「すぅ・・・・・」
「・・・・・」
あの後、彼女は泣き疲れて眠ってしまった。
俺は寝てしまった彼女を運ぼうと抱きかかえ――何時の間にか自分の部屋にいた。抱きかかえている少女の存在が先程の出来事を白昼夢か夢遊病の類では無いと否定する。
「・・・・・取り敢えずベッドに寝かせるか」
そっと彼女をベッドの上に寝かせ、俺は彼女から少し離れた場所に腰を下ろす。
彼女は一体誰で、彼処は何処だったのだろうか。
というかこの状況を誰かに見られたら大きな誤解を招く気しかしないのだが。
時計を見るにまだ昼前。ミネが帰って来た時の説明を考えなければ・・・・・いや、それに関しては一旦置いておこう。
それよりも彼女の身体が心配だ。発育に対して折れてしまうのでは無いかという程細く、体重が軽い。ちゃんと食べているのだろうか。
嫌な予想が頭を過ぎる。
・・・・・あの空間でずっと泣いていたのか?
「・・・・・すぅ・・・・・」
少し彼女の顔を伺う。泣き腫らした目元を良く見る。
薄っすらとだが、隈が見受けられた。
「・・・・・」
・・・・・今は彼女が起きた時の為に昼食を用意するべきだろう。乗りかかった船だ。今は己の感情に時間を割く時では無い。
俺は立ち上がり、パン粥を作る為にキッチンに向かった。
◆◆◆◆
「・・・・・女の涙を拭うのは男の甲斐性、らしい」
「・・・・・っ・・・・・わたしは」
「何があったかは聞かない・・・・・だから、好きなだけ泣くと良い。涙は俺が拭ってやる」
ああ、きっとこれは都合の良い夢なんだ。
その事が更に私の惨めさを自覚させる。
「ッ・・・・・うぅ・・・・・うあぁあああァァァ――――!!」
殺して殺して殺して殺して殺して。
その先に殺した相手に救いを求めるなんて。
なんて惨めな女なんだろう。
このまま死んでしまいたい。
誰か、私を▓▓て。
――――・・・・・すまないな
声が、聞こえた気がした。
◆◆◆◆
「・・・・・ここ、は」
掠れた声が聞こえて、手元のメモ帳を閉じてからベッドに視線を移して言う。
「起きたか」
ベッドから身体を起こした彼女は俺を見て、ぽかんとした表情で呟いた。
「・・・・・・・・・・夢?」
・・・・・それ程の間、泣いていたのか。
俺は表情を動かさない様にしながら隣に置いてあったトレー――少しぬるくなったパン粥と食器、水が入ったコップを載せている――を彼女の横に置く。
「・・・・・さあな。少し冷めてしまったが、お前の為に作ったパン粥がある。食べれるか?」
「私の、為・・・・・?」
「ああ」
首肯すると、彼女は俺とトレーを交互に見た。
その時、
すると彼女は少し頬を染めて言う。
「・・・・・・・・・・いただき、ます」
そうして彼女は食器を手に持ち、パン粥を食べ始めた。この調子なら直ぐに食べ終わるだろう。
俺は
――誰か、私を・・・・・殺して・・・・・
そう、確かに彼女はそう言った。
俺は彼女を・・・・・いや、その時に考えれば良い。
俺は空になった器をトレーに置いた彼女に言う。
「夢だと言うのなら・・・・・・・・・・散歩に行かないか?」
「・・・・・うん」
少し考えてから、彼女は頷いた。
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