ルビコンと竜   作:LAMMERGEIER/40F

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(ナイトレインに脳を)やられてしまいました。
まさかこんなに(楽しさを)感じるとは思わなかった。



マッハチェイサー

 

『暇だな……』

 

『気を抜くな、いつ企業勢力が攻めてくるか分からないぞ』

 

欠伸をした兵士を、もう片方の兵士が注意する。

彼らはルビコン解放戦線の警備隊。

 

『しかしよ、こんな所に誰か来るわけないだろ?』

 

と、言っても彼らが守るのは戦術的価値の低い僻地。

敵は滅多に来ない場所で、オマケに乗っているのはBAWS製の量産型二脚MT(動く的)

集中しているのは相方だけでもう片方はやる気がなさそうだ。

 

『わからんぞ、例えばアーキバスの番号付き……あそこのトップはこのルビコンを練り歩いているらしいじゃないか。もしかすれば、今も近くを徘徊しているかもしれない』

 

『おお怖い怖い、気を付けねえと……』

 

相方の言葉に取り敢えずの共感を示し会話を終えようとした、その時だった。

 

まるで鋼鉄のような『何か』が、彼ら目掛けて超高速で突っ込んできた。

 

運悪くそれの軌道に立っていた片方の警備は、それに気付く間も悲鳴を上げる間もなく轢き潰される。

 

『な、なん……』

 

『邪魔だ』

 

残るもう片方も、いつの間に迫っていた影に跳ね飛ばされ反応を消す。

 

その後、反応が途絶えた事を不審に思った警邏隊がその基地を訪れるも、後に残っていたのは血肉混じりの鉄塊がふたつ。

『何か』が居た痕跡はあれど、付近に影はなく、下手人の捜索は早々に打ち切られるのだった。

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

超高速で空を駆る一機のAC、それに乗り込むパイロットV.I フロイトは回想する。

 

今日も、彼は退屈な任務に勤しんでいた。同僚(スネイル)は相変わらず不機嫌そうで、しかし自分の実力は頼りにしているのか馬車馬のように働かせてくる。

それ自体はいい。むしろ戦場に出られるのは好都合だ。だがしかしこの星には本気を出すまでもない退屈な相手しかいない。

 

彼が求めるのはただ一つ、強者。そう例えば……

 

今、自分の目の前を超高速で飛行する生命体のような。

 

『逃がさん』

 

ファーストコンタクトから、ずっとその行方を追い続けてきた。情報処理に優れた同僚たち(V.IIIオキーフ、V.VIIIペイター)に頭を下げ対象の出現記録を収集、そこからある程度の巡航ルートを割り出した。メイン機体(ロックスミス)とはまた別、対象を追跡するためだけのACも一から組み上げた。

万全に万全を重ね、そして今日。再び相見えたのだ。

 

あの時は追いすがるので精一杯だった。しかしそれはロックスミスが速度に優れた機体でなかった故。彼が今操るのはあの速度に特化した系列企業(空力キチ)、シュナイダーが作り上げた技術実証機(LAMMERGEIERシリーズ)を軸に土着企業(エルカノ)の軽量パーツを使った混合機体。

 

耐久力をドブに捨て戦力としては全く期待出来ないものの、速力は文句無し。

そして、更に速度の上がる巡航モードに切り替えれば…

 

『…追い付いたぞ』

 

こうやって、音速以上で飛行する対象と並走することも可能になるほどだ。

 

そして、それと目が合う。

あの時は一瞬しか見えなかったこの目、まるで青空をそのまま切り取ったかのような澄んだ蒼が美しい。

 

流線型のシルエットに突起、肉などといった飛行の邪魔になる要素は一切無く、それ故のこの高速飛行なのだろう。

一枚だけ写真を撮っておく。シュナイダーに送れば、技術者が狂喜乱舞する光景が目に浮かぶ。

 

しかし一番目を引くのは翼のような部位。

人間が開発した文明、ジェットエンジンにもよく似たその部位を持つこの生物は、一体どのような歴史を辿りこの進化を選んだのだろうか。

 

そうして観察していると…

 

(む?)

 

目の前になにか、巨大な建造物が見えてきた。

 

(あれはたしか…壁とか言ったか。解放戦線の砦だったか?)

 

それは、こいつの追跡と比べれば実にくだらない、だから跳ね(バックレ)た任務の作戦地域でもある。

しかしいつの間にこんな所まで来ていたのか。

とにかく、今ここに用はない。回避しようと思ったその時。

 

『……っ!?』

 

謎の爆発が、フロイトたちを襲った。

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

ルビコン解放戦線が誇る要塞、通称『壁』の最上階にて一人の独立傭兵と一機の重戦車が鎬を削りあっていた。

 

独立傭兵、名をレイヴン(621)。アーキバスからの依頼でこの壁越えに参加した謎多き独立傭兵。

 

重戦車、名をジャガーノート。この『壁』を要塞たら占め、企業勢力の侵攻を閉ざす不落の門番。

 

《621、僚機が離脱した。ここからは囮は無しだ》

 

『がんばる、ます』

 

しかし勝負はほぼ一方的。素早いACに対し子周りの聞かないジャガーノートは翻弄されるばかり。

 

苦し紛れの砲撃が飛んできたがそれを難なく回避してみせる。

 

『これで、おしまい』

 

そう言って右腕部に装備したパルスブレードを起動した、その時だった。

 

戦場のど真ん中に、突如として『何か』が墜落してきた。

 

《なんだ!?》

 

土煙が晴れると、そこにあったのは二つの影。

片方はわかる。ACだ。全身見たことの無いパーツだが、その胸部にはパイロットが乗るであろうコアブロックが見える。

普通見えていてはいけない部位、というのは内緒だ。

 

しかしもう片方。そちらはまるでおとぎ話に出てくる龍のようであり、しかし現代で言うところの航空機のようにも見える。とても不思議な生命体だ。

 

『…全く、最高の気分だったのにな』

 

《……V.I フロイト?何故、今ここに…》

 

その声を聞き、621の雇い主ウォルターは驚愕する。

そもそもの話として、今回の作戦はV.Iが不在だからと、その隙間埋めとして621はねじ込まれたのだ。

 

それが、何故。反応から察するにトラブルのようだが、本人がここに居るのか。

 

『ねね、だい、じょうぶ?』

 

『お前は…独立傭兵か。今の砲撃はお前が?』

 

『ううん。あれ』

 

621が指差すのはジャガーノート。確証は無いが、恐らく自分が避けたロケット弾の何れかが彼らに当たったのだろう、と621はそう考える。

 

『そうか。ずいぶんな挨拶だな』

 

《くっ、V.IVに続き企業勢力が次々と…!だがここで全員仕留めてみせる!灰かぶりて……》

 

我らあり。そう啖呵を切ろうとしたジャガーノートに襲いかかるのは超高速の影。

 

全身から赫いエネルギーを放出するそれは、フロイト共に墜ちてきた生命体だった。

 

《な─》

 

『おい、俺の獲物だぞ』

 

一瞬にして鉄壁の装甲がひん曲がったことに驚愕する間もなく、企業勢力最強の男が襲い掛かる。

 

受けたのが正面、つまり最も装甲が厚い部位で尚且つ武器も火力に乏しいレーザーダガー(VP-67LD)。故に一撃で撃沈されなかったが、しかしそれは果たして幸運か、これから訪れる恐怖から解放してくれなかった不幸か。

 

『…ウォル、ター。わたし、どうすれば、いい?』

 

《…V.Iの戦いをよく見ておけ。きっと、いつか役に立つ》

 

完全に蚊帳の外と化した猟犬とその飼い主は、圧倒的な速度でジャガーノートを削り取っていく二頭の怪物(モンスター)をただ眺めることしか出来なかった。

 

 





フロイトの機体

機体名:DREAM THEORY

頭:LAMMERGEIER/44F
胴:LAMMERGEIER/40F
腕:LAMMERGEIER/46F
脚:EL-TL-10 FIRMEZA
右手:HG-003 COQUILLETT
左手:VP-67LD
右肩左肩:両方無し
ブースター:ALULA/21E
ジェネ:VP-20S

速度を重視した結果、ロックスミスよりもアーキバス系列パーツの割合が増えた。
良かったねスネイル閣下(良くない)


バルファルク C適応体

ルビコンの空を超高速で飛行する赤い彗星。
生息域はルビコン全体。
元々音速以上だった飛行速度は更に上昇、その気になれば封鎖衛星のレーザー射撃も避けられる。

コーラルエネルギーのおかげで龍気が切れても数時間は飛行可能、そしてその間にも龍気及びコーラルのエネルギーは回復するので、食事時以外での着陸は必要なくなった。

今まで自分と対等の存在に出会ったことがなかったので、フロイトはだいぶお気に入り。

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