ルビコンと竜   作:LAMMERGEIER/40F

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たまにはのんびりしたのも書きたいので初投稿です




621とかに

 

621が『それ』と出会ったのは、ルビコンに降り立ってすぐ(移設型砲台破壊)の時だった。

 

『……』

 

『どうした、621』

 

目標を全て破壊し、後は帰還するだけ……というところで、彼女はそれを見つけた。

 

『うぉる、たー』

 

『……なんだ、それは』

 

岩陰から身を出していたのは二つの小さな影。

一つは赤く、もう一つは青い。

片方は平べったく、片方は鋭い甲殻を背負っている。

どれをとっても対極的な二匹。だが共通項が1つ。

621に対しまるで威嚇するかのように両鋏を上げ、カチカチと音を鳴らしていることである。

 

『放っておけ。ただの原生生物だ。今のお前にはまだやるべきことがあるだろう』

 

『むむ……』

 

飼い主にそう促されるが、それ以上に惹かれる何かを621は感じたのだろう。彼女の視線は目の前の二匹に釘付けだった。

 

『621』

 

『……わかり、ました』

 

二回目、最初よりも気持ち強めに言われてようやく目を離す。

件の岩場にはもう何も居なかった。

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

『アンタから掛けてくるなんて珍しいじゃないか』

 

『カーラ……一つ、相談したい。俺を育ててくれたアンタにしか言えないことだ』

 

『なんだい?』

 

『……621が原生生物を拾ってきた。今もそれと遊んでいる』

 

『は?』

 

『俺はどうするべきだと思う』

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

一方的にぶつ切りされた無線機を懐にしまい、車椅子に座った621に向き直るウォルター。どこか申し訳なさそうにしている彼女の後ろには、なんと二匹の蟹が。

 

先程岩場に居た彼らである。いつの間に拾ったのか。

 

「621……そんなもの連れて帰ってきてどうする」

 

「……」

 

「元いた場所に戻してこい」

 

「………」

 

押し黙る621に、今日何度目かになる溜息が漏れる。

 

彼女はウォルターの介助が無ければ通常の食事すら摂れない重篤な身体なのだ。

そんな、自分のこともままならない彼女がペットを、しかも二匹もお世話できるだろうか。

 

「世話などできないだろう」

 

「……がんばる、ます」

 

はぁ、と再びの溜息がウォルターから溢れる。

なにせさっきからずっとこの調子なのである。

もうこっそり自分で捨ててこようかと思ったほどだ。

 

(…しかし、だ)

 

彼女が仕事、AC以外の何かにここまで興味を持つことがこの先一体何度あるだろうか?

 

それを『いらない』と切って捨てることは簡単だ。

むしろ傭兵として、猟犬として使う以上それは不要なもの。

だがそれは彼女の選択を、意志を否定することに他ならない。

 

「……餌は俺が手配する。だが、それ以外には一切手を出さない。お前が世話をするんだ、621」

 

こくこく、と621は静かに頷く。

二匹の蟹は、変わらず鋏をカチカチと鳴らしていた。

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

それ(chapter1)からしばらく(chapter2開始時)経ち、621を取り巻く周囲の様子はだいぶ変化していた。

その中でも一番の変化は……

 

《レイヴン、あなたのハンドラーはしばらく不在なのですね》

 

彼女である。名をエア。

621とだけ話せて聞こえる、ウォッチポイントで出会った不思議な友人だ。

 

《先程の中央氷原の件ですが、ベイラムからは早速依頼が届いているようです。確認してみてはいかがでしょう》

 

ウォルターは彼女に休めと言った。しかしエアは働けと言う。

621は……

 

「んー……やだ」

 

《えっ》

 

それをまさかの拒否。しかしこう続く。

 

「いってもいい、けど、えさあげなきゃ」

 

《……餌?何か飼っているのですか?》

 

「ん。みせる」

 

理由はこれだ。彼女が手を叩くと、鋭い何かが金属を突くような音と共に二匹の蟹が姿を現す。

 

《……あの、レイヴン。彼らは一体……?》

 

「あかいのは、アカ。あおいのは、アオ」

 

《いえ名前ではなく……ちょっと待ってください、本当にそれが名前なのですか?》

 

「?うん」

 

《……》

 

車椅子に座ってるとはいえ普通に621と同じくらいある蟹と、それを見て特に何も感じてなさそうな621にエアは無いはずの口が塞がらなくなる感覚を覚えた。

 

更に彼女の独創的(カスみたい)なネーミングセンスに、今度は頭を抱えたくなる衝動に駆られる。

 

「ほら、おたべ」

 

そんな彼女を無視し、621は地面に何か欠片のようなものを転がす。

乾燥ミールワームを砕き、鉄粉をまぶした彼ら専用の餌だ。

ちなみに621はこれをわりと本気で投げていた。彼女の細腕から繰り出されるカスい出力ではこの程度が限界らしい。

 

地面に転がったそれらを鋏で拾い、顎脚へと運ぶ二匹の蟹。

食べ終わってもコツコツと地面を削り、まだ足りないと主張しているかのようだ。

 

《……》

 

蟹がペットと聞いて少し引いたというか、ついて行く人間を間違えたと絶望しかけたエアだったが、こうして見ると…

 

《……中々可愛いですね、レイヴン》

 

「むむむ……もう、おしまい」

 

不満を露わに両手の鋏を持ち上げる二匹に対し、まるで子どもに言い聞かせるかのように叱るレイヴンを見てそう漏らすのだった。

 





ウォルター 621が楽しそうで嬉しい

エア 少し蟹が好きになった

621 ゆっくりしたものが好き

蟹×2 元は解放戦線に食用として買われた。どっちも通常個体より大きくて強い
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