夢叶って画家になれた転生主は、ともかくブルアカ本編に関わりたくない 作:木暮鬼一
ワイルドハント芸術学院の生徒が再び実装。
しかも家具付きモーションでは彫刻を削り出す生徒有り。
しかもしかも、ワイルドハント芸術学院の家具まで実装。
はい、幸福過多により作者の死亡確定です。
引かせて頂きます。家具、揃えさせて頂きます。やります、やらせてください。
「例の条約の件ですが、発起人である連邦生徒会長が失踪してしまった今……残念ですが、一旦白紙にせざるを得ません……」
心底納得がいかない様子でそう口にしたナギサは、かなり落胆した様子で大きな溜息を吐きました。
その様子を眺め、セイアは肩をすくめます。
「仕方がないさ。条約を提言した本人が不在の中、そう勝手に物事を進めるべきじゃない。聞く話によれば、ゲヘナの方も例の条約は中断する方向で話が進んでいるらしい……まあそんな事より、私達が今考えるべきなのは今後の行く末についてだとは思わないかい? 何しろこのキヴォトスの事実上のトップでもある連邦生徒会長が急に姿を消したんだ。おかげで犯罪率は至る所で大増加。裏社会では武器や兵器の売買が活発になって、このトリニティ自治区にもその一部が流れてきているらしい」
ようやく久しぶりにティーパーティーの会合に姿を現したセイア。彼女は淹れ立ての紅茶を一口飲むと、自身の万全な身体に感謝をしつつ、丁度傍にやってきたシマエナガを手で愛で始めます。
「連邦生徒会長が失踪して今日でもう数週間だ。先日、ナギサの情報を頼りにサンクトゥムタワーに赴いたハスミが学園に帰ってきたばかりだが、彼女の報告が事実なら連邦生徒会はトップ不在という事もあってか、現在機能不全に陥っているらしい。正直、今の連邦生徒会に助けを求めるのはあまりにも愚行だ……となると、このトリニティの命運は今まさにこの場にいる私達3人の肩に懸かっているという訳になる」
シマエナガを存分に愛でた彼女は、意味ありげな視線をナギサに向け、そして今度はその隣にいる少女にも向けました。
セイアからの視線を受け取った少女、ミカは両手で頬杖を突きながら楽しそうに笑みを零します。
「でも、私達なら別に何とかなると思わない? だって私達はトリニティの生徒会長なんだよ。他の学園や自治区なんて気にするだけ無駄だろうし、これからはトリニティの事だけ考えていれば良いと思うけどなぁ」
「ミカさん。トリニティの事だけを考えたとしても、自ずと外的要因というものが発生します。トリニティの内部でのみ起きる問題なら私達だけでも十分に対処は可能でしょう。ですが他学園が絡む問題となればそうはいきません。只でさえトリニティ総合学園はこのキヴォトスにおいてかなり歴史が古い学園。それ故、トリニティはかねてより他の学園との交流を盛んに行ってきました。連邦生徒会に頼れないからと言って、今日までに積み上げてきた信頼と実績を今この場で捨てるのは、正直なところ懸命な判断とは言えません」
「私もナギサの意見に同感だ。ミカは政治のあれこれに微塵も興味が無いのは私もよく分かってはいるけど、外部との付き合いを絶ってしまえばいずれトリニティは孤立してしまう……それは良くない。仮にも外部との交流を絶って私達の代が何とも無かったとして、だ。それが長引けば必ずや災厄が未来のトリニティに降りかかる。君は別にそれでも構わないのかい?」
彼女の言葉を受け、ミカはつまらないと言った様子で頬を膨らませました。そして不機嫌そうにぶーぶーと文句を口にすると、丁度目の前にあった茶会用の菓子に手を伸ばし静かにそれを食べ始めました。
ナギサはそんな幼馴染の姿に溜息を吐くと、視線をセイアに向けて口を開きます。
「しかし、むしろこのような情勢だからこそ……是非とも例の条約は実現して欲しかったのですが……本当、残念です。あの条約さえ実現すれば、少しは未来が明るくなったかもしれないと言うのに……」
「……ナギサ。君はあの条約が……本当にトリニティのためになると、本気で思っているのかい?」
直後。ほんの微かですが間違いなくこの場の空気が一瞬にして変わり、同時にナギサの目が見開きます。
「……どういう、意味ですか?」
「そのままの意味さ。トリニティとゲヘナの平和条約。昔から因縁の間柄だった学園が、初めて手と手を取り合う前例のない条約だ。あの連邦生徒会長の個人的な趣味なのかもしれないが、ご丁寧にも【エデン】の名が付けられたこの条約……実を言うと、私はあまりこの案に乗り気では無かったんだ。白紙になった事について、少しだけ安堵すらしている」
「それは……何故ですか? 確かに夢見がちな話だったかもしれません。ですが、この条約が実現さえすれば今まで意味もなく長年争っていた双方にとって、初めて真の平和が訪れるのですよ? それこそ、エスミさんに身に起きたあの悲しい〝事件〟が再び起きる心配も無くなるはず――」
「それだよ、ナギサ」
その瞬間、何やら不服な様子でセイアが彼女の言葉を途中で遮りました。
「君は、あの条約に一体何を求めているんだい?」
「……え?」
唖然とした様子でナギサがそう言葉を漏らします。
対してナギサの幼馴染であるミカは面白くなさそうに2人の会話を茫然と眺めていましたが、彼女も彼女で何やら先ほどのナギサの言動に思うところがあったのか、視線だけは彼女に向けていました。菓子を食べていた手も完全に止まっています。
一方で、満足気に自身の下から飛び立った可愛いシマエナガを一瞥し、セイアは細めた目で真っすぐナギサを見つめます。
「仮に、例の条約が無事に締結されたとしよう。その時、君は何に対して喜びを感じているのかな? トリニティとゲヘナがようやく仲直りする事に対する喜び? それとも、栢間エスミが危険な目に遭うことなく平和に過ごせる事に対する安心感か?」
「……それは……」
「ああいや、勘違いしないで欲しい。私だって彼女の身に起きた悲劇については今でも悲しみを抱いているさ。もちろん当時は凄く腹も立った。あの条約が彼女の為になることも十分承知している。だが、連邦生徒会長が考案したあの条約は〝彼女〟のために用意されたものじゃない。むしろ単なる〝きっかけ〟の1つに過ぎないだろう」
セイアはそこで首をやや斜めに傾けると、こう尋ねました。
「ナギサ、君は政治家だ。このティーパーティーに名を連ねる生徒会長の1人だ。そんな君に求められている役目はただ1つ、トリニティ総合学園もとい、この自治区に住む人々の為になる政治を行うことだ」
「……セイアさん」
「彼女を優先する気持ちは分かる。彼女の為に力になりたいというその想いは私も当然持っている。だが、あの条約は……あの条約だけは、彼女の存在に左右されてはいけない。これはトリニティとゲヘナ、双方の行く末が明確に決まってしまう誓約書のようなものだ」
「……」
「本当にトリニティの未来の事を思ってあの条約の実現を願っていたのなら、私は今後一切この件について口を閉ざそう。だが……彼女1人だけを考えていたのなら、君はまだ政治家には向いていない。いや、自覚が無いと言うべきかな?」
冷たく、そして厳しくそう言ってのけたセイアは、再び紅茶に口を付けると『おっと、温くなってしまったね』と呟き、そのまま温くなった紅茶を気にもせず飲みました。
「……政治家としての……自覚……ですか……」
さて肝心のナギサはと言うとセイアから言われた言葉を無意識にも反復し、自身の口元に手を当てた状態で深く考え事をするのでした。そして誰にも聞かせることのない声量で『私はどうすれば……エスミさん』と呟きます。
「ふーん」
一方、そんな幼馴染の姿を先ほどからずっと眺めていたミカは心底面白くなさそうに声を漏らし、もう興味は無くなったと言わんばかりに菓子に再び手を伸ばしました。
≪1-2≫
「いやー疲れたぁ。今日は何だか退屈でつまんない会合だったよ。うん、居るだけでも大変だった」
ぐたぁ、と両手両足を伸ばした状態でソファに寝転がり、随分とはしたない恰好でミカはそう呟きます。およそ1時間程度で終わりを迎えた本日のティーパーティーの会合は、結果的にナギサとセイアの両名が色々と口論するだけで時間が潰れ、これといってミカが口を挟む必要もありませんでした。
「ナギちゃんもセイアちゃんも、連邦生徒会長が失踪したことで随分と悩んでいるみたいだけど、そもそも連邦生徒会に期待すること自体、初めから全部間違ってると思うんだけどなぁ」
ソファの上で背伸びを行い、続けてミカは盛大に溜息を吐きます。そして彼女はおもむろに上体を起こすと、にこやかな笑みと共にこう口を開きました。
「ねえ、フランちゃんはどう思うかな」
「……私、ですか?」
するとソファに座っているミカから少し離れた位置にある机にて、ただいま現在進行形で業務作業をしている最中の生徒が不思議そうに返事をしました。
彼女の名は、フラン。
現在、栢間エスミの後任として美術部の部長を務めている優秀な生徒です。ちなみに今彼女がしている業務作業は美術部に関する大事な資料作りと手続きであり、れっきとした部長の仕事の1つになります。
となると、ここは彼女だけに用意された仕事部屋。
驚くことに、部屋の主が今も尚こうして真面目に仕事をしているにも関わらず、本来部外者であるはずのミカはそんな彼女の目と鼻の先にあるソファでさも当然のように寛いでいたという事になります。
まあしかし、フラン自身は特に気にも留めていないようで、業務の手を一旦止めると真っすぐミカを見つめました。
「私は政治家ではありません。このトリニティ総合学園に在籍するただの生徒。それも、栢間様の意思を継ぐ形で美術部の部長を務めているだけに過ぎません。残念ですが、私に政治に関する意見を求めるのは間違っていますよ、ミカ様」
「えー。でも政治嫌いのフランちゃんでも、今のキヴォトスの情勢ぐらいは確認してるはずでしょ?」
「そうですね。大嫌いな世界だからこそ、しっかりと情報は追っています。連邦生徒会長が失踪した事により、トリニティとゲヘナの双方が実現に向けて動いていたはずの例の条約が泣く泣く白紙になったという話も、勿論聞いています」
「やっぱり、流石はフランちゃんだね」
「褒めても無駄ですよ。先も言ったように、私は政治なんて大嫌いです。混ざりたくはありません。それに、あの条約が実現しようが白紙になろうが私には全く関係無いので。私がしているのは全て、芸術のため、美術部のためです」
断固とした意志でそう言葉を発するフラン。
ミカはそれを聞いて満足そうに頷くと、こう言いました。
「なるほどね。まあフランちゃんには今まで色々とお世話になってるから、これ以上追及はしないでおくね。ところでさ……例の話はどうなってるのか聞いても良い?」
ピタッ、とフランの動きが止まりました。
「例の……アリウス分校に関する情報ですね。残念ですが、進展はありません……やはりアリウス分校に関する記録のほとんどは抹消、または記録そのものを残すことすら許されなかったようで、以前ミカ様に提供したカタコンベに関する地図を除いて真新しい情報を入手することは出来ませんでした」
「う~ん、それは残念だね。やっぱりトリニティとアリウスの間にある溝は、私達が思っていたよりも深いのかな」
「……とはいえ、私が提供した地図を基にアリウス分校と無事にコンタクトを取れたのですから、ひとまずは喜ぶべきでしょう。まあ、まさか向こうも和解に乗り気になるとは思いもしませんでしたが……」
一応、納得がいかないといった様子で眉をひそめるフラン。
トリニティとアリウスの間に生まれた溝は年月が経つにつれて次第に深くなり、同時に互いに対する憎悪も増しているはずです。故に、追放された身であるはずのアリウスがこうも簡単に和解に賛同することに、フランは自ずと疑いを持っていました。何か裏があるのではないか、と。
しかしミカ本人はあまりその違和感に関しては気にも留めていないようで、現に最近アリウスから引き入れたという謎の〝転校生〟について語り出します。
「そうだよね。快くアリウスからアズサちゃんみたいな子を転校させてくれる程だし、やっぱり向こうも出来れば私達と和解したいって心の底から思っていたのかもしれないね。アズサちゃん、私はまだ直接会ったことは無いけど、どうやら根は良い子で真面目そうだからすぐにトリニティの環境に馴染めると思うし、これをきっかけに早く和解すると良いなぁ」
両足をパタパタと動かし、楽しそうに身体を揺らしながら明るい未来について期待を寄せるミカ。フランはそんな彼女の姿を一瞥すると、彼女に気付かれないよう何やら酷く冷たい視線を送り、やがて机上で手を組みました。
「ミカ様……2つほど、気になった事があるのですが、聞いても宜しいですか」
「うん、何々どうかしたの? というか2つも質問するって、フランちゃんにしては随分と珍しいね」
「例の転校生ですが、どうして栢間様をその教育係に選んだのですか。他にも適任がいると思うのですが」
エスミを深く崇拝しているフランにとって、転校生であるアズサの面倒を見ることで、貴重なエスミの芸術家としての制作時間が削られてしまうことに一種の不快感を抱いているのでしょう。それはミカも分かっている事でした。
しかし彼女は笑みを浮かべたまま説明を始めます。
「アズサちゃんはね、アリウスから来てもらった大事な大事な〝平和の象徴〟さんだよ。だから、彼女が間違った方向に進まないように、トリニティに上手く馴染めるようになるには、私が心から信頼しているエスミちゃんにアズサちゃんを任せるのが一番なんだよね。それはエスミちゃんを尊敬しているフランちゃんもよく分かっている事なんじゃない?」
「……そう、かもしれないですね。栢間様は非常に優れたお方ですし、同時に寛大なお心を持つ方でもあります。あの方の下にいれば、アリウスから転校して来たというその生徒も問題なく過ごせることでしょう。それに中立の立場にいらっしゃる栢間様の下であれば、そう簡単に手を出すことも叶わないでしょうし」
「うんうん、だよね」
「しかし、もしも栢間様の身に何か起きるような事があった場合……その時は、どうされるつもりですか」
「それは、一体どういう事かな?」
ミカの顔から笑みが消え、不思議そうに顔を斜めに傾けながら尋ねてきます。
「文字通りの意味です。もしも、アリウスがトリニティと和解することが目的では無く……もっと別の理由でその生徒を送り込んできたとしたら、彼女の傍にいる栢間様の身が一番危ないという事になります。只でさえあの方は過去に一度、意識不明の重体になるほどの襲撃を受けているのです。その襲撃した犯人は未だ不明のまま……にも関わらず、よりにもよって素性が分からないアリウスの生徒をあの方の傍に置かせるのは、あまりにも危険では? せめて、栢間様にはその転校生の出身がアリウス分校であると説明しておくべきでは……」
「うん、フランちゃんの心配はよく分かるよ。でもね、大丈夫安心して。私はアリウスを信じてるの……彼女達もきっと私と同じで、和解するつもりでアズサちゃんを寄越してくれたんだよ。それにエスミちゃんにアリウスの事を説明したら、きっと『私も少しは手伝うよ』とか言われそうだし……まあたぶん、既に気付いているのかもしれないけどね。エスミちゃんって物凄く察しが良いから。でも今のところ何も言われてないって事は、エスミちゃんにも何か考えがあるのかもしれないよ?」
「……そうですか。まあ私はただの協力者ですから、これ以上口を挟むのは止めておきます」
彼女はそう言って肩をすくめると、視線を落としました。
どうやらアズサに関する話はこれで終わりのようです。
「ところで、残りもう1つの質問は何なのか聞かせてもらえる?」
ソファに寄りかかり、好奇心旺盛な様子でフランを眺めるミカ。対してフランは『今更、ミカ様に尋ねるまでもない話ですが……』と前置きすると、その紫色の瞳を小さく細めました。
「連邦生徒会長の失踪にともない白紙になった平和条約……エデン条約についてですが、ミカ様はこの件に関してどう思っていらっしゃるのかと気になりまして」
「ああ、なんだその事かぁ。てっきり難しい質問でもされるのかと思って身構えちゃった☆」
舌をペロッと出し、明るく無邪気に笑い出します。
しかしながら、その目にはいつもの優しさや明るさといった光の感情は宿っておらず、代わりに憎悪や呆れに近い闇の感情が、微かにその姿を現していました。
ミカは姿勢を正すと、その場でパンっと手を叩き小さく乾いた音を鳴らします。
「エスミちゃんを危険な目に遭わせたゲヘナとの平和条約でしょ。あんなの……白紙になって正解だよ。自分たちの方からエスミちゃんを招いておいて、まともに守れなかったゲヘナとの平和条約? 本当、可笑しくて笑えちゃうよね。ナギちゃんは、2度とあんな悲劇が起きないようにって条約の実現に期待を寄せていたみたいだけど、私はむしろあんな悲劇が〝起きたから〟こそ、ゲヘナとの条約は反対だよ」
「……ですが、あのエデン条約。発起人は連邦生徒会長ですが、その条約実現に賛成の意を示し、先頭に立たれていた中心人物は栢間様ですよ」
フランの言う通り、エデン条約という前例にないトリニティとゲヘナ双方の平和条約実現に向けて、声高らかに支持を表明していたのは、他でもないエスミだったのです。
そのためナギサ擁するフィリウス分派はこれ幸いと条約実現に向け強気になって動き出し、セイア擁するサンクトゥス分派も中立でありながら特に反対することなく静観していました。一方、ミカ擁するパテル分派は依然として反対の立場を表明し続け、エスミという存在がありながらもその首を縦に振る事は決してありませんでした。
結果的に発起人である連邦生徒会長の失踪に伴い、この条約は白紙となって空中分解を起こしてしまった訳ですが、やはりと言うべきか反対派を貫き通していたミカは非常に満足しているようです。
もっともエスミが例のエデン条約実現に対し、かなり目立つ形で賛成の立場を表明していたのは他でもない連邦生徒会長との密約があったからなのですが、これは当人同士の秘密となっているため、フランやミカは当然のことながら知りません。
「エスミちゃんは優しいからね。自分がああなったのも『危機管理が甘かった私のせい』の一点張りだったし、自分の身に起きたことを教訓に条約が実現して欲しいとか思ったんじゃないかな? ナギちゃんはそれを固く信じていたみたいだけど、セイアちゃんは常に冷静だったよ。本当、あんな条約が結ばれたぐらいでエスミちゃんの身に起きた悲劇が無くなる訳でも無いのにさ……もしかしたら、ナギちゃんはあの条約に縋りたかったのかも……まあ肝心の条約は白紙になったから、もう私達が気にする必要は無いけどね☆」
ミカがそう嬉しそうにして喋り終えると、丁度タイミング良く部屋の扉がノックされました。
ここは美術部の部長であるフランの仕事部屋なので、その部屋を訪ねる者がいるとすれば自ずと決まっています。フランは軽くミカに向けて頭を下げると、訪ねて来た者を迎え入れました。
「失礼します、フラン部長。先ほど大聖堂からお借りした油絵の修復作業が終わったところで――って、ティーパーティーのミカ様!? ど、どうしてパテル分派の首長が部長のお部屋に!! あっ、す、すみません!! 私、もしかしてお邪魔してしまいましたか!?」
「いえ、大丈夫です。そう慌てないでください。ミカ様には先日パテル分派から依頼を受けた絵画の詳細について相談をさせて頂いたところでしたが、もう話自体は済みました。これからお帰りになられる所です」
「あれ、そうだっけ?」
そんな話、初耳だけど私。という様子をわざと見せるミカ。
フランはそんな彼女の反応を無視すると、ひとまず入室して来た部員を部屋で待たせることにしました。
「これから、ミカ様のお見送りに行きます。ほんの数分で帰ってきますので、貴女はこの部屋で寛いでいてください。修復の件についてはまずお疲れ様でした。詳しい話は私が帰ってきてからにしましょうか」
「は、はい。分かりました」
「では行きましょう、ミカ様。出口はあちらです」
フランは自身が先頭に立ち、ミカを出口まで案内し始めます。
もちろんミカは既に何度か美術部に足を運んでいるのでフランの案内など全く不要でしたが、周囲からの目を誤魔化すためには必要な行動でした。
何しろアリウス分校絡みの件はミカとフラン、そして彼女の親友にして同じ美術部に所属しているリノだけが知る秘密なのです。故に白昼堂々と部屋で内緒話が出来ているのも、部長であるフランの誤魔化しと配慮によるもの。
ミカは自身より背が高いフランを見上げながら『誤魔化してくれて、ありがとうね』と感謝の言葉を送りました。
「気にしないでください。元より、私達は互いを利用し合っている仲です。感謝の言葉は必要ありません」
「そうだけど、やっぱりフランちゃんの助けが無かったら、私はいつまでもアリウスの件で行動が起こせないままだったし、お礼ぐらいは言わせてほしいかな。私のために必死に情報を集めてくれたし、部の運営があるのに大変だったでしょ? 本当、ありがとう」
「……」
フランはちらりと背後にいるミカに視線を送ると、幸せそうに満面の笑みを浮かべている彼女の明るい姿を見て、ふと何とも言えない複雑な感情を抱いてしまい、そのまま彼女に気付かれないよう小さく溜息を吐いて再び前を向きました。
「……お互いの目的が無事に達成した時、それでもなお私に対する感謝の気持ちが僅かにでも残っていたのなら……その時こそ、私は貴女の感謝の言葉をしっかりと受け取りましょう」
「うーん? ねえねえフランちゃん、それって一体どういう意味なの?」
「……いえ、先ほどの言葉は忘れてください。ひとまず今は、栢間様とアリウスの転校生について考えるとしましょう。いくら面倒見が良い栢間様とはいえ、その転校生が扱いに困るような人物であったら全く意味がありません。頃合いを見て、私自らお2人の近況を確認しておきます」
「ぶー、無視するなんて酷いよ、フランちゃん…………まあ、ずっと気にしてる訳にもいかないし、今のところは忘れてあげるね。フランちゃんの言う通り、エスミちゃんとアズサちゃん……2人とも仲良くしてくれていると良いなぁ」
天を見上げ(そこにあるのは天井ですが)心配そうに言葉を漏らすミカ。
しかし最終的に『でもエスミちゃんなら特に問題はないよね☆』と楽しそうに、かつ絶対的な自信を持って言葉を吐き出しました。
≪??????≫
さて、ではミカとフランの2人が気に掛けている栢間エスミと白州アズサ。
この両名が今、どうなっているのかと言うと。
「私の質問に答えてくれ……以前、この校章を付けた生徒に出会ったことがあるはずだ。そうだろ?」
「……白州……」
エスミの仕事部屋にて、左袖にあるワッペンを自ら指差し、かなり思い詰めた様子でエスミに詰め寄るアズサの姿がそこにはありました。
それは先ほどミカが願った『仲良し』とは随分とかけ離れた姿であるのは勿論のこと、現在進行形でアズサに言い寄られているエスミに関しては酷く面倒そうな表情をしながら、黒い革手袋をはめている右手で自身の口元を隠していました。
それが一体何を意味するのかは分かりません。しかし、あまり良い気分では無いという事だけは確かです。
「お願いだ……どうか、アリウスのために……力を、貸して欲しい……!!」
アズサの悲痛な声が、エスミの仕事部屋に響き渡りました。
もしも仮にブルアカ世界に転生して生徒になれるなら、どんな武器を所持して愛用したいですか?(※作者は愛用するならリボルバーしかあり得ません.)
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拳銃(M1911,グロック等)
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リボルバー(SAA、コルト・パイソン等)
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自動小銃(HK416、AK-47等)
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短機関銃(M1921、MP5等)
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小銃(M1ガーランド、Kar98k等)
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散弾銃(ベネリM4、AA-12等)
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機関銃(MG42、M249等)
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対物ライフル(AW50、ヘカートⅡ等)
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擲弾発射器(M79、ダネルMGL等)
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素手