剣に狂った男が人の心を取り戻すのは間違っているだろうか 作:ロマン剣技大好き侍
お久しぶりです……。
色々あってメンタルブレイクしてました。
あっ、風邪は治ってます。
正直以前のアンケートで言っていた週3投稿の継続は無理かなぁ……ちょっと何もやる気が出ない。
ちょこちょこ書いてはいくつもりですが、申し訳ないけどペースは落ちます。
その辺りご了承頂けると助かります。
その日、ロキ・ファミリアの訓練場では、多くの団員が鎬を削りあっていた。
「やぁっ!」
「うぉおおおッ!!」
「はぁああっ!!」
「せいっ!」
「そこですっ!」
「おっとぉ!けど、甘いっスよ!」
一対一で互いの得物を打ち合わせている者。
三対一で連携して強者と戦う者たち。
共通しているのは、誰もが常よりも訓練に熱を入れいていることだ。
事の発端は四日前の遠征帰還祝いの宴会でのこと。
酔っ払ったベートによる問いと、それに対するロキ・ファミリアが誇る第一級冒険者たちの回答が原因だった。
あの時、宴会に参加していた団員たちも脳裏に描いた。
もしLv.1の時にミノタウロスと遭遇したら自分はどうするのだろうか、と。
多くの者が、即座に逃げると考えた。Lv.1で勝てるわけがない以上は、選択肢なんてそれしかないのだから。
けれど、彼等が尊敬する第一級冒険者たちの答えは違った。
半数以上が戦うと告げる中、撤退すると判断を下したフィンも二度目の遭遇では倒すと言った。
常識的に考えて勝ち目なんてないのに、どう倒すつもりなのか。その疑問には、いつも通り乱暴な口調で答えたベートの言葉を思い出す。
「これはそういう話じゃねェんだよ。倒せるかどうかは二の次だ。想像の中でさえ啖呵を切れねえやつは、冒険者には向いてねえって話だろうがよ!」
その言葉に団員たちは納得するしかなかった。
当然の話だが、遠征組は全員Lv.2以上の団員だけで構成されている。サポーターだとしても例外ではなかった。
ランクアップのためには何かしらの偉業を達成する必要がある。
ということは、みんな少なからず冒険というものの意味を理解しているのだ。
だから、その言い草にも理解を示した。
それはそれとして、お前ら冒険者じゃねえと間接的に言われたことに腹を立てた。
やってやろうじゃないかと火が点いた結果、この訓練場の状況に至る。
しかも、今日は珍しい面々まで顔を見せていた。
「はッ!」
短い呼気と共に、槍が連続して大気を穿つ。
同じLv.7だったとしても容易く対処はできない神速の突きは、目標を捉えることができない。
音も無く振るわれた剣が、火花さえ散らさずに槍を逸らしたからだ。
「そんな軽く流されると傷付くなぁ……。もう少し日頃から体を動かすようにした方がいい、かなッ!」
「そうは言うが、執務で忙しいのだろう?」
「じゃあ、君に回す仕事を増やそうか。そうすれば僕も時間を作れるんだけどね」
「……少しだけなら」
「ジン、君が団長思いで僕は嬉しいよ!」
フィンの振るう槍の音しかしない、無音ながら激しい戦闘の中で今後の書類仕事が増すことに決定してジンの瞳からハイライトが消えた。
実際はファミリア最大戦力にしてまだ伸び代が有り余っているため、かなりの仕事を免除されている。
アイズと違って書類仕事に苦手意識というか、
「フィンだけが相手じゃねェぞッ!!」
槍の雨が降る中、ジンの背後から銀靴が虚空に三日月を描いた。
まるで容赦の無い蹴撃は側頭部に直撃するかと思われたが、一瞬にしてジンの姿が掻き消える。
同時にベートは地面に叩きつけられて、即座に跳ね起きた。
更にフィンも脇腹を打たれたのか、僅かに眉を歪めながら手で押さえている。
そして、ジンは『風』を纏ったアイズと
不思議なことにアイズの手に握られているはずの剣は
いや、違う。
『風』による補助を得て強引に光の太刀を放ちながら、圧縮した『風』によって刀身を隠す。
並の冒険者ならば、一手で斬殺されているだろう。
しかし、ジンには通用しない。
不可視のはずの刀身を完璧に見切り、受け流し、封殺していく。
神域の技量の前では、刀身が目視できないくらいのことは何の障害にもならなかった。
「ベート!」
「分かってるッ!【
アイズ一人では、ジンには届かない。
そんなものは誰もが分かりきっていることだ。
フィンとベートは、一切の躊躇もなく剣戟の嵐へと身を踊らせた。
そして、ベートの体を赤色のオーラが包み込んだ。
【
五年前に発現したスキルの
ただし、渇望の丈によって効果が高まり、更に瀕死であるほど効果が向上し、効果量や持続時間はスキル発動時点の
発動中は
代わりに力、耐久、敏捷の強化率は最大出力で疑似的な
本来は模擬戦で使用するスキルではないが、相手がジンなら万が一もないので限定的に許可されている。
赤色の残光がたなびいて、先程までとは比較にならない敏捷にも振り回されることなく、完全に制御下において『剣鬼』と『剣姫』の剣戟に加わった。
【エアリエル】を使用したアイズと並んでも、全く見劣りしないほどの強さを発揮する。
だが、それでもまだ足りない。
少し遅れて、再びフィンの槍が閃く。
ベートの蹴り足、アイズの剣閃、フィンの槍捌き。
三人の連携は巧みで、仲間の邪魔をするどころか、本来の実力の何倍もの戦闘力にもなるほど。
今までに格上の怪物を何度も打倒してきた連携によって、遂にアイズの剣がジンの髪先をほんの僅かに斬った。
「わぁ〜っ、すっごい白熱してるねー!」
「団長、素敵っ!抱いてッ!」
「あ、うん。聞いてないなこれは。レフィーヤはどう思う?」
「……いいなぁ。私もあの二人の中に……」
「ダメだこりゃ」
そんな模擬戦とは思えない戦闘から離れたところで訓練に励んでいたティオナたちは、少し休憩しつつジンたちの戦いを眺めていた。
三名のうち二名が自分の世界に入ってしまい、何故かティオナは孤独な気分を味わう羽目になった。一人だけ正気なのが悪い。
誰も反応してくれないので仕方なく観戦に集中し始めたところで、突然ティオネが口を開いた。
「そう言えば、レフィーヤ。急に
「うわぁ!いきなり落ち着かないでよ!」
「あっ、それはですね……この前スキルが発現しまして。それが接近戦にも有効だったので、リヴェリア様から並行詠唱を教わりながら同時にこちらも鍛えるべきだと思ったんです」
「あれ?もしかして、あたし無視されてる?」
流石のティオナも少し涙目になった。
本気で悪気がなかった二人が平謝りしたあと、事の経緯をレフィーヤが説明した。
遠征から帰った当日にステイタスの更新をしたら新しいスキルが発現していたこと。しかも、レアスキルだったこと等々。
話を聞いたヒリュテ姉妹は、破格の効果に心底驚いた。
「『精癒』の一時発現、
「条件は不明って言うけど、今も発動してるんだよね?」
「はい。ここ数日で発動条件も絞り込めたんですけど、まだ確信には至れていません」
「へぇ、やるじゃない」
「凄いよレフィーヤ!それでどんな条件なの?」
女子三人、こそこそと訓練場の隅で盛り上がる。
ただ条件についてティオナが聞いたところ、レフィーヤが少し表情を曇らせた。
というか、気まずそうに目を逸らした。
「えっと、その……言わないとダメですか?」
「ここまで話しておいて何言ってんのよ。いいから話しなさいな」
「そうそう!大人しく話すんだー!」
周囲から何やってんだ?という視線が向けられていることにも気付かず、姦しく話に花を咲かせる。
レフィーヤを囲んで、話せ話せ!と実に楽しそうだった。
「うぅ……実は、アイズさんとジンさんが側にいること…………みたいな。あはは、はは……」
その言葉に思わず姉妹は顔を見合わせた。
数秒ほど沈黙が訪れて、ティオネとティオナは同時にこう告げた。
「「レフィーヤ、拗らせすぎっ!!」」
「うわーん!だから言いたくなかったんですよぉ〜!」
「さっきから煩えぞバカ女共──ッッ!!!!」
一人のエルフの情けない叫びと、怒れる
◆◇◆
これは、現在から十年前の話。
フレイヤがその魂に魅入られた時、既にジンは別のファミリアに所属してしまっていた。
オラリオ二大派閥の一角なんて呼ばれているフレイヤにとっても無視できない程度には規模の大きなファミリア。
よりにもよって、
「貴女との友情もこれまでね……」
「いきなりなんや!?うちなんか怒らせることしたんか!?」
突然の絶縁状に叫んだロキの姿は愉快だったが、当時のフレイヤは和むどころか荒れ狂っていた。
ジンの魂は美しかった。例えようもないほどに。
強いて言えば、透明な白色とでも言うべきだろうか。透き通った白色は、まるで鏡のようにも思えた。
ヘファイストスならば磨き抜かれた刀身とでも言うかもしれない。
けれど、どうしても言葉にすれば陳腐に思えてしまうくらい、フレイヤはその魂の色と形に魅入られてしまった。
────嗚呼、彼が欲しい。
身を焦がすほどではない小さな微熱は、されどフレイヤを狂わそうとした。
しかし、世情がそれを許さなかった。
ゼウス、ヘラ・ファミリアがいなくなったオラリオは
それもこれも両派閥に取って代わったフレイヤ・ファミリアとロキ・ファミリアが不甲斐ないからこそ。
この期に及んで最大派閥同士での争いなんてしたら恥の上塗りだ。
そうして我慢して、我慢して、我慢して、我慢して、我慢して、我慢して、我慢して、我慢して、我慢して、我慢し続けた結果──────。
気が付けば、十年という年月が経っていた。
小さな微熱は身を焦がすほどの情念へと育っていた。
最早フレイヤの脳内では、ジンはフレイヤ・ファミリアの眷属の一人と同義だった。
だが、何故かロキ・ファミリアに彼がいる。
フレイヤには意味が分からなかった。まるで理解できない。
大切な子供を、恋人を、伴侶を奪われたような悍ましい感覚が背筋を一瞬にして奔り抜けた。
これは危険だ、と僅かに残った理性的な部分が叫んだが、今まで体験したことのない感覚に身悶えしながら一つの決意を固める。
「あの子は、ジンは私の
フレイヤは激怒した。必ず、愛しのジンを取り戻さなければならないと決意した。
フレイヤに政治は分からない。フレイヤは美の女神である。快楽と衝動に身を任せて生きてきた。欲しいと思ったものは必ず手に入れてきた。
けれども、誰かに奪われた経験はなかった。初めての感覚は痛みを伴ったが、不思議な快感も伴っていた。
ジンが自らの
我慢していたと言ったが、あれは嘘だ。
フレイヤが何もせずに気に入った子にちょっかいの一つも出さずにいられるはずがなく、何度もオッタルたちを差し向けていた。
いざとなれば眷属たちの暴走ということにして、あわよくばジンをこの手中に納めようと画策していた。
結局は見事なまでに全部失敗してしまったのだが、フレイヤは諦めなかった。
鏡のような魂のままに、
女神としての美や傲慢さも、心の奥底に秘めた切ない願望も、余さず受け止めてくれた。
どちらも否定せず、理解を示してくれた。
美に魅了されることもなく、当たり前のようにジンは肯定した。
フレイヤにとってそれは初めての経験で、彼こそを
「────というわけなのよ。だから、ジンを私に返して頂戴?」
「今の話聞いて誰がはいそうですかっちゅうねん!ジンは徹頭徹尾うちの眷属や!爪の先程度もやるわけあるかい!この色ボケ女神!!」
ロキから話を聞きたいというからセッティングした会合で、何を企んでいるのか聞かれたから答えた結果がこれである。
意訳すれば、いつかジンを奪うからと告げたのと同じ。
即ち宣戦布告と変わらないことをしたのだ。本神は全く理解していなさそうな顔で首を傾げているが。
「……あら?」
「あら、やないわ!なに
「それは聞き捨てならないわねっ!私のジンへの想いが不真面目だとでも言うつもり!?幾ら
「なんでうちが怒られとるんや!理不尽過ぎるやろ!?」
しばらく、ぎゃあぎゃあと互いに喚き散らしたあと。
ようやく落ち着きを取り戻したフレイヤが、咳払いをしてから話し始める。
ちなみに、ここまでフレイヤの背後のオッタル、ロキの背後のジンは無言で瞑目したまま微動だにしない。
実は立ちながら眠ってるんじゃないか思うほどの不動っぷりだった。
「こほんッ!それで、私の企みを知りたいということだけれど。今回は生憎と何もしていないわ。
そう言いながらもフレイヤの視線はジンに釘付けだった。
この色ボケ女神め、と内心で毒づくロキだったが、その観察眼からも含むところは感じられなかった。
「ほんまか?嘘やないやろうな」
「本当よ。現時点では何も悪巧みなんてしていない、私の真名に誓ってもいいわよ」
「…………そういうことにしといたるわ!ちゅーか、いつまでう・ち・の!ジンを見とんねん!いい加減にせんとしばくで!?」
「あら?いいの、ロキ。貴女が私に勝てると思って?」
おもむろに立ち上がり、フレイヤは胸を張った。
自然と、
ぷるん。
柔らかく跳ねて、形を変える。
本能でその動きを細部まで凝視して、目を血走らせた。
ロキは激怒した。必ず、邪智暴虐な女神を除かならばならぬと決意した。
ロキに政治は分からぬ。ロキは無乳の女神である。天界では、暇潰しに神々を殺し合わせて遊んでいた。
けれども巨乳に対しては、神一倍に敏感だった。爆乳には感度3000倍だった。
貧乳はステータスであると、その信条に従い今まで邪悪な巨乳と覇を競ってきたが、残念ながらロキの胸は悲しいほどに『無』であることに変わりはなかった。貧でさえなかったのだ。
「────やっっったらあぁああああああああッッ!!!!!」
「────やってやるわあぁああああああああッッ!!!!!」
女神二柱の仁義なきキャットファイト。
それが終わるまで、ジンとオッタルは無言で佇んでいた。
初登場のフレイヤ様です。
はて?どうしてこんなことになったのでしょう。
ここまでアーパーにするつもりはなかったのですが、気が付けばこうなっていました。
もう書いちゃったから仕方ないね。ヨシッ!(現場猫)
それにしてもフレイヤ様は何処まで本気で言っているのでしょうね?
そんなわけで今日はここまで。
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