ブルーアーカイブ 【TTSM編】   作:アビドス文芸部のモブ

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第3話「大捜索:シラトリ区」

「……いないわねぇ。」

「ん、いないね。」

 

シラトリ区の歩道をセリカとシロコは歩き続け、通行人に話しかけては先生か不審者の情報もなく……時々、見かけるヘルメット団やスケバンの生徒たちと情報交換しても、同じ結果だった。

ここまで徹底的に情報がないとすると、考えられるのは二つだ。

 

あの時のように、徹底的に隠されているか。

そもそもの話で、先生はシャーレから出ていないか。

 

シロコとセリカは少し喉が渇いたので、近場で自販機を見つけて、シロコはスポーツドリンク、セリカはミネラルウォーターを購入し、近くのベンチに座って一息ついたのである。

 

「先生、本当にどこに行ったのかしら。」

「……少なくとも、シラトリ区にはいないのかもしれないね。」

 

だとすると、先生が行きそうな場所……いや、誘拐された先生が連れていかれそうなところ……アビドス砂漠の砂漠地区か、ゲヘナのスラム街、トリニティのカタコンベ、ミレニアムの廃墟か……どちらにせよ、これは大事になりそうだった。

 

(多分そろそろ、連邦生徒会に動きがあるかもしれない。)

 

とすれば、後のことはヴァルキューレ警察学校が全力を挙げて捜索をするだろう。

しかし、シロコはヴァルキューレ警察学校をあまり信用していない。シロコは、よくシャーレに向かい、先生とよく話したり、先生が作った作戦ファイル、これまで起きた事件や、その次元で何があったのかを細かく書き込まれたファイルにもよく目を通すようにしているのだ。

その中で、「カルノバクの兎」と書かれたファイルに挟まれていた、事件ファイルに、かつてヴァルキューレがカイザーコーポレーションと手を組み、汚職をしていたことを見ていた。

 

……今回の一件、仮に「カイザーコーポレーション」が起こしたとすると、動機(「どうして」)は成立する。カイザーコーポレーションは、末端から重役まで、先生に苦汁を舐めさせられているからだ。

しかし、動機(「どうして」)があっても、方法(「どうやって」)が分かっていない。これでは、仮にカイザーが本当に先生を誘拐していたとしても、方法(「どうやって」)の説明ができずに、のらりくらりと責任を逃せられるだろう。

そして犯人がカイザーと仮定した上で言えば、ヴァルキューレが先生の捜索に全力を注いだとしても、過去にカイザーを相手に汚職を働いたという不信感が存在する以上、本当に全力で探したのかと言う疑問にもなる。

 

(だとすると、先生を捜索するのは、SRT?)

 

グルグルとシロコが考えを巡らせるものの、結局のところ答えは出てこない。シロコはふと、セリカが自分を見つめていることに気付いた。

 

「……どうしたのセリカ?」

「シロコ先輩の考えてる表情と仕草、先生と似てるなーって。」

「……そうかな?」

 

シロコはセリカに言われて、ちょっと恥ずかしくなる。

シロコはつい最近から、無意識ではあるが、考え事をすると、真剣な表情を浮かべ手元を、何かを持っているとそれをじーっと見つめる癖ができている。今回で言うと、シロコは勝ったばかりのスポーツドリンクをじーっと見つめていたわけである。

前までは、天井を見上げたり、遠くの景色を見つめたりと別の癖だったが、シロコは無意識のうちに、先生が考える仕草をコピーしていたのである。

先生もまた、考え事で頭を働かせている時は、真剣な表情を浮かべ、手元か手に持っているものをじーっと見つめる癖があるのだ。

 

「やっぱり、シロコ先輩って先生の事、好きですよね~?」

「ん……セリカ、その話題は、その。」

「そう言いつつも、シロコ先輩のほっぺもお耳もまっかですよ~?」

「……ノーコメント。」

 

……セリカの言う通り、実のところを言うとシロコは先生に恋をしている。それも一目惚れだ。先生がアビドスで遭難し、シロコが救助したあの時、シロコは既に恋に落ちていたのだ。それから、と言うものアビドスの事件が軒並み終わり、シロコはすぐにシャーレに応募し、シャーレでの活動を続け、シャーレの切り込み隊長になり、先生のすぐ近くで、先生の助けになることを、シロコはこれまでしてきた。長年の付き合いもあり、先生の対応は他の生徒たちとあまり変わらないけれど……シロコは自分の時だけ先生の声が他より少しだけ優しい事を知っている。

 

(……ん。)

 

先生の優しい表情と声を思い出し、シロコは思わず心がポカポカとしだす。

それを見たセリカはにんまりとした笑顔を浮かべ……

 

「シロコ先輩ったら乙女~♪」

 

思いっきりからかった。

 

「ん!んくっんくっ……ぷはっ。んー……!」

「わわわっ、ごめんってシロコせんぱーい!!」

 

恥ずかしくなったシロコは、スポーツドリンクを一気飲みし、ちょっと不貞腐れたフリをしながら再び歩き出した。

セリカは、ミネラルウォーターをブレザーの空ポケットに入れながら、シロコを追いかけることにした。

 

~~~~~

 

それからしばらく、シロコとセリカはシラトリ区のあちこちを歩き回り、通行人やヴァルキューレ生……シラトリ区のスケバンやヘルメット団に次々と声をかけて、先生や不審人物の目撃情報や、情報交換をしていたが……

 

「ん?」

 

通行人に話を聞こうと通りを見渡していると、見慣れない少女が目を輝かせながら辺りをチラチラとみている。

それだけなら、田舎の方からD.U.に始めて来たお上りさんなのかな?とシロコも考えるのだが……妙なのは、その子の”ヘイロー”だ。キヴォトス人な生徒たちのヘイローは普通、息遣いのようなもので、あることを認識できてもそれで個人を特定するほど目立つものではないのだ。しかし、その子のヘイローは、シロコが見た限りでは……

 

(色も、形もある……。)

 

シロコは、初めて見る、色も形もあるヘイローに食い入るように見入っていた。

シロコがその少女に熱い視線を送っていても、少女は街並みを見るのに夢中になっているのか、シロコ達には気付かずやがてとある服屋のディスプレイの服に駆け寄った。

そこで、シロコはその少女のヘイローに、既視感を覚えた。

 

(……なんか、よく見る形だなぁ。)

 

十字と円を重ねてヘイローを頂いた……そんな特徴的な、デザイン。つい最近、と言うより、今日……うーんうーんとシロコが思い出そうとすると、なぜかシャーレでもらった手帳が落ちた。

 

(なんで、手帳が……あっ。)

 

手帳を拾い上げ、シャーレのロゴと、少女のヘイローの両方を見えるようにする。

 

(シャーレのロゴに、似てる?いや、アレは―――)

 

少女のヘイロー……それは、間違いなく連邦捜査部シャーレの――――――

 

「すみません、少々よろしいでしょうか。」

 

シロコが何かに感づこうとしたその瞬間、誰かに声をかけられる。

振り返ると……さっき見たばかりの、赤いドレスを纏った見目麗しい日傘を持った女性がそこにいた。

 

「…………ん、何の用?」

「あーっ、えっと……ご都合悪かったでしょうか?」

「ううん、そう言うわけじゃない。モデルさんみたいだなって考えてた。それで、どうしたの?」

「まあ、お世辞でもうれしいですわ。実をいうと、このキヴォトスに観光しに来たはいいものの、ちょっと道に迷ってしまいまして……このパンフレットに乗ってるスイーツ店に行きたいのですが……」

 

そう言って、その女性がパンフレットに書かれて、「オススメNo.1」と書かれているスイーツ店の場所を訪ねてくる。

……が、シロコは知っている。その店は、つい3週間程前、美食研究会に「おいしくないから」という理由で爆破されている。

 

「そこは、ちょっと前に爆破されて閉店したよ。」

「えっ、爆破?経営破綻とかではなく?」

「ん、爆破。」

「えぇー……」

 

店が爆破され、なくなったことを伝えると赤いドレスの女性は、ちょっと引いていた。

このキヴォトスで観光に来る人で、爆破されて店が閉店したというのを聞くのは何も珍しい事じゃないので、シロコもある程度慣れている。

それにしても、この女性……あまりにも美しすぎる。まるで、シロコが昔テレビの特集で見た、美の女神像を模した彫刻品がそっくりそのまま動き出したんじゃないかと考えるぐらいにはきれいな人だ。「んー……どうしましょう」と困ったようにパンフレットをのぞき込む仕草でされ、同性のシロコでさえ、ドキッとしてしまいそうな愛嬌がある。

けれど、シロコはどういうわけか、目の前のこの女性を、警戒しようとしてしまうのだ。

 

(……ただの観光客に、危険なんてないってわかってるのに)

「うぅ……楽しみにしていたのですが、仕方ありません。適当な喫茶店に入って休憩を……」

「この辺の喫茶店は、全部爆破されたり温泉開発で破壊されたりしたから、ここより隣の地区に言った方がいいかも。」

「ボソボソ…………コホン、な、なるほど……教えていただき、ありがとうございました。」

「……ん、気を付けてキヴォトスを観光していってね。」

 

最後の最後で、シロコが聞こえないほど小さな声で独り言を零した。

シロコはその独り言が気になったものの、とりあえず女性と別れることにした。

そして再び、あの特徴的なヘイローの少女を見ようと視線を移すも……

 

「……いない。」

 

赤いドレスの女性と話している間に、どこかに行ってしまったのだろう。

可愛かったから、よく見ておきたかったから残念だ。それにしても―――

 

(あの子のヘイローどうして……どうして……)

「……あれ?」

 

自分は何を考えたのだろうか……あの少女の()()()()()()()()()()()だなんてインターネットの嘘を書き込む掲示板みたいな話があるはずないのに。

シロコは、自分が疲れてるのかもしれないと考え、今日……先生が見つかっても見つからなくても、お風呂にゆっくりと使って寝ようと考えた。

 

「シロコせんぱーい!」

「セリカ?」

「ホシノ先輩がいい時間だし一度シャーレに集合しようって、アヤネちゃんから!!」

「……ん。分かった。」

 

シロコはセリカの声に従い、一度シャーレに戻ることに決めた。

しかし、シロコは一度感じたモヤモヤがどういうわけか、心の中で引っかかっていた。

 

(……一応、頭の片隅に色や形があるヘイローを持つ少女の事を覚えておこう。)

 

セリカと一緒に歩きながら、シロコは自分の中で最終的に折り合いをつけたのであった。

 

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