夢叶って画家になれた転生主は、ともかくブルアカ本編に関わりたくない   作:木暮鬼一

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今週の投稿はこれにて最後です。

次回の更新日は11月5日(火)午前0時の予定です。

作品の投稿は平日の間のみと限定していますので、休日・祝の日に更新することはありません。
(仕事が休みの日に編集とか予約設定とか色々行ってるので……あと趣味を優先してます)




『高等部1年』第1連作
栢間エスミ 『引っ越しをしたい』


 

 

 トリニティ総合学園。

 

 このキヴォトスにおいて三大学園の1つとして数えられ、古くから続く長い伝統と多くの生徒を擁するマンモス学園の名です。

 またこのトリニティ総合学園に通う生徒の大半は富裕層、つまりお嬢様な生徒が多く、礼儀正しく品性ある行いを心掛ける者がいれば家柄や派閥を駆使した陰湿な嫌がらせや妨害行為も辞さない者もいるなど表と裏にレベルを極振りしたような二面性をもつ学園でもあります。

 

 そんな言動と権力を武器として争う政治の舞台をまるごと学園へと置き換えたような場所に、今日新たな生徒が新入生として足を踏み入れるのでした。

 

「……来てしまった……というより、入学してしまった……」

 

 彼女の名は栢間エスミ。高等部1年生にして年齢は15歳。

 趣味は絵を描くこと見ること学ぶこと。未成年なので現時点ではまだトリニティ総合学園の生徒という肩書を持ちますが、副業として画家もやっている生粋の〝プロの芸術家〟です。

 背丈は150を先月ようやく超えたあたり。

 薄い青色の髪をショート・ウェーブへアにし、翡翠色の瞳を持つその垂れ目がとても特徴的です。トリニティの制服を身に着けていますが、その上にダークグリーンのブレザーを羽織っており、少しだけ周囲のトリニティ生徒に比べて浮いていました。

 

 もっとも浮いている理由は服装だけに限った話ではなく、まだ低身長でありながら栢間エスミはとにかく美少女でした。見る人全ての視線を一度は必ず奪うほどの容姿をしているためか、既に同級生となる新入生たちの何人かは美への憧れか、それとも彼女に見惚れたかほんのりと頬を赤く染めています。

 

 ただしその姿はエスミの視界にもちらほらと映りはしましたが、彼女は喜ぶことも他の反応も返すことも無く、この場から現実逃避をするかのようにして空を見上げます。

 

「ああ…………やっぱり、ワイルドハント芸術学院に行くべきだったかもね…………私」

 

 周囲からの好意的な注目を浴びて一体何が不満なのか?

 少女はまるで『進学する学園を間違えた』と言わんばかりの後悔をその言葉に滲ませ、ぼそりと空に向かって呟きました。呟いたところでお天道様は何も出来ませんが。

 

「はあ……巻き込まれたくない……絶対に、ブルアカ本編には関わりたくない……」

 

 さて、改めて紹介しますが彼女の名は栢間エスミ。

 トリニティ総合学園の新1年生にして、中等部の頃にトリニティ自治区で開催される全ての芸術コンクールで頂点を取るという輝かしい偉業を達成して画家デビューを果たした、名実ともに美術界から注目を浴びている真っ只中の秀才の芸術家です。

 

 その正体は、前世で夢半ばにして人生がゲームオーバーし気付けばこのブルーアーカイブの世界で2度目の人生をスタートさせたものの、ゲーム本編に関わりたくないと日々懸命に逃げては画家として生きようとする度を越えた美術オタクな元社会人。

 つまり、転生主という事です。

 

 そんな彼女は今日、あれだけ避けようとしていたブルーアーカイブの本編軸に向けて、とうとう第一歩を踏み出してしまったのでした。

 

「もう決めてしまった事だし……自分で決断した事だけど……憂鬱だなぁ……」

 

 別にまだ人生の終了が決まった訳でもないのに、顔にこそ出さないもののエスミは絶望の声を上げます。その様子はまるで身体が病を抱えている可能性に怯えながら検診を受けようとする患者のようです……別にここは病院ではありませんが。

 

 それもこれも、数か月も前に下した彼女自身の決断が全ての原因にはなるのですが。

 

 まあ今はこの現実を重く受け止めましょう。

 今更引き返すことなど、もう出来ないのですから……。

 

 

 

《1-2》

 

 

 

 時は少しだけ遡り半年ほど前。

 

 転生主こと栢間エスミがとある偶然からブルアカキャラの1人、桐藤ナギサと出会い成り行きから知人関係を築いてしまって早くも1年が経っていた頃の話です。

 

 あの日、芸術コンクールの展示会での出会いをきっかけに始まった2人の交流(エスミは不本意)は、ナギサによる半ば強引な美術館への誘いやお茶会、または手に入りづらい美術資料を2人で読み漁るなどで日々を過ごしてきました。

 一応言っておきますが、世間の中等部の子達はこのような内容で親交を深めることは滅多にありません。むしろあり得ないです。

 

 もちろん本当は同年代として友人関係を築き、もっと違う事がしたかったナギサでしたが『あくまでも知人。ビジネス上の付き合い』と言い張るエスミに関わるには、残念なことに親交を深めるための手段はかなり限られていました。

 幸運なのはそのエスミが度を越えた美術オタクであるため、何かと〝美術〟や〝芸術〟を餌に近寄れば、文句も言わずに必ず付き合ってくれるという事でしょう。

 

 それこそ『仲良くなる気はない』とか『遊びに誘わないで』と出会う度に口酸っぱく言うくせに、ナギサがお嬢様としての力を駆使して美術の誘いをすれば即座に『行く』と返事が返ってくるのです。

 何だか他の人が同じことをしてもホイホイと付いて行きそうだな、とナギサは心の中で複雑な心境を抱きましたが、今更どうする事も出来ません。チョロ過ぎる彼女が全て悪いのです。

 

 とはいえ、ナギサが積極的に『エスミさんに関わりたい‼』と願って行動してきたこれらの交流は意外な形でエスミにも恩恵をもたらす事となったのでした。

 

 というのもホイホイと甘い誘惑につられて美術という餌に食いついていたエスミは、貴重とも言える美術資料や技法等々を次々と目にしていく事で、瞬く間にそれらを学習し自身の糧としたのです。

 元々幼少期から絵を描いては技術を磨いたりしてきたものの、キヴォトスの美術作品には触れる機会が少なく〝知識〟がまだまだ足りていなかった彼女。前世における美術文化との〝ズレ〟を引きずったまま彼女は今日まで修行を続けていました。

 そこで、このブルアカ世界における美術知識や技術を身に着けてこそ、より美術もとい芸術を追求出来ると考えた彼女は、真剣に、いや半ば熱中して知識を吸収していきました。

 

 結果、彼女は新たに手にした知識を活用して今までとは違う作品を多数作り上げ、それによって数多くの芸術コンクールで名誉ある賞を手に入れるほどに急成長したのでした。

 具体的にはトリニティ自治区で年に数回開かれる主催者別の芸術コンクール全てで頂点である最優秀賞を取るほどの成長ぶりです。初めての応募の結果が入選だったことを考えると、あまりにも目覚ましい進化と言えるでしょう。

 

 また後で聞いた話では、主催者別で開かれる芸術コンクール全てで賞そのものを手にする画家はいても、頂点である最優秀賞を全てのコンクールで手にした者はエスミが初めてだったようです。さらっと偉業を達成したことになります。

 

 おかげで初応募における画家見習いから、正式にプロの画家としてスタートを切ることが出来たエスミは毎日が大忙しでした。

 

 何しろナギサを相手にして『私はパトロンを持つ気はない』と発言した以上、エスミは今後フリーの画家として活動することになります。当然、作品を作り上げるための準備や費用、個展を開くための手配や絵の買い取り取引をしてくれる商人との契約なども全て1人です。

 また現時点で出来ることは少なくとも、先を見据えて下準備を整えておかなくてはいけません。

 他にもさらっと成し遂げた偉業が却って大注目を浴びる事となり、ナギサ以外の富格層からもパトロンの誘いが多く舞い込むようになりました。おかげでエスミはそれらを適当にあしらっては無下にすることなく、対等なビジネス関係を構築するのに奔走する事となります。まるでビジネスマンです。

 

 一応前世の教訓と知識をフルに活用したおかげで、特にこれといった問題が起きることはありませんでしたが月日にして大体数か月以上を下準備と手続きに費やす事となり、高等部に進級するおよそ半年前になってようやくエスミは安定した画家活動を送れるようになりました。

 

 そしてここからが本番。

 

 エスミは生まれこそトリニティ自治区ですが、このまま進級すれば間違いなくトリニティ総合学園の高等部となることでしょう。

 

 ですが、今までブルアカのゲーム本編に絡むことを避けてきたエスミが『はいそうですか』と頷いて高等部に進級するはずがありません。何せトリニティの生徒になるという事はつまり、前世では既に十数人と実装されていたトリニティ生徒のブルアカキャラに出会うという事なのです。

 とはいえエスミが必死に隠れて過ごせば彼女たちに出会う確率は可能な限り減らせる事でしょう。しかし、ようやく夢叶って画家として歩む第2の人生です。

 

 出来れば堂々と生きたい。

 

 そこでエスミはふと気付きました。

 

「よし。ワイルドハント芸術学院に転校しよう」

 

 確かに生まれこそトリニティ自治区ですが、何もこの自治区から出ていくことが禁止されている訳ではありません。家族の都合、退学や中退、環境の変化などで自治区から他へ引っ越すというケースはそう珍しい事ではないのですから。

 

 それにワイルドハント芸術学院は名の通り芸術に秀でた学園です。

 ちなみにこの学園、ブルアカのゲーム本編はおろかイベントでも関わる事は減多になく、これといったネームド持ちのブルアカキャラも全くいません。つまり芸術活動も出来て、ブルアカ本編に巻き込まれたくないエスミにとって好条件すぎる学園なのです(現状、この世界で成長するにつれて前世の記億が薄れつつある為、エスミが覚えていないだけの可能性もありますが)。

 

 さて思い立ったが吉日、とはよく言ったもので画家としての活動をしている傍ら、彼女は手早くスムーズに事が進むよう情報収集に奔走しました。

 引っ越しに掛かる費用。手続きの申請に関する問題点や必要条件。何より、実家から離れる事となるため1人暮らしをするための物件探し。気持ちとしては前世における新卒気分ですが、この世界では初体験となる為ともかく不備がないよう慎重に行動します。

 

 またプロの画家として活動を開始し、以前よりも上流階級や他の業界と交流する機会が遥かに増えた事も相まってか、とことん彼らに相談しては可能な限り情報をかき集めていきました。 

 全ては自身の安寧を求め、ただひたすらに……。

 

 しかし、エスミが無我夢中で情報収集で動き回っていた中、突如として事態は急変します。

 

「エスミさん。共にトリニティ総合学園に行きましょう」

 

 ある日、集めた情報を整理してどんな方法でワイルドハント芸術学院に転校しようかと考えていたエスミの下に、来訪の知らせもなく唐突にナギサが押し寄せてきました。

 そして呆気に取られるエスミを前にして、満面の笑みを浮かべた少女は先程のセリフを口にしたのです。

 

(うん、目が怖いね。ナギサ)

 

 まるで夜逃げ準備中に押しかけて来たみたいな構図(ほぼその通りだが)の中、冷静にもエスミは『顔は笑ってはいるが目だけは笑っていない』を体現するナギサを眺め、少しだけ現実逃避をするのでした。

 





栢間エスミの秘密・3


・実はナギサに誘われて行った美術館のチケットは今も大事に保管し、思い出として時々見返してる。
ちなみにナギサには無くしたと言い張ってる。

もしも仮にブルアカ世界に転生して生徒になれるなら、どんな武器を所持して愛用したいですか?(※作者は愛用するならリボルバーしかあり得ません.)

  • 拳銃(M1911,グロック等)
  • リボルバー(SAA、コルト・パイソン等)
  • 自動小銃(HK416、AK-47等)
  • 短機関銃(M1921、MP5等)
  • 小銃(M1ガーランド、Kar98k等)
  • 散弾銃(ベネリM4、AA-12等)
  • 機関銃(MG42、M249等)
  • 対物ライフル(AW50、ヘカートⅡ等)
  • 擲弾発射器(M79、ダネルMGL等)
  • 素手
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