夢叶って画家になれた転生主は、ともかくブルアカ本編に関わりたくない 作:木暮鬼一
「……桐藤。いきなりどうかしたの?」
さて、『なるべくブルアカキャラとは親密になってはいけない』という考えから仲の良さを象徴する名前呼びではなく〝苗字呼び〟に固執しているエスミは、戸惑うことも焦ることもなく、ただ冷静に自分の下へ押しかけて来たナギサに対しそう問いかけました。
いわば彼女は、しらを切った訳です。
「他の方から話をお聞きしました。なんでも、トリニティから出ていかれるとか?」
笑みを浮かべているはずが生気のない目を細めるナギサ。言い逃れは許さない、とその眼光が強調しています。まだ中等部の少女がしていい目つきではありません。
というより転校を思い付いたエスミが動き出して、まだ数週間も経っていないのですが随分と耳が早いようで……突然押しかけて来たのもそれが理由で間違いないのでしょう。
まあ彼女も富裕層の1人であり、幼いながらも後に派閥を取り仕切る立場になるため遅かれ早かれ情報が出回って気付かれるだろうと覚悟していたエスミは、特に否定することなく頷きました。
「理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「単純に、私の芸術活動のため」
君たちブルアカキャラに出会いたく無いからとか、ゲーム本編に巻き込まれたくないというのがエスミの心からの本音ですが、別に嘘は言っていません。
しかしこの程度の言い分でナギサが納得するはずがありません。
「それはトリニティに留まっていても可能ではないでしょうか? 無理して住み慣れた場所を離れる必要は無いかと。せっかく念願の画家になれたと言うのにもう活動拠点を変えられるのですか?」
「むしろ、画家として新しい環境と発想を求めて活動拠点を変えるのは自然だと思うけど? トリニティ出身の芸術家もほとんどは活動拠点を他に移してるのに」
「それはそうですが……しかし、エスミさんはまだ中等部です。いくら不思議と社会慣れされている方とはいえ、トリニティ自治区の外はとても危険に満ち溢れています」
「安心安全な自治区に行けば済む話だから心配しないで」
「いいえ。エスミさんはご自身の立場を理解されていません。その容姿端麗なお姿、画家としてデビューされた事で付いた肩書、富裕層が多く集まるトリニティ自治区出身という生い立ち。最悪な場合、犯罪のターゲットにされる可能性があります。安全な自治区であっても身代金を目的に誘拐されることもあり得ます」
流石にそれは被害妄想すぎるのでは?
と前世のブルアカ知識を無理やり引っ張り出して考えるエスミでしたが、富裕層の集まりとして有名なトリニティ生徒を恐喝の対象に、不良生徒が悪事を働くゲームの場面がやたら鮮明よく思い出せるので別に間違ってはいないのでしょう。
とはいえ中等部ですよこちらは?
いくらなんでも誘拐まで実行するのは見境が無さすぎるのでは?
それにブルアカ世界に転生してしまった以上、エスミもキヴォトスの住民よろしく【銃器】は所持し、少数の不良やチンピラ相手なら単独で立ち向かえるぐらいには使いこなす事が出来ています。運が良ければネームドキャラと拮抗するぐらいには戦えるかと。
ただ生憎と〝利き手〟で銃を扱うのはほぼ無理なため不安要素が存在しているのは事実ですが、それでも五体満足で生き延びるぐらいは可能でしょう。
そんな『行ける行ける、楽勝よ』といった感じの自信オーラがエスミから溢れていたのかもしれません。
ナギサは深く溜息を吐くと、困った様子で自身の頬に手を添えて遠くを見つめました。
やけに様になる姿なのが卑怯です。
「そうですか……どうしてもトリニティから出て行かれるのであれば、悲しい話ですが私はエスミさんとの縁を切るしか方法がありませんね……」
「別に桐藤とは只のビジネス上の付き合いだから私としては縁を切っても困らないけど」
「おや、本当に宜しいのですか?」
今日をもって桐藤ナギサと永遠のお別れが出来るのであれば、ブルアカ本編に巻き込まれたくないエスミにとって万々歳です。正直、知り合ってまだ1年程度しか経っていないのに引き留められる覚えがありません。
しかしナギサはどうも違うようで……というより、やけに含みをもった笑みをエスミに向けてきました。
「エスミさん。私はこれでも周囲に対し、ある程度の融通を通すことが出来る立場にあります。例えば初めてエスミさんをお誘いさせて頂いた美術館の貸し切りなどが良い例でしょうか。貴女のために用意させて頂いた美術資料の提供も、私が無理を言って倉庫から特別に出して頂いたものになります。その全てが経験となって今のエスミさんを作り上げた……と私は考えています」
「うっ……それは……」
忘れる訳がありません。
ほぼ強引な形ではあったものの、ナギサが色々と美術に関してあれこれと鑑賞に連れ出してくれたおかげでエスミは画家として一段階二段階と大きく成長し華々しい芸術家デビューを飾る事が出来たのです。
少なくとも立場上は庶民であるエスミには全て無理な行動です。
まあ本当はナギサが彼女と仲良くなりたい一心から無理に何度も誘ったことで、結果としてエスミの利益に繋がった〝偶然の産物〟とも言える話なのですが、結局のところナギサのおかげであるのは疑いようのない事実です。
「もし私とこのまま縁を切られるのであれば……これらの特別サービスは今後諦めて頂くほかありません。エスミさんが頬を赤く染めるほど興奮されていた芸術作品を誰にも邪魔されず、そして見られる事も無くご覧になる機会はこの瞬間永遠に無くなることになりますが、本当に宜しいでしょうか?」
「……ん?……ちょ、ちょっと待って……私って、そんな目に見えるほど興奮してたの?」
何度かナギサの誘いにより貸し切りで美術館を鑑賞する機会を頂いていたエスミでしたが、まさか芸術作品を前にして恍惚を浮かべるどころか頬を赤く染めるほど興奮していたとは初耳です。いま初めて知りました。もはやそれは変質者では?
一応度を越えた美術オタクであるという自覚はエスミにはあるものの、前世ではその姿を指摘されたことは一度として無かったため、恐らくこのブルアカ世界に転生したことで生まれてしまった新しい一面と言ったところでしょうか。
と言うか転生したこの世界自体、元がゲーム作品なので勝手に付け足された栢間エスミ専属の〝性癖〟と言えるかもしれません。一体誰得なのか。
ぶっちゃけ、めっちゃ恥ずかしいです。
前世の人生分を足せば十分良い歳をした〝元男〟がなに頬を赤く染めて興奮しているのでしょうか?
ただ当時のエスミの姿を直に目撃し、こうして報告をしてくれたナギサは依然として面白楽しそうに笑みを浮かべて言葉を続けます。
「ええ、今でも鮮明に思い出すことが出来ます。当時のエスミさんはどの作品をご覧になっても興奮からか頬を赤く染めては目もキラキラと輝かせて……それでいて私と話す時は口調だけはなるべく冷静を装っていらっしゃったので、そのアンバランスさが見ていてとても愉快で可愛らしいお方だと思いました……ふふっ、今思えばあの独特な恍惚を浮かべるお姿を私以外の方にじっくりと見られる訳にはいきませんね」
「なっ!? ちょっ、こ、このバカ!! なに君は美術鑑賞を放り出して私の恥ずかしい姿をじっくりと観察なんかしてるの!? わ、忘れろ、思い出すな、口にも出さないで!!」
「鑑賞に夢中で気付かないのが悪いのでは? それよりも、羞恥心から顔を真っ赤にされる今のエスミさんのお姿は何だか新鮮ですね……記念に写真を撮っても?」
「いいから黙ってて桐藤!!」
いくら前世の記憶持ちで精神年齢がかなり上であるとはいえ、美術オタクとしての恥ずかしい姿を目撃され、かつその情景を赤裸々に報告されては正常でいられるはずがありません。
周囲からは『見愡れるほどに美少女』とか『落ち着いていてクール』と言われがちな容姿をしているエスミは今、羞恥心から顔を真っ赤にさせてナギサに掴みかかっていました。
彼女の肩をガシッと掴んでぐわんくわんと力任せに揺らしています。
美術作品を前にして、独特な恍惚を浮かべるエスミの姿とやらが果たしてどんなものなのかは現時点では不明ですが、美しい顔立ちはそのままに羞恥心から顔を真っ赤にさせて声を荒げる今のエスミは……少々、いけない扉を開きかねない危うさを持っていました。
ちなみにナギサ自身、まだ誰も見た事ないだろう彼女の隠れた一面とそんな彼女に詰め寄られているこの状況に少なからず〝役得〟と感じているのでした……割とどうでもいい? それはそう。
「ふふっ、エスミさんがこうして声を張り上げながら恥ずかしがるのは正直意外です。てっきり自覚されているものかと」
「自覚していたら普通は隠すから、そんな変質者みたいな一面!! そ、それよりもこの恥ずかしすぎる情報、まだ誰にも教えてないよね桐藤!? 知っていても言わないでね!?」
「はい。私だけの特権としたかったので誰にもまだ……しかしエスミさんが縁を切ってしまえば私達はもう無関係な立場になってしまう事ですし、つい〝うっかり〟口を滑らせてしまうかもしれません」
「んなっ!?」
クスッと笑うナギサの姿が小悪魔に見えた一瞬でした。たぶん冗談だとは思いますが、彼女なら本気でやりかねないという謎の自信もありました……しませんよね?
「それで如何されますか? 私からのサービスが無くてもエスミさんなら困る事なく、ご自身で美術館に当たり前のように通われる事とは思いますが……果たして先ほどのお姿を気にされる事無く、周囲の皆さんの前で鑑賞することが出来るのでしょうか?」
「無理」
「即答ですか……」
当然です。
自覚がないままこの歳まで成長した以上、無理に治そうと思って意識をよそに向けてしまえば満足に美術鑑賞など出来ません。いっそのことマスク等で変装して鑑賞するという手段もありますが……と言うより、恥をかくぐらいなら絶対にその方が良いです。
しかし出来れば大好きな美術鑑賞ぐらい素の状態で楽しみたいという想いが根本にあるためか、その考えを受け入れようとはしません(自身の作品を前に嘘を言うのも躊躇うほどなので、彼女の美術愛はもはや重症レベルですが)。
それにナギサに指摘されるまでは普通に素の状態で楽しんで来たのですから、今更変えるというのも酷な話です。
……ん? 待ってください、という事はあれでしょうか?
ナギサに出会うまでに楽しんできた幼少時代の美術鑑賞も、実は興奮から頬を赤く染めて目を輝かせるというヤバイ姿を周囲に晒していたという事では?
なるほど……最悪ですね。
当時の年齢的にはまだ健全と言えるかもしれませんが、既に高等部進級を目前として立派に成長している今の姿で周囲に晒してしまえば限りなくアウトに近いです。
いっそのこと、嫌な悪評が広まるか変に誤解をされるぐらいならナギサに頼って美術館を貸し切り、1人で鑑賞をするしか方法はないのかもしれません。
それに当初から予定していたワイルドハント芸術学院への転校も、その辺を考慮すると平穏に過ごすのは何だか難しい気がしてきました。
芸術に溢れた魅力的な学園で、前世の頃から大好きな芸術作品を前にして醜態を晒さないよう素の自分を隠して毎日を過ごす……あまりにも生き地獄では? いずれ発狂してより酷い姿を見せることになりそうですね。
「ちなみに美術資料を眺めている時も同じ表情をされていましたよ?」
「ここに来て追加情報!?」
絶望です。どうやら美術作品の鑑賞はおろか、本といった書籍関係の資料ですら同様の姿を見せてしまうようです。現存する作品ならともかく、文字と写真しかない書籍を前にしても同じ表情になれるとか一種の才能としか言えませんが、これはつまり人が多く集まる図書館がほぼ使えないという事では?
ハッキリと申し上げて、詰みですねこれ。
人目を避けて、おとなしく自宅か部屋にこもって読書するしか方法がなくなりました。
「……はあ」
何だか自分でもドン引きするような意外すぎる一面を知ったことで先の未来が不安で埋め尽くされ、結果として色々と精神的に酷く疲れてしまったのか、ナギサの肩を掴んだまま項垂れるようにして重く大きい溜息を吐くエスミ
「……難儀な性格をしてるなあ……自分」
「……エスミさん」
仮に栢間エスミという少女が羞恥心の欠片も持たない超ド級の変人だった場合、この手の悩みは抱えなくとも問題は無かった事でしょう。律儀にも真っ当な常識と羞恥心をもつ生粋の美術オタクであるが故に彼女はこうして落ち込むのでした。
当初はトリニティから出て行く気満々で、引き留めようとやって来たナギサを悠々と追い返すつもりだったエスミでしたが、今では不安と恥ずかしさから完全に勢いが無くなっています。流石に哀れです。
まあその姿を眺めて、同情から黙っているだけのナギサではありませんでしたが……。
「……ではこう致しましょう。もし私と共にトリニティ総合学園に進んで頂けるのであれば、私は喜んで引き続きエスミさんが鑑賞されたい作品が展示されている美術館を貸し切ります。流石に毎週貸し切ることは不可能ですが、月1回程度であれば問題はありません」
自身の肩を掴んでいたエスミの手を逆に優しく取り、しっかりと両手で握りしめるナギサ。
「他にも美術資料を集め、エスミさんだけが使用されるお部屋の用意も致します。誰にも邪魔はされず、人の目を気にする必要もない……正に、エスミさんだけが美術を楽しまれる特別な空間です」
ぐいっ、と一歩だけ足を踏み込みエスミとの距離を近づけます。
彼女の綺麗な顔を……中でも美しく輝く、その翡翠色の瞳を覗き込むようにしてナギサは不敵に笑みを浮かべました。
「如何でしょうか……他にも、トリニティ自治区にこのまま留まって頂ければ交通や身の安全に関するサポートも私は力を惜しみません。トリニティ総合学園に進まれた後もどうかご安心を。私が学園の運営の側に立ち、貴女のためにあらゆる環境を整えてみせます」
微かに揺れる彼女の瞳から一切顔を逸らすことはせず、握る彼女の手の感触を味わいながら顔を更に近づけます。
「私に全て、お任せください」
そして、まだそれほど大きくはない自身の羽を広げると、ナギサはもう一歩足を彼女に向かって歩みだし――。
「桐藤、それはつまり私のパトロンになるって事と同じだよね」
突如、拒絶の色をその瞳に浮かべたエスミによって動きを阻止されました。
「……察しが良いですね……」
惜しいな。もう一歩踏み込めば、その身体を抱きしめて羽で〝囲う〟ことが出来たのに。
ナギサはふっと息を吐くと静かに彼女から距離を離します。広げていた羽も無意識に畳んで背中へと隠すと、握っていたエスミの手も丁寧に離しました。
「残念です……もう少しでエスミさんを抱き込めたと言うのに」
「さらっと恐ろしいことを言わないで?」
それは文字通り身体を抱きしめるという事なのか、それともパトロンになるという約束をさせるつもりだったのか。
生憎とやり手の政治家みたいな雰囲気をまとって言葉を濁す彼女に追及する気力はなく、 エスミは疲れから溜息を吐き、続けて深く深呼吸をします。ちょっとだけ、距離を縮められた時に彼女から香る良い匂いに脳が麻痺しかけたので気分転換です。
何しろ精神的に脆くなったところを自然と突かれた訳ですから、危うくナギサに堕ちかけるところでした。
しかし――。
「でも……桐藤が私のために動いてくれようとした事は正直言うと、物凄く嬉しい……他の人が同じことを提案したとしても、私は君じゃ無かったらあまり心に響かなかったかもね……」
「そうでしたか……そう言われると、傲慢にもエスミさんの特別になれたような気持ちで心が一杯になります」
「一応……私は、桐藤のことは特別な存在だと思ってるけど……?」
「へっ!? エ、エスミさん!? そ、それはつまり――」
「……あっ、ごめん。今のは聞かなかった事にして」
つい不安定すぎる心境からか、心のうちに秘めていた本音を吐露してしまったエスミ。
ただ、今の言葉に嘘偽りは全くありません。
何しろナギサは画家となったエスミの最初の顧客になってくれただけでは無く、彼女がコンクールに初応募した作品を見て『一目惚れした』と直に感想を言ってくれたのです。1人の芸術家として、才能や成果を心から〝認めて〟くれる存在がいかに大事で心強いものか……それが例えゲームのキャラクターであっても嬉しいものは嬉しいのです。
とはいえ、全員を等しく愛する『箱推しオタク』を自称する前世の自分はエスミの中では未だ健在ですし、今後も他のブルアカキャラ達と出会い関わりを持つ事になったとしても、エスミは変わることなく皆に平等に接しては好意を持つことでしょう。
ただそれとは別に、このブルアカ世界に転生し今この瞬間を生きる『俺』ではなく『私』としての栢間エスミにとって、桐藤ナギサは〝特別〟です。そう……特別なのです。
これは誰にも譲ることはなく変わることも無いでしょう。
もちろん『ブルアカのゲーム本編に関わりたくない』のは依然として変わらない気持ちですが、これまで色々と尽くしてくれた(ほぼ一方的とはいえ)ナギサに対し恩を仇で返すのは申し訳ないという気持ちは、表にこそ出さないだけでエスミは強く感じていました。
「……このまま高等部に進級しても不必要に私に関わらないと約束してくれるなら、一緒にトリニティ総合学園に通ってもいいよ……」
「っ!!……そ、それは本当ですか!?」
「……嘘は言わない」
だからこそ、これはエスミがナギサに提案できる最低限の条件です。
ゆくゆくは、桐藤ナギサは後のエデン条約編の最中で誰にも助けを乞う事が出来ずに疑心暗鬼から酷く苦しみ、精神が擦り減ってしまう日々を送ってしまいます。それは前世におけるブルアカのゲーム本編で迎えた彼女の避けようのない人生であり、超えなくてはいけない絶望と苦労の壁になります。
その未来を変えるつもりは全くありません。
しかし、その未来に到達するまでの間は『俺』ではなく『私』で生きる栢間エスミとして、少しだけ彼女の傍にいてあげるべきではないでしょうか? もちろん世話になった恩返しという意味をこめて。
不思議なことに、ナギサは過剰とも言えるほどの大きな好意をエスミに寄せてくれています。
その理由は全く不明で、エスミの方から何度か理由を尋ねみても彼女は頑なに『運命ですから』としか返してくれませんが、エスミと関わる度に笑顔を見せている事から少なくとも彼女に良い影響を与えているのかもしれません。
まあ高等部に進級して何年か時が経てば、ナギサも立場上からいつまでもエスミに拘り続けるのは難しくなるとは思います。その結果に行き着くまで、傍にいるぐらいは許されるでしょう。
(可能ならエデン条約が始まる前ぐらいにひっそりと姿を消せたら物語にも支障は無いだろうし、タイミング的にも丁度良さそうだしね)
その為にも恩返しとして力になれるよう、かつ栢間エスミが突然姿を消してもあまりショックを受けないギリギリの付かず離れずの距離感を保つため『不必要に関わらない』と条件を出したエスミでしたが、対してナギサは深く考える事もなくあっさりと返事を返してくれました。
「エスミさんに絶対に会えないという事ではありませんから、この程度の条件は私にとっては許容範囲です。エスミさんから何度も頼って頂ける人物になれるよう私は努力いたします。文字通り、身を粉にするつもりで」
「……無理はしなくて良いからね」
あと出来れば私にそれほど依存しないで貰えると嬉しいかな、とは今のナギサには言えないため口を閉ざしたエスミでしたが、果たしてこの言葉を今ここで言わなくて良かったのか。それは遠い未来で明かされる事でしょう。
それよりも思いのほか、こちらの提案をすぐに呑んでくれて助かりました。美術鑑賞の時に見せてしまう自身の恥ずかしい一面に関しては……追々考える事とします。
「……さて、ではこれでエスミさんは今後ともトリニティに留まって頂けるという事で決まりでしょうか?」
「うん? まあ……そういう事になるね……てっ、待って。近いから」
先程はだいぶ距離を離していたはずなのに、喜びからかまたも距離を急激に詰めてくるナギサ。まだ幼いとはいえその美しく整った顔面は目に悪い!! と顔を背けるエスミですが、彼女の顔も大概顔面偏差値の暴力ですので傍から見れば説得力に欠けます。
しかし前世の記億は定かではありませんが、桐藤ナギサとはこんなにも感情表現を身体で表してくるキャラだったでしょうか?
幼馴染の少女と精神が入れ替わったりしてません?
「……まあそれより、今度は半年後の入学にむけて準備しないとだね……大変だなぁ」
ひとまずナギサが条件を呑んでくれたからとはいえ、約束通りトリニティ総合学園に行くと決めた以上、早速ながらエスミはそれに向けて行動を開始しないといけません。引っ越し云々に比べればこの程度大した事のない負担ですが、また一から始まる準備ですので自ずと彼女の口からは溜息が出てしまいます。
「え?…………半年?」
「……ん?」
ところが疑問を抱くようにして発したナギサの声に、エスミは思考を中断させて首を傾げます。
はて、別に間違ったことは言っていないはずです。彼女とエスミは同年代ですから共にトリニティ総合学園の高等部に進級する仲のはずです。
「…………失礼ですがエスミさん。私たちの入学は1年も先の話です。何か勘違いをされているのではないでしょうか?」
「いや、お互いの年齢を考えたら数か月後には入学しないといけないはずだけど……?」
「……まさかっ……!!」
突如として何かに気付いてしまったらしいナギサは、エスミに対し何個か簡単な質問をしました。エスミからすれば『今更なんでこんな質問を?』と思わざるを得ない内容の質問です。
ただしその結果、ナギサが驚きで目を見開くほどにとんでもない事実が判明したのでした。
「エスミさん、私より年上だったんですか!?」
「……むしろ桐藤って私より年下だったの?」
どうやら栢間エスミ、転生者15歳(精神年齢を省く)。
ナギサ達を含めたトリニティ総合学園のブルアカキャラ達より、年齢が1つ上だったようです。
(あれ、つまりはこれ。ナギサ達が3年の時に開始されるゲーム本編に私が巻き込まれる心配は無いってこと?)
ちなみに世間では彼女がふと抱いたその考えを〝フラグ〟と言います。
栢間エスミの秘密・4
・実は……留年してる。
(現在18歳)
もしも仮にブルアカ世界に転生して生徒になれるなら、どんな武器を所持して愛用したいですか?(※作者は愛用するならリボルバーしかあり得ません.)
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拳銃(M1911,グロック等)
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リボルバー(SAA、コルト・パイソン等)
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自動小銃(HK416、AK-47等)
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短機関銃(M1921、MP5等)
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小銃(M1ガーランド、Kar98k等)
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散弾銃(ベネリM4、AA-12等)
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機関銃(MG42、M249等)
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対物ライフル(AW50、ヘカートⅡ等)
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擲弾発射器(M79、ダネルMGL等)
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素手