危険走行、キヴォトスに限り合法 作:ブルパップこそアサルトライフルの究極形
「……何杯目ですか?」
「ザッと17杯目でしょうか? フフ、でも持ち合わせが少ないのでこのぐらいにしちゃいます」
彼女の胃の収容量より遥かに多いご飯が入っていく様を真横で見るのは、一種の恐怖体験だ。
私はというと、ようやく大盛りを1杯完食した程度。 自身の食べる速度が遅すぎたのかと錯覚してしまう。
ちなみにだが、私は決して命知らずではないので、もちろんこれは奢りではない。
「ここのご飯はどうでした?」
「中々に美味しかった、ごちそうさま」
朝の時間も過ぎて、私達しかいない店内の隅。
ふんわりとした白米に乗った濃厚な味噌カツは当然美味しかった。 具沢山の味噌汁も、出汁と味噌から徹底的に……いや、ここまでにしよう。 私は揚げ物が少し好きなだけの、バイクで走るだけの人でありたいし。
席を立とうとしたが、すぐに視線に気がつく。
「もう行くんですか? 少しお話しません?」
「……いいけど」
「よかったです。 断られたら接し方を考え直さないといけませんでしたからね」
「変えるところ無いでしょ」
お互いたまに会う程度で、話したいことは少しはあるものだ。
とても仲が良いというわけではなくとも、それでも友人であることに変わりはない。
だが、再度席についたときに一つ気づきを得てしまった。
久しぶりの会話、久しぶりの対面……それに対して、割と真剣な表情を向けるということは、穏やかではないという事に。
「それで……危険なこととかしてませんよね?」
「少なくとも、一人で
「そうですね。 ミメイちゃんのことですし、言葉通りの意味なら危険じゃないです」
何を言いたいのかを察した。
寸分もない確率に願いを捧げて目を閉じる。
「なら、この話は」
「『ゲヘナのゴーストライダー』」
「……」
「私が知っているのに、バイカーのミメイちゃんが知らない訳無いですよね?」
沈黙、即ち肯定。
ため息を噛み砕き、飲み込み、沸々と胃の底にそれらが冷える。
彼女を直視できなかった。
「深夜零時、不定のルートを音もなく走る正体不明のバイカー……他の追随を許さず、あらゆるテクニックで姿をくらましてしまう……」
「……知らない、私あれからあんまり乗って、んにゃぁ!?」
「フフ、嘘を付くのが下手なんですね。 ほら、目をそらすし、すぐに動揺しちゃってます」
ほっぺをつままれ、みょーんと伸ばされる。
若干痛いがコレもある種の罰だと甘んじて受け入れる。
それにしても私のほっぺってここまで伸びるものなんだと思うと同時に、なんだか太った気がして悲しくなる。
「ゴーストライダーが私だとして、危険なことはしてないって……ただ、新しいバイクの調子を見てるだけ……」
「だからこそですよ。 私が風紀委員会に泣く泣く連行された時、小耳に挟んだんです。 ゴーストライダーは危険物の運輸をしてる可能性があるため、一度捕まえて是非を問わないといけない……と」
「そんなことしてないよ!?」
思わず大きい声が出てしまい、慌てて店員さんの方に向かってペコペコと頭を下げる。
「わ、私、ローリスク・ローリターンでコツコツ生きてる方が身の丈に合ってる……だから、してない」
「疑ってるとか、そうじゃなくて、ただ伝えたかったんです。 知ってたほうが対策もしやすいでしょう?」
「……ごめん、ありがと」
確かにエデン条約締結以降、風紀委員会が危険物に対してピリついてるように思う。
噂は趣味人な私まで伝播しているので分かるが、恐らくその警戒具合は委員長の私情だとかが籠もっている気もする。
それに『ゴーストライダー』が追求される必要性もない。 なにせ実害も出てないのだから。
これは建前か、勘違いか、陰謀か。
机の木目を指でなぞるうちに思考が絡まり、結局何も分からずに全部投げ出すしか出来なくなった。
私は趣味を楽しみたいだけであり、噂や犯罪の渦中に居たいわけではないのだ。
「というか、なんでゴーストライダーが私だと分かったの?」
「うーん……それっぽかったから?」
あやふやな返答だが、追及するつもりは1ミリもない。
それが礼儀であり、それが腐れ縁の人間が見せれる信頼である。
互いに引き止める理由もなくなったのか、お互い自然に席を立った。
「さて、そろそろ出ましょうか」
「うん、会計……うわ、よかった、奢るとか言わなくて」
「奢ってくれてもいいんですよ?」
「何のためにさ……」
会計を済ませると、気温も丁度よく心地良い程度の時間になっていた。
このあと帰ったら寝てしまおうかな……なんて、1日が簡単に終わるわけがない。
ぶらぶら歩きつつ、今日はここらへんで解散してしまおうかとか話していると、前から四人ほどヘルメット団かと思われる人たちが現れた。
「おいお前!! 美食研究会のアカリか!?」
「おや、これは招かれざる客人みたいですね……」
危険人物と堂々と会話していると、危険人であるということをすぐに忘れてしまう。
困ったものだが、これらは知らなかったで済まされるわけがない。
「ふん、今日はムカついてるからな……こっちのほうが数的には有利だ、ぶっ飛ばしてやる!」
「うーん、これはこれはどうしましょうか……?」
「セーフティはもう解除してる」
「フフ、なら早いところ片付けちゃいましょうか……」
金属の音がして、心が高ぶる。
ヘルメット団の一人がサブマシンガンを薙ぐように連射し始める。 それと同時ぐらいのタイミングで、近くにあった看板に隠れた。
風を切る弾と、すぐ背中側から聞こえる着弾音。 さっきまでは平和だったもんなのに、あっという間に日常風景は戦場の中に消えてしまうのだとため息一つ分嘆く。
「アカリさんは……ああ、そっちか」
あまり銃撃戦は好きじゃないが、こんな時まで選り好みするのは敵さんに対しても失礼に当たる。
アサルトライフルの効率的なフォルムを握り込んで、鳴り止んだ隙に体を出す。
ダダダッダダダッ
「くっ、私とコイツでアカリの方を押さえておく。 お前らであのよく分からんやつをぶっ飛ばしとけ!」
「聞きましたか? よく分からないやつですって」
「そりゃそうでしょう……が!!」
飛んできた手榴弾を空中で狙い撃ち、地に着く前に爆発させ、その流れのまま投げて無防備だったヘルメット団員の胴に集中砲火する。
「くっ、カバーしろ」
「それぐらいわかってるわボケ!」
しかし身を乗り出しているので、腕にライフルの弾が何発か当たってしまう。 しっかりした衝撃が伝わるが、角がアスファルトに直撃する転倒事故より遥かにマシだ。
少しガバいけど、連携はちゃんとしようとしてる。
自滅でもしてくれたら楽なのに。
「ミメイちゃん、敵の位置分かりますよね?」
「当然……固まってるね、一箇所に。 そして本当に偶然ながら私達には"これ"がある」
擲弾発射器に装填する。
一発いくらだったか……少し頭が痛いが、きっと学割でなんとかなる。
アイコンタクトを取り、一斉にトリガーと引いた。
ドンッ
軽い土煙の後、2発の擲弾のより目を回すヘルメット団の面々があらわになる。
手足がピクピクしているところから鑑みるに、離脱するなら今のうちだろう。
遮蔽物から出て、視線を一度交わして即座にそこから走って逃げ出す。
「食後の運動にちょうどよかったですね、でもなんだか少し小腹が空いたような……」
「走って脇腹が痛い……」
「おっと……冗談、冗談ですよ。 にしてもなんやかんやで駅前に戻ってきちゃいましたね」
確かに駅前まで戻ってきてしまった。
だが、さっさと帰ろうと思っていた身としてはちょうど良い。
発着時刻を確認しようとしたが、その前にピンク色のアイコンが目についた。
「……そういえば、モモトークの連絡先って交換してなかったよね」
「え? そういえば交換してませんでしたね……」
友達追加をタップした。
QRコードを恐る恐る差し出せばきっと断れない。
「……折角だから、しよ」
「いいんですか? フフ……なんだか嬉しいですね♡」
「なにがさ。 別に連絡交換せずとも、道歩いてたら割と鉢合うでしょ」
ポチポチと交換が済むと、一番上にアカリさんのアカウントが表示される。
いや、それどころ真白の画面に唯一燦然と輝いて存在してる。
「あら、もしかして私しか友達がいないんですか?」
「ディスってる!?」
「いえ、SNSをしてなさそうだったのでイメージ通りでしたよ★」
「…、前回の事故で、バイク炎上と怪我どころかスマホまで逝って買い替えただけ」
「ああ……バックアップを忘れてただけでしたか……」
「……なんだと思ったのさ」
「内緒です、勘違いでしたから」
絶やされない笑顔に、何か裏を感じてしまう。
いや、私だけ何もわかってないだけか。
ジーッと見つめても何も関数は返されず、少しため息をつく。
「そう……じゃ、またね」
「はい、またどこかに食べに行きましょうね」
……よくよく思い返せば、壊れる前は企業アカウント以外の友達はいなかった気がする。
そう考えると、私の人生初めてのモモトークの友達はアカリさんになるかもしれない。
『フォルコメン』
藪鮫ミメイが用いるメインウェポン、銃を持てるようになった瞬間から惜しみなく金を注ぎ込んだ後にバイクに目移りした。
HK416、10インチのモデル。都市迷彩のため塗装が灰色。擲弾発射器はAG36。
調子に乗って某完璧キャラのカスタムを割と真似したので、遠距離で撃ち合いは出来ない。
主に使う二丁のうち、こちらばかりを使う。
取り回しと弾薬費的な問題があり、買って家に放置してる銃はカスタム的な問題があり……つまり、これは趣味人としての定めであり……。
閑話ネタ
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メイド
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水着
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幼体化
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これは作者の秘めたる性癖解放ボタン