剣に狂った男が人の心を取り戻すのは間違っているだろうか   作:ロマン剣技大好き侍

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おかしい、こんなはずじゃなかったのに。
何故かすっごい文章が長くなってしまったので仕方なく分割しました。
つまり、もう一話番外編が続きます。本当に申し訳ない。

あと、皆様アンケートの回答ありがとうございます!参考になりました!
今までと変わらず、アイズたんをすこりながら、好き勝手やっていこうと思います!
今後もよろしくお願いします!


Another Story【ヘスティア・ファミリア】②

 

 

 

 

 

 

 

「行ってきます、神様」

 

 

 ベルは幸せそうに眠るヘスティアに向けてそう告げて、朝早く廃教会を出立した。

 いつも通り装備はライトアーマーに愛用の短刀。あとは神ミアハから譲り受けたポーションがあるくらいだ。

 上層でも浅い階層ならこれで十分ではある。

 

 西地区の大通りを抜けてバベルを目指す。

 昨日スキルが発現したベルだが、常に発動する効果で意味があるのは『一度受けた攻撃への耐性を付与する』だけだろう。

 エイナからも常々言われている通り、窮地に陥るほどの冒険はしないようにするべきだ。

 ヘスティアを(いたずら)に悲しませるのは、ベルの望むところではないのだから。

 

 ベルと同じくダンジョンに潜るのか、装備を身につけた冒険者らしく姿もある。

 貧相な装備のベルと比べて、一つか二つは上等そうな防具を見て羨ましくなるが、先立つものがないので仕方がない。

 無い物強請りをしても格好悪いだけだ。

 ぶんぶんと顔を振って記憶を掻き消し、一直線に白亜の巨塔を目指して歩こうとした瞬間────。

 

 

「……!?」

 

 

 ──ゾクリ。

 

 突如、背筋に悪寒が走る。

 まるで()()()()()()()()()()かのような視線。

 立ち止まって、思わず振り返る。

 

 気が付けば、視線は感じられなくなっていた。

 周囲を見回しても、怪しい人物はいない。ベルを見詰める視線もない。

 カフェテラスの準備をしている店員、路地の角で屯する獣人の二人組、商店の窓から大通りを俯瞰する女の子。

 本能が拒絶するような感覚に、混乱の中で警戒心からきょろきょろと視線を動かした。

 

 

「(僕の勘違い……?)」

 

 

 見て分かるほど、明らかな不審者はいない。

 むしろ通りのど真ん中で挙動不審なベルの方が、他人から見れば怪しい人物だろう。

 どくどくと脈打つ心臓の鼓動が耳から離れず、釈然としない気持ちのまま仕方なく足を進めようとした。

 

 

「あの……」

「!?」

 

 

 背後から聞こえた声に、反転して身構える。

 しかし、そこにいたのは普通のヒューマンの少女だった。

 白いブラウスに丈の長い若葉色のジャンパースカート、その上からサロンエプロン。

 薄鈍色の髪を後頭部でお団子にしており、そこからぴょんと一本の尻尾が垂れている。ポニーテールとは少し違うらしい。

 髪と同色の瞳は、ベルの大袈裟な挙動によって大きく見開かれていた。

 どう見てもただの一般市民である。

 

 

「ご、ごめんなさいっ!」

「い、いえ、こちらこそ……」

 

 

 互いにぺこぺこと頭を下げ続けた。

 誰に聞いても間違いなくベルの過剰反応だと言うだろうし、謝られると居た堪れなくなる。

 よく見れば、先程カフェテラスの順番していた店員だと気が付いた。

 

 改めて話を聞けば、ベルが落とした魔石を拾ってくれたらしい。

 昨日全て換金したつもりだったのだが、腰につけた巾着にまだ残っていたのだろうか。

 それに、いつもちゃんと袋の口は閉じているはずだと確認しようとしたところで、少し強引に押し付けられてしまった。

 

 更にその後、不覚にも鳴ってしまった腹の音を聞かれてしまい、赤面しているところに弁当を譲ると言われた。

 当然断ったのだが、またしても謎に押しが強く、受け取ってしまった。

 もしかして本当にただの親切心なのだろうか。

 でも、初対面の人に自分の弁当を渡すのって少しどうなのかと思わないでもなかった。

 

 ただ、相手も意外に強かな人だったらしく。

 弁当を譲る代わりとして晩飯を食べに行くことを約束させられてしまった。

 どうやら先程のカフェテラスが併設された酒場で働いているようで、夜は結構繁盛しているのだとか。

 料理も酒も絶品だし、是非来てくださいと可愛いらしく(あざとく)頼まれてしまえば、悲しいことに異性に弱いベルに断る術はなかった。

 

 紆余曲折あったが、こうしてベル・クラネルはシル・フローヴァと知己を得る。

 最後には笑みと名前を交わし合い、ベルは白亜の摩天楼への道を進み、シルは開店の準備へと戻って行くのであった。

 

 

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

 

 

 今日のベルは昨日の反省を活かし、4階層以下での活動を中心としていた。

 出現するモンスターはゴブリンやコボルトが多い。

 どちらもモンスターとしては一般市民も知る有名どころであり、ゴブリンに勝てないようなら冒険者の才能は無いと言われる指標にもなっているほどだ。

 

 そして、ベルは早速コボルトの群れを相手に戦っていた。

 短刀が毛皮に覆われた腕を斬り裂く。

 痛みに怯んだ隙を見逃さず、首に刃を突き立てて抉れば、コボルトは絶命した。

 

 

「よっ、と」

『ギャウッ!?』

 

 

 背後から風切り音が聞こえたので転がって避けると、モンスターの驚愕する声がした。

 振り返れば、複数のコボルトが警戒するように唸っている。

 

 

「(すごいっ、この数を相手に戦えてるっ!!)」

 

 

 既に三匹を倒して、残るは八匹。

 合計十一匹のコボルトに囲まれた時は逃げようとしたけれど、その瞬間に背中にある神の恩恵(ファルナ)が熱を持った。

 熱はじんわりと全身に浸透していくと、急に力が溢れ出してきたのだ。

 そこからはベルの独壇場だった。

 

 

「はッ!」

『グゲェッ!?』

「やぁッ!」

『ガウッ、ギャンッ!?』

 

 

 一気に懐に入り込めば、コボルトはまだ反応できていない。

 隙だらけの腹に白刃を突き刺す。同時に飛び退けば、横から振り下ろされた鉤爪が空を切った。

 ゴブリンに比べて素早いコボルトを翻弄できる。信じられないくらい体が軽かった。

 

 同時に三匹から狙われて、そのうち一匹の攻撃を躱しきれなかった。

 調子に乗って踏み込み過ぎたのか。まともに体当たりを喰らってしまったが、ポーションを使う必要がない程度の痛みしか感じない。

 更にもう一度だけ試しに喰らってみれば、先程よりも痛みが少なくなったような気がした。

 

 勢いよく薙ぎ払われた鉤爪を刀身で滑らせて受け流し、すれ違いざまに首を斬る。

 ギリギリを見切って躱して、胸にひと突き。魔石を抉り出す。

 ベルが思い描いた通りの動きができる。一瞬囲まれた時もあったが、不思議と恐怖は感じなかった。

 今ならなんでもできる。そう思わせるには十分な感覚が全身に漲っている。

 

 渾身の力を込めれば、一撃で首を斬り飛ばせた。

 咄嗟に放った蹴りが一匹の胸に当たれば、破裂したような音と共に血反吐を吐きながら転がっていき、それ以降は動かなくなった。

 まるで力自慢の獣人やドワーフの攻撃を受けたかのような有様で、心の奥底から高揚感が湧き出してくる。

 まるで別人になったかのような変貌ぶりである。

 

 

「(『窮地に陥った時に全アビリティ強化』だっけ?こんなに強くなるものなんだ!これが、ずっと僕が欲しかった、スキルの力っ!!)」

 

 

 程なくしてコボルトを倒し切れば、背中の刻印を起点に全身へと広がった熱が失われていく。

 恐らく窮地を脱したということで、能力値(アビリティ)強化の効果が無くなったのだろう。

 ある種の全能感も消えてしまい残念に思うが、スキルが反応するほどの窮地を乗り越えられたことに安堵する。

 もっと強い相手でも戦えるのではないか。

 必然的に脳裏に過った欲望を努めて無視して、魔石の回収に移る。

 

 

「あれ?これって……」

 

 

 コボルトの胸から魔石を抜き取っていると、不意に一匹のコボルトの灰の中に爪が一つあるのを発見した。

 通常の場合モンスターは魔石を失うと全身が灰に還ってしまうのだが、稀にこうしてドロップアイテムを残してくれることがある。

 こちらは少し高く売れる。魔石は腰巾着に仕舞い、コボルトの爪は背負っている黒色のバックパックに放り込んだ。

 ラッキーである。昨日から続く幸運に感謝した。

 

 それからもゴブリンとコボルトを中心に、時折ダンジョン・リザードやフロッグ・シューターも見つけ次第倒す。

 倒し続けてバックパックが満杯になれば地上へと戻って換金し、再びダンジョンに潜る。

 これを何度も夕刻になるまで繰り返した。

 

 スキルも手に入れたことだし、予想通りこの辺りのモンスターが相手なら囲まれたところで油断しなければ無傷で勝てるようになった。

 むしろ敵が多い方が安定して戦えるくらいで、飛躍的な成長だと言えるだろう。

 この後にはシルが働く店で食事をする約束もしてしまったし、今日は昨日の分まで稼がなければならない。

 約束の時間になるまで頑張ろう、と改めて気合を入れる。

 

 

「ふッ!」

 

 

 天井から奇襲を仕掛けてきたダンジョン・リザードを、反撃で下顎から短刀を突き刺すして一撃の元に仕留める。

 強くはないが壁面や天井から襲い掛かってくるので油断はできない。

 

 

「っと!隙あり!」

 

 

 体を絡め取ろうとするフロッグ・シューターの舌を斬り飛ばし、衝撃に転がった無防備な瞬間を見逃さずに接近して倒す。

 一度あの舌に捕まると、Lv.3にでもならなければ引き千切れない弾力がある。

 他のモンスターと連携されると厄介かもしれないが、単体なら舌さえ気を付ければ勝てる相手だ。

 

 ゴブリンやコボルトは一対一ではもう余裕だ。

 最も戦っている回数が多いし、基本的に一匹で行動することは少ないが三匹くらいならスキルも発動しないくらいの相手である。

 そのため、周囲に冒険者がいないことを確認した上でゴブリンなら六匹以上、コボルトなら五匹以上になるように集めてから戦うようにしていた。

 そうすればスキルが発動するので、結果的に効率が良いのだ。

 

 夕刻にはダンジョン探索を終わらせたが、その日のベルの稼ぎは過去最高の6400ヴァリスに到達した。

 自分の成長を実感して、更にいつにない重みを伝える布袋に笑みを浮かべて。

 ほくほく顔で、ヘスティアの待つ廃教会へと帰宅した。

 

 

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

 

 

 ベル・クラネル

 

 Lv.1

 

 力 :I81 → H145

 耐久:I13 → I72

 器用:I96 → H161

 敏捷:H164 → G249

 魔力:I0

 

《魔法》

【】

 

《スキル》

魂魄熱狂(ファナティカー・クレース)

 ・精神汚染に抵抗(レジスト)

 ・一度受けた攻撃に耐性付与

 ・窮地に陥った時、全能力値(アビリティ)強化

 ・魂が熱狂するほど効果向上

・憧憬一途の対象が側にいる時、【覚醒】【不死】一時発現

 

 

 

「トータル270オーバー!?」

 

 

 つい悲鳴のような声を上げてしまった。

 帰宅してすぐに、ヘスティアに頼んでステイタスを更新してもらったところ、あり得ないくらいに能力値が伸びていたのだ。

 日に合計で10上がらない時だってあるのに、270オーバーってなんだ?

 何が起こっているのか分からなくて、答えを求めてヘスティアを見ると、なんだか困ったように笑っていた。

 

 

「おめでとう、ベル君。凄いじゃないか!」

「えっ、いや、でも……どうして急に伸びたのか神様は知ってますか?」

「う、うーん、どうかなぁ〜?ボクも君が初めての眷属だから、あまり詳しくなくてね。昨日発現したスキルの隠れた効果だったりするんじゃない?」

 

 

 いつもと比べて歯切れの悪いヘスティアだったが、まさか嘘をつかれてるなんて思わないので気付くことはない。

 普通に考えれば眷属を騙す必要もないので、当たり前の思考ではある。

 こんな例外的な状況でなければ、と注釈が必要になるが。

 

 

「なるほど。それにしても凄いことは分かるんですけど、正直現実感がなくて。敏捷なんて85も上がってますよ」

 

 

 それに耐久だって、元の数値の五倍以上になっている。

 今日は何度か敢えて攻撃を受けたりもしたけれど、まさかこんなに上がるとは思っていなかった。

 ゴブリンの攻撃ならちゃんと防げばそんなに痛くないし、今よりもお金に余裕ができてきたら一日中耐久を上げてみてもいいかもしれない。

 まあ、一番低いから上がりやすかっただけだろうけど。

 

 だとしても、たった一日の探索でこんなにステイタスが上がってしまうと嬉しさ以上に困惑が勝ってしまうのだ。

 今日まで半月間の努力はなんだったのかとも思うし、どうしても素直に喜べなかった。

 そんな複雑そうなベルの様子を見て、コロコロと表情を変えたヘスティア──嘘をついていることが心苦しい──だったが、殊更明るい声色に切り替えて話題を変える。

 

 

「さてっ、ベル君!ステイタスについては考えても仕方ないよ。もう素直に喜ぼう!それより今日は随分と稼いだって聞いたけど?そこのところどうなんだいっ!」

「あっ、はい!えへへ……見てくださいよ、6400ヴァリスです!ドロップアイテムに恵まれて、こんなに稼げました!」

「うぉおおおッ!凄いっ、やるじゃないか!大金だね!」

「そうなんです!……それで、神様。今日行きたいお店があって、これから食べに行きませんか?」

 

 

 そう言われると、ベルも頷くしかない。

 確かに神であるヘスティアが分からないことを、いつまで考えたって仕方ないのはその通りでしかないのだ。

 渋々ベルも思考を打ち切り、シルとの約束を思い出した。

 この廃教会に置いて行くわけにはいかないし、当然一緒に行くつもりだったのだが、ヘスティアは苦渋に満ちた表情で首を横に振った。

 それはもう、絶望と表現しても過言ではない顔だった。

 

 

「実はボクも神友(しんゆう)からお誘いを受けていてね…………ごめんよぉ〜っ、ベル君!君からの誘いを断るなんてっ、ボクは悪い神だ!!」

「いえいえっ、そんな!僕は大丈夫ですからっ、神様も楽しんできてください!」

「うぅ〜っ、君はなんていい子なんだ!それじゃあ、ボクは先に行くね!豪華なご馳走を食べてくるんだよ!」

 

 

 そう告げて、いつもの扇状的な服の上から特注した外套(コート)を羽織ったヘスティアが小部屋を出て行く。

 きらきらと涙が散るような幻影が見えた気がした。

 それを見送ってから、ベルも軽く汗を流して西地区にある例の酒場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 





率先してスキルを有効活用していくベルくんでした。

強化幅は既に結構高いですね。
具体的には、I→Gに上がるくらいです。200くらい加算されているイメージだと思ってください。
まだ厄介度合いが低いです。もっと熱狂しなければ!

アンケートは締め切ります。
改めて、ご協力ありがとうございました!

投稿間隔についてなのですが、現在と変わらず完成次第投稿するか。或いは、土日に連投するかのどちらがいいですか?週に3話は書きたいと思っているので、土日連投でも平日の何処かで1話は投げますが……。

  • 完成次第投稿!(今と変わらず……)
  • 土日に連投!(こっちの方が読みやすい!)
  • どちらでもいい。(好きにすれば?)
  • 毎日投稿しろ。(エタる)
  • そんなことよりアイズたん可愛い()
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