剣に狂った男が人の心を取り戻すのは間違っているだろうか 作:ロマン剣技大好き侍
サブタイが盛大なネタバレになる件について。
満を辞して登場する原作主人公、果たしてどうなってしまうのか?
それはそれとして仕事がしんどくてモチベが死んだ。
現在、ロキ・ファミリアは17階層を進んでいた。
50階層での戦いは最終的にアイズの活躍もあり、天幕や各種物資もほとんど無事で済んだ。
全部ではない理由は、あの最後の一撃。アイズの新技である
幸い高価で貴重なエリクサーではなく、安価で簡単に補充が効くものだった。賞賛こそあれど責める者は一人としていない。
このまま今日のうちにダンジョンを出ることになった。
下層以降はモンスターだけでなく環境そのものが冒険者を阻むが、中層以上は変哲もない岩窟が続くだけ。遠征メンバーであれば一日で踏破するくらいは容易い。
とはいえ、比較的浅い階層ではレベルの低い団員に経験値を稼がせるため基本的に手は出さず、第一級冒険者たちは暇を持て余すことになる。
「う〜っ、暴れ足りないなぁ〜」
「しつこいわよ、あんた。元から51階層で引き返す予定だったでしょうが。いい加減にしなさい」
「そりゃそうだけどさ〜。
今回の遠征は初めから51階層で引き返す予定だった。
そのためティオナは最後の強敵として
しかし、結果は知らないうちに獲物を奪われた挙句、未知のモンスターによって愛用していた得物、
ティオナからしてみれば踏んだり蹴ったりだろう。ティオネから窘められても、子供のように口を尖らせてぶーたれる。
「はぁ〜っ、結局あのモンスターなんだったの?」
まだ割り切れないのか不満げな顔を隠さず、それでも話題だけは変える。
あの芋虫型及び女性型のモンスター。
ロキ・ファミリアが見たことも聞いたこともない、第一等級武装さえ溶かし尽くす体液を持つ怪物。
何処から来たのかも分からない。階層移動という異常行動をするため、特定が難しいだろう。
「私にだって分からないわよ。未確認のモンスター、としか言えないでしょうね」
ティオネもそう言って嘆息する。
ジンやアイズを筆頭に倒す時は魔石を破壊していたので、生憎と
魔石を見ればもう少し何か分かることもあったかもしれないが、厄介な相手だったので仕方がない。
「だよね〜。……ところで、アイズは?」
「
「え〜っ、またやってるの?暇なのはすっごい分かるけどさ〜」
後ろ向きになって歩きながら、ぴょんとティオナが真上に跳ぶ。
列の最後方に、目的の人物はいた。
同じく最後方にいるジンと並んで、何故か
別にモンスターと戦っているとかではない。暇を持て余して、
「……」
「……」
無音で並の冒険者では目視さえ不可能な速度で剣を振る。
見える者には分かるだろう。
ジンもアイズも、全く剣筋がブレない。歩きながらという状態でありながら、構えから剣を振り切るまでの動きが寸分の狂いもなく一致している。
「……」
「……」
どちらも無表情で黙々と剣を振っており、サポーターとしてついて来た団員たちが居心地悪そうにしていた。
強さとか立場とか、色々な意味で接し辛い二人が背後で何故か素振りをしているのだ。
どういう反応をすればいいのか誰も分からないだろう。
天然コンビはそんな仲間の複雑な心情など知らず、剣を振ることに集中していた。
今は二人だけだが、先程まではラウルも参加していた。
ジンとアイズほどには鈍感でいられなかったらしい。すぐに微妙な空気感に耐えられなくなってフェードアウトした。
常識や良識は、投げ捨てる方が強くなれるのだ。
「ハッ……よくやるぜ」
同じくジンとアイズを見ていたベートが、何処か不機嫌そうに鼻を鳴らす。
なんだかんだと、二人の強さの秘訣は直向きさにある。強くなることに真摯で、妥協をしない。
昔に比べれば改善したが、相変わらず一匹狼気質のベートは強さに執着している。常に強者と弱者で他人をカテゴライズし、かなりシビアな考え方をする。
そんなかつては『
そうして最後尾が異様な空気になっている中で、ロキ・ファミリア一行は広いルームに辿り着いた。
17階層は、
ダンジョンは浅い階層になるほど通路か狭くなるため17階層に入る前に隊を分けている。前側はリヴァリアが監督して、後側はフィンが担当だ。
ジンたちがいるのは前側の最後尾、ということになる。少し紛らわしいが。
『──ヴヴオォ』
ロキ・ファミリアがルームを進んでいく。
不意に聞き覚えのある鳴き声、荒い息遣いが耳に入った。獰猛な気配がルームに近づいてくる。
複数の通路から、大量のモンスターが姿を現した。
『ヴヴォオオオオオオオオオオッッ!!!!』
岩窟を激しい咆哮が反響する。
オラリオにいる大多数の冒険者が裸足で逃げ出す威圧感と共に、そのモンスターは荒縄のように筋張った肩や腕を隆起させる。
無造作に踏み出された一歩は、地面に蹄型の陥没痕を残した。
筋肉質な巨体に、赤銅色の体皮。
一般人にも知られるモンスターの代表格にも数えられる牛頭人体の怪物────ミノタウロスだ。
「ミノタウロスだ。……なんか数多くない?」
「そうね。少し多過ぎるかしら?」
「ちっ、馬鹿みてえに群れやがって……!」
ミノタウロスの群れはルームに続々と進入し、ロキ・ファミリアを包囲してきた。
興奮して血走った目を向ける猛牛のモンスターは、まるで逃がさないとでも言うように荒々しい鼻息と共ににじり寄ってくる。
「リヴェリア、これだけいるし、私たちもやっちゃっていい?」
「ああ、構わん。ラウル、フィンの言い付けだ。お前が指揮を取れ。経験を積む良い機会だからな」
「はい!頑張るっスよ〜!」
通常はLv.2以上から中層に潜るようになるが、並のLv.2を容易に蹴散らすのが中層最強のモンスターと呼ばれるミノタウロスである。
Lv.3でも不覚を取れば危ういと言われるほどの強さ。
しかし、ロキ・ファミリアの遠征メンバーはオラリオ全体で見ても中堅どころの実力はある。
幾ら数が多くても怯むような団員はいない。
それでも数が多いと戦闘に時間が掛かるので、今回は例外的にティオナたちが参戦することは認められた。
我先に飛び出したのはティオナ、続いてティオネ、ベートと動く。
いい女アピールに余念のないティオネだが、そのフィン直々に許可が出ているなら我慢する必要はない。
「ティオナさんたちが動いたら、その隙をつけ!一人で無理そうなら、二人でも三人でも協力するんだ!油断するなよっ、確実に仕留めろ!」
まだ未熟だがフィンから後釜候補と目されるだけあり、ラウルの指揮は的確だった。
圧倒的な戦力である第一級冒険者には自由に動いてもらうことで、他の団員には包囲に穴を開けられて混乱したミノタウロスを確実に討てるよう簡潔な指示を出す。
仮に難しい指示を出しても咄嗟に動けないのでは話にならないだろう。
一瞬の判断により生死が分かれる戦闘に際しては、端的明確な指揮こそが最も求められるものだ。
一連の戦闘は終始ロキ・ファミリア側が優位に進めた。
ティオナたちが包囲を切り崩し、乱戦にはならないように気を付けながら確実に仕留めていく。
そして、あっという間に半数のミノタウロスを返り討ちにしたところで、事態は思わぬ方向へと転がっていったのだ。
『ヴヴォオオオオッ!?』
あまりの戦力差に恐れをなしたのか、一匹のミノタウロスが背を向けた。
そこからまるでその恐怖が伝染したかのように、生き残っていたモンスター全てが、一斉に逃亡を開始した。
「ええっ!?逃げたぁあー!?」
「はあっ!?てめェら、
ティオナとベートが驚愕の声を上げるが、それも無理はない。
人を襲う
呆然としている間にもミノタウロスたちは凄まじい勢いで通路へと駆け込んでいく。
「追え、お前たち!」
「ま、まずいっスよ!急いで追い掛けるっス!」
最初に我に返ったリヴェリアとラウルが焦りを滲ませた声で指示を飛ばす。
それを受けて、一瞬動きを止めていた団員たちは弾かれたように動き出す────直前。二陣の風が真横を通り抜けて行った。
反射的に振り返った者は気付くことだろう。
「糞がっ、俺たちも追い掛けンぞっ!!」
「だから判断が早いってばぁーっ!」
「あのっ、私っ、白兵戦は苦手で……!?」
「あんた杖持ってるでしょう!殴り殺しなさいっ!」
「は、はいぃ……!」
ベートたちも二人を追うようにして通路へと入っていく。
その誰も彼もが必死の形相をしている。ミノタウロスと戦っていた時の余裕は既に吹き飛んだ。
何故ならば、ダンジョンには当然ロキ・ファミリア以外にも冒険者がいる。
特に中層から上層にいる冒険者は相応の実力であり、押し寄せるミノタウロスの群れは正しく悪夢と呼ぶしかない事態だ。
自分たちが逃したモンスターによって多くの冒険者が帰らぬ人となってしまえば、対外的な問題でも面倒なことになるし、究極的に冒険者の身の安全に関しては自己責任によるところだとしても、その一因が自分たちにあるならどうしても寝覚めが悪くなる。
先行したジンとアイズが狩っているのだろう。
途中で何度か魔石を目撃したが、未だに二人の姿は見えない。
あの二人がいないということは、ミノタウロスはまだ生き残りがいるということになる。
「ちょっ、この先って……!」
そうしていると、16階層に繋がる階段が見えてきた。
階段にも
「面倒な予感しかしねえぞ……!?」
ベートの言葉に内心で同意しながらも、ロキ・ファミリアが誇る第一級冒険者たちが我武者羅にダンジョンを駆け抜ける。
願わくば、あの二人が事態を解決してくれていることを期待しながら────。
◆◇◆
弱冠十四歳のベル・クラネルは、夢に夢を見る年頃の少年である。
何処か
更には、冒険者なんて職業に夢を見てしまったのであれば尚更だ。
その憧れは、際限なく高まるばかりだった。
冒険者に夢見る人には幾つかの種類がある。
ざっくりと分けてしまえば『金』『名誉』『権力』『女』の四通りだろうか。異論は認める。
金と名誉はそのままの意味だ。
まず金は、希少なドロップアイテムや金銀財宝を見つけて、一生を遊んでも尽きないほどの一攫千金を手にすること。
ありきたりではあるが、誰もが望む生活だろう。
名誉も同じく、邪悪な竜を討滅したり囚われの姫君を助け出したりと、吟遊詩人に語り継がれて英雄譚に名を残すような活躍をすること。
ありきたりではあるが、多くの人が一度は想像するだろう。
権力は少し名誉と近しいものがあるかもしれない。
ただこちらは、有名になることはあくまで手段であり、目的はその後に手に入る名声を元にし知名度を得ること。
特にダンジョンを都市の内部に抱えるオラリオは尚武の気風が強く、力を示した者には冒険者のみならず、一般人までもが一定の敬意を払うようになる。
それは即ち発言力を手に入れるということでもあり、他人より優れた立場にいたいとは少なからず思ったことがあるだろう。
そして、本題に入ろう。
ベルが夢見たのは、前述した『金』『名誉』『権力』も含まれるが、最も大きな比重を占めるのは別にある。
金に負けず劣らず即物的な『女』こそ、多感な青少年がオラリオと冒険者に見た夢の正体だった。
話は変わるが、ベルの趣味の中に英雄譚を読むことがある。
今は亡き祖父によって様々な英雄の物語を聞かされた純粋な子供は、至極当然の結果として英雄に憧れた。
ここで一つ普通と異なる点は、その祖父がとんでもないスケベ爺だったことにある。
毎度のように物語を読み聞かせると同時に、それ以上の執念を持ってハーレムについて熱弁を振るう。
確かに英雄譚を語るには英雄と、その英雄に寄り添う美姫についても語られることが多い。場合によっては、一つの物語で幾人も。
祖父曰く、
決して間違った認識ではないが、子供に対して寝物語に囁く内容ではない。倫理とか諸々、あまりにも教育に悪すぎるだろう。
そして、誰も祖父の暴挙を止める者がいなかった結果。
頭の悪い英才教育を一身に受けたベルくん十四歳は、ハーレムを求めてオラリオにやって来たのであった。
手に持つ剣一本でのし上がり、末に到達するのはモンスターに襲われる美少女との衝撃的な出会い。
響き渡る悲鳴、怪物の咆哮、間一髪で飛び込み翻る鋭い剣閃。
恐ろしい怪物は倒れ、残るのは地面に座り込む可愛い女の子と、クールに佇む格好の良い自分。
ほんのりと染まる頬、自分の姿を映す潤んだ綺麗な瞳、芽吹く淡い恋心。
時には酒場の可愛い店員にその日の冒険を語り、仲を育んでみたり。
時には野蛮な冒険者からエルフの少女の身を守ってみたり。
時には伸び悩むアマゾネスの戦士を慰め手を貸し、パーティを組んでみたり。
時には他の女の子と仲睦まじい様を目撃され、嫉妬されてみたり。
時には時には時には時には…………。
現実を理解した大人からすれば、聞くに耐えない子供の戯言。
若い頃は自分もそんな妄想をしていたなと、頭と心が痛くなるような夢物語。
可愛い女の子と仲良くしたい。綺麗な異種族の女性と交流したい。
少し邪まで如何にも青臭い考えを抱くのは、若い雄なりの
ダンジョンに出会いを、訂正、ハーレムを求めるのは間違っているだろうか。
結論。間違っていた。
少なくとも、甘過ぎる見通しだった。
今更ながら激しく後悔している。
『ヴヴォオ……』
目の前には、今まで見たこともない恐ろしい
それは荒縄のように筋張った筋肉を隆起させて、荒々しい呼吸のたびにその巨体が上下する。
筋肉質な巨体に、赤道色の体皮。
ギルドの担当受付であるエイナ・チュールから勉強と称して知識を叩き込まれていたから、そのモンスターが何なのか分かってしまった。
一般人にも知られるモンスターの代表格にも数えられる牛頭人体の怪物────ミノタウロスだということが。
到底ベルが勝てる相手ではない。
エイナさんからの忠告を守らず、最近調子が良いからと5階層まで進んだことが悪かったのだろうか。
だが、ミノタウロスは本来こんな浅い階層にいるモンスターではない。
敢えて言うならば、ベルは運が悪かった。
所詮は日夜ダンジョンで命のやり取りをしている冒険者の生死なんて、その程度の一言で済まされてしまうのだ。
ミノタウロスから発せられる威圧感によって硬直してしまい、体を動かせなかった。
このままでは間違いなく死んでしまう。
何故かベルをじっくりと見詰めるだけで襲い掛かって来ないが、それも時間の問題だろう。
動け、動け、動けっ!と念じるベルに対して、遂にモンスターが動き出した。
『ヴヴォオオオオオオオオオオッッ!!!!』
「ほぁああああああああああっ!?」
怪物の咆哮によって、運良く硬直が解けて体が動かせるようになった。
反射的に背を向ける。全力で地面を蹴り出す。
頭の中では現実逃避で益体もないことを考えながら、阿呆な夢を見て冒険者になったベルは怪物から喰い殺される運命に抗おうとした。
しかし、背を向けようとした瞬間────ミノタウロスの頭から股下までを一筋の光が通り抜けた。
「えっ?」
『ヴォ?』
ベルとミノタウロスの間抜けな声。
けれど、それを責めるのは酷というものだろう。
筋骨隆々な巨体が左右に分たれるよりも早く、ミノタウロスという恐怖の象徴は灰と還った。
地面には真っ二つに両断された魔石が落ちていて────。
「──怪我はないか?」
キン、と鍔鳴りの音と共に剣を鞘に収めた男が一人立っていた。
ベルとは正反対の夜空を閉じ込めたような漆黒の髪。
透徹とした冷たい輝きの奥に、微かではあるが確かに光を宿した
軍服にも似た黒色のバトルコートに身を包み、何処にでも売っていそうな量産品めいた剣を腰に提げ、180Cを超える長身と鍛え上げられた鋭い体躯でベルを見下ろす。
そして、襟に刺繍された道化師のエンブレムが目に入り、ようやくベルは思考が回り出した。
黒い装備に身を包んだ、黒髪蒼眼の剣士。
しかも、コートの襟に道化師のエンブレムが刻印されているなんて、そんな人はオラリオで一人しかいない。
駆け出しの冒険者であるベルにも、目の前の人物が誰だか分かった。
ロキ・ファミリアに所属する第一級冒険者。
オラリオでも過去にも数えるほどしかいないLv.8という頂に登り、都市最強の一角と謳われる存在。
『剣鬼』ジン・ブレイド。その人だった。
「……?」
返事がないベルを不思議に思っているのだろうか。
真顔のまま首を傾げる様は、ベルが想像していた姿とはまた少し異なる方向で神秘性を感じさせた。
何処か浮世離れしたような雰囲気。少し神様と似ている気がした。
それよりも何か言わなければ。
命を助けてもらったというのに黙りを決めるのは礼儀としてあり得ない。
だが、憧れの存在を前にして爆発して砕け散ってしまいそうな心臓の鼓動が煩い。まともに呼吸できているかも怪しい。
剣一本でのし上がった現代の英雄を前にすれば、その反応も仕方がないと言うものだろう。
必死の思いで勇気を振り絞り、ベルは声を発した。
「ぁ……ありましぇんっっ!!!!」
──死にたい。
現在、ベルは猛烈にこの場を離れたかった。
憧れの存在を前にして、盛大に噛んだ。
なんだ、僕がなにか悪いことでもしたのかと真っ赤になった顔で目を回す。
それに対して、ジンは真顔で何度か頷いていた。
何故ずっと真顔なのか?分からない。何を考えているのだろうか。
どうせなら笑ってくれたら気が楽に……いや、やっぱりもっと死にたくなるだけだと更にベルは落ち込む。
見る人が見ればジンの真顔も満足げな表情だと分かるが、当然ベルに分かるはずもなかった。
「ジンっ、最後の一匹は?」
ベルに休む暇を与えずに、再び状況に変化が起きる。
ふわり。
風が通り抜けた。かと思えば、ジンの隣に新たな人物が現れた。
蒼色の軽装に包まれた細身の体。
鎧から伸びるしなやかな肢体は眩しいくらい美しい。
繊細な体のパーツの中で自己主張する胸の膨らみを抑え込む、エンブレム入りの銀の胸当てと、同じ色の紋章の鉄甲、腰にぶら下がった剣の鞘。
腰まで真っ直ぐ伸びる金髪は、如何なる黄金財宝にも負けない輝きを湛えている。
そして、女神にも匹敵すると云われる妖精と見紛うような可憐な容姿。
ジンを見詰める瞳の色は、金色だった。
『剣鬼』ジン・ブレイドと隣に立つ、金眼金髪の女剣士。
先程と同じく、ベルでさえ知っているオラリオの常識とも言えるほど有名な存在。
オラリオ最強の女性冒険者とも呼ばれる雲上人。Lv.6という圧倒的な強者。
『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタイン。その人である。
「ああ。倒した」
ジンが頷いて答えれば、ほっと安堵の息を吐いた。
そこでようやくベルの存在に気が付いたのか、金眼と視線が合わさる。
こてん、と首を傾げる様は、その美しくも幼い美貌に良く似合うあどけない仕草で、女性慣れしていないベルはつい顔が熱くなる…………こともなかった。
それ以上に、目の前の光景に目を奪われていたのだ。
「あの子は……?」
「襲われるところを間一髪だ」
「そうなんだ。無事?」
「見ての通りだ。怪我もないらしい」
「……うん。よかった」
黒髪の剣士と、金髪の剣士が親しげに話し合う。
言葉は少ないが、なんとなく二人の雰囲気からベルは仲の良さを感じ取っていた。
そして、基本的に女性慣れしていないベルでも一見して分かるほどに、ジンとアイズの距離感は物理的にも近い。
剣の鬼と呼ばれる英雄のジンと、剣の姫と呼ばれる美姫のアイズ。
ベルが思い描いた通りの光景がそこにはあった。
姫となる存在もベルと比べて遥かに強いが、そのくらいは些細なことだろう。
大切なのはダンジョンという舞台で出会い、絆を育んできたであろう冒険者の代表格とされる人物たちが目の前にいることだ。
二人の関係はベルの知るところではないが、少なくとも互いのことを親しい相手とは思っているだろう。
僭越ながらベルも、とてもお似合いの二人だと思った。
うっかりアイズに一目惚れしてしまわなかったのは、ベルにとって幸運だったのか不幸だったのか。
美男と美少女がよく観察してやっと分かる程度に薄く微笑みあっていることに気が付いた瞬間────ベルの感情が臨界点を超えて爆発した。
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか。
結論。やっぱり間違ってなかった。
だって誰もが憧れる理想の冒険者が体現しているのだ。ならば、それが真実である。
最早ベルの妄想は留まるところを知らなかった。
「たっ、助けて頂きありがとうございましたっ!!それでは僕はこの辺りで失礼しますっ!本当にありがとうございましたぁああああああああああっっ!!!!」
早口で捲し立てるようにして感謝の言葉を伝えながら、ベルの人生史上最速で地上へと繋がる道を爆走した。
二人の世界の邪魔をしてはならないと、謎の使命感に駆られて。
自分が夢見た光景を体現する偉大なる英雄、尊敬すべき先駆者、最強を冠する冒険者として、ジン・ブレイドの名前が強く胸に刻まれたのであった。
そして、未来でジン&アイズのカプ推し厄介ファン代表と呼ばれる存在が爆誕した。
くぅ〜、疲れました(二徹明け)
ベルくんの脳が焼けた結果、ジンアイ過激派厄介ファンが爆誕しました!これにて工事完了です!
これから毎日推しカプを激推しすると共に、間近で目撃した夢物語を自身もまた実現するために今後一層の努力を重ねることでしょう!
全て丸く収まりましたねっ、ヨシッ!(現場猫)
みんなっ、オラに元気を分けてくれーっ!(意訳:高評価&お気に入り登録&感想お待ちしてます!)
投稿間隔についてなのですが、現在と変わらず完成次第投稿するか。或いは、土日に連投するかのどちらがいいですか?週に3話は書きたいと思っているので、土日連投でも平日の何処かで1話は投げますが……。
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完成次第投稿!(今と変わらず……)
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土日に連投!(こっちの方が読みやすい!)
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どちらでもいい。(好きにすれば?)
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毎日投稿しろ。(エタる)
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そんなことよりアイズたん可愛い()