夢叶って画家になれた転生主は、ともかくブルアカ本編に関わりたくない 作:木暮鬼一
既に私のTwitterを見ている方はご存知かもしれませんが、ワイルドハント芸術学院生徒のフユとミヨ欲しさに、わざわざ課金してまでしてガチャを引いてきました。武器開放も済んでいます……ですが、肝心の家具集めは難航中です。
つい数か月前にティーパーティーの家具集めでほとんどの素材を溶かしているので、今手元にあるのが少ないという……タイミングが悪すぎた。
というよりフユに関してですが、あの子身長が173もあることに驚きつつ、戦闘で負けたら『チョウシノッテスイマセン』て言うの可愛くて笑っちゃいました。そもそも私より数センチだけ身長が低いのがヤバい。あと背がデカい
以下↓前に取らせて頂いたアンケートについてのお知らせになります。
※1話から38話にかけて設置させて頂いたR18作品の有無に関するアンケートですが、こちら9月末となりましたので投票を終了させて頂きます。ご投票して頂いた皆様、ありがとうございます。全部で1113件も投票して頂きました。
※ちなみにこちらアンケートの結果ですが、950件(85%)という圧倒的な票数で『有り』と決まりましたので、次週の10/3日(金)または10/6(月)のいずれかに、こちらのエスミを主人公とした作品のR18版を投稿いたします。尚、作者は次週に手術や検査などで何回か病院に通院する予定でいるため、場合によっては投稿が先延ばしになる可能性があります。その際は事前に活動報告等でお知らせいたします。
以上でお知らせは終了となります。
この度も、こちらの作品を読んで頂き誠にありがとうございます。
また前回に続き、誤字脱字のご報告も助かっています。
「あら、エスミさんにしては珍しいですね。今日はいつものように絵を描かれないのですか?」
それはトリニティ総合学園の古書館で一人静かに本を読んでいた時の事です。
少なくとも100年。もしくは200年もの年季が入っている書物をテーブルに置いて大事に扱い、ページをめくる度に目を輝かせては慎重に読んでいたエスミ。そんな彼女の背中に向かって、とある少女が楽しげに声を掛けてきました。
エスミの視線が書物から離れ、傍に立っている少女へと向けられます。
「浦和……君の方こそ、どうして古書館にいるの?」
「ふふっ。それは秘密です」
浦和、と呼ばれた少女……ハナコは自身の髪を僅かに揺らしながら、さも当たり前のようにエスミの隣に椅子を用意するとそこに腰掛けます。そして微笑を浮かべたまま、その熱い視線を真っすぐエスミに向けるのでした。
「……何?」
するとエスミは困惑した様子で眉をひそめ、視線だけをハナコに送りました。
「いえいえ、何でもありません。私のことは全く気になさらず、どうぞお手元の書物に集中してください」
「その熱を帯びた意味ありげな視線を私に送っていながら『気にするな』は流石に無理があるでしょ」
「そうでしょうか。普段はいつも絵を描くことしか頭にない〝美術狂い〟のエスミさんの貴重な読書姿ですよ? それを直接目にすることが出来るとあれば、こうして熱い視線を注いでしまうのも当然の事かと思います。エスミさんの方こそ、私が筆を持って真面目に絵を描いていたとしたら、つい足を止めてその光景をじっくりと眺めてしまうのではありませんか?」
「……確かに。それは凄く気になるね」
あのハナコが真面目な顔をしながら必死に絵を描いている姿。面白い、実に面白い光景です。
正直なところ、今すぐにでも彼女にキャンバスと筆を持たせて絵を描かせてみたい所ですが、生憎と画材の一式は手元にはありません。加えてここは古書館。普通の図書館とは違って貴重な書物の数々が厳重に保管されている場所です。絵を描く場所に向いているとは言えません。
まあ何であれ、先ほどのハナコの言う事にも一理はあると思い、エスミは興味を失ったとばかりに手元の書物に視線を落としました。
「ところで、その書物は何でしょうか」
「これかい? これはね……昔、とある美術家が書き記した偉大な画家たちの技法をまとめた貴重な書物だよ。まあ、そうは言っても当時の政治の事情で何度か改訂されているから、全ての技法が載っている訳じゃないんだけどね。ちなみにこれは第2版だったかな?」
「そうでしたか。そのような貴重な書物も保管しているとは、流石は古書館ですね」
「本当、君の言う通り。芸術家にとっては正に宝庫だよ、ここは。先人たちの技術と知識が眠っている訳だからね」
そう嬉しそうに口にし、黒の革手袋をはめている指で優しく書物を撫でるエスミ。
彼女はそのまま言葉を続けると『ほら、ここのページにはフレスコ画についての貴重な技法が……』とか『このページに書いてあるのは卵テンペラの面白い製造方法で……』等々、ハナコの方から何が書いてあるのかと尋ねていないにも関わらず、何やら興奮した様子でエスミは書物の内容について熱く、そして分かりやすく説明を始めました。
ハナコはそれらの様子をただ静かに、落ち着いた様子で眺めます。
もちろん時々彼女の説明に対し何度か相槌を打ったり、興味深そうに一言二言返事を返したりはします。
しかしそれだけ。それだけなのです。
口から出てくる言葉は全て反射的なものであり、彼女の若葉色の瞳は始めからずっと……エスミの顔にだけ注がれていました。
貴重な書物を傷つけないよう最低限の力でページを指でなぞり、書き記されている文字や挿絵の1つ1つに対し嬉しそうに説明を行い、気付けば興奮からか頬を赤く染めて満面の笑みを零しているエスミ。普段の落ち着き払っている姿とは違い、誰が見ても惚れ惚れするような無邪気の姿を彼女は今この場にいるハナコにだけ見せていました。
「……本当……お綺麗、ですね」
気付くと、エスミの顔をずっと眺めていたハナコの口からそんな言葉が漏れ出てきました。しかしどうやら無意識だったのでしょう。自身の発言に驚くと同時に、非常に慌てた様子で口元を手で覆い隠したハナコ。どう見ても怪しさに満ち溢れた行動でしたが、一方でエスミは首を傾げつつこう言葉を返します。
「えっと、綺麗?……ああ、確かにこの絵は綺麗だね。これは【グリザイユ技法】によって生み出された絵だよ。この技法はシンプルに言うと〝明暗〟と〝色彩〟を別けて描く技法で、先に白黒といった明暗を先に描く。その後は透明感のある絵具で着色して色彩を付けていく。そうすると立体感のある絵が完成する訳だけど、難点として1つ挙げるなら色を乾かすのにかなり時間がかかってしまう事かな。今はデジタルイラストが主流の時代だから、合成レイヤーなどを使えば多少は時間が短縮できるけど、この書物が出版されていた事はそんな便利なモノが無かったからね。こうして何層も絵具を重ねる場合、小さい絵でも完成まで大体数か月はかかる。でもね、だからこそ時間を掛けて仕上げた絵はとても綺麗で独特な存在感を放つんだ」
ずっとエスミの顔に視線を注ぎ続けていたハナコとは対照的に、エスミもエスミで手元の書物にだけ視線を落としていたせいなのか、先ほどのハナコの『綺麗』という言葉は書物に載っている挿絵に対する評価だと勘違いしたようです。
彼女は絵に指を向けながらグリザイユと呼ばれる技法について分かりやすく、そして簡潔に説明します。そんな時でもエスミの目は非常に輝いていました。本当に、美術が大好きなのでしょう。
とはいえ、ハナコが先ほど口にした『綺麗』という言葉は、別にその絵に対して言ったのではありません。
「あ、い、いえ……先ほどの言葉はそういう意味ではなく…………すみません。やはり何でもありません」
一応、エスミが勘違いしている事について訂正をしようと思ったハナコでしたが、そうなると書物の説明なんて全く気にもせず、最初から彼女の美しい顔だけを眺めていたという事実を公表することになる為、悩んだ末にハナコは結局〝黙秘〟という選択肢を選ぶのでした。
エスミは『本当に何でも無いの?』と心配そうに尋ねてきましたが、ハナコは首を横に振るだけで返事をしません。
そうやって互いに無言となり数秒か、もしくは数十秒が経過した頃。
流石にこの微妙な空気をともかく変えたいという一心からか、ハナコは突如として『そういえばエスミさん。体調の方は大丈夫ですか?』とエスミの容態について尋ねてきました。
「大丈夫ですかって……見ての通り全然元気だけど?」
「そ、そうですよね。それは……よ、良かったです」
「???」
既に退院して数か月は経っています。
リハビリも終え、何不自由なく普段通りの生活を過ごせている今のエスミは文字通り万全。もちろん触覚過敏という症状を持っているため、流石に五体満足とは言い難いのですが、それでも人に心配されるような酷い状態には陥っていません。
故に秀才であるはずのハナコにしては非常に珍しく、無理やり話題を変えたところでこの場の空気を一変させることは全く叶わず、むしろエスミからの視線が増々強くなってしまいました。
「浦和。本当に大丈夫なの? いつもの君とは何だか、様子が全然違うようだけど」
「そ、そうでしょうか……むしろ普段の私と今の私を見分けることが出来るなんて……エスミさんって、思っていたよりも私のことを普段からよく見てくれているんですね、ふふっ」
「勿論。君の事はちゃんと見ているよ」
「……へ?」
思いもよらない言葉を聞いたことで、あのハナコが珍しく呆気に取られた表情を見せます。
「ちょっと、そんなに驚くこと?」
「い、いえ……まさか、あのエスミさんが普段から私を見ているなんて少しも思っていなかったので……」
「ああ、それね。流石に毎日毎日君のことを見ている訳じゃないよ? だけど絵を描くために学園内をよく歩き回っていると君の姿を時々見かけるし、それに君との会話は何もこれが初めてという訳でも無いからね。今こうして私と話している君が、学園で過ごしている時と一体何が違うのか。表情が明るいのか、それとも暗いのか。それぐらい一目見れば私でも分かるよ」
「…………」
ハナコは何も言わず口を閉ざしました。対してエスミはその場で頬杖をつくと、興味深そうにこう口を開きました。
「これは私の勝手な推測だけど……浦和。もしかしてシスターフッドにまたしつこく勧誘されたの?」
「……っ!?」
「その反応。図星みたいだね」
「……ど、どうしてそう思うのですか?」
「私、裏では情報屋活動もしているからね。君の興味深い話は噂を通じて色々と聞いているし、それに2年生になった事でまた学園内で注目され始めたでしょ? 君のことをスカウトしたくて『何か良い情報はありませんか?』って私の下を訪ねてくる生徒がここ最近かなり増えてきたからね」
「それで……エスミさんは、渡したのですか? 私に関する情報を……あの方々に」
じっとエスミの瞳を見つめると、彼女はハナコに対して小さく笑い返します。
「私がもし、君の情報を彼女達に全て渡していたのなら……今頃、君はここには居ないだろうね」
「……それはつまり」
「もちろん情報なんて全然渡していないよ。政治とか権謀術数から離れたい君がなるべく1人になれるよう、出来るだけ静けさを好んで時たまにこの古書館を利用している、とかいう情報は特にね」
「……流石ですね、エスミさん。既にご存知でしたか……」
疲れたような、それとも観念したような。
その両方とも言える表情を浮かべ、ハナコは小さく溜息をつきました。
「エスミさんの仰る通りです。最近、シスターフッドからの勧誘が激しくなっていて……日中、学園内を歩いていると2日に1回のペースで声を掛けられるようになってきました。シスターフッドだけではありません。先日はティーパーティーからも熱心にお声がかかって……なので疲れた心を休ませるために、今日はこうして古書館に自ら足を運んだという事になります」
「他の生徒があまり使用しない場所だからね、ここは。身を隠すとまでは言わないけど、人目を避ける目的で使うなら最適な場所なのは間違いない。私も入学当初はよくこの古書館を利用していたから、浦和の気持ちも少しだけ分かるよ」
「1年生の頃のエスミさんも、ですか?」
「そうだよ。あの頃は情報屋活動もしていなくて基本帰宅部、それに引き籠ろうにも当時は自分だけの制作部屋も持っていなかったからね。学園内を歩けば今の浦和のように頻繁に声をかけられていたし、色々と面倒な絡みもされていたのを思い出したよ……フフッ、ああ懐かしいね」
パタンッ、と貴重な書物のページを優しく丁寧に閉じた彼女。
そして優しさに満ちた目でハナコを見つめます。
「だから、私で良ければ今日だけは浦和の相談に少しだけ付き合ってあげる。満足な学園生活を送れずに困っていたのは過去の私も同じだからね。それに君はともかく優秀で、それでいて心優しい生徒なんだから今の段階で環境に潰れてしまうのは大変良くない。うん、トリニティだけじゃなくキヴォトスにとっても大損失になる。ああもちろん〝私に〟とってもね」
「……エスミさん」
「幸運にも、今この場にいるのは君と私だけ。一応向こうのエリアには、この古書館を半ば住処にしている生徒が1人だけ居るけど彼女とは面識があるから安心して。だから、今まで溜めて来たストレスを全て吐き出すには十分すぎる状況だと思うけど、どうかな?」
「……ええ、そうですね。せっかくなので、今日はエスミさんを頼らせて頂きます……」
かなり安心した様子で……いえ、むしろ重圧から解き放たれたかのように、ハナコは自然な笑みを零しました。そして自身が腰掛けている椅子を少し動かすと、エスミにピッタリ密着する形で距離を縮めます。
エスミの目が何度か驚きで大きく瞬きました。
「……なんで近づいたの?」
「ここは古書館ですよ。中央図書館と同じで本来なら館内での私語は厳禁です。会話を周りに聞かれないようにするには、こうして距離を縮めて小声になるのが当然だと思ったのですが……違いますか?」
「そ、そうかもしれない……けど。何もこうまで密着する必要は無いでしょ。さっきの距離から小声で話しても十分伝わるのに」
今や互いの腕が直に接触するほどに距離が近く、加えてハナコは僅かに身体を倒し、エスミに寄りかかっている状態でもあります。もちろん全体重を乗せている訳ではないのでエスミは全く苦しくはありませんが、先ほどから常に漂うハナコの良い匂いや、すぐ目の前にある彼女の綺麗な顔など、今まで大して意識していなかっただけに少しだけ心が落ち着きません。
一方で、その様子を間近で眺めながらハナコは小さく笑います。
「ふふっ。以前は文字通り〝素っ裸〟で私に抱き着いていたはずのエスミさんが、少し距離を縮められただけでこうも動揺されるなんて。見ていて面白いですね」
「あれは単なる事故だから……それに、抱き着いてはいないからね。記憶の捏造はやめて」
「ですが、エスミさんが自身のご立派な胸を私の身体に直に押し付け、人を誘惑していたのは事実ですよ?」
「してないから……いや、確かに胸を押し付けてはいたかもしれないけど、誘惑じゃないからね。そもそもあの時、隠れる場所なんてあのドアの裏以外全く無かったし、私に服を着る余裕が無かったのは浦和も流石に分かってるよね?」
「ええ、勿論です。ですが当時の私は入学したての1年生。そんなか弱い少女の性癖を、エスミさんは真っ向から捻じ曲げてしまったのは確かです」
「曲げてないから、曲げてない…………そう、だよね?」
「さあ、どうでしょうか」
クスクスと笑い、ハナコはそのまま『では私の話を聞いてください』と話題を突然すり替えてきました。
「嘘でしょ。今の流れで普通話題を変える?」
「仕方ありません。何やらエスミさんがあまり触れて欲しくはない話題だったようなので。それに、今回は私の相談に乗ってくださるはずでは」
「それはそうだけど……いや、私のせいで君の性癖が捻じ曲がったという事については、出来れば今すぐ確認させて?」
「ふふっ、嫌です。一度曲がってしまったのは、もう二度と元には戻りません。ですので、残念ですがエスミさんは諦めてください」
ニコっと面白そうに笑みを向け、そのままエスミの肩に頭を置いて目を細めるハナコ。
「……あの時の貴女が……私を変えたんですから……」
そして至近距離にいるエスミですら聞き取れないほどの声量で、そう言葉を零すのでした。
「さあ、時間は有限ですよ。エスミさんに相談したい話題はかなり山積みです。古書館から出る頃には、せめて全体の4割は消費しておきたい所ですね」
「一応聞くけど、その4割ってどれくらいの量になりそう?」
「そうですね。今エスミさんの手元にある書物、それが5冊分と言った所でしょうか」
「……5冊……」
絶句した様子で手元の書物に視線を落としたエスミ。たかが1冊。されど1冊。
そこにあるのは辞典に匹敵するほどの厚みをもった大きな本です。それが5冊と言われれば、流石のエスミも驚きで言葉を失います。
しかし今日は彼女の相談に付き合うと宣言してしまった以上、後には引けません。エスミは絶句のあまり閉ざしてしまった口を再び開けると同時に、ハナコの頭にそっと自身の右手を置いて、優しく彼女の頭を撫で始めました。
「分かった……今日は最後までとことん付き合ってあげる。でもなるべく静かにね。一応この古書館の主……で良いのかな? 古関には念のため後で断りを入れておくけど」
「はい。お願いします……ああ、ところでエスミさん。1つだけどうしても先に尋ねたいことが……」
「うん、どうかしたの?」
「今日のエスミさんの下着ですが……色は〝白〟ですか、それとも〝黒〟ですか?」
「……浦和……私、やっぱり帰るけど別に良いよね?」
一体何を聞いてくるんだこの子は、と呆れた様子でエスミがそう言葉を返しました。
ハナコは肩を震わせながら満足そうに笑います。
「ふふっ、冗談です。そう怒らないでください。エスミさんの今日の下着が白であることぐらい、私でも流石に分かりますよ」
「いや全然違うから。白なんて持ってないし、いつも着てる下着の色は決まって黒だけで…………あっ」
「そうでしたか。エスミさんの下着は黒固定でしたか。ふふっ、とても良い情報を聞けました」
「……帰る。もうダメ。帰らせて……やっぱり、今日は君の相談には付き合わない事にしたから……」
自分のせいとはいえ、恥ずかしさのあまり薄っすらと耳を赤く染めるエスミ。確かに自身の下着事情(しかも色)を堂々と後輩に教えてしまうというのは確かに恥ずかしい事でしょう。
故に、エスミはそのまま立ち上がって離席しようとしますが、ハナコが先に彼女の腕に抱き着いたことで全く動けません。元より互いの距離が近いこともあってか、暴れて拘束を解くことすら出来ません。いわば詰みでした。
するとエスミの動きを封じたハナコは、そのまま互いに僅か10センチにも満たない距離まで自身の顔を近づけました。エスミの綺麗な瞳が驚きのあまり見開きます。
「エスミさん、駄目ですよ。私との約束、ちゃんと守ってください。それに古書館では静かにするよう私に言ったのはエスミさんですよ?」
「君……さては、私をからかってストレスを発散してる感じ?」
「さあ。どうでしょうか」
果たして、今日だけで一体何度彼女は笑ったのか。
声には出さない笑みを零し、ハナコは心底楽しそうに肩を震わせます。それを見て、エスミはもう諦めたとばかりに渋々といった形で再び彼女に身体を預けるのでした。
≪1-2≫
1人になりたい一心で訪れた古書館で、久しぶりにあの人の姿を目にした時、私はつい喜びを露わにその場で飛び跳ねる所でした。
栢間エスミさん。
トリニティ総合学園の中で一番の芸術的才能を発揮している生粋の芸術家(本人が言うには、あくまでも画家のようですが)。
普段はご自身の制作部屋にこもって絵を描き続け、外に出たとしてもキャンバスとスケッチブックを片手にまた絵を描く文字通り美術に飢えている芸術家。他の方と話をされている時間はごく僅かで、絵を描くこと以外は一体何をしているのかさえ不明なお方です。
そんな彼女が学園の端にある古書館で本を読まれているというのは、正直私にとっては意外でした。
もちろん常に絵を描かれている訳ですから、その技法を学ぶために専門書や資料を読まれることぐらいあったはずです。ですがそのような当たり前の常識さえ忘れてしまうほど、エスミさんはともかく絵を描くことに夢中な生徒として私は認識していました。
それに彼女がいたのは古書館。
他の生徒がよく利用している中央図書館ではなく、古い書物や慎重に扱うべき遺物が眠っている年季の入った図書館、それが古書館です。お世辞にも清潔が保たれているとは言えないため、日中であっても一般の生徒が利用することはまずありません。ティーパーティーやシスターフッドの生徒ですら近寄らないのです。
なので、なるべく人目を避けたい私としては時々こうして古書館に足を踏み入れては、古い書物を手に取って度々読書して利用させてもらっていた訳ですが、まさかそこでエスミさんにお会い出来るとは思いもしませんでした。
そんな初めて見るエスミさんの読書姿ですが、一文字で感想を伝えるなら〝美〟でした。
美しく整った顔。薄い青色の髪を束ねているシニヨン。翡翠色の瞳。制服の上からではまず分からない彼女のプロポーションの良さ。
その全てが美しく、かつ読書をされている姿がそれに見事マッチしていました。見慣れない景色を目の当たりにしたことで、これまで以上に視覚が情報を得ようと躍起になっていたのかもしれません。もはや私の目には読書をされているエスミさんだけしか映りませんでした。
見惚れる、というのは正にこういう事を言うのでしょう。
その後、些細な好奇心からエスミさんに声をかけてその場に同席し、手元にある書物の説明を受けている時であっても、私の目は彼女の顔から離れることはありませんでした。正直、書物の内容について熱く真剣に語ってくれていたエスミさんには、その話を真面目に聞かなかった事について心から申し訳ないと思っています。
ですが、綺麗でした。本当に、あの時のエスミさんは綺麗だったんです。
好きな美術について熱く人に語るその姿が。彼女が顔を動かすたびに、微かに揺れるその薄い青色の髪や翡翠色の瞳が。柔らかそうな唇が動くたびに、そこから発せられる言葉と声が、何もかも。
相手は、たった2つ年上なだけの同性にして学生です。
ですがそんな彼女を前にすると、私の心は激しく、そして熱く高鳴り……文字通り〝恋〟に堕ちそうでした。いえ、むしろそれに近い形で堕ちていたのかもしれません。
果たしてこれは文字通りの恋心なのか。それとも人生の先輩に対する単なる敬愛なのか。流石の私でもそうすぐには答えを出せません。こうしてエスミさんの隣にいるだけで安心感を得るのは事実ですが、だからといって独占欲などはありませんでした。
ですが、結局のところ何であれ……私は初めから栢間エスミさんという人物に惹かれていた、という事実はこうして言葉として残しておくべきでしょう。
本当、エスミさんは素敵な方です。
あの人のように心優しく、傍にいるだけで落ち着けるような方がもっと他にもいてくれれば、このトリニティでの学園生活も多少はマシになっていたかもしれません。
ですが、それは無理。叶わない夢です。
あと1年もすればエスミさんは卒業し、私は3年生になります。少し前に図書館で出会ったのをきっかけに親友になったばかりのセイアちゃんも、今は3年生なのでエスミさんと同じで私を置いて先に卒業してしまう事でしょう。もっとも、エスミさんは事情により留年した形なので、本来であればこうして学園に残っていること自体が奇跡ですから、元より私の幸運は最初からこの1年間のみと決まっていたのかもしれません。
出来る事なら、同学年か後輩に私の〝素〟をさらけ出せる生徒がいると良いのですが……エスミさんやセイアさんが居てくださっている今の環境下だけでも十分幸せなのに、それは流石に高望みをし過ぎですね。
私はそっとエスミさんに抱き着く腕に力を込め、寂しさを紛らわすように彼女の体温を感じ取ることを優先しました。
そして後日。
これまでティーパーティーのホストを務めていたはずのセイアさんが、突如として欠席して表舞台に姿を現さなくなり、同時に何度か病弱なセイアさんの代わりにホスト代行を務めていたナギサさんが、これを機に正式にホスト代行に就任。事実上のトリニティ総合学園のトップに立ちました。
加えてナギサさんは、連邦生徒会長の失踪によってそのまま空中分解し、一度は白紙になったはずの【エデン条約】を再び実現させることを改めて公言。パテル分派といった多数の反対派を抑え込み、半ば強行する形で次々と条約実現に向けて動き始めました。
是を以て、トリニティ総合学園の空気は瞬く間に一変しました。
今までの平穏は瞬く間に消え去ると、代わりに各組織の疑念と陰謀が渦巻くようになり、それに合わせて私に対する周囲からの視線も増々厳しく、同時に激しくなっていきました。私はそれに対抗する形で成績が下がるようテストの回答をわざと間違えはじめ、加えて深夜に裸で学園内を徘徊するという奇行にまで走り始めましたが、正直なところ私の心はもう既に限界でした。
そんな時です。私の心に止めを刺すような形で、あの悲報が私の下に飛び込んできたのは……。
それは親友であるセイアさんがいきなり姿を消して以降も、彼女に代わって何度か私の相談に辛抱強く付き合って頂いた栢間エスミさんが、突如としてティーパーティーの……ホスト代行のナギサさんの意向によって半ば強制的にワイルドハント芸術学院に短期留学されたという話でした。
その瞬間、思いもよらない形で数少ない心の拠り所を奪われた私は茫然としてしまい、気付けば涙まで流していました……。
私はこの後、どうすれば良いのでしょうか?
別にドンピシャのタイミングで例のイベントが来たからと狙っていた訳では無いのですが(元々数か月ほど前。プロットの段階で構想はしていました)次回はまさかのワイルドハント芸術学院にあのエスミが行きます。というか、行かされます。
もしも仮にブルアカ世界に転生して生徒になれるなら、どんな武器を所持して愛用したいですか?(※作者は愛用するならリボルバーしかあり得ません.)
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拳銃(M1911,グロック等)
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リボルバー(SAA、コルト・パイソン等)
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自動小銃(HK416、AK-47等)
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短機関銃(M1921、MP5等)
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小銃(M1ガーランド、Kar98k等)
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散弾銃(ベネリM4、AA-12等)
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機関銃(MG42、M249等)
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対物ライフル(AW50、ヘカートⅡ等)
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擲弾発射器(M79、ダネルMGL等)
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素手