5月になり早くも一週間が経とうとしていた、桐生が周りを見渡すとほとんどのクラスメイトがしっかりと授業を受けている。
“4月とはえらい違いだな、いや...あんな事を言われてたら当然か...”
この学校はA〜Dクラスまであるが優秀な生徒たちの順にクラス分けされており優秀な生徒はAクラス、自分達はDクラス、最悪の不良品と担任の口から告げられた。更に振り込まれる筈のポイントも0、授業で好き勝手やったツケが回ってきてしまい、追い討ちをかけるかのようにテストで赤点を取れば一発で退学になる事を説明された。その事実を知ってもなお真剣に授業に参加していない人も小数いる。そんな事を考えているとき、綾小路が奇声を上げてクラスの注目を集めたが授業が終わり昼休みになった。食堂に行こうと席を立とうとしたその時、
「桐生さん、綾小路君、二人ともお昼暇かしら?もしよかったら一緒に食べない?」
「「...え?」」
ランチのお誘い、しかも堀北から。普段の彼女なら絶対しない行動に二人は疑問の声を出してしまった。
“堀北から昼食の誘い?”
「珍しいな、もしかして堀北もぼっち飯は辛いと思ったのか?」
「今回は私から誘ってるから私がおごるわ」
綾小路のジョークを無視して会話を続ける
「話が見えないな、何が目的だ?」
桐生が疑問を問うと堀北は少し呆れながら、
「桐生さん、人の好意を素直に受け入れられなくなったら人間おしまいよ?」
「そうかもしれないな。だが堀北、アンタなら話は別だ」
「どういう意味かしら」
堀北が疑問の目で桐生を見つめる。
「堀北の性格はある程度知ってる。オマエは一人を好むタイプで、人との繋がりを拒否していた。現にクラスの誘いや櫛田との連絡先の交換も断っていたからな。」
堀北は入学当初、クラスの女子達から何度か買い物や遊びに誘われたことがある。そして櫛田が連絡先を交換してと頼んでもそれを拒否した。そんな堀北が気分を変えて二人を昼食に誘うという線は彼女の性格上、はなから考えていない。
「そんな奴がいきなり私達と昼食、しかも奢り。世の中タダほど怖いものは無いと友人が教えてくれたからな。改めて聞くぞ、何が目的だ?」
「....分かったわ。中間テストについての話しをしたい、と言えば了承してくれるかしら?」
“そういうことなら、聞くだけ聞いてみるのも悪くないか”
「分かった、話を聞こう」
堀北、綾小路と共に食堂に向かう。このとき移動中誰一人として声を発した者はいなかった。
ポイントに上限は設けないとのことなので、綾小路は堀北のご厚意に甘えてスペシャル定食、桐生はとんかつ定食を頼んだ。ちなみに綾小路が頼んだこのスペシャル定食、スペシャルと書いてあるだけあって、食堂の中で最も価格が高く1000ポイント以上する。
「「頂きます」」
皆それぞれの主役を食べ15分経ったころ、
「そろそろ話を聞いて貰えるかしら」
食べながら耳を傾ける。堀北曰くクラスの遅刻、及び私語も激減し学校には遅刻せず登校して、一応は真面目に授業を受けているとのこと。そして5月末に行われる中間考査で高得点を取る事を目標にしたそうだ。しかし一つでも赤点を取れば一発で退学になるのでテストに向けて平田が勉強会を始めたらしい。殆どのクラスメイトは参加しているが赤点組、特に池、須藤、山内の3人が参加しなかったらしい。
"積極的に勉強をする連中ではないな....
「そこで、綾小路くんと桐生さんにあの3人を呼び集めて欲しいの」
“そういうことか、どうするか堀北の相談を”
•受ける←
•受けない
「分かった。出来る限りやってみる。けど必ず集められる保証はない。それだけは了承してくれ。綾小路もそれでいいか?」
綾小路は”ああ”と短く返事をした。
「その点に関しては二人を信じるわ。これ、私の携帯番号とアドレス。何かあったら連絡して頂戴。勉強会自体は近いうちに始めるつもりよ。だから今日中に返事をお願い」
堀北は食堂を後にして二人が残った。机には堀北の連絡先が記された紙がポツンと置いてある。
「なぁ桐生」
「どうした?」
「オレ、女の子と連絡先を交換出来て本来なら嬉しい筈なんだがあまり嬉しく感じないのは何故だろう?」
「...相手が堀北か、予想していた貰い方と違ったからじゃないか?」
「...そうかもな」
こうして2人は複雑な気持ちを抱きながらも堀北の連絡先を入れた。
放課後になると堀北は教室から出ていった。恐らく勉強会に向けて準備をしているのだろう。桐生は教室内を見渡す。平田達は、すぐに動き勉強会の準備をしており教室を使うらしい。しかし肝心の3人がいない、約束を反故にはしたくないのですぐに行動に移す。綾小路が男子用のグループチャットで連絡したが既読が付かないらしい。
「綾小路ここは二手に分かれて見つけ次第声をかよう、見つけたら連絡を頼む」
「分かった」
二手に分かれ3バカトリオと呼ばれている(池、須藤、山内)に声を掛けに行く。
桐生は教室を出ると早速山内を見つけたので声を掛けて内容を伝えると参加すると言った。参加すると言ったとき山内が怯えていたのを不思議に思いながら体育館に通じる廊下を歩くと須藤を見つけ桐生は声を掛ける。
「須藤」
「ん?桐生か、なにかようか?」
「率直に言うぞ、中間考査に向けてのテスト勉強は大丈夫か?」
テスト勉強という言葉に顔を歪める須藤、
「勉強なんざ一夜漬けでどうにかなるだろ、俺は今までそうやってきた」
「そうか、そういえば須藤、オマエはバスケ部に入っていたな」
唐突の質問に戸惑いながらも須藤は肯定する。そして将来プロ選手になる事を目標にしている事を桐生に教えてくれた。
「夢を叶える為に努力する事を否定するつもりはない。たがテストでもし赤点を取り退学になったからその夢も厳しくなるんじゃないか?」
痛い所を突かれ顔を顰める須藤
「今まで勉強なんてまともにした事ねぇからどうすればいいかわかんねぇんだよ」
「そのために堀北が明日から勉強会を開くらしい。」
「堀北が?」
「ああ、出来れば参加して欲しい」
「...分かった参加するぜ」
「ありがとう」
須藤と、山内を参加させる事に成功し綾小路に連絡する。綾小路は櫛田の力を借りて池をなんとか誘う事に成功したそうだ。
“取り敢えず約束は果たした、後は堀北の腕の見せ所だな”
そして次の日、勉強会の場所は図書館と伝えて一足先に図書館に向かう。中に入り堀北を見つけるとなにやら機嫌が悪いようにみえる。
“堀北の機嫌が悪いが、なにかあったのか?”
どうやら綾小路が櫛田に力を借りたとき彼女も勉強会に参加したいと言って許可したそうだが、堀北の了承を得ずに櫛田を参加させた事に機嫌を損ねており彼女は赤点候補ではないから帰らせろと主張、しかし綾小路は彼女がいなかったら参加させる事はできなかったから無碍に出来ないと反論。渋々堀北は綾小路の主張を受け入れ櫛田の参加を認めた。
少し待つと座っていた堀北たちの元に櫛田がやってきた。もちろんあの3人と平田のグループに入りづらいといった沖谷などがやって来た。そして赤点組には全員席についてもらい問題を解かせる。
「今度のテストで出る範囲はある程度こちらでまとめてみたわ。テストまで残り2週間ほど、徹底して取り組むつもりよ。分からない問題があったら聞いて」
「......おい、最初の問題から分かんないんだが」
いきなり須藤がつまずき、桐生は問題を見てみる。
“問題の内容は連立方程式の問題か、少し時間が掛かるが十分解ける問題だな”
「うげ、俺もわかんね......」
「これは連立方程式を使う問題だよ」
櫛田がなんとか3人に分かる用に説明するが手を焼いている。そんな状況が続き遂に堀北が口を開く。
「あなたたちを否定するつもりはないけれど、あまりに無知、無能すぎるわ。こんな問題も解けなくて、将来どうしていくのか、私は想像するだけでゾッとするわね」
「っせえな、お前には関係ないだろ!」
「須藤、堀北ここは図書館だ、静かにしろ」
桐生がなるべく大事にしないように注意するが二人は既にヒートアップしており彼女の声が耳に届く事はなかった。堀北の言い方が癪に障ったのか、須藤が机を叩き立ち上がるが、堀北は動揺せず冷たい目で須藤を見つめながら言葉を続ける。
「バスケットでプロを目指す?そんな幼稚の夢が簡単に叶う世界だとでも思っている?あなたのような、すぐ投げ出すような中途半端な人間は絶対にプロになんてなれない。仮にプロになれたとしても納得いく年収がもらえるとは思わない。そんな現実味のない職業を目指す時点で、あなたは愚か者よ」
「んだと!?もういっぺん言ってみろ!?」
「足でまといは今のうちに脱落してもらった方がいいと言ってるのよ」
「テメェ!!」
一触即発の危機であったそのとき、
「おい」
低く冷たい声だった。その声には、二人の言い争いを止める強い意志と警告が込められていた。驚いて振り返り、桐生の鋭い眼差しに気圧されたように黙り込み周囲の空気が一瞬にして張り詰める。
「騒ぐなら外でやれ」
須藤は、開いていた教科書を鞄に詰め始めそれに続き池、山内だけでなく沖谷までも席をたち図書館を出ていった。
「すまない、迷惑をかけた」
桐生も教科書を片付け図書館を後にした。自分の部屋に帰り勉強していると電話が鳴る。
“電話?誰からだ?”
『もしもし』
『久しぶりやの〜桐生ちゃん』
電話に出ると知ってる声だった。
『真島の兄さんか、どうしたんだこんな時間に?』
『いや、せっかく再会できたのに何もしてへんかったから、今日どっか飯食べに行こう思ってな。いい店知ってるで〜」
“なるほど、飯の誘いかどうするか?”
•誘いを受ける←
•誘いを断る
『ああ、喜んで行かせて貰おう、場所は何処だ?』
『場所はメールで送るで』
『ああ、分かった』
電話を切り出掛ける準備をし少し待つと場所が送られてきたので寮を出て目的地に向かう。
“兄さんが送ってくれた場所...どう見てもケヤキモールの店の中じゃないよな...”
真島が桐生に送った場所だが様々な店があるケヤキモールではなく普通に路上なのだ。疑問に思いつつも指定された場所に行くと店を...いや屋台を見つけた。のれんには《大阪おでん》と書いてある。
“ここか?”
のれんをくぐると真島の兄さんが先に座っていた。
「お〜桐生ちゃん」
「珍しいな兄さん、兄さんなら韓来やステーキ店みたいな肉系の店が好きだった思うが」
韓来とは神室町に店を構える焼き肉店で関東を中心に展開しており少し値段は張るがそれに似合った肉を提供してくれる。桐生も錦達と何度か行ったことがある馴染みの店でケヤキモールの中にもある事を確認していた。
「あっちも好きやけど俺はこれが性に合うんや」
桐生は隣に座る。すると真島がコップにお湯を入れてくれた。真島曰く雰囲気がでるらしい。
「大将、彼女に適当に見繕ってくれや」
「あいよ」
店員が盛り付けてる間に真島は桐生に話しかける。
「どや、この学校には慣れたか?桐生ちゃん、流石にクラスポイントの事や進学実績の事には面くらったかの?」
「ああ、最初は楽園みたいな学校だと思ってた。5月にはいるまではな...やりたい放題やった結果、Dクラスに入ったポイントは0、教室内は悲惨だった。」
桐生達はお互い高育で体験した事を話した、話を聞くと一年前の真島の兄さんも似た境遇だったそうだ。
「まぁ、こんな学校や、ポイントがあればフグの懐石だの、松坂牛だの何だの 高えモンはあらかた食えるけどな...この屋台の大根がいちばんうまいんやで、...ポイントってのは一体何なんやろうな...」
そう言って真島は大将がよそってくれた皿を渡す。具は大根に昆布、こんにゃくなど
“ポイントか...あまり詳しく考えた事無かったな”
この学校においてポイントは無視できない存在であり、あるときは商売に、あるときは取引に、そしてクラス移動のとき
会話がシリアスになってきた所で、真島が我に帰り、
「あかん、せっかくの外食なのにこんなシリアスになってもうたら、今はおでんの時間や。桐生ちゃんその大根味が染みててうまいで」
「いただこう」
箸で四等分に食べやすくし熱々の大根を口にする。口の中でほろりと崩れ、優しい甘みと旨味が広がり噛むたびに出汁が染み出し、出汁によって大根をより美味しく感じさせる。
「うまい」
だろ?と満足げに頷き真島は大将に昆布、はんぺんを注文し桐生も追加で色々注文した。いい時間になった所で会計を済ましおでん屋から出ていき真島は帰るときに”また俺と喧嘩してくれや”といって先に寮に帰っていった。桐生は飲み物を買う為に寮近くの自動販売機に行きお茶を買おうとしたそのとき...
「...お久しぶりです。兄さん」
“ん?この声は堀北?”
自動販売機の隅に隠れながら会話を聞く。
「鈴音。まさかここまで追ってくるとはな」
「兄さんに追い付くためにここに来ました。もう、過去のダメな私じゃありません」
“生徒会長の苗字も確か堀北、堀北学と堀北鈴音は兄妹だったのか...”
「……追い付くか。そんな不純な動機でこの学校を選んだと言うのか? それならお前がDクラスであることも必然ということだ」
兄妹の会話とは思えない会話を聞き少し驚く桐生。堀北がAクラスになってみせると言うと無理だと断ち切って堀北の手首を壁に押し当てる
「Dクラスの妹を持つAクラスの兄。恥をかくのはこの私だ。今すぐこの学校から去れ」
「必ずAクラスに...」
「無理だと言っているのにまだ分からないか。本当に聞き分けのない妹だ」
これ以上はマズイと判断し堀北兄が妹に攻撃する直前に堀北に攻撃を与えようとしている右腕を摑み取り、動きを制限する。
「ちょっと待て...」
「何だ、お前は?」
「き、桐生さん•••••!?」
「オマエ、今堀北を投げ飛ばそうとしただろ。分かってるのか?ここはコンクリだぞ、いくら兄妹でもやって良い事と悪い事があるんじゃないのか?」
「盗み聞きは感心しないな。そしてこれは俺と鈴音の問題の……言い換えれば家族の問題だ。部外者が口を挟むな」
「私にはある」
部外者が口を挟むなといっても引き下がらない桐生、掴む手の力をさらに込めて、
「目の前でクラスメイトが殴られそうになったのを黙って見ていられるほど大人じゃねぇんだよ」
「やめて、桐生さん……」
いつもより弱々しい堀北の言葉に応じ桐生は掴んだ手を離す。瞬間、桐生の顔面めがけて途轍もない速さの裏拳が飛んできた。拳が当たるスレスレで上半身を仰け反り躱して敵と距離を取る。次にワンテンポ遅れて、右脚の蹴りが迫るがこれを回避すると、おそらく本当の狙いであろう掴み攻撃を肘鉄をするようにして腕をはじぎ、その勢いで左脚で後ろ蹴りを放つ。
「オラァ!」
蹴りを避けるのは無理と判断し左腕で受け止めるがあまりの強さに彼の顔が歪む
「ッ!」
そしてお互いに距離を取る。
「良い動きだ、何か習っていたか?」
「爺さん達から修業されたことはあるぞ」
何を思ったのか、堀北学が構えを取る。いや桐生にとっては一番分かりやすいやり方だと理解した。堀北も学が考えてる意図に気づき
「兄さん!?いくら相手が桐生さんだからって、兄さんに敵う相手なんて......!」
「口よりこっちの方がいいだろう?」
「いいぜ、ちょうど食後の運動をしたかった所だ。」
高度育成高等学校 生徒会長 3年Aクラス 堀北学
「セェイヤァッ!!」
先手を決めたのは桐生で《不良スタイル》での右ストレートを放つが回避されそこから右拳の振り下ろしを繰り出すもスレスレで回避される。距離を詰められ胸倉を掴み足をかけて投げようとするものの、
「放せェ!!」
桐生が堀北学の腕を無理やり引き離した、学は驚愕する、一般的に男の方が女より筋肉量が多く力が強い傾向にある。もちろん厳しいトレーニングと適切な栄養管理を通じて、非常に高い筋肉量を得ることが出来るがそれを達成する事は非常に困難だ。あの時学は脚をかけて投げるためにしっかり掴んだがそれを簡単に防いだのだ、伊達に上級生と喧嘩して勝つだけのことはある。学が分析していると、
「来ないなら、こっちから行くぞ!!」
ハッと前を見るも目の前には桐生が近づいて、
「せいッ、オラ、でりゃァ!」
腹に2発当てた後アッパーを顎に向けて放ち少し浮き上がったところを顔面ストレートで殴り学をよろめかせる。
「ぐっ!」
追い討ちをかけるも流れるように攻撃をいなされてしまい、腹に一発貰いすぐに距離を取りお互いを見つめる、殴られた影響か学の眼鏡が歪んでいる。
“アイツ柔道と空手、それに合気道も組み込まれているな”
そう思っていると今度は学から攻撃を仕掛けてきた。技自体はシンプルなパンチと蹴りだがそのどれもにキレがあり油断出来る訳ではない。学は左拳によるジャブからの体を回転させ右拳で裏拳を放つ。裏拳による攻撃でガードを崩してしまい学が追撃する。桐生は相手が次に何をするのか反応し理解したと同時に疑問も生じた。
“後ろ回し蹴りをするには距離が近すぎる...”
学は桐生に後ろ回し蹴りを頭に当てるのではなく首に巻きつけるようにして放ち桐生を地面に叩きつける。
“コイツ!最初から私の首の骨が狙いか!”
そう学は桐生に回し蹴りを当てるのではなく首に巻きつけるという戦法をとった。このまま脚を捻り首の骨を砕くその時、
「ボディーがガラ空きだぞ!」
「くっ!」
まさかの攻撃に巻きつける力が緩んでしまい桐生はすぐに脱出する。
「やってくれたな」
「それはどうも」
桐生は首を折られる寸前、右拳である所に攻撃した。肝臓の上、いわゆるレバーブローという技だ。この箇所には筋肉が存在しないことからトレーニングなどで防御力を上げることが不可能な為、人体の急所として狙われることになり、くらった者は悶絶するほどの痛みを味わうのだが土壇場でしっかり狙った訳ではないからか余り痛がってる様子は無い。
この後は両者の殴り合いが続き、拉致が開かないと思った桐生は、右足をドンと地面に響かせ、何かの力を解放するような動きを取り攻撃をしようとした瞬間だった。
突如何者かに見られている、そんな気がした。背筋に冷たい風が吹き抜けるような不気味さが広がりその視線が自分の内面まで見透かしているように感じると、まるで自分の力が吸い取られていくような感覚に襲われ後ろを振り向く。この一瞬の出来事、しかし喧嘩の場において隙というものは、致命的である事は桐生が一番よく知ってる。つまり、
「ほう、よそ見か随分と余裕だな」
「しまっ!」
言葉を言い切る前に学が桐生の腹に正拳突きを放つ。空手における基本中の基本である正拳突き、相手に真っ直ぐに拳を突き出すだけのシンプルな攻撃、だが学ほどの実力を持っていれば話しは変わる。完璧なタイミングを持って突き出されたその一撃は桐生の内臓に響かせる。これで勝敗はついた、堀北妹もそう思っただろう。しかし二人は知らない、桐生が好んで使う《不良スタイル》の一番の特色は何かを、
腹にモロにくらいそのまま倒れると思ったとき桐生は相手のネクタイを掴み、思い切り頭突きをかます。頭突きをくらい眼鏡が更に歪む。
「あれをくらってまだ立てるのか...」
「喧嘩で大切なのは根性って教えてくれた人がいてな...」
このスタイルの最大の特徴は攻撃を受けた姿勢から根性で反撃に転じること。《不良スタイル》を鍛えてくれた外国人であるバッカスはこう言っていた。
『ケンカでイチバン大切な事...それは「コンジョウ」ヨ!これ、ゴクイって言うネ!』
更に、
『ファイトで最後にモノを言うのはスピリットヨ!』
と言っていた。
“あの時は極意の割に単純だなと思ったがな”
しかしあの教えで反撃することが出来た。このチャンスを桐生は見逃さない。すぐ相手に近づき今度こそレバーブローを決めて畳み掛ける。
《連続膝蹴りの極み》
学の顔を両手で掴み右膝に当てる。
「ふっ!、はっ!、はっ!!」
いつまで続けるのか、それは堀北学の眼鏡が粉々に砕けるまでだ。壊れない限り決して攻撃を止めない。学も今までの戦闘で体が疲れ切っているのか抵抗するも抜け出すことは出来ない。何度も打ち付けて眼鏡がボロボロになった所で一旦相手を放し最後は、
「オラァ!」
左脚による回し蹴りで頭を蹴り学を顔から地面に叩きつける。
蹴り飛ばされた堀北学は立ち上がろうとするも身体は言う事を聞かなかった。この喧嘩は、桐生一葉の勝利で終わった。
皆さんお久しぶりです。テストがようやく終わり私は帰って来ました。分の半分近くが生徒会長との戦闘でしたね。そして学君には若干の強化が入りました。
追記:皆さんアンケート協力ありがとうございました。今後の参考にします。