ルビコンと竜 作:LAMMERGEIER/40F
戦闘描写は自信がありません。
かと言っていつもの文章に自信があるかと言えばそうでもありませんが。
ガンバルゾー!!
『ウォルターとのつうしん、きれちゃた……』
目の前には謎の巨大生物、背中には幾つものジェネレーター、C兵器の残骸。二つ突き出た触腕と思しき部位には何本もの武器がへばりつきこちらに向いている。
この超絶危機的状況で、621が発した最初の言葉はそれだった。
《レイヴン、あの壁には決して近付かないでください。あれはコーラルで出来た物理的な障壁……もし接触すれば、コーラル被曝は避けられません》
『うん』
《それと、あの生物ですが……以前グリッド086で戦った原生生物と、よく似た反応を感じます》
グリッド086、その言葉を聞いて621の表情が僅かに強ばる。
壊れたMTやACをまるで人形のように操り、その残骸を集めて束ねて巨大な人型兵器を組み上げ、挙句の果てにはグリッド086をまるごとストライダーのような移動要塞に改造していたあの雌蟷螂。
幸いにも本体は脆弱でありパイルの一撃で倒せたが……
今回の相手はどうだろうか?
少なくとも、パイルの一撃だけで吹き飛ばせるとは思えない。
《……っ!レイヴン、来ます!!》
エアの言葉で我に返り回避行動。
数秒前までコクピットがあった空間を赤いレーザーが貫く。
《まさか、武器を……?》
そのまさかだ。今の攻撃は間違いなく触手の先に取り付けられた
今回の相手は、やはり一筋縄ではいかないらしい。
『やっつける』
それでも、殺す。
それが
《メインシステム 戦闘モード起動》
《解析完了、どうやら相手は背中のコーラルジェネレータ、触腕に通ったケーブルからエネルギーを供給しているようです。この内、背中のジェネレータは無数の残骸に守られているため手出できませんが…触腕の方は、比較的防御が薄いようです》
『たすかる』
頼れるオペレータの助言を頼りに戦闘開始。
相手が放ってくるレーザーやら飛ぶ斬撃やら、通常より遥かに大きくそして強力なそれを回避し、片腕を捉える。
右肩の
流石に触腕ごとぶっ飛ばすとまではいかなかったが、これはかなりの痛手だったのだろう。苦しそうに眼を細める。
《右腕部破壊、この調子で行きましょう》
敵の背中から無数の
速度自体はそうでもないがどうにも追尾性が売りのようで、その上他の攻撃も飛んでくる。
しばらくは回避に専念させられそうだ。
普通ならば。
『しとめに、いく』
生憎、621は普通ではなかった。
強化人間となり会得した鋭い五感か、或いは猟犬という異名になぞらえて嗅覚とでも言おうか。
圧倒的な弾幕の中に生じる僅かな隙間を的確に捉え、着実に距離を詰めていく。
そうすれば、あっという間にパイルの射程圏内だ。
鉄杭の猛撃が再び敵を襲う。
《両腕破損!レイヴン、このまま……っ!?》
笑っていた。エアが、ではない。では621が?彼女でもない。
笑っていたのは、敵の方だった。
無いはずの口角を上げ、黄色い眼を不気味に歪め、マヌケにも近付いてきた哀れな犠牲者を嘲笑っている。そんな顔だった。
《レイヴン、退避を……!》
即座に
『やば……』
レイヴンの言葉を遮るように、
赤色の奔流が彼女を包んだ。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
──やったか
にやりと嗤う。
今の攻撃は、彼ら種族が持ちうる最高の攻撃であった。
本来はチャージには相応の時間がかかるものだが、彼は背中に取り付けたものから力を奪うことでそこを補っている。
今までも
今回の相手も、そうなったに違いない。
触腕は失ったが少し腹を満たせばすぐに再生する。
だがそれほどの食料が残っていたか?彼は少し考える。
どうせ、地底暮らしにも飽き飽きしていたところだ。ここらで地上に行動範囲を伸ばすのもありか……
『すき、あり』
ぐしゃ、という音と共に、右の視界が消える。
目が潰されたのだと気付くのにそう時間はかからなかった。
思考をやめ、絶叫をあげながら辺りを警戒する。
そして、見つけた。
まさか。死んだはずだ。殺したはずだ。跡形もなく消し飛ばしたはずだ。
しかし残った左目は彼に残酷な真実を映し出す。
周囲には薄い光の膜。ターミナルアーマーと呼ばれる追加機能がギリギリで621を救ったのだ。
湧いてきた感情は恐怖、次に怒りであった。
まさか、こんな矮小な存在に傷を付けられるとは。
せっかくの愉しい狩りが台無しだ。
だがまだ笑える。
失ったエネルギーは
踏み潰し損ねた虫ケラが、ほんの少し飛び上がってきただけだ。
だからまだ嗤える。
今度こそ跡形もなく……
《……無駄です》
なんだ、この声は。と、辺りを見回す。
《私はCパルス変異波形『エア』、先程の攻撃を伝ってあなたの中に侵入させてもらいました。今やあなたの全装備は私の制御下にあります》
まさか、まさかそんなはずはない。
《哀れですね……貴女も、そう思いませんか?》
自分は、決して滅びない。
そんな戯言を否定するかのように、
621のパイルバンカーが顔面に炸裂した。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
621の渾身の一撃は、相手の顔面を完全に粉砕した。
《ただいま戻りました、レイヴン!》
『おかえり、エア』
《急いで距離を取ってください、行き場を失ったエネルギーが暴発します!!!》
頼れる相棒に急かされ、勝利に浸る間もなく距離を取る。
いつの間にかコーラル障壁は無くなっており、簡単に離れることが出来た。
数百mほど離れたところで、ついに限界を迎えたのか大爆発。
コーラル湖が激しく波打つ。
《……彼は、今までの敵は全て消し飛ばしてきたと言っていました。皮肉なことですね。最後の最後、自分もそうなるとは》
『おもしろいね』
『……1……62…………621、無事か……』
コーラル障壁が完全に消滅した影響かウォルターとの通信も回復する。だが元気が無い様に聞こえるのは何故だろうか。
『ウォルター、てきはもう……』
『今すぐ……そこを離れ』
ウォルターとの通信が切れたのと同時だった。
621の真横に
いらいらちくちくメガネのアンブッシュにより621はオタッシャ重点!
あとは本編通りです。
オストガロア C適応体
元は技研都市で飼われてた実験動物。
この個体はコーラルの過剰摂取により知能が飛躍的に上昇し、
使用法を学習すれば機械兵器すら操れる程となった。
その危険性をいち早く察知したナガイ教授によって特に頑丈な施設に隔離されたが、皮肉なことにその隔離施設が彼をアイビスの火からも守ってしまった。
骨の代わりにC兵器、アイビスシリーズの残骸を纏っている。原種ほどの装備貯蔵量はなく壊れたら基本使い捨て。
また、背中のコーラルジェネのエネルギー全てを使ってコーラル属性となった瘴龍ブレスをほぼノンチャージで放てる。
総括すると、相手によって武装を変える汎用性が無くなったかわりに近代兵器による一発一発の火力、無限のコーラルエネルギーからなる継戦能力を得た。
余談だが、こいつの世話はナガイ教授の第二助手が担当していたらしい。好奇心旺盛でよく笑う、ペットは飼い主に似るという通説はあながち間違いでは無いのかもしれない。