(この設定を考えた作者は人の心を何処かに置いてきたんじゃないだろうか)
「ふぅ・・・・・」
高そうな――かなり高額な物だろう――カップを音を立てないようにソーサーに置いて息を吐く。
俺は対面に座る彼女――ナギサに感想を言う。
「相変わらずナギサが淹れる紅茶は美味いな」
「ふふふ、それは私も淹れた甲斐があるというものですね」
そう言って彼女は微笑む。
俺は紅茶に限らず茶やコーヒーの良し悪しはわからない――ナギサのお陰でどんな物が高いのかは判る様にはなった――が、今飲んでいる紅茶を美味いと感じるのはきっとナギサが淹れてくれたからだろう。
「ヒノト君、最近はどうですか?」
「その問いは
「
「まぁ、その通りなんだが・・・・・茶会の度に聞いているが飽きないか?」
「いいえ?私は私と居ない時の貴方がどんな事をして、どんな事を感じたのか。それが聞きたいんです。私はこの時間を気に入っていますよ?」
「そうか・・・・・なら良い」
そうして俺はナギサに昨日あった事を話す。
彼女が誰も信じられなくなっていた時の習慣は、今では俺達の間の世間話の様なものになっている。
俺がナギサの居なかった時の事を話し、彼女はそれに相打ちを打ったり、何か感想を言う。俺もこの時間が気に入っていた。
そうして時間は過ぎて行く。
「ああ、もうお開きの時間ですか」
「む・・・・・そうか」
確かに楽しい時間は早く過ぎて行く様に感じる。彼女にはティーパーティーの、俺には救護騎士団の仕事がある。
俺は椅子を引いて立ち上がった。
「ナギサ、何かあったら呼べ」
「ええ。頼りにさせて貰いますね」
「ふむ・・・・・ナギサは相変わらず彼と宜しくやっているようだね」
「ええ。何か問題でも?それとも・・・・・邪魔をする気ですか、セイアさん?」
「いや、邪魔するつもりなんて毛頭無いとも。私は馬に蹴られたくは無いのでね・・・・・エデン条約では君に負担を掛けてしまったからね、些細な事には目を瞑るよ。ナギサも知っていると思うが私には恋愛はあまり馴染みの無いものでね、私が君に出来るのはそれくらいさ」
◆◆◆◆
「何故、『先生』がユメさんだと思いますか?」
「何故、この世界は出来たと思いますか?」
「何故、『大人のカード』が無いと思いますか?」
「ふふふ、それはですね・・・・・シロコさん、貴方が別の世界の『先生』を殺したからです。ああ、責めている訳ではありませんよ?私はあくまで
「ああ、それと最後に・・・・・この世界唯一の男性。彼の名前、気になりませんか?いえ、知っていると形容すべきでしょうか?」
「だって、貴方が殺し続けている『先生』と同じ顔ですものね?」
◆◆◆◆
ナギサとの茶会の翌日、俺はD.U.区――連邦生徒会のお膝元。ヴァルキューレ警察学校や大きなショッピングモール等がある――に来ていた。
「ああああああァァァあああ――――!!」
――筈だ。
周囲は薄暗く、眼の前では黒いドレスの女性が床に蹲り、慟哭を上げている。
どういう事だろうか?全く状況が把握出来ない。
端的に言うと・・・・・俺は駅の改札から出た瞬間に瞬きをした。次の瞬間には俺は此処に立っていた。
催眠術や超スピードだとかそんなものでは断じて無いと断言出来る。もっと恐ろしいものの片鱗を味わった気分だ・・・・・と言っている場合では無い。
そのまま立ち去る?立ち去る方法もわからないのに?
では眼の前の彼女に聞くか?
否。俺は善人では無いが・・・・・そんなモノは、
だから俺はハンカチを取り出し、彼女の前に膝を付く。漸く俺に気付いたのか、彼女は顔を上げ、そして俺を見て固まった。
「ッ・・・・・」
俺は彼女の涙を拭う。
「・・・・・女の涙を拭うのは男の甲斐性、らしい」
「・・・・・っ・・・・・わたしは」
「何があったかは聞かない・・・・・だから、好きなだけ泣くと良い。涙は俺が拭ってやる」
「ッ・・・・・うぅ・・・・・うあぁあああァァァ――――!!」
彼女が泣き疲れるまで、俺は彼女の涙を拭い続けよう。
俺にはそれぐらいしか出来ないのだから。
シロコ*テラー
ブルーアーカイブに出てくるシロコ*テラーとは