掴めるものなら
「ねぇねぇ、アロナちゃん」
『ユメ先生、何か御用ですか?』
「何だか嫌な予感がするんだ」
『嫌な予感、ですか?』
「うん。だからちょっとホシノちゃん達を呼んで欲しいんだ」
『ホシノさん達を・・・・・
◆◆◆◆
「すぅ・・・・・」
「・・・・・どうにか山場は越えたか」
トリニティのトップであるティーパーティーの一人である聖園ミカの起こした事件――ナギサと俺が受けた襲撃もこれによるものだったそうだ――から数日。幸いにして死者はいなかったものの、
そうした要因により、あまりトリニティの政治に関わってこなかった
但し、裏切り者がもう居ないという確証は無く、俺とナギサは相変わらずホテルやセーフハウスを転々とする生活を送っている。
「・・・・・うぅ・・・・・おはよう、ございます・・・・・ヒノトくん」
「ああ。おはよう、ナギサ」
ナギサの着替えを待ち、朝食を済ませる。エデン条約調印式まであと一週間程。出来れば、何の問題も無く終わって欲しいものだ。
「ヒノト君、行きましょう」
「ああ」
何時もの様にナギサの隣を歩く。
『男には、どうも立ち向かわなければならない時があるらしい・・・・・自分でも見ず知らずの少女を助ける為に命を張るのは馬鹿げてるとは思うがね』
何時か夢で見た、誰かの言葉。きっとその誰かの様に、俺も立ち向かう時が来るという暗示なのかもしれない。
「ヒノト君、良い天気ですね」
隣を歩くナギサは作り笑顔では無い、自然な笑顔で言った。その等身大な笑顔に思わず見惚れる。
「・・・・・ああ、そうだな」
俺はそう言い、俺は彼女が時々でも笑える様になると良いなと思った。こんなトリニティでは難しいとは思うが。
『思い出せ』
『
『力が必要になる』
『備えろ』
『吐き気を催す邪悪』
『すぐそこまで来ている』
夢で誰か――彼は俺に言う。嫌な予感がする。
◆◆◆◆
「・・・・・」
「不安か?」
エデン条約調印式の当日。式典用の正装――古い騎士の様な装飾が入ったもの――を身に着けた俺は調印式の会場に向けてナギサの持つ高級車を運転しながら、後部座席に座っているナギサへ言う。ルームミラー越しに見える表情には緊張や不安が見て取れる。
数瞬の後、彼女は無言で首肯した。
「最悪を想定するのがお前の仕事だ。そして、どんな状況でもお前を護るのが俺の仕事だ」
俺はそんな彼女に続けて言う。
「お前はそれで良い。お前を害するものは俺がどうにかしてやる。お前はただ前を見て、胸を張れ」
「・・・・・はい。
「ああ。任せておけ」
そして数分後。会場の指定された場所に車をつける。外にはトリニティの生徒がナギサを迎える為に整列している。
俺は先に車外に出て、『スタンド』に盾――これもナギサが事前に用意した式典用の装飾が施されたものだ――を持たせて後部座席のドアを開けた。
「ありがとうございます」
出て来たナギサは完璧に微笑む。その表情には不安や緊張など一片たりとも見受けられない。トリニティのトップ、ティーパーティーとしての顔。
ああ、それで良い。
それからナギサについて会場に向かう。その途中で『
「あっ!!」
「?」
目が合った。偶然か?・・・・・まあ良い。また話す機会はあるだろう。
暫くして、調印式が始まろうとしていた時。嫌な予感がして空を見上げた。
空には薄っすらと筒状の・・・・・ミサイルか!!気付くのが遅すぎた!!
「ナギサッ!!」