報を受け取っているし、もしもの時はフランに関する動向も合わせて教えて貰えるはず。

 

 これでも最悪のケースを私なりに想定はしているけど、現実になって欲しくないのが一番の本音だし、強制退部という事もあって今後は美術部に関われない以上、〝情報屋〟としての裏の活動にも今まで以上に力を注ぐしかない。

 

 

 

 とまあ……無事に意識が回復して以降、私の身の周りに起きたことについて色々と説明をしてみたつもりだけど、それでもやっぱり全ての情報を拾った訳じゃないし、依然として混乱は続いているのが現状だね。

 

 ひとまず私は無事にかつてのような学園生活を送れるよう体力を取り戻すリハビリに専念するしか無い訳で、ティーパーティーからは『今でも尚、エスミさんの身が狙われる危険性があります』ということで、今でも病院には正義実現委員会から派遣された生徒が警護をしてくれている状況だ。

 ちなみにどういう訳か……いやこれに関しては本当に謎ではあるけど、正実の副委員長に就任したハスミの提案によって、リハビリの期間中は私の世話をするようにとイチカが専属のサポーターとして派遣されているのだった。まあ少なからずイチカ本人の立候補もあったようだけど、介護をしてくれるならせめてブルアカキャラじゃなく、モブの正実生徒にして欲しかったと思ったのはここだけの内緒だ。

 

 何というかやはり……女性ファンから大人気の原作キャラ(前世の私の単なる偏見だが)に私の素っ裸な身体を丁寧に拭かれるとか、いつ倒れても大丈夫なようにと抱き着かれながら、耳元で応援されながらリハビリを送るというのは、身も心も文字通り〝女〟となっている今の私にとってあまり心臓に良くない。しかもこのイチカ、私が意識不明になる前に会った時は目元が隠れているモブの正実と同じ髪型でいたはずなのに、どういう心境の変化なのか再会した時には原作と同じ髪型にしただけに留まらず、細目ではなく常に目を開けて私を見つめるのだ。そう、お目めぱっちり。開眼モード常時発動中だ。

 

 君、普段はブルアカ原作でも数少ない貴重な細目のキャラのはずだったよね?

 

 こればかりは凄く疑問に思っていたけど、流石に原作のキャラ設定を本人に直接尋ねる訳にはいかないし、何だかんだ言って私は彼女の〝瞳〟は好きなので別に嫌という訳じゃない。少なくとも他人相手では原作と同じで常に細目になっているようだし、私に対してだけ態度が違うのだと無理やりにでも納得することにした。というか、そう思わざるを得ない。

 

 

 

 ああそれと最後に1つだけ、実は入院中の私にどうしても会いたいと、トリニティ同様につい最近世代交代をしたばかりの連邦生徒会が直接病院に訪問しに来たこともあった。

 

 来てくれたのは原作でも度々登場している連邦生徒会の首席行政官、七神リン。

 そして原作のブルアカでは突如として失踪し、主席行政官のリンが代行として動かざるを得なくなった原因を作ってしまう張本人、連邦生徒会長様。

 以上の2名が私に会いにきてくれた。もちろん連邦生徒会の上層部が直々に会いに来た理由を私はちゃんと分かっていた。

 トリニティの生徒である私がゲヘナの地で意識不明の重傷を負ってしまった事から、十中八九その件について来たのだろう。何しろ下手すれば学園間の紛争を引き起こす恐れのある重大な事件だ。あまりにも事が事だけにキヴォトス全土を含めた世間にはひた隠しにしている本件だが、流石に連邦生徒会には真実を公表していたのだろう。

 

 彼女達は、以前私がティーパーティーから事情聴取された時と全く同じ質問をした。

 

 なので、私も以前と同じように返した。一部が記憶喪失になっているので詳しくは覚えていない、と。

 同席しているリンは納得した様子で頷いた。しかし、連邦生徒会長様だけは何やら意味深な視線を私に向け続け、その場で一言二言だけ言葉を漏らすだけで納得はしてくれなかった。その姿はまるで犯人を追い詰める刑事のように凛々しく、かつ不動で堂々としていた。芸術で例えるなら、常に対象を鑑賞し続け、その特徴を余すことなく見つけ出そうとするようなもの。

 やはり原作では『超人』などと言われている辺り、私の記憶喪失が嘘であることも見抜かれたのではと不安に思ったものの、ひとまず向こうも一度トリニティ側で片付いた件を再び掘り起こすのは得策では無いと判断してか、それ以上追及することは無かった。正直なところ、助かったと感じたのは事実だった。

 

 だがしかし、彼女は少しだけ笑みを浮かべながらこう言ってきたのだ。

 

『エスミさんの身に起きた悲劇に関して、私は深く悲しみを抱いています。過去に一度だけ、その優秀で人望に厚い人柄を買われて連邦生徒会の末席に連なるようお誘いを受けたにも関わらず、愛する芸術に専念したいからとその誘いをにべもなく断った貴女が、今はこうしてご自身のお好きな芸術活動にすら危うく終止符を打たれるほどの重傷を負ってしまった……非常に悲しい話です』

 

 あまりにも不気味だった。

 元より原作ですら詳しい人物像が明かされていないだけに、多少の前世の記憶や経験を引き継いでいる私ですら、まともに相手したくないほどのオーラを彼女は放っていた。掴みどころが無いとか、そういうレベルの話じゃない。

 そもそも彼女は私と同じ人なのか。同じキヴォトス人なのか。そういう疑いすら持ってしまうような、全てが謎に満ちている人物なのだ。

 

 私は相も変わらず笑みを浮かべている彼女に対し、多少は緊張した声色でこう尋ねた。

 

『何が言いたいのでしょうか。生憎と私の身に起きた件について同情をされるのなら好きにしてください。その手の言葉はもう嫌と言うほど受け取っているので。連邦生徒会長ほどの方が、わざわざその言葉を直接言うためにトリニティに来たのであれば、私としては随分とお暇な方ですねと、こう返すしかありません』

 

 いわば間接的に用件を言え、と私は彼女に返したのだ。

 もちろん連邦生徒会長を相手にして返す言葉としては、かなり嫌味が入っていることは事実だった。

 リンも少しだけ眉をひそめている様子ではあったけど、こちらとしては向こうの目的が分からないだけに警戒心が強かった。ああいや……正確には〝連邦生徒会長様の考えていること〟が全く分からない、だが。

 

 すると連邦生徒会長はその場で一旦深く頭を下げると、次に顔を上げた途端、真っすぐ私を見つめながらこう言葉を投げてきた。

 

『失礼いたしました。突然押しかけて来た私達に対し、エスミさんが酷く警戒するのも無理はありません。実を言うと、私が考案した〝ある条約〟について是非ともエスミさんのご意見をお聞きしたく、こうして直に訪問させていただきました。可能であれば今すぐにでもご意見をお聞きしたいのですが、如何ですか?』

 

 私は首を傾げる。

 条約とは一体、何なのか?

 その瞬間、まるで私の心を読むようにして彼女は、私にとって非常に聞き慣れた言葉を口にするのだった。

 

『トリニティ総合学園とゲヘナ学園。双方の不可侵を目的とした条約です。元々は当時健在だった〝雷帝〟に対する奇策として発案したものですが、エスミさんのような犠牲者が生まれてしまった以上、もはや双方の為にもこの条約を実現させるしかないと決断を下しました。ああ、そういえば肝心の名前を言っていませんでした。この条約の名はエデン……正式名称は〝エデン条約〟です』

 

 彼女は最後に『きっと気に入って頂けると思います』と零すと、握手のためか、その綺麗な片手をすっと私の方へと伸ばした。

 

『確かエスミさんは裏で情報屋としても活動されていて、巷では〝ウリエル〟と名乗られているとか? 素敵な呼び名だと思います。そういえば、伝承によると大天使ウリエルは楽園である〝エデンの園〟を守る番人でもあったとも聞き及んでいます……如何でしょうか、エスミさん……私と共に、この混乱に満ちたキヴォトスに1つの楽園を築き、その最初の番人になってみる気はありませんか?』

 

 綺麗な瞳だった。邪な気持ちなんて一切ない。純粋で、善に満ち、より良い方向へと物事を進めようとする正義に満ちた政治家のような瞳。

 正直言って……私の苦手な瞳だった。

 

 





栢間エスミの秘密・20

過去に連邦生徒会からの勧誘をにべもなく断った事がある彼女だが、別に向こうを嫌っている訳ではなく、丁度トリニティの美術部復活をかけた非常に大事な時期だったため、多忙の日々に追われて余裕もなく不愛想に断ったのが真実。
ようするに、連邦生徒会は勧誘するタイミングが非常に悪かった。

もちろん、そうで無くてもエスミが連邦生徒会の仲間入りをすることは決して無い。

もしも仮にブルアカ世界に転生して生徒になれるなら、どんな武器を所持して愛用したいですか?(※作者は愛用するならリボルバーしかあり得ません.)

  • 拳銃(M1911,グロック等)
  • リボルバー(SAA、コルト・パイソン等)
  • 自動小銃(HK416、AK-47等)
  • 短機関銃(M1921、MP5等)
  • 小銃(M1ガーランド、Kar98k等)
  • 散弾銃(ベネリM4、AA-12等)
  • 機関銃(MG42、M249等)
  • 対物ライフル(AW50、ヘカートⅡ等)
  • 擲弾発射器(M79、ダネルMGL等)
  • 素手
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。