第一話「暗い日曜日」
はじめまして!
あ、こんにちはとかこんばんはの方が良い人もいるかな?
私は『梔子ユメ』!!立派な『先生』を目指すピチピチの
これから私が話すのはキヴォトスっていう学園都市のお話なんだ。
ああ、私が主人公ってわけじゃ無いんだけどね?
うーん、私の役割はなんて言えば良いのかな?ライトノベルとかのお助けキャラ!!みたいな?違うね?ひぃん・・・・・。
ま、まあ、要するに私は物語の側面に過ぎないんだ。
じゃあ、そろそろ始めようかな。
このお話の主人公は『霧島ヒノト』君。ちょっと暗くて後ろ向きだけど、黒曜石みたいな私の命の恩人。
これから始まるのはそんな彼の、『霧島ヒノト』君の、ちょっぴり
うーん、そうだね。私がこの物語に題をつけるなら
◆◆◆◆
『・・・・・』
「・・・・・・・・・・はぁ」
俺の名前は霧島ヒノト、ゲヘナ学園の一年生で帰宅部。この女子生徒だらけの学園都市キヴォトスで死ぬ程珍しい男子生徒で、
その能力は『グルーミィ・サンディ』と言う。日曜日に発現したからそう名付けた。この能力は人型の靄を作り出し、使役する。ついでに俺を透明に――要するに他人から見えなく出来る。ため息が多くなったのは『グルーミィ・サンディ』のその能力が原因だ。
透明人間、邪な考えを持つものなら誰もがなりたいと思うだろう。逆に言えば、そんな能力を持っている俺は邪な考えが無くとも、邪な考えを実行することが
コイツが使える様になってから数ヶ月が経った今でも『透明になる』能力は使っていない。そもそも使って何をすると言うのだ。
「・・・・・散歩にでも行くか」
陰鬱な思考を止め、気分転換に味気の無い部屋から外に出る。今日は学校が無い日曜日。まあ、『自由』と『混沌』を掲げるゲヘナでちゃんとした生活を送っている生徒は半数も居ないだろうが。
そうして安いアパートから出て、ゲヘナの街並みを歩く。
俺は散歩が好きだ。歩いているだけで色々な事がある。世界は陰鬱なものだけでは無いと実感出来るからだ。
「おい、お前。ちょーっと金貸してくれよ」
「へへへ、良いだろ?」
目の前に現れたスケバン二人組の様な奴らに会うこともあるが。治安の悪いゲヘナでは日常茶飯事だ。
日常茶飯事だからと気分の良いものではないが、これが此処の当たり前だというのだからしょうが無い。もう慣れてしまった。
「嫌だと言ったら?」
俺の問に二人組は銃を構えながら答える。アサルトライフルとミニガンか。
二人組は悪人の様に――というか悪人なのだが――好戦的に笑う。こういう手合いの答えは決まっている。
「奪うしかねえよなあ?!」
「へへへ、死んじまいな!!」
そうして二人組の銃が火を吹く。が、
「『グルーミィ・サンディ』、弾け」
目の前に現れた人型の靄の拳が無数に分裂したと見紛う程のスピードで銃弾を弾いていく。
そうやすやすと当たったらヘイローの無い俺は直ぐに致命傷になる。・・・・・今更だがヘイローを持っていない奴に発砲するとか倫理観が終わってるな。
「な?当たってないだと?!」
「クソっ撃ち続ければ限界が来るはずだ!!」
スケバンは驚きながらも銃を撃ち続ける。
確かに限界はある。俺が『グルーミィ・サンディ』を休みなく出して居られるのは三分間。特撮ヒーローか何かだろうかとは思うものの、俺にはそれで十分だ。
俺は折りたたんであった銃を展開し、構える。
M6スカウターライフル。単発ずつだが、ロングライフル弾とスラッグ弾を撃つことができる。骨董品だが、俺の数少ない私物だ。
素早く初弾を装填し、ミニガンを持つスケバンに銃口を向ける。ロングライフル弾は狙い通りに飛び、スケバンの額に命中し、頭蓋への衝撃で相手を怯ませる。
「がっ?!」
「おい?」
アサルトライフルを持つスケバンにはスラッグ弾をお見舞いする。ヘイロー保ちだろうと少しは堪えるだろう。
「うわっ?!」
そうして少しだけ銃撃が止んだ。
俺はその隙を逃さず、スケバンとの距離を詰める為に走り出す。自慢じゃないが、脚には自信がある。
「『グルーミィ・サンディ』!!」
コイツは俺から数メートルしか離れられない。逆に言えば、数メートル内なら自由に動かせる。
拳が無数に分裂したと見紛う程のスピード。それを攻撃に転用するとどうなるか?
こうなる。
『ォ、オオオオオオオオ!!』
全身への連打。流石に顔は殴らないが、それ以外は数時間は動けないレベルまで殴らせてもらう。
「「ぐはっ」」
ほんの十数秒の
「はぁ・・・・・10000が二人、合わせて20000クレジットか」
慣れた手付きでヴァルキューレへコール。数秒して応答。
『はい、ヴァルキューレ警察学校です』
「賞金首の引き取りを頼みたい」
それから俺は現在地を伝える。
『・・・・・はい、わかりました。付近の公安局員が向かうので暫くお待ち下さい』
電話を切る。
ゲヘナは治安が悪いが、多少の腕と頭があれば――危険と隣り合わせなのはキヴォトスの何処でも変わり無いが、生活費には困らない。
数分後。
獣耳のヴァルキューレ生が到着した。短く切り揃えた髪と鋭い目尻に堅さを感じる。
彼女は俺を見つけて駆け寄ってきて言う。
「ヴァルキューレ警察学校、一年生の尾刃カンナです。先程の賞金首引き取りの通報は貴方で合っていますか?」
「ああ」
「ご協力ありがとうございます。賞金の受け取りは後日、ヴァルキューレに来ていただければ」
それから細々とした手続きを済ませ、尾刃カンナは去って行った。
少し話したが、別の案件があるのだとか。流石ヴァルキューレ警察、忙しい事だ。まあ、彼女達の様な治安維持組織のお陰で最低限の治安がある。そう考えると風紀委員会やヴァルキューレ警察には頭が上がらないな。
やはり散歩は良い。今日は彼女――尾刃カンナとの出会いがあった。人相で誤解されそうだが、話してみると気さくな良い人物だった。
少し経って、散歩を続けようか考える。
その時、グゥと腹が鳴った。ああ、そう言えば朝食を食べていなかった。
「・・・・・コンビニで腹ごしらえでもするか」
そうして俺は近くのコンビニに向かって歩き出した。