剣に狂った男が人の心を取り戻すのは間違っているだろうか   作:ロマン剣技大好き侍

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処女作(大嘘吐き)


剣狂い

 

 

 

 

 

 

 

 剣を振るう。

 

 無心になって、ただ剣を振るう。

 

 唐竹(からたけ)

 袈裟斬り(けさぎり)

 右薙(みぎなぎ)

 右斬上(みぎきりあげ)

 逆風(さかかぜ)

 左斬上(ひだりきりあげ)

 左薙(ひだりなぎ)

 逆袈裟(さかげさ)

 刺突(しとつ)

 

 この動きを途切れることなく繰り返す。

 時には順番を入れ替えながら、全てが繋がって流れを止めない。

 まるで清流のように静かに舞い踊り、誰であろうと────例え神であろうとも邪魔はさせない。

 

 ひらり。

 

 何処からともなく宙を舞う落ち葉が一枚、剣舞に紛れ込む。

 気にも留めず剣が振るわれ続ける中、何事もなく地面に落ちた葉っぱが()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……」

 

 

 どれだけの時間、剣を振っただろうか。

 極限の集中によって色を失った視界が戻ってくる。

 気が付けば空は暗くなり、自然と止まっていた汗が吹き出してきた。

 喉が渇いた。腹の虫が鳴る。

 

 

「ジン」

 

 

 背後から鈴を鳴らしたような声が青年の名前を呼ぶ。

 振り返らずとも誰かは分かる。荒い息遣いも同時に聞こえてくるが、それもいつものことだ。

 

 

「アイズか」

「うん。もう終わり?」

「日も暮れた。飯の時間だ」

「……お腹空いた」

「汗を流そう」

「ん」

 

 

 青年と少女。ジンとアイズ。

 言葉少なく、けれど意思の疎通に問題はないらしい。

 薄い腹を抑える少女の頭を軽く撫でたジンが館に向けて歩き出せば、アイズは雛鳥のように青年の背中を追う。

 

 彼等は毎日のように暇さえあれば剣を振っている。

 初めはジンだけの日課で、いつからか彼を師匠と慕うアイズが合流して今の形になった。

 特に何かを教えることもなく、二人並んで黙々と庭で剣を振るうだけの姿は異様な光景だったが、そのうち当たり前の日常として定着した。

 

 

「また」

「ああ」

 

 

 シャワー室の前で男女に分かれる。

 無駄を全て削ぎ落としたような会話。むしろジンは相槌を打っただけだ。

 偶々近くに居た新人が唖然として二人を見送る。

 ロキ・ファミリアでも代表的な幹部のジンとアイズ。師弟と聞いていたが、実は不仲なのかと首を傾げた。

 

 どちらも軽く汗だけを流して服を着替えた。

 同じタイミングでシャワー室から出てくると、視線さえ交わさずに隣り合って食堂に向かう。

 道中ファミリアの団員とすれ違うが、二人の独特な雰囲気の所為だろうか。挨拶もなく立ち止まって無言で見送られるだけだった。

 

 そのまま食堂に入って列に並ぶ。

 二人に前を譲ろうとしてくる者もいたが、そんなマナーの悪いことはしない。

 首を横に振って意思表示するジンとアイズを何とも言えない表情で見返して、萎れた顔で諦めたように並び直す。

 この時に無意識かジンの服の袖をアイズが指で摘んでいたが、特に関係はないだろう。

 

 

「アイズ〜!ジン〜!こっちこっち〜!」

 

 

 無事に食事を確保した二人が何処に座ろうかと満員に見える食堂を見渡していると、ジンとアイズの名前を呼ぶ元気な声が聞こえてきた。

 視線を向けるとアマゾネスの少女が二人並んで仲良く食事をしており、何故か対面側には誰も座っていない。

 揃って首を傾げるが、何にせよ好都合ではある。

 先に着席していた二人に一言詫びながらも、有り難く空いた席に座らせてもらった。

 

 

「アンタたち、またこんな時間までヤってたの?本当に物好きね〜」

「明日から遠征だけど大丈夫……って、二人には言うまでもないか!あたしも今度混ぜてねー!」

 

 

 姉のティオネは頬杖をついて呆れたように笑い、妹のティオナは何が楽しいのか朗らかな笑顔を向ける。

 この二人もジンやアイズと同じくロキ・ファミリアの幹部だ。

 年齢も近いので、特に同性のアイズとは仲が良い。Lv.5と実力が近しいことも理由の一つだろう。

 そんな二人と話しながら(主に姉妹が喋るのに対して相槌を打つだけ)食事を終えると、タイミングを見計らっていたかのように一人のエルフがやってきた。

 

 

「リヴェリア?」

「用件は」

「ジン、アイズ。やはりこの時間は食堂に居たな。見たところ食べたばかりのようで済まないが、ロキが呼んでいるから行ってやってくれないか?」

 

 

 エルフの王族の証である美しい緑の髪を揺らして、リヴェリアは申し訳なさそうな表情で二人に用件を伝える。

 ジンとアイズは無表情のまま顔を見合わせて頷いた。

 遠征の前日にロキが自室に呼ぶとなれば、それはステイタスの更新以外に理由はない。

 

 

「ロキが……うん。分かった」

「アイズ。片付けておく」

「ありがとう。先に行ってるね」

 

 

 同時に席を立ち上がると、ジンが二人分の食器を片付けに行く。

 それに対して感謝を伝えたアイズは一足先にロキの自室へと向かう。更新は一人ずつしかできないため、無駄のない判断だと言える。

 少し遅れてジンもロキの自室に到着した。ノックをすれば即座に許しが出た。

 

 

「へっへっへっ……待ちくたびれたでぇ〜!ジンが居らん間にアイズたんの身体の隅々までうちが堪能してやったわ!悔しいやろ〜?」

「!?ジ、ジンっ、嘘だよ!信じたらダメっ!」

「分かってる」

「ちぇ〜、つまらん反応やなぁ。まあ、うちとしてはアイズたんの可愛ええ顔が見れたからもう大満足やけどな!…………って、イタイイタイ!うちが悪かったから叩かんでっ、許してぇ〜!?」

「っ!っ!」

「ロキ。早くしろ。アイズもそこまでだ」

 

 

 扉を開けて部屋に入った途端に大騒ぎになった。

 赤髪を振り乱しながら糸目に涙を滲ませてコミカルに痛がるのは、ファミリアの主神ロキ。酒好き、女好き、無乳だが、正真正銘の女神である。

 全能を封印して地上に降りてきたと言うが、全知でもないので実質ニートみたいなものだ。下界の子供たち相手なら心を読むことはできなくても、嘘をついているかくらいは判断できるらしいが。

 

 

「ホンマいけずなやっちゃな〜。まさかアイズたんにまで素っ気ない態度取っとるんやないやろうな!?そないなことうちは許さへんでぇ〜!」

「そんなことはしない」

「まっ、せやろな。ジンに限って有り得んわ。ほな、更新するか」

 

 

 ジンが服を脱いで上半身を晒した状態でうつ伏せになると、軽い調子で跨ったロキが背中に指を滑らせる。

 程なくして指を離せば、今度は紙に何かを書き写していく。

 それも終わると再び背中で指を踊らせて、パチンと一発叩いてからロキが退いたのに合わせてジンも立ち上がった。これでステイタスの更新は終わりだ。

 

 

「こっちが写しやな」

「助かる」

「ええよ〜、そんなん気にせんで」

 

 

 ひらひらと手を振るロキは本当に何とも思ってなさそうだった。

 すると、大人しくしていたアイズが立ち上がって、そわそわした様子でジンに話し掛けてくる。

 

 

「ジン。どうだった?」

「まずまずだな。アイズは?」

「そう。私も」

「こらこら、二人とも明日から遠征やろ?今日はもう寝た方がええんやないか?」

 

 

 言葉が少ないながらも長くなりそうな気配を感じてロキがストップを掛ける。

 ジンの表情は変わらないが、心なしかアイズは頬が膨らんでいるように見える。どうやらお楽しみの時間を邪魔されたのが不服なようだ。

 可愛らしい姿に内心身悶えしつつも、ロキが心を鬼にして見詰め返せば渋々といった様子で頷いた。

 

 

「そうだな。少し早いが寝よう」

「……うん。分かった」

「ええ子やな〜。ほな、ジンもアイズたんもおやすみぃ〜」

「ああ。おやすみ」

「……おやすみ、なさい」

 

 

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

 

 

 寄り添い合うようにして部屋を出ていくジンとアイズを見送って、足音が遠ざかったのを確認してからロキは盛大に溜息を吐いた。

 

 

「あの二人は変わらんなぁ……」

 

 

 その言葉には実に複雑な感情が込められていた。

 ロキにとってはどちらも優劣なんて付けられない大事な家族だ。特にジンとアイズには期待も多く掛けているが、同時に心配になる二人でもある。

 

 

()()()()って、謙遜が過ぎるで。アイズたんもやけどな」

 

 

 当たり前のように話していた二人だが、あんな会話が他の団員に聞かれたら大変なことになる。

 あの天然二人は、アレでいてロキ・ファミリアでも屈指の成長株なのだ。

猛者(おうじゃ)』オッタルと並び称されるオラリオ最強の一角、L()v().()()()()()『剣鬼』ジン・ブレイド。神域に到達していると武神が認めた剣技の前では、如何なるものも容易く斬り捨てられると実しやかに云われている。

 同じく最強格の一人として数えられるL()v().()()()()()『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタイン。『剣鬼』の直弟子であり、師匠には劣るが他の冒険者とは一線を画す剣の冴えがある。

 

 しかし、そんな冒険者が目標とする理想の冒険者の二人だが、現状の強さに全く満足していない。

 アイズは事情を鑑みれば仕方ないかもしれない。()()()()()()()()()()()とは聞いているけれど、あんなスキルが発現するほどに追い詰められていたのだ。

 

 対して、ジンの場合はよく分からないと言うしかない。

 剣を極めたいという夢は知っているが、明確な目標となるイメージがあるわけでもないだろうに、どうしてあの熱量を維持できるのか。

 一丁前に()()()()()として発現しているし、その成長速度は何故か新人以上だった。意味分からん。

 ちなみに、以下が二人のステイタスである。

 

 

 

 ジン・ブレイド

 

 Lv.8

 

 力 :C694

 耐久:E412

 器用:SSS1578

 敏捷:A865

 魔力:S999

 

 天恵:S

 狩人:D

 剣聖:B

 精癒:C

 耐異常:F

 覇断:D

 再生:G

 対魔力:H

 

《魔法》

【シルバーアーム・ザ・リッパー】

 ・概念魔法

 ・短文詠唱

 ・詠唱式『斬り裂け、ヌアザの腕よ』

『ここに誓う 俺は俺に断ち切れぬものを 許しはしない』

【マン・オブ・スチール】

 ・強化魔法

 ・短文詠唱

 ・詠唱式『我が身に宿れ、邪竜の呪い』

【ディバイン・コンフュージョン】

 ・結界魔法

 ・長文詠唱

 ・詠唱式『天よ堕ちろ、地よ満ちろ、人よ掲げろ。剣を振れ、槍を突け、拳を構えろ。ここは、人類最古の決闘場。己に克ち、敵を討て』

 

《スキル》

剣心狂想(ケンシンキョウソウ)

 ・想像を具現化できる

 ・刀剣使用時、『斬鉄』『斬魔』一時発現。

 ・器用に神域補正

 ・力、敏捷に補正

 ・刀剣に狂う限り効果持続

 ・刀剣に狂うほど効果上昇

無念無想(ムネンムソウ)

 ・常時発動

 ・戦闘時に思考が必要なくなる

 ・神威耐性

 ・精神汚染無効

刀剣乱舞(トウケンランブ)

 ・任意発動

 ・刀剣の召喚、及び返還

九死一生(キュウシイッショウ)

 ・戦闘時に瀕死の重傷を負うことで発動

 ・発動中、『幸運』『覚醒』一時発現

 ・全能力値(アビリティ)高域強化

 ・敵対者が強いほど効果向上

 ・敵対者の数が多いほど効果向上

 ・絶体絶命であるほど効果向上

 ・戦闘終了後生還時に体力と精神力の超速回復

 

 

 

 アイズ・ヴァレンシュタイン

 

 Lv.6

 

 力 :F322

 耐久:H179

 器用:B783

 敏捷:E412

 魔力:D598

 

 狩人:E

 耐異常:G

 剣士:D

 覇断:H

 精癒:I

 

《魔法》

【エアリエル】

 ・付与魔法

 ・風属性

 ・詠唱式【目覚めよ(テンペスト)

 

《スキル》

復讐姫(アヴェンジャー)

 ・任意発動

 ・怪物種に対して攻撃力高域強化

 ・竜族に対し攻撃力超域強化

 ・憎悪、または愛情の丈により効果向上

恋姫夢想(プリンセス)

 ・追従する

 ・対象が成長する限り効果持続

 ・懸想の丈により効果上昇

微風(ゼファー)

 ・条件付き任意発動

 ・ジンに『風』を一時的に与える

 ・ジンと同じ戦場に立つことで魔法威力高域強化

 ・ジンの側で戦うと体力と精神力の自動回復

 ・心を通わせるほど効果向上

 

 

 

 本当にとんでもない二人である。

 ステイタスの全てが規格外。ランクアップ時に基礎アビリティはほぼカンストは当たり前、発展アビリティの成長速度が異常、どちらも魔法はチート、その上レアスキルのオンパレードときた。

 自慢の子供たちではあるが、同時にあの子たちは将来何処まで行ってしまうのだろうかと不安になる。

 

 ジンは初めて恩恵を授けた時から破茶滅茶だった。

 何故かLv.1にも関わらず『天恵』なんて発展アビリティが発現しており、その時点で既に魔法は三つ全部揃っているし、レアスキルが二つもあったのだ。

 遂に頭がおかしくなったのかと思ったものだが、リヴェリアに教育を任せてみれば手に負えないと言われる暴れっぷりを見せた。

 たった半月で全能力値をカンストさせて、器用に至っては勝手に限界突破している始末。しかも、いざランクアップさせてみたら新たにスキルを獲得するわで良くも悪くもぶっ飛んでいた。

 

 アイズは昔はまだここまでイカれてなかった。

 まあ、一般的な冒険者と比べれば破格の成長速度ではあったが、ジンほどではないと言うべきか。

 そんな可愛いアイズがどうしてこうなってしまったのか。最早言うまでもなくジンの所為?お陰であることは誰でも分かるだろう。

 いつからか急にジンの背後をチョロチョロと追いかけ回すようになり、気が付いた時には手遅れになっていた。

 デメリットが大きくて気軽に使えないスキルに代わって、条件付きではあるが使いやすいレアスキルが二つも一気に生えて来たのだ。……アイズが恋を自覚するのと同時に。

 

 それからはジンの怪物染みた成長速度に引っ張られるようにしてアイズの成長も加速していった。

 結果としてLv.4からLv.5に上がるまでの所要期間は僅か二年であり、カンストさせるまで鍛えるなんて真似をしなければ一年と半年程度でランクアップは可能だったのだ。

 たった十年でLv.8に到達したジンは化け物だが、同じく九年でLv.6になっているアイズもジン側なのは間違いない。

 

 常日頃からロキはどうにかして天然二人組に常識と自分の強さに対する自覚を植え付けようとしているが、残念ながら上手くいっていない。

 他の団員と一緒の時には無茶な真似はしなくなったのはロキを筆頭として、団長のフィンや副団長のリヴェリアの尽力があってこそであり、未だに二人だけで潜らせるとバーサーカーになるという。

 剣のことしか考えてない馬鹿とジンのことしか考えてない阿呆。地獄みたいな組み合わせだ。

 

 

「明日から遠征かぁ〜。……フィン、頑張るんやで」

 

 

 ジンとアイズの二人が苦手とする物の中でも上位に入る集団行動、その極みとも言える遠征である。

 最も凄かった時期からはどちらも大分落ち着いたのは事実だが、それはそれとして不意に単独行動をかますのがあの二人なのだ。

 遠征帰りに肉体的疲労とは別に精神的疲労でげっそりしているフィンを幻視してしまい、ロキはひとり手を合わせてフィンの(胃の)無事を祈るのであった。

 

 

 

 

 

 

 





衝動に任せて書いてみた。
後悔はしてるけど、反省はしてない。

続かないかも(評価&お気に入り&感想次第)



ジンのスキル一部修正
【九死一生】
・発動中一時的に『不死』取得
上記の効果を無くしました。瀕死の意味がなくなるからね。

スキル内容一部修正
少し見やすくまとめました。効果は変わりません。

投稿間隔についてなのですが、現在と変わらず完成次第投稿するか。或いは、土日に連投するかのどちらがいいですか?週に3話は書きたいと思っているので、土日連投でも平日の何処かで1話は投げますが……。

  • 完成次第投稿!(今と変わらず……)
  • 土日に連投!(こっちの方が読みやすい!)
  • どちらでもいい。(好きにすれば?)
  • 毎日投稿しろ。(エタる)
  • そんなことよりアイズたん可愛い()
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