夢叶って画家になれた転生主は、ともかくブルアカ本編に関わりたくない 作:木暮鬼一
アビドス自治区に良い思い出はあるのか、と問われれば『それなりにある』とエスミは答える事でしょう。
実際、現在進行形で衰退し砂漠に飲み込まれつつある自治区とは言え、各所にはまだ歴史のある遺物や景色が残っているものであり、創作のインスピレーションを得たいエスミからすれば案外アビドスの景観自体はそれほど悪くはありません。
それに権謀術数や政治争いにまみれたトリニティから離れ気分転換を図る場所としても、過疎化が進んでいる事から逆に静かで空気の良いアビドスは十分その条件に適しており、自身の疲れた体を休める目的でエスミは時間さえ合えばよくここに訪れていたのです。
ただし、そんな日々も突然終わりを迎えました。
いえ、正確にはエスミ自身がその日常を終わらせたのです。
『どうして……ユメ先輩を突き放したんですか……どうして、あの人を見捨てたんですか?……あの人のことが、本当は嫌いだったとでも言うんですか?』
それはエスミが他自治区行きのバスを待っている間のこと。
ギラギラと照りつける太陽の光を浴びながら汗一つかくこともなく、まるで彫刻のようにバス停の椅子に腰を下ろしているエスミの下に暗い空気をまとった小柄な少女がふと駆け寄ってきました。
その少女の名はホシノと言いました。
観光や気分転換目的で通うようになったこのアビドスで親しくなった生徒になります。
それこそ年上であるエスミのことを何かと強く慕い、時々熱のこもった視線を向けてはエスミが声をかけると緊張からか顔を赤くして途端に静かになってしまうという、なんとも可愛らしい一面を持つ少女。
ブルアカでも屈指の人気を誇り、そして梔子ユメ関係では色々とかなり重く大きい闇を抱えているキャラでもあります。
そんな前世からの転生者であるエスミからすれば文字通り関わりたくない原作キャラである彼女は今、普段からエスミに対して向けている明るさに満ちた感情を一杯封じ込め、代わりに〝怒り〟に満ちた目を向けていました。
『君がそう思っているなら、特に私から言うことは何も無いよ。君の言う通り、私は彼女のことが昔から〝嫌い〟だったからね』
エスミの視線がゆっくりと少女に向けられ、そして表情を変えることもなく、また感情のこもっていない様子で口を開きます。
とはいえその姿はまるでホシノの態度に心底納得しているような口ぶりでもありました。いいえ、むしろ『君はそう思うべきだ』とその翡翠色の瞳が言っているようであり、ホシノの表情が不快感で強く歪みます。
『ふ、ふざけないでください‼ 貴女に限ってそんな……そんな酷いことを、ユメ先輩にするはずがありません!! いつも優しい顔をしてアビドスのために協力してくれた貴女が、実はユメ先輩を嫌っていたなんてそんな……そんな真っ赤な嘘、私は信じませんよ!!』
ジャリッ、と地面の上に積もっている砂を踏みつけ、ホシノが足を一歩踏み出します。
しかしそこから先の歩みを止めるようにして、エスミの鋭い視線が少女に向けられると、文字通り睨まれた獲物の如くホシノは完全に動きを止めてしまうのでした。
『実際にその現場を見た訳でもない君に一体何が分かるの? 君がこうして私のところに来て今さら梔子のことが好きか嫌いかを尋ねて来たということは、きっと例の〝噂〟でも耳に入れたんだろうけど、その噂の真偽を確認するつもりは無いし、そもそも信じるか信じないかは君の自由なんだよ?』
『その噂というのは、栢間先輩が砂漠に向かう前のユメ先輩が最後に会った唯一の関係者で、あの人と酷い言い争いをした末にユメ先輩を拒絶して突き放したとかいう、あの根も葉もない話の事ですか?』
エスミは返事をする代わりに小さく頷きました。しかしホシノは依然として納得していない様子で眉をひそめます。
『ふざけないでください。私が、あんなふざけた噂を本気で信じてると……本当にそう思ってるんですか?』
『でも気になったからこそ、直接確かめるために君は私に会いに来たんだよね。どうして彼女を突き放したんですか、なんて私に出会って早々怒りに身を任せて聞いてくるんだから、割と真面目に例の噂を信じていると思うんだけど……違うの?』
『……そんなの……あの噂は全くのでたらめで……全然違うと分かっていたからこそ、貴女に会いに来たんです……』
『なら直接尋ねて私の反応を見た今、どう思ったの?』
『…………』
ホシノは答えません。
しかし、それは当然です。
例の噂について肯定することも否定することもしなかったエスミ。あれだけ仲良く接していたユメのことが、実は昔から嫌いだったと特にこれといった感情を乗せることもなく口にしたセリフ。その裏表のない一連の行動のせいで、エスミの真意が全く分からなくなったのです。
本当に彼女はユメのことを拒絶し、突き放したのかもしれない。
本当に彼女はユメのことが嫌いで不満やストレスを抱えていたのかもしれない。
ホシノにとって唯一無二の先輩である梔子ユメが砂漠で遭難し、結果的に死亡してしまった悲しき事故が、実はエスミが彼女を拒絶したことで起きたのかもしれない。
『……っ!!』
当然、ホシノは分かっています。
こんなこじつけにも等しい他責思考。あまりにも話の筋としては破綻しています。
元々の原因はユメの目の前でポスターを破り捨てて一方的に彼女を拒絶した自分であるはずなのに、そんなユメに対し事実上のトドメを刺したのがエスミであるかのような、あまりにも浅はかで醜い考え。
しかし、実を言うとホシノは心の何処かで信じていたのです。
自分に拒絶されたと思い込んだユメの心を、目の前にいる栢間エスミなら間違いなく救ってくれたに違いない、と。
いつものように呆れつつもユメを励まし宥め、そしてその無謀さに付き合って窮地を救ってくれたに違いない、と。
何故ならホシノがこれまでに見てきた栢間エスミという人物は、常にそういう姿を彼女に見せてきたのです。
ですが、現実は非情です。
楽観的すぎる姿勢をホシノに怒られ、ポスターを目の前で破り捨てられたユメはそのままたった1人で砂漠へと向かい、方位磁石も無しのまま最終的に脱水症状で彼女は命を落としました。この手のトラブルにおいて非常に頼りになるはずの人物が丁度このアビドスに滞在していたにも関わらず、です。
もしも彼女に最後に会ったというエスミが、理由はさておき彼女を拒絶せずにいたら?
もしも彼女の無謀な行動を止め、または砂漠で遭難しないよう準備をしっかりするよう事前に忠告していれば?
きっとユメはあのまま砂漠で干からびて、死ぬことは無かったかもしれません。
それこそ、彼女のことが昔から嫌いだったと先ほど口にしたエスミが、ユメを拒絶するときに心無い言葉を投げつけた事で精神が非常に不安定となり、余計にユメの行動を暴走させた可能性すらあります。
『……栢間先輩のせい、なんですか?……いや私と貴女のせいで、ユメ先輩はあんなことに……?』
とはいえ、まだエスミから例の噂の真偽について嘘か真かについて明確な答えを貰っていません。
それこそユメの事が嫌いだった、という発言に関しても、あまりにも感情がこもっていない事から真っ赤な嘘である可能性すらあります。
しかし既に敬愛するユメを拒絶し、たった1人で砂漠へと向かわせてしまった罪悪感で心が一杯となっている今のホシノにとって、もはやそれらの言動を冷静に判断する余裕は無くなっています。
目の前にいるエスミもまた自身と同じ罪人だ。
いいや、むしろ救えたはずの命をあえて無視して手放した。悪魔に違いない。
思ってはいけないこと。
そう鵜呑みにしてはいけないはずの情報と怒りが、瞬く間にホシノの身体を包み込み始めました。
『……どうして……どうして今なんですか!? どうして、よりにもよってこのタイミングであの人を見捨てたんですか!? なんで、何で今になって……‼』
気付けばホシノは勢いよくエスミに近づくと、そのまま彼女の服の襟首を掴み、強引に揺らしながら激しく詰め寄ります。
仮に本当にユメのことが嫌いだったのなら、心の底から彼女の事を拒絶したかったのなら、何も今それをする必要は無かったはずです。
自分が最初にユメのことを拒絶しておいて何様だと言われるかもしれませんが、それでもエスミがそのような行動を取るなんて心底信じられない事であり、同時に深い失望をホシノは今味わっていました。だからこそ今のホシノが取っている行動は正に怒りと失望に囚われた暴走なのです。
そして彼女は、そのまま依然として椅子に座ったままのエスミを押し倒し、件の詳細について更に問い詰めようとした次の瞬間……いきなり腹部に大きな痛みを感じ、続けてドンッ、ドンッと相次いで大きな衝撃が彼女を襲いました。
『っぅ!?』
まるで鈍器で直接殴られたかのような痛み。それを立て続けに何回も味わったことで、すぐに苦しそうにしながらホシノはエスミを突き放すと、そのまま後ろへ大きく後退しその場で息を整えるため膝をつきます。
そして何とか視線をエスミへと向けた彼女の目に、硝煙が立ちこもる22口径のル・ホーショー・リボルバーを右手に手にしているエスミの姿が映りました。
座った状態からでも素早くホルスターから抜いて相手を撃つことが出来るとされる抜き撃ち、その名もリバース・ドロー(またはキャバルリー・ドロー)。
本来ならある事情から右脇のショルダーホルスターに収めている45口径のリボルバーをエスミは使いたかったのかもしれませんが、先ほどはホシノが詰め寄るために密着していた為、仕方なくリバース・ドローが可能な右手専用の22口径を使用したのでしょう。
しかしながら当然、威力としてはあまりにも小さすぎる22口径を使用したことで、6発全弾を撃ち込んでもホシノを完全に停止させる事こそ叶いませんでしたが、それでも動きを封じ込めるには十分でした。
『……げほっ……ごほっ……くっ……』
まだ高等部1年という若さゆえに怒りに呑まれて暴走してしまったホシノ。
当然、いきなり襟首を掴まれ激しく揺らされた被害者であるエスミは苦しそうに息を整えると、ようやくバス停の椅子から立ち上がり、そのまま丁寧な動きでリボルバーから空になった薬莢を排出します。
ちなみに普通ならカラン、カランッと地面に当たって甲高い金属音が鳴るはずが、全て砂にまみれた地面に落ちたことで音が吸収され、ただ無音だけが周囲に広がりました。
一方で銃撃という形ではあったものの、半ば強制的に冷静になるよう物理的に制止されたホシノはと言うと、ようやく自身が先ほど取ってしまった行動がいかに愚かで軽率だったかを自覚し、顔を青白くしながら恐る恐るエスミに視線を向けていました。
『…………』
エスミは、ただ黙ってホシノを見つめます。
彼女の右手にはいまだに愛銃であるリボルバー、通称【炎の人】が握られていますが、空になった薬莢を排出しただけで弾の補充はしていません。それでも微かに右手が震えており、それが恐怖心から来る震えではなく彼女が抱えている右手の障害による痛みによる震えであるのは明白でした。
彼女は今、無理に利き手である右手を使用した事で例の強い痛みが起こり、戦闘を続行することが出来ないのです。とはいえ全く障害のない左手でもう1つのリボルバーを使わないでいるのは、ホシノに対する情けから来るものなのでしょうか。
何であれことの真意は彼女のみしか知り得ません。
しかしこの瞬間、ホシノにはある意味で逆転のチャンスが与えられました。
優れた戦闘能力を持っているホシノにとって、22口径の弾丸6発など大したダメージではありません。
ただ生憎と彼女が普段から使用している愛銃のショットガンは今手元にはありません。それでもエスミに肉薄して、そのショルダーホルスターに収められている45口径のリボルバーを奪い取ることぐらい簡単です。
もっともそんな事をせずとも、普通に肉弾戦で彼女を制圧することすら今のホシノなら十分に可能でしょう。
『……すみません……』
ですが、彼女は反撃に出ることはなく謝るという選択を取りました。
何であれ撃たれたことで多少は頭や心が落ち着いたのでしょう。というよりも、今のホシノは見るからに落ち込んでおり、反撃はおろか口論をする余裕さえなさそうです。
エスミはそんな少女の姿を見つめながら、嫌そうにしながら言葉を投げます。
『梔子のことで……私が間接的に死に関わってるからと、恨みたいならそうすればいい。例の噂についても信じるか、信じないかは君自身で判断すれば良いんだから……その代わり私は、もう二度とこの自治区に足を踏み入れるつもりは無いから……』
すると直後、道路の遥か向こうから1台のバスがやって来るのが見えました。このアビドス自治区において他の自治区にいける唯一の交通手段です。
エスミは『ようやく来た』と言わんばかりに視線をそのバスへと向けると、もう話はこれで終わりだと右手にあるリボルバーを静かにホルスターに収めました。そして『これで良い……これなら問題ない』と小さく呟き、そのままホシノに背を向けバス乗り場の方へと再び歩みを進めます。
『……けど……私は、諦めません……』
『……ん?』
ところが、そんな彼女を止めるようにしてホシノが何とか声を絞り出し、そう口にしました。
予想外のことにエスミは思わず足を止めると、少女に振り返ります。
『……小鳥遊?……』
『今回の件で、私は栢間先輩のことを……いえ、エスミさんのことをちゃんと深く理解する必要が生まれました……本当にユメ先輩を見殺しにしたのか、それとも違うのか……だって……まだエスミさんの口から例の噂に関して本当の〝答え〟を聞けていませんから……』
『…………』
『エスミさん……私、今回のこと絶対に忘れません。そして決めました……貴女の口から本当の真実を聞き出すまで、私は貴女の背中を……本性を理解するまで永遠に追い続けます……けど、どんな事情があったかは分かりませんが、ユメ先輩にしたことについて私は貴女のことを心から憎みます……もちろん今まで抱いていた尊敬が消えることは無いですけど……でもユメ先輩があの砂漠で死んでしまった以上、貴女があの人を見捨てたのは覆ることのない事実です……それだけは、絶対に許せません』
『それは、今後はずっと私に対して愛憎を抱くということ?』
『そうですね……今だけはそうだと思ってください……だから、もしまたこのアビドスに足を踏み入れることがあれば、その時は絶対に貴女を逃しはしませんよ……それこそ今だってまた掴みかかりたいのを必死に抑えてるんです……次会った時に貴女に一体何をするか、分かったもんじゃありませんから』
エスミは微かに背筋に悪寒が走る感覚を味わい、先ほど収めたばかりのリボルバーに痛みが未だ続く右手を自然と動かしました。それだけ今のホシノの口から出てきた言葉が嘘偽りのない本心であると見抜いているのです。
『その時は……防衛本能から、また君をこの銃で撃つかもしれないよ』
『なら、その時は銃が抜けないようにその右手首を掴むだけです……一応忠告はしておきますけど、エスミさん……本気ですからね?』
まだ髪が短く、原作のホシノにはまだ遠く及ばない姿をしている現在高等部1年の彼女の目には、不思議なことに本気以上の執念を感じさせる何かが宿っていました。
『それが嫌なら……私から、自分の身を守り抜く自信が無いなら……絶対に、ここに戻ってこないでください。絶対です。何があったとしても』
『……もちろん、元からそのつもりだよ』
やや自信のない様子でエスミがそう言葉を返すと、納得した様子でホシノはゆっくりと立ち上がり、そのまま何の感情もこもっていない表情でエスミをじっと見つめると、そのまま何も口にすることは無く静かにその場を去りました。
『…………』
エスミはそんな様子の少女の背中を複雑な心境で見送り続けると、気づけば甲高いブレーキ音を奏でながら待望のバスが彼女の下に到着するのでした。
《1-2》
〔アビドスには、あまり良い思い出がない感じなのかな?〕
その質問は恐らく、単なる好奇心から出てきたのでしょう。
彼女の本心を探る目的でそう尋ねてきたわけではないと、曇り一つない純粋すぎる瞳がそれを物語っていました。
とはいえ、そういう質問をこの移動中のバスの車内でされるとは心底思いもしなかった少女こと……エスミは半ば呆気にとられた様子で隣に座っている大人の顔を見つめるのでした。
「……面白い質問ですね。どうしてアナタはそう思ったのでしょうか」
〔うーん。なんだろうね、勘と言うべきなのかな……私のためにわざわざ案内をしてくれて助かっているけど、それにしても空気や表情があまり乗り気じゃなかったから……かな?〕
「……そう、ですか」
エスミは妙に納得したような様子で小さく頷くと、微かに揺れ続けるバスの振動に身体を預けながら静かに視線を車内の窓に移します。そこには次第にアビドスの自治区へと近づき、様変わりしてゆく景色が広がっていました。
そう、何てことは無いただの景色。
そのはずなのに、かなり久しぶりにアビドス行きのバスに乗ったことで昔の記憶を無理やり思い出した彼女はシャーレの先生に気付かれないよう溜息を吐きました。
「まあ……そんな感じですかね。一応、良い思い出だって片手で数えるぐらいにはありますよ。ただし、あまり思い出したくはない感じですね。特に……あの地に関しては」
〔アビドスにいるお友達と喧嘩でもしたの?〕
「ふふっ、まさか……私は今日まで〝友人〟を持とうなんて思ったことは一度もありません。つかず離れずの関係で十分満足している身なので……それこそ何てことは無い、ちょっとした苦い思い出を残して以来、全くあの自治区に寄り付くことが無かっただけです」
〔…………そうなんだね〕
どこか昔を懐かしみ、それと同時に後悔を抱いているような口振りでそう言い切ったエスミを眺めながら、キヴォトスの外部からやって来た大人ことシャーレの先生はただ黙りました。それは大人としての余裕なのか、それとも善意なのか、どちらにしろ彼女の本心を無理に引き出すことはしませんでした。
そして先生の視線が彼女のある部位に向けられると、この場の空気を払拭するためにいっそのこと話題を変えようとでも思ったのか、今度はこう尋ねてきました。
〔ところで、その右手だけど……片手だけ革手袋をはめてるなんて珍しいね。今のキヴォトスで流行ってる独自のファッションだったりするの?〕
「ん? ああ、これですか」
エスミの綺麗で真っ白な肌を覆い隠している真っ黒な革手袋。
彼女の手に対して少しサイズが大きすぎるのか、遠目から見てもやけにその革手袋が目立ちます。
先生としては初めてエスミに出会った時から気になっていた部分だった為、この場を借りて一度尋ねてみることにしたのです。
「私の右手ですが、少し障害を抱えていまして。この手袋はそれを緩和するために身に着けているんですよ」
〔障害?〕
「はい。触覚過敏と呼ばれる症状です。聞いた事はありませんか?」
シャーレの先生は首を横に振り、彼女がロにした単語に心当たりはないと否定しました。
まあ無理もない。只でさえ滅多に聞くことのない症状なのですから。
とはいえ説明しない訳にはいかないため、エスミは自身の目をすっと細くすると、続けて自身の罪を告白するかのような調子で苦笑しつつ説明を始めました。
「簡単に言えば、通常に比べて手の感覚が過敏になってしまう病気です。布や紙といった些細な物質を触ることは勿論のこと、人の肌に指先で触れただけでも過剰に感じてしまいます。もっとも本来の触覚過敏というのはモノに触れただけで生理的に強い不快感を感じてしまう病気のはずらしいのですが、私の場合はそういう不快感はあまり来ないので少し特殊なケースのようですね」
〔それは何というか……大変だね。生活に支障はないの?〕
「流石にこの症状を患った当初こそ、普通の生活をおくるのは中々に酷で大変でしたが、今はもうすっかり慣れてしまいました。見ての通り、革手袋越しに触れる分なら全く支障はありませんし、右手自体の使用を控えるだけで十分ですから……それに触覚過敏になるずっと前から、私の右手は長年の酷使の影響で薬を飲まないと激痛が走る問題を抱えていたので、元からこういった環境には慣れています」
ちなみに現在は触覚過敏という厄介な症状を持ったことで、エスミは以前に比べて右手の使用をこれまで以上に控え、かつ右手の長時間の使用も少なくなった為、緊急時の薬を飲む必要に迫られるほどの激痛を味わうことはほぼ完全に無くなりました。
ある意味で、触覚過敏という病気そのものがエスミの右手の寿命を延ばす形となったのです。
故にエスミとしてはこの触覚過敏に対して礼を言うべきなのか、それとも新たな問題を抱えたとして頭を悩ませるべきなのか、まだしっかりとした感情の判断を下せていません。
「何であれ、まあそう心配しないでください。何てことは無い。ある1人の生徒の身に降り注いだちょっとした不幸話ですから」
〔……それは……その……〕
「ああ、それに話をしていたら……ほら、もうすぐアビドスですよ。あの向こうに見える街並み。あれがアビドス自治区です」
エスミはそう言って話題を無理やり変えると、本当なら戻ってきたくは無かった自治区の街並みを目にしながら静かに座席の背もたれに身体を預け、再び溜息を吐きました。
(大丈夫、大丈夫……このまま原作主人公のこの人をあの自治区で下ろして、数時間後にまた来るバスに乗って私だけ先に帰る……そうすれば特に問題はないはず……バス停はアビドス自治区の一番端にだけ止まるし、学園の校舎からも全然遠い……心配ない……うん、心配ないはず……)
彼女はそのまま『いざという時は銃を抜いてでも彼女から逃げよう』と覚悟を決めると、自身の右手を愛銃の炎の人に添えるのでした。
しかし、現実はそう簡単にエスミを逃してはくれませんでした。
シャーレの先生と別れ、そのまま帰りのバスを待っている間、普通なら自治区の中心部にいるはずのホシノと偶然再会してしまったエスミ。
思いがけない再会に流石のエスミも激しく動揺してしまい、咄嗟の行動も取れないまま彼女に動きを封じ込められてしまった彼女は、ホシノの口から出て来たこの言葉に身を震わせたのでした。
「帰しませんよ?」
≪1-3≫
そして現在、そのまま彼女が住む家へとほぼ強制的に連行されてしまったエスミは、どういう訳か彼女と一緒にお風呂に入っているのでした。
「???????」
文字通り、何も着ていない素っ裸の状態です。
それこそ綺麗で肌白いエスミの裸体をこれでもかと周囲に強調させることの出来る数少ない状況。普段なら勝手に部屋に泊まりに来て、共に風呂に入る仲である聖園ミカや百合園セイアにしか見せないエスミの貴重な裸体ですが、今はその身体を小鳥遊ホシノが顔を真っ赤にして見ていました。
「……その……流石に大きさではユメ先輩には劣りますけど……エスミさんも中々……す、凄いですね……あと肌が雪みたいに真っ白……とても綺麗です」
「……ひとまず、私はその発言に対してお礼でも言うべきなの? あと何で私は君と一緒に風呂に居るの?」
とはいえ、他人に見られているという羞恥心よりも、あのホシノと一緒に風呂場にいる事実に対して困惑の方が遥かに勝っているエスミは眉をひそめながら首を傾げます。
すると、熱のこもった目でまじまじとエスミの裸体に視線を注いでいたホシノは慌てて咳払いをすると(だからと言って先ほどまで彼女の身体をガン見していた事実が消える訳でも無いのに)自身も素っ裸であることを気にしていないのか、それとも同性すら魅了してしまうエスミの裸体の前で感覚が麻痺してしまっているのか、トンッと自身の胸に拳を当ててこう言うのでした。
「裸の付き合い、という言葉があるので私達もそれに倣ってみるべきだと思いました」
「……そう……」
たぶん、こういう事の為に使われている言葉では無い気がする、と彼女に指摘するだけの気力すら沸くことが出来ず、エスミはそのまま深い溜息を吐くのでした。
小鳥遊ホシノ→栢間エスミ
・かつての憧れの人。梔子ユメ関係で間違いなく秘密にしていることがあると分かっているが、その真実が何であれユメが死んでしまっている以上、彼女を見捨てことに変わりは無いので特段憎しみもある。
・ただしユメの件では自分自身にも非があるとちゃんと認識しているので、やり場のない怒りをただエスミにぶつけているだけでもある。
※2年前に交流していた頃から薄々分かっていたが、現在エスミのある部分を直視したことで改めて『……デカい』と感想を抱くぐらいには無自覚にもエスミの身体に興味津々。というより、当時は身近にエスミよりも遥かにヤバイものを持つ先輩がいたので普通に感覚が麻痺していただけ。
もしも仮にブルアカ世界に転生して生徒になれるなら、どんな武器を所持して愛用したいですか?(※作者は愛用するならリボルバーしかあり得ません.)
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拳銃(M1911,グロック等)
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リボルバー(SAA、コルト・パイソン等)
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自動小銃(HK416、AK-47等)
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短機関銃(M1921、MP5等)
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小銃(M1ガーランド、Kar98k等)
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散弾銃(ベネリM4、AA-12等)
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機関銃(MG42、M249等)
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対物ライフル(AW50、ヘカートⅡ等)
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擲弾発射器(M79、ダネルMGL等)
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素手