剣に狂った男が人の心を取り戻すのは間違っているだろうか   作:ロマン剣技大好き侍

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最新話です!

いつも感想などありがとうございます!とても励みになっております!
基本的に更新間隔は一週間おきくらいになると思いますが、今後もよろしくお願いします!


瞬殺

 

 

 

 

 

 

 

「折角やし、一緒に回るで!」

 

 

 ロキの一声で、怪物祭(モンスター・フィリア)を回ることになった。

 

 フレイヤとの会合は、途中で何か用事ができたと言った彼女によって打ち切られてしまった。

 帰り際に一緒に祭りに行かないか誘われたジンだったが、受ける理由もないので普通に断ったら頬を膨らませてご立腹だったのは余談だ。

 あと、申し訳なさそうなオッタルが不憫だった。

 

 何はともあれ、主神からのお達しであればジンにも断る理由がないので受け入れた。

 何処かでフレイヤが髪を振り乱して歯軋りをしているような光景を幻視したが、まさか美の神に限ってそんな品のない真似はしないだろう。

 オッタルから耳にタコができるほどに聞かされたフレイヤへの賛美の数々に、ジンは軽く洗脳され掛けていた。

 

 

「ロキ、買ってきたぞ」

「ジンはほんまに優しい子やなぁ!……うちからジンを奪おうやなんて、マジであの色ボケ何考えとんねん!思い出したら腹立ってきたで!」

「俺には魅了が効かないからな。面白がってるだけだろう」

「アホか!フレイヤのメス顔見てなかったんか!?絶対いつか戦争遊戯(ウォー・ゲーム)仕掛けてくるやろうし、ジンも用心しとかなアカンからな!ほんまに分かっとるんか!?」

 

 

 ロキは必死だったが、もうフレイヤ・ファミリアとの因縁は十年も続いている。

 何度も襲撃されて殺され掛けたり、拉致られて魅了を掛けられたり、戦いの野(フォールクヴァング)で嬲り殺しに遭ったり、ボロボロの状態で魅了を掛けられたり、幹部陣に次から次へと絡まれて死に掛けたり、身動き取れない状態で情事をしながら魅了を掛けられたりしたが、今こうしてロキ・ファミリアにいることが答えだった。

 ある意味でジンにとって真の師匠たちとはフレイヤ・ファミリアのことを言うのかもしれないが、それはそれとしてフレイヤは本気で勧誘していないという勘違いに至っていた。

 

 そうして食べ歩きながら、ぶらぶらと祭りを楽しんでいた時、声を潜めて話すギルド職員の格好をした二人組を見つけた。

 人目を憚り緊迫した雰囲気の彼女等を見て、ロキは悪い顔をして笑っていた。

 京楽的な神々の悪い部分が表に出ていた。

 

 二人組に話し掛けるロキを他所に、ジンは残った屋台の食べ物を全部食い尽くしていた。

 特に興味もなかったので聞いていなかったが、ロキ曰くガネーシャ・ファミリアが管理していた怪物祭(モンスター・フィリア)用のモンスターが脱走したとのことだった。

 その対処を秘密裏にして欲しいとのことだが、残念ながらモンスターの脱走は既に人々の知るところとなっていた。

 

 

「モ、モンス────!?」

 

 

 突如として街中に現れた極度の肥満体のようなモンスター、オークに一般市民が悲鳴を上げようとした瞬間。

 気がついた時には、オークは横一線に両断されていた。

 少し遅れて、灰へと還る。

 その場に残されたのは人々の沈黙と、綺麗に中心から真っ二つになった魔石だけだった。

 

 

「ロキ、行ってくる」

「気をつけて行ってくるんやで〜」

 

 

 屋根から屋根に跳んでいくジンに対して、ロキが軽い調子で手を振って見送る。

 戦闘とも言えない一瞬の出来事に人々は理解した。

 都市を超えて世界最強の一角。

 ロキ・ファミリアが誇るLv.8冒険者。

 

 

「あれが、『剣鬼』……」

 

 

 理解の及ばない圧倒的な存在に対する畏怖。

 同時に、物語の英雄のような人物の戦う姿を目の当たりにして、何処か興奮を覚える者も少なくなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 街を壊さないように気を遣いながらも、ジンはあっという間にモンスターを片付けていく。

 ガネーシャ・ファミリアの団員を捕まえて脱走した数も聞いていたが、最後の一匹というところで面倒なことになった。

 

 

「……ダイダロス通りか」

 

 

 ダイダロス通りとは、簡潔に言えば迷路のように入り組んだ複雑怪奇な区画のことだ。

 ジンも昔に一人で行って迷子になったことがある。

 この地形で迷わずに目的地に向かって行けるのは、この区画の住人やアンダーグラウンドな人物くらいのものである。

 目撃者からの情報では、そんなダイダロス通りに女神を抱えた冒険者の後を追ってモンスターが一匹向かったということだった。

 

 確かにダイダロス通りの方角からモンスターの声が聞こえる。

 追われていたのは駆け出しの冒険者らしい存在と言われていたので、当然ではあるが見捨てる選択肢はない。

 意識を研ぎ澄ませて気配の方向に向かって駆け出したが、ジンを囲むような配置で迫ってくる強者の存在を察知して足を止めた。

 

 そして、かつて都市最速と呼ばれた男が牙を剥く。

 

 

「──死ね」

 

 

 問答無用でジンの心臓を貫こうと迫る神速の槍を、咄嗟に()()()()()()()()

 更に、敵意に対して体が反射で動き、槍を掴んで引き寄せると襲撃者である猫人(キャットピープル)を回し蹴りで地面に叩き落とす。

 

 

「【永争せよ、不滅の雷兵】────【カウルス・ヒルド】」

 

 

 続けて、遠方から飛来した無数の雷弾を抜剣と同時に()()()()()()()()()

 先程奪い取った槍を反撃で投擲するが、それは狙撃手の側にいた別の人物によって呆気なく阻まれてしまった。

 

 

「「「「殺すっ!!」」」」

 

 

 そこに四つの小柄な影が襲い掛かってくる。

 大剣による上段斬りを受け流し、背後から迫る大斧の側面を蹴って逸らし、下段から振り上げられる大槌を躱して、槍を中程から斬り落とした。

 即座に反転する四人の襲撃者を追撃しようとすれば、再び飛来した雷弾の対処に追われる。

 

 

「糞が舐めやがってッ!!」

 

 

 目にも留まらない早業で雷弾を全て斬り捨てると同時、怒号と共に再び猫人(キャットピープル)の男が地上から飛び上がってきた。

 小人族(パルゥム)の四人組がその対面側、ジンの背後に集結する。

 最後に白妖精(エルフ)黒妖精(ダークエルフ)が左右に陣取り、完全に包囲される形になった。

 

 

「……なるほど。()()()()()()か」

 

 

 常人なら気絶するような殺意の奔流の中でジンは慣れたように首肯した。

 街中で襲われるのは久しぶりのことだったが、状況から察するにこの騒動は彼等の主神によるものだろう。

 フレイヤ・ファミリアの幹部たちが勢揃いするとなれば、それは彼等が心底から崇拝する女神からの神命以外にあり得ないからだ。

 

 『女神の戦車(ヴァナ・フレイア)』アレン・フローメル。

 Lv.6の第一級冒険者。猫人(キャットピープル)の槍使い。

 かつては都市最速と呼ばれていたが、現在その称号はアレンとベートのどちらが相応しいのかと議論の対象になっていた。

 今は手痛い反撃を受けて頭から血を流しながら、殺意全開に瞳孔の開いた目でジンを睨んでいる。

 

 『白妖の魔杖(ヒルドスレイヴ)』ヘディン・セルランド、『黒妖の魔剣(ダインスレイヴ)』ヘグニ・ラグナール。

 L()v().()()の第一級冒険者。白妖精(エルフ)の魔法戦士と黒妖精(ダークエルフ)の呪剣使い。

 この二人は他の仲間たちと違って殺意は感じられないが、代わりに戦意は十分にあった。

 

 『炎金の四戦士(ブリンガル)』ガリバー兄弟ことアルフリッグ、ドヴァリン、ベーリング、グレール。

 L()v().()()の第一級冒険者。それぞれ槍、大槌、大斧、大剣を使用する。

 長男アルフリッグが半ばから断たれた槍を捨て予備の槍を、弟たちも各々の得物を構えてジンに敵意を向けた。

 

 

「アレン、受け取れ」

「…………」

 

 

 ヘディンから投げ渡された槍をアレンが無言で掴み取る。

 それで少し落ち着いたのか、怒りにより膨れ上がっていた髪が元通りになった。

 だが、ジンへの殺意は些かも衰えていない。

 それはガリバー兄弟も同じであり、隙を見せれば一斉に襲い掛かってくるのは確実。

 

 Lv.7が二人に、Lv.6が五人という絶体絶命。

 周囲の被害を考えて全力を尽くせないジンに対して、フレイヤ・ファミリアのうち五人は気にも留めないだろう。

 ヘディンは止めるかもしれないが、それで止まるなら苦労はしない。

 幾らこの中で唯一のLv.8と言えども、容易く切り抜けられるような状況ではないはずだった。

 

 ここから離れたところで破壊音とモンスターの怒声が聞こえてくる。

 恐らくは倒し損ねた一匹のモンスターと逃げていた冒険者との戦いが始まったのだろう。

 あまり長くは保たないというのがジンの予想だった。

 

 意識を逸らした獲物を、フレイヤ・ファミリアの『強靭な勇士(エインヘリヤル)』は容赦なく殺しに掛かった。

 しかし、彼等の殺意をジンの神業が凌駕する。

 

 

 

 

 

剥奪剣界

 

 

 

 

 

 刹那の出来事だった。

 アレンたちが動こうとした瞬間には、全てが終わっていた。

 

 世界が白刃で埋め尽くされた。

 槍が、剣が、斧が、槌が細切れになる。

 手足の腱が斬られて激痛と共に、堪らず崩れ落ちた。

 

 

「ぐっ、があッ!?」

「何を、した……っ!!」

「い、痛い……」

「……終わった」

「やられた」

「やられたな」

「ああ、やられた」

 

 

 脚甲や鎧なども全く意味を為さなかった。

 一等級武装であろうと構わず紙のように斬り裂かれて、瞬きよりも早く無力化されてしまった。

 ジンは少し申し訳なさそうな顔で告げた。

 

 

「悪いな。遊んでいる暇はないんだ」

 

 

 また今度付き合うから、と。

 まるで遊びに誘われたのを断るような気軽さで。

 そう言い残して返事も聞かずに戦闘音の聞こえる方に、ジンは掻き消えるような速度で向かって行った。

 

 しばらく残されたアレンたちの間に重たい沈黙が流れた。

 ヘディンは痛みを堪えながら空を眺め、ヘグニはぶつぶつと何事かを呟き、ガリバー兄弟は全身鎧なのでよく分からない。

 そして、アレンは自慢の脚で追い掛けることも儘ならない屈辱にぶるぶると体を激しく震わせて、あまりの怒りに痛みも忘れて絶叫した。

 

 

「おい……おいッッッ──ざっけんなッ、この糞野郎ぉおおおおおおおおおおッッ!!!!!」

 

 

 その絶叫と重なるようにして、ダイダロス通りの一画から爆発的な歓声が轟いた。

 結局のところジンが到着する前に勇気ある駆け出し冒険者によって、脱走した最後の一匹は討ち倒されたのだった。

 

 つまり、アレンたちはヤられ損である。

 

 

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

 

 

 地上に降り立った神の一柱、ヘスティアは愛する眷属ことベル・クラネルにお姫様抱っこされてモンスターから逃げながら、呑気にもラッキーイベントに喜んでいた。

 

 

「ありがとう、モンスター君!ボクは今、君のお陰で最高に幸せだよ!!」

「か、神様!?何言ってるんですか!そのモンスターに僕たちは絶賛命を狙われてるんですよっ!?」

 

 

 ベルが悲鳴のような声で叫ぶが、それも仕方ないだろう。

 一人と一柱を追うモンスターはシルバーバックという、巨体に銀色の体毛のゴリラのような怪物だ。

 全力で戦えばベルでも勝てるかもしれないけれど、無防備なヘスティアが巻き込まれる可能性を考えれば無理はできない。

 

 

「それもそうだね!ところで、ベル君ならあのモンスターは倒せそうかい?」

「スキルが発動しているので格上ではあるみたいですが、今の僕なら倒すことは可能だと思います。ただ、その…………」

 

 

 言い淀むベルを見て、ヘスティアは嬉しいのと同時に、気を遣わせてしまうことが悲しかった。

 ベル・クラネルという少年は本当に優しい子供だ。

 すぐに影響を受けてしまう下界の子供たちの中でも、特に純粋で染まりやすい。

 ここ数日でステイタスを急上昇させているのが良い例だった。

 

 

「ごめんね、足手纏いになっちゃったね」

「ち、違います!あのモンスターは何故か神様を狙ってますし、僕は神様の眷属ですから守るのは当然です!」

「本当に優しいなぁ、君はっ!…………だから、そんな君の手伝いを、ボクにさせて欲しいんだ」

「手伝い、ですか?……くっ、はぁああッ!」

 

 

 話している間にもシルバーバックの手首に付けられた枷から伸びる鎖が二人に迫り、咄嗟にベルは片手でヘスティアを抱えてナイフで弾き飛ばした。

 そこで二人に幸運が味方をした。

 偶然にも弾き飛ばされた鎖がモンスターの片目に直撃したのだ。

 

 

『ゴァアアアアアッッ!?!?!』

 

「ナイスだ、ベル君!今のうちに隠れるよ!」

「は、はいっ、神様!」

 

 

 激痛に転げ回るシルバーバックの視線が二人から離れた隙を見逃さず、ベルは路地を何度も曲がって隠れることに成功した。

 しかし、あのモンスターは鼻が効くため、見つかるのは時間の問題だろう。

 だからといって、ヘスティアをこの場に置いて一対一を挑んでも確実に勝てるとは限らない。

 どうしたものかと悩むベルの手を、ヘスティアが優しく握った。

 

 

「大丈夫だよ。ボクを信じてくれ、ベル君。絶対に君なら勝てる」

 

 

 慈愛に満ちた瞳でベルを見詰めながら、ヘスティアは数日前の出来事を思い出した。

 

 

 

 

 

 あれは、四日前のこと。

 ベルがアストレア・ファミリアのリュー・リオンによって救出されて帰ってきた時の話だ。

 

 ボロボロになった愛する眷属の姿にヘスティアは絶叫した。

 慌てて駆け寄り触って確かめれば、傷自体は既に癒えているようで胸を撫で下ろした。

 けれど、意識がないことには変わりはない。

 アストレアの元でお泊まり会をしていたので、彼女も交えてリューから詳しい話を聞いたヘスティアは頭を抱えた。

 

 そして、リューとアストレアに感謝を伝えてベルを連れて本拠地(ホーム)に帰り、目を覚ましたベルからも改めて説明を受けた。

 

 

「まさか、あのスキルにそんな欠点があったとはねぇ〜」

「…………はい。まだ確定ではありませんが、多分発動時間によって冷静な判断ができなくなってしまうみたいです」

 

 

 暴走して力尽きるまで戦い通した結果、リューが助けていなければダンジョン内で意識を失っていたであろうこと。

 ヘスティアとしてはゾッとせずにはいられない。

 スキルを発現させたのは、誰あろうヘスティアなのだ。

 自らの手で間接的にベルを殺してしまったとすれば、しばらく立ち直れないだけのショックを受けたことだろう。

 

 けれど、当のベルは真っ直ぐにヘスティアに告げた。

 

 

「────僕は、強くなりたいです。憧憬に追いつくほどに、追い越すくらい何処までも……っ!!」

 

 

 頭を下げて頼み込むベルに対して、ヘスティアは頷くしかなかった。

 むしろ眷属がここまでしているのに受け入れないのでは、ファミリアの主神として相応しくないとまで思った。

 同時に、ベルのために自分も何かをしてあげたいという気持ちが湧き上がり、色々あって莫大な借金をこさえながらも神友(しんゆう)のヘファイストスに新しい武器を作ってもらったのだ。

 

 

 

 

 

 ほんの少し前の出来事に思いを馳せながら、ヘスティアが背負い袋からある物を取り出してベルに手渡す。

 

 

「ベル君、これを受け取ってくれ」

「なんですか、これ……?えっ、ヘファイストス・ファミリアのエンブレム!このナイフどうしたんですか!?」

 

 

 それは一振りの短刀だった。

 漆黒の刀身に複雑な紋様が刻まれており、ベルが手に取った瞬間に淡く光り輝いた。

 見事な短刀に目を奪われたベルだったが、ふと目に入ったエンブレムを見たことで挙動不審になる。

 

 ヘファイストス・ファミリアと言えば、生産系のファミリアの中でも有数の大規模な派閥である。

 鍛冶の神が主神をしているだけあって大勢の鍛冶師が眷属になっており、オラリオだけでなく世界中に支店を構えているほど。

 当然ながら、有名ブランドとなれば値段も高くなる。

 駆け出し冒険者のベルでは、とてもではないけれど手が届かない装備がたくさんあるのだ。

 

 

「あ、あはは……ベル君は気にしなくていいよ。大丈夫、ボクが話をつけたらからね!」

「そうなんですか?神様、すごいです!ありがとうございます!」

「もっと褒めてくれていいんだよ!……って、やってる場合じゃないね。そのナイフの詳しい話は別の時にするとして、それならあのモンスターにも攻撃が通じるはずだよ」

 

 

 その言葉に表情を明るくさせて、けれど再び曇らせる。

 実は鎖を弾いた時に、ギルドから支給されている短刀には罅が入ってしまっていた。

 武器の問題はこれでどうにかなったが、それでもベルは勝てるか分からず不安が頭から離れなかった。

 そんなベルを見て、ヘスティアは最後の秘策を告げた。

 

 

「今からここで君のステイタスを更新する!そうすれば成長期のベル君なら、あんなモンスターなんて余裕で倒せるようになるさ!さあさあっ、脱ぎたまえよベル君!」

「ちょっ、神様ぁ!?……お、お願いします!」

 

 

 覚悟を決めてベルが背中を晒しせば、指に針を刺したヘスティアが素早くステイタスを更新していく。

 浮かび上がった神聖文字(ヒエログリフ)を指を滑らせ、ベルの中に溜め込まれた経験値(エクセリア)を引き出していくが、驚き過ぎて手を止めないようにするのが大変だった。

 

 

 

 ベル・クラネル

 

 Lv.1

 

 力 :F324 → C648

 耐久:G211 → E459

 器用:E402 → B730

 敏捷:E493 → A801

 魔力:I0

 

《魔法》

【】

 

《スキル》

憧憬一途(リアリス・フレーゼ)

 ・早熟する

 ・憧憬が続く限り効果持続

 ・憧憬の丈により効果上昇

 ・()()()()()()()()()

魂魄熱狂(ファナティカー・クレース)

 ・精神汚染に抵抗(レジスト)

 ・一度受けた攻撃に耐性付与

 ・窮地に陥った時、全能力値(アビリティ)強化

 ・魂が熱狂するほど効果向上

 ・憧憬一途の対象が側にいる時、【覚醒】【不死】一時発現

 ・()()()()()()()()()

 

 

 

 全アビリティ熟練度、()()()()()()()()()()()()()()()

 まだ恩恵を得てから半月と少しなのに、最も高い敏捷に至っては『A』まで届いている始末。

 あまりにも未知の塊過ぎてヤバい。

 

 

「(幾ら何でも早過ぎる!どうなっているんだ君は!てか、()()()()()()()()()()()()()っ!?)」

 

 

 更によく見れば、なんか知らない間にスキルが互いに強化し合う効果が生えてきている。

 ヘスティアがやったことだが、意味が分からなかった。

 もうどうにでもなれっ、とベルの背中を思い切り叩くのと、シルバーバックに見つかったのは同時だった。

 

 

『ガァアアアアアアアアアアッッ!!!!!』

 

「やっちゃえ、ベル君!」

「はいっ、神様!」

 

 

 地面を砕きながら現れたシルバーバックは、怒りの咆哮を上げてベルを強く睨んだ。

 しかし、その時にはベルの姿はそこになかった。

 予想外の敏捷に認識がついていかず、気が付けばシルバーバックを通り越して背後を取っていた。

 

 まるでスキルで暴走した時のような圧倒的な速度だったが、今この瞬間は()()()()()()()()()()()

 つまり、あのモンスターは既にベルの敵ではないということだ。

 

 

「──はあぁあああああああッッ!!!!!」

 

 

 シルバーバックは背後から感じた気迫に振り返ろうとしたが、その動きは致命的に遅かった。

 裂帛の気合いと共に踏み込んだベルは、短刀を構えて銃弾のような勢いで突撃する。

 背中から胸の魔石を狙って黒刃を突き立てる。

 一瞬の抵抗のあとに全力で押し込めば、短刀は狙い違わず魔石を砕いた。

 

 

『──ガ、アァ……』

 

 

 断末魔の声と共に、モンスターは灰になる。

 ベルは着地しながらも唖然とした様子で、ヘスティアを見ても同じような顔をしていた。

 

 最早戦闘とも呼ばない一瞬の決着。

 理解が追いつかずに固まる二人は周囲の建物から出てきた人々に囲まれて、大歓声がダイダロス通りを揺らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あら、もう終わりなの?」

 

 

 歓声の起きた場所から離れた建物の上に、二つの人影があった。

 外套に身を包んでいて容姿は分からない。

 だが、艶のある落胆したような声は女性のもの。もう一人は大柄な体格から恐らく男性だろうと推測できる。

 

 

「はっ……。あの者の相手にはシルバーバック程度では力不足だったようです」

「そう。ああ見えて意外と強いのね、あの子は」

 

 

 淡々とした返事に、同じく淡白な反応を返す。

 けれど、その瞳は楽しげに細められており、多少なりとも女性にとって満足する光景ではあったらしい。

 本当に見たかったものとは違うが、余興としては十分だったということだろう。

 

 

「……()()()()()、如何致しますか?」

「いいわ。ほんの暇つぶしだもの。はしたないけれど、少し()()()()がしてみたくなっただけ。だから────()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 いつのまにか、二人の他に新しく一人が増えていた。

 それは、抜き身の剣を片手にぶら下げた黒衣の男だった。

 夜の闇のような黒髪の奥から、輝く蒼色の瞳がフレイヤを鋭く睨み据えている。

 

 一瞬のうちに『強靭な勇士(エインヘリヤル)』を制圧した世界最強の剣士、『剣鬼』ジン・ブレイド。

 

 彼は誰にも悟られることなく、フレイヤを殺し得る距離にまで接近していた。

 気が付いた時には、既に手遅れだった。

 

 

()()()()。動かないで」

「……………………はっ」

 

 

 オッタルは到底聞き入れられない神命に葛藤したあと大人しく控えた、

 だが、追い詰められた獣のように神経を尖らせて、ジンの一挙手一投足を見逃すまいと眼光鋭く見据える。

 肝心のジンとフレイヤだが、二人の顔には特に緊迫感はなかった。

 

 

「アレンたちはどうしたの?迎えに行かせたはずなのだけれど」

「ああ、()()()()()()()()()から置いてきた」

「あらそう。やっぱり貴方の相手はオッタル以外では務まらないかしらね。ふふっ……」

 

 

 近所でばったり出会った親戚が話すような距離感で、ふわっと会話している中でもオッタルだけは真剣な表情だった。

 ジンが鞘に刃を収めても警戒は解かず、いつでも動けるように意識を研ぎ澄ませている。

 

 

「それより落とし前はどうつけるつもりだ?」

「そうねえ……私が直接何かをするのは悪手になるから、匿名で寄付するくらいかしら」

「…………なるほど。それならいい」

「行ってしまうのね。もう少し話していたかったのだけれど」

「ロキを待たせてるからな」

 

 

 話を聞いて去って行ってしまったジンに、不満そうにフレイヤは頬を膨らませる。

 まるで兄に構ってもらえなかった童女のような仕草だった。

 

 

「……今度会ったらただじゃおかないわよ、ロキっ!!ギッタンギッタンにしてやるわっ!!」

 

 

 訂正。

 

 大人気なく理不尽にキレていた。

 事実無根の逆ギレに晒されることが決定したロキは泣いていい。

 

 こうして、モンスター脱走事件は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 





ようやく怪物祭(モンスター・フィリア)が終了しました!
番外編の三話を抜いても九話掛かってますからね。ちょっとテンポ悪いのかなぁ〜、なんて思ってますが大丈夫だと信じてます!

ところで、性懲りも無くベルくんの追加強化パッチ入りました。
ノリでやっちゃったけど大丈夫かこれ!?
成長速度が早すぎてバグとか起こらないだろうな?本当に大丈夫ですか??
まあ、ベルくんが強くなる分にはヨシッ!(現場猫)

そういうわけで、また来週!
次回「ハシャーナ死す」(高評価&お気に入り登録&感想お待ちしています!)



今回出てきた剣技について

・剥奪剣界
原作:無職転生
三大流派の一つである水神流の奥義。
構えに入った時点から範囲内にいる前後左右上下の敵が魔力も含めてほんの少しでも動いたならその動作に反応して切り捨てる究極のカウンター技……というのが、原作に於ける剥奪剣界。
ぶっちゃけジンの使う剥奪剣界もほとんど同じだが、強いて言えばカウンターとして放たれる斬撃は全て光の太刀である。
ちなみに、射程範囲は半径100mほど。
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