いずれラスボスになる妹と、その兄のはなし   作:悠里@

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27.兄の魔法

今……この女はなんて言った? 『銀炎』と言ったか? 聞き間違いではないか?

いや、俺の耳が聞き間違いをするはずがない。間違いなく『銀炎』と言った。

それなら、どうして知っている? なんで俺たちとの関係がわかった?

 

……この場を切り抜けるには、何をすればいい?

俺が今考えることはたった一つ。妹の……『リアナのために何ができる?』

俺という人間は、思考をシンプルにすれば冷静になれる。冷静でいろ。感情を原動力にしてはいけない。それは重大な判断を狂わせる。

 

『ああ、そうだ。いっそのこと――してしまうか?』

 

それが最もシンプルで、簡単な方法じゃないか――。

………………馬鹿か! 俺は何を考えている? 駄目だ駄目だ、それだけは絶対にやっちゃ駄目だ。

短絡的になるな。軽率に走るな。盲目的に姉に従っていた頃のようになるな。己を自立したヒトと定義したのなら、そんな安易な選択肢に飛びつくな。

錆びついた理性を働かせろ。理性があるからこそ、ヒトはヒトとたらしめるのだ。

 

「…………」

 

だが、たった一つの選択肢を外しただけで、俺はどうしようもなく冷静さを欠いてしまう。

今まで止まりかけた心臓の鼓動が、周囲に聞こえてしまいそうなほど高鳴る。

思考が堂々巡りから脱げ出せない。冷や汗が止まらない。言葉が出ない。どうやっても動揺を隠せそうもない。

それだけ今の質問は、俺たちにとっての核心だった。

『違う』というたった一言の言葉が、喉の奥につかえたまま出てこない。今すぐ言わないといけないのに、声帯が完全に硬直してしまっている。

呼吸すらまともにできない。息を吸おうとしても、肺の奥から変な音が鳴るだけ。彼女の言葉で、俺の肺腑は潰れたように機能を停止していた。

 

「……あ…………その」

 

僅かに残っていた空気を使って絞り出された言葉は、何の意味ないものだった。

……俺の姿は、さぞ滑稽に見えるだろう。姉さんの手から離れた俺の心は、虚勢も張れないほど弱くなってしまった。

 

「ふうん、その反応を見るに図星なのね。本当にあの銀炎の知り合いだったなんて」

「…………!」

 

『銀炎』の二つ名で呼ばれる魔法使い。深淵を覗く緋色の瞳。魔導の名門クリューガー家の嫡子にして、歴代最高傑作。名前は『アイリス・クリューガー』。つまり、俺たちと血の繋がった実の姉だ。

 

 

「……ちょっと、落ち着いてちょうだい。何だか変に動揺しているみたいだけど、私は君たちに危害を加えるようなことはしないわ。それだけは絶対に約束する」

 

魔法使いが使う『絶対』なんて言葉ほど、絶対に信用できない言葉はない。それは姉の付き人時代で嫌というほど学んだし、今後もそれを教訓にして生きていくつもりでいた。

だと言うのに俺は今、ミーシャさんの信用できないはずの言葉に縋り付きそうになっている。

 

「……なんでそれを?」

 

肺が機能を再開し、ようやく意味のある言葉を吐き出す。本当はこんなことを言うつもりではなかったが、こうなった以上、もう誤魔化せない。動揺をほとんど隠せていなかったこともあるが、それ以前にミーシャさんは質問する前から俺たちの正体に当たりをつけていたように思えたのだ。

 

「あら……正解だったの。ほとんど憶測だったけど、私の勘も馬鹿にならないわね」

「憶測、ですか?」

 

違う。これは勘や憶測なんかじゃない。理由はわからないが、彼女は強い確信を持っている。

 

「偽名を使っていたのはすぐに気付いたから、君たち二人に何か事情があるのはわかったわ。格好も旅人にしてはちょっと違うしね」

 

名乗った時点で偽名だとバレてたのか。確かあの時、ミーシャさんは俺と妹の偽名が逆から読めば同じだと指摘していた。俺は言われるまで気付けなかった。

その些細な違和感だけで偽名だと見抜いたのか。そんな態度はおくびにも出さなかったのに。

 

「まあそんなことよりも、一番の理由は彼女の赤い目だけど」

 

そう、彼女がリアナの赤い目を知っていることが、まずありえない話なのだ。この目の持ち主は歴史的に見てもごく少数しか確認されておらず、希少性がとても高い。それと同時にクリューガー家の密事でもある。

この目を知っているのは、一族とユーテウス院以外だとそれこそ指で数えられるほどだ。

 

「銀炎と全く同じ目をした人なんて関係者……いいえ、血縁者を疑うしかないじゃない。何よりも顔が似ているし」

「……似てる?」

 

ずっと黙っていたリアナが口を開いた。話は聞いていたようだったが、口を挟むのはこれが初めてだ。

 

「そうね、瓜二つとまでは言わないけど、姉妹だと意識しなくてもわかるぐらい」

「そっか」

 

それだけ確認すると、リアナは再び黙ってしまった。肯定とも否定とも取れない曖昧な反応だ。

ミーシャさんの言う通り、リアナと姉さんの顔は似ている。もし二人が同じ年齢なら、体型と髪色以外での区別は難しいかもしれない。それだけ二人はよく似ていた。

ただ、性格や仕草、纏っている雰囲気は全くの別物なので、本当に顔立ちだけだ。

 

「だから、リアちゃんは銀炎の妹ちゃんなのかなと思ったわ。私も、彼女に妹がいるなんてちっとも知らなかったけど」

 

それはそうだ。リアナは公に『この世界に存在しない』ことになっている。だが、実際にはユーテウス院に知られており、そうではなかった。だから俺たちはこうやって姉から逃げている。

 

「弟くんの存在は噂程度で知っていたから、それはまあ君なのかなって」

「……三年前まで姉さんの付き人をしてたので、そこから知られたんでしょうね。俺自身は姉と違って特別なことは何もやってませんし」

 

数年にわたる姉の従者時代には、諸外国も含めて多くの場所に顔を出していたので、俺の存在が知られていても不思議ではない。

その間に何か特別なことを達成したわけでもなく、ただ彼女の命令に従って裏方仕事をしていただけだ。

 

「でも君は妹ちゃんと違って、そんなに似てないわね。あ、でも目元は……似ているかも」

 

俺と姉が似ているかどうかは自分じゃ定かじゃないが、たった今思いついたようなフォローは余計に傷付くから言わないで欲しい。

 

「間違いなく血の繋がった姉です。姉さんとは髪の色も目の色も、何もかも違いますけど」

 

口には出さなかったが、俺と姉さんとの一番の違いは外見なんかではなく、生まれ持った才能だ。

姉の二つ名である『銀炎』の『銀』は彼女の生まれついての銀髪から来ているものだ。『炎』については、赤い瞳の色が理由ではない。これに関しては、彼女の使うある魔法から由来している。

 

……しかし何から何までバレバレだった。なんだろうか、この人。決して全てを知っているわけではないが、あたかも心の中を覗かれているような気持ち悪さを感じてしまう。

 

「……ミーシャさん、つかぬことをお伺いしますが、あなたは姉の友人だったりしますか?」

 

その質問に、今度は彼女が驚く番だった。

 

「……私が銀炎と友人? まさかまさか、それこそまさかよ。そんなわけないじゃない。彼女は魔法使いの世界じゃ指折りの有名人だもの。私が一方的に知っているだけ」

 

それなら、姉の顔立ちを正確に把握しているのは疑問が残る。面識がなければ、俺たちと似ているかどうかなんて判断はできないだろう。

 

「でも姉さんの顔を知ってますよね? 少なくともどこかで会ったことはあるんじゃないですか?」

 

その質問で、ミーシャさんは腑に落ちたようだ。俺が友人かどうかを尋ねた意味に合点がいったのだろう。

 

「あー、そうね。別に大した話じゃないのよ。……あれは一昨年だったかしら。銀炎が魔法論理学の特別講師として、私が在籍していた首都の大学に招かれたのよ。私はその場にいた一学生だっただけだから、直接の面識があるとは言い難いわね」

 

一昨年となると、俺はリアナに付きっきりだったので、姉の従者はしていなかった時期だ。

言われて思い出したが、あの人は面倒見が良く、意外と教えたがりな性格だ。多忙な日々でも暇を見つけては後進の育成に励んでいる。将来有望な人材に唾を付けるのが目的だろうが、それでも楽しんでいるように見えた。

何回かついていったが、壇上に上がるのは姉さんだけで、俺は学生に混じって講義を聞いていた。もっとも、俺のような半端者の頭では、講義の内容の半分程度しか理解できなかったが。

 

「その講義の一端で『私のこの目は凄いものだ』と得意気に語っていたわ。別に秘密にしている感じではなかったわね。……むしろ宣伝しているようにも見えたかも」

「うええ……マジですか。まさかそんなところから俺たちの足がついたなんて」

 

……あの人は一族の門外不出を何だと思っているんだ。姉の非常識は今に始まったことではないし、どうせ言っても聞かないだろうが、身内として肥大化した自己顕示欲も大概にしてもらいたい。

 

「大マジのマジよ。だから私も初めは変な人だな程度にしか思ってなかったけど、講義を聴いているうちに考えを改めたわ。安い言葉だから、あまり使いたくはないんだけど……あの人は本物の天才ね。革新的でありながら、しっかりとした基礎に基づいた講義内容だったもの。私はあの講義で、自分が今いるステージからどう発展させるべきか見えたの」

 

彼女が変人だという評価も正しいが、天才であるのも疑いようのない事実だ。

俺はそんな地に足が着いた講義の半分も理解できなかったのも事実だ。……あの頃は、まだ十代前半の子供だったし無理だろうて。

 

「最後に実技で彼女の魔法を見せてくれたけど、空を飛ぶ魔法――浮遊魔法なんてお伽噺だけの存在かと思っていたわ。あの時の光景はいま思い出してもワクワクする」

 

信じられないかもしれないが、姉さんは当たり前のように空を飛ぶ。それもかなりの高度と速度で。

旅情を楽しむためか、陸路や海路での移動も多いが、忙しい時には俺を外国に置き去りにして、飛んでいってしまったこともあった。

俺は帰国のための路銀すら持っていなかったので、自国に帰るために大変な思いをしたものだ。

 

「ええと、そうね。確かこんなことを言ってたわ。『知っているか。空を飛ぶのに箒が必要なんて話はでまかせだ。何故ならあんなものを使うと尻と股が痛くなるだけだからな。魔女の婆さんたちがお前たちをからかって遊んでたんだ』ってね」

「ええ、それは姉さんの持ちネタの一つです。俺も何回か聞きました。てか、実際に家で箒に跨がっている姿を見たことありますよ」

 

あの人が講義で使うジョーク用手帳を持っていることを俺だけが知っている。

 

「そんなことがあって、私はすっかり銀炎のファンなのよ。そんな彼女の弟くんと妹ちゃんに会えるなんてちょっとした奇縁を感じてしまうわね」

 

なんとなんと。ミーシャさんは姉さんのファンだったのか。うーん、意外とにわかというかなんというか。

弟としては、あの姉のファンだと名乗られても複雑な心境ではあるが、それは気にしないでおこう。

どんなに悪趣味だったとしても、人それぞれの好みがある。それは誰かが否定していいものではない。たぶん。

 

……しかし彼女が姉と友人じゃなくて、本当に助かった。もし連絡の取れる間柄だったら、その時点で詰んでいた。少し前までは、地獄の淵に立っているようなもので、それこそ生きた心地がしなかった。

あとはミーシャさんに土下座でも何でもして、俺たちの素性を誰にも口外しないようにお願いしよう。

 

「まあ、凄いのは姉だけであって、俺なんかはただの凡人ですけどね。……言ってしまえばクリューガー家の絞りカスですよ。ハハハ」

「……下手な謙遜はよくないわね。そういう態度は人から嫌われるわよ」

 

ありゃ? ほっとした反動でつい自虐的になってしまったが、どうやらお怒りのご様子。事この件に関しては、別にミーシャさんの言うような謙遜でもなんでもないんだけどな。

俺が一族の中で誰よりも魔法が下手なのは、小さい頃から自覚していた。

身内だけでなく、屋敷に勤めていた魔法使いたちは、俺にとって雲の上の存在だった。それは今も昔も変わらない事実だ。

 

「いえいえ、俺なんて魔法使いとしての力量は全然大したことはないですよ。ましては姉と比較なんてできようはずもありません」

「へー……ふうん。あくまでしらを切るのね。じゃあ言わせてもらうけど、君もリアちゃんと同じように詠唱なしで魔法を使ってたわね。彼女に続いて二度目のことだから流石に驚かなかったけど、あれはどういうこと?」

 

うっそ……まさか見られていたのか。だとするとどのタイミングだ? 聴覚に関しては常時展開しているし、嗅覚の強化はミーシャさんと会う前。そうすると、残る可能性はゴブリンと対峙した時の視覚強化しかない。それ以外では一度だって魔法を使っていない。

……あんな一瞬で俺の魔法行使を見抜いたのか。彼女が氷の魔法をゴブリンに撃ち込む前だから、なんとも抜け目のない人だ。

 

「それは、その……」

「ほら、言ったとおりじゃない。無詠唱魔法なんてフツーじゃないことしている時点で君も十分規格外だわ」

「いえ、あれは……」

 

あー、どうしたものか。俺の使う魔法は、口で説明しても信じてもらえる類のものではない。なので、実際に見せてしまった方がてっとり早い。見せると言っても魔法を見せるわけではないのだ。

うーん……仕方ないか。仕方ないよな。ミーシャさん、引かなきゃいいんだけど。

 

「少しお待ちを」

 

覚悟を決めて、椅子から立ち上がると上着を脱ぎ始める。

 

「……ちょ、ちょっと、何で急に服を脱ぎだそうとしてるの? わ、私……そういうの良くないと思うわ!」

 

ミーシャさんが両手で顔を隠そうとしている。意外とウブな反応だった。今までの彼女とは違う反応に少し驚いたが、何も裸になろうというわけではない。

 

「俺に露出の気があるわけではありません。脱ぐのは上だけです」

「……そ、そうなの。なにをしたいのかちっともわからないけど……さ、さっさと済ませてちょうだい」

 

ミーシャさんの反応が面白く感じたのは、俺に露出癖が芽生えた瞬間だろうか。いや、まさかそんな。

しかもアワアワと狼狽えつつも、指の隙間からしっかり俺の体を見ているじゃないか! ……いや、やっぱりこれ面白いぞ。他人の羞恥の孕んだ視線が快感になるだなんて、新しい世界が開けた気分だ!

 

「じー……」

 

妹のリアナもいつもの無表情で、俺の即興ストリップを見ていた。纏っている空気が心なしか冷たい。

 

「じとー……」

 

あ、やっぱり冷たい。お願いだからそんな目でお兄ちゃんを見ないでくれ。

肉親からの蔑みの視線で、一気に冷静になった。どんなに無神経だとしても肉親間での下ネタはキツいものがある。

 

「……とまあ、こんな感じです」

 

上半身だけ裸になり、彼女に俺の体を見せる。……少しだけ恥ずかしくもある。そこそこ鍛えてあるから、別にみっともない体型というわけではない。

羞恥の理由は別にあった。彼女ほどの実力者なら、これがなんであるかすぐに見抜けるだろう。

 

「…………うそ。なにこれ。本気なの? えーっと……そうね。一言だけ感想を言わせてもらっていい?」

「どうぞ」

 

その先はわざわざ言ってくれなくても、想像がつく言葉だった。

 

「君、頭おかしいわ」

 

耳まで赤くして、乙女回路を全開にしていた彼女が、俺の身体を見た途端に冷徹な顔になった。

女性らしい反応はなりを潜めて、完全に魔法使いとしての目つきに変わっている。

まあ……こんなわけのわからないものを見せられたのなら仕方がない。

今の言葉も蔑みでもなんでもなく、極めて真っ当な反応だ。特に、彼女のような若くて将来有望な魔法使いにとっては尚のことだろう。

 

「若気の至りとでもいいましょうか。当時はそれだけ必死だったんですよ」

 

照れ隠しに自嘲めいた冗談を言ってみたが、ミーシャさんはクスリともしなかった。それだけ深刻ということだろう。

俺は今でも若者に分類される年齢だが、当時はもっと愚かで、馬鹿で、分別のないガキだった。

……今に思えば、あの仕事は姉から出された課題の一つだったのだ。それを自分の能力ではなく、外法を使って解決しようとしてしまった。

 

俺の身体には、入れ墨のような赤い紋様が刻まれている。胸から大腿、両腕、それに背中にも。

その魔法陣にも似た幾何学模様は、肉体と五感を強化するための術式だった。それが肉体の表層部分だけではなく、マナにまで達している。

普段は服に隠れて見えないが、これを何も知らない人が見たら、ギョッとしてしまうだろう。

 

「……こんなことをしたら、魔法使いとしておしまいよ。何があったのか知りたくもないけど、君は自分の才能を捨てたのね」

「ええ……全くもってその通りです」

 

それと同じ言葉を姉さんからも言われた。俺が姉のためにとやった行為は、結局のところ、彼女を侮辱するだけだった。

 

「……これまで見せた通り、私は魔法使いとして氷の魔法が得意なの。でも自分の可能性はそれだけじゃないと思っている。相反する火の魔法ももっと上手に使えるようになりたいし、難しいと言われているシールド魔法にも手を出してみたい。他にもやりたいことはいくらでもあるわ」

 

俺も魔法使いとしての自分の可能性を信じて、そんなふうに考えていた時期もあったかもしれない。だけど俺は、今じゃ遠すぎて見ることも叶わない姉の背を追うために、最も愚かな選択をしてしまった。

 

「君はそんな未来のすべてを捨てたのね。本当に愚かだわ。嘆かわしいわ。そして何よりも同じ魔法使いとして軽蔑する」

「返す言葉もありません」

 

ミーシャさんの一言一言が胸に突き刺さる。とっくに乗り越えたつもりでいたが、胸の傷はまだ完全に塞がってなかった。まだ乾いて間もない瘡蓋だった。

 

「つまり君は、魔法詠唱の過程を飛ばすためだけに自分の体をスクロールにしたってことね」

「はい、それだけのためです」

 

術式が刻まれたスクロールは、魔力を通わすだけで詠唱せずとも魔法を行使することができる。

俺がやったのは、それと同じ。羊皮紙やパピルスといったスクロール用の素材ではなく、自分自身の肉体に呪文を刻み込んだ。

その代償として、もう二度と他の魔法を使うことは叶わない。俺に内在する全ての魔力は、体に刻まれた術式を起動するためだけに変容してしまった。

 

つまり、俺は身体強化の魔法を無詠唱で使う――。

その一点のために全ての魔法の可能性を閉じてしまった。

 

「これが俺の使った無詠唱魔法の正体です。リアナの使う魔法とは全く別物です」

 

こうして蓋を開けてみれば、なんてこともない話だ。馬鹿で、愚かな魔法使いの男が一人いた。たったそれだけの話だ。

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